概  要 1 目 的      特例子会社における精神障害者の雇用の実態を把握するとともに雇用事例を収集し、さらにはそこから得られた知見を整理し、広く普及を行うことによって、今後の精神障害者の雇用促進に資する。 2 方法 本研究調査は、平成18年度及び19年度の2ヵ年計画である。1年目は、特例子会社198社を対象にアンケート調査を実施した。2年目は、その調査結果等をもとに、精神障害者を雇用している特例子会社10社(このほかに、参考として、一般企業1社)にヒアリングを実施し、各企業の全体的な取組及び個別の事例について調査した。また、両調査結果に、専門委員の所属する各機関における精神障害者雇用にかかる取組、所見をあわせ、精神障害者雇用促進にかかる総合所見をとりまとめた。 3 結果及び分析 (1) アンケート調査結果 対象となった特例子会社198社のうち、99社から回答を得た(回収率50%)。結果の概要は、以下のとおりである。 @ 総従業員数は、10人以上40人未満の範囲の企業があわせて41社であった。 A 精神障害者の雇用状況は、「現在雇用している精神障害者がいる」が18社(18.2%)、「過去精神障害者を雇用していたが、現在は雇用していない」が4社(4.0%)、「精神障害者の雇用経験はない」が73社(73.7%)であった。 B 現在雇用されている精神障害者は、疾病名は「統合失調症」(10社)が最も多く、障害を有した時期は「採用時に既に障害を有しており、その時点で把握していた」(16社)が最も多かった。 C 精神障害者を雇用するに当たっての配慮や工夫は、「業務遂行を援助する者の配置」 (11社)、「通院時間の確保、服薬管理等医療上の配慮」(9社)、「短時間勤務等労働時間の配慮」(8社)の順に多かった。 E 職場定着の際に主に連携している関係機関は、「ハローワーク」(12社)、「地域障害者職業センター」(5社)、「障害者就業・生活支援センター」「医療機関」(いずれも4社)の順に多かった。 F 募集から採用、定着に至る過程で主として活用している制度は、「トライアル雇用」(13社)が最も多かった。 G 精神障害者の雇用経験がないという企業の雇用しない理由は、「精神障害者に関する知識がなく、雇用に対して不安がある」(29社)、「精神障害者に適した仕事がない」(27社)の順に多かった。 (2) ヒアリング調査結果 訪問調査を行った11社のうち、9社は雇用している精神障害者が5名以下であり、特例子会社においても、身体障害者や知的障害者等に比べて、まだ雇用が十分に進んでおらず、職場定着に向けて手探りの状態で取り組んでいる様子がうかがわれた。 また、企業及び個別の事例調査を通して、@外部の関係機関や支援制度を有効に活用すること、A通院時間の確保、勤務時間の調整、定期的な面談時間の設定等、個別事情に応じた配慮を行うこと等が採用や職場定着の大きな鍵になることが示唆された。 (3)精神障害者の雇用促進にかかる所見 精神障害者の雇用促進にあたっては、企業も含めた社会全体に対する啓発や、制度の整備が必要であるとともに、各関係機関が、人材育成も含め支援機能を強化し、さらにネットワークを作ることによって、企業や精神障害者に対する長期的な支援体制を確立することが重要である。 目  次 第1章 研究の目的及び方法  (1)目的・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 3  (2)方法・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 3  (3)実施状況・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 3 第2章 特例子会社における精神障害者の雇用状況に関するアンケート調査  (1)アンケート調査の実施・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 7  (2)アンケート調査の結果 @ 障害者の雇用状況・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 7 A 障害者の賃金制度・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・18 B 精神障害者の雇用状況・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・32 C 今後の精神障害者の雇用・・・・・・・・・・・・・・・・・・・39 D 「プライバシーに配慮した障害者の把握・確認ガイドライン」 の活用状況等・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・42 E 意見・要望・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・43 第3章 雇用事例調査  (1)企業別事例(11社)・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・51  (2)個人別事例(22社)・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・70                 第4章 精神障害者の就労支援の促進について〜コンサルタント総合所見〜・・83 第5章 専門委員の所属する各機関の取組  (1)職業安定行政機関    東京労働局・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・91  (2)支援センター  @ 障害者就業・生活支援センター ワーキング・トライ・・・・・・94 A 障害者就業・生活支援センター オープナー・・・・・・・・・・98 (2) 企業 @ 東京グリーンシステムズ株式会社・・・・・・・・・・・・・・・101 A 株式会社日立製作所・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・103 B 株式会社キューピーあい・・・・・・・・・・・・・・・・・・・105 第6章 総括〜精神障害者雇用促進・拡大のために〜・・・・・・・・・・・・109 1.研究の目的及び方法 (1) 目  的 障害者の雇用促進等に関する法律の改正により、平成18年4月から、精神障害者も身体障害者、知的障害者と同様、障害者雇用率の算定の対象となっている。しかしながら、精神障害者に対する理解や雇用経験の少なさからか、身体障害者、知的障害者と比べて、雇用が十分に進んでいないのが現状である。特例子会社においても精神障害者の雇用経験のあるところはまだ少ないが、障害者の受入れ体制が整っている特例子会社における雇用事例を把握・分析することは、他の特例子会社のみならず、一般の事業所においても、精神障害者の職務内容や労務管理等を検討するうえで、有益なものであると考えられる。 本研究は、特例子会社における精神障害者の雇用の実態を把握するとともに雇用事例を収集し、さらにはそこから得られた知見を整理し、広く普及を行うことによって、今後の精神障害者の雇用促進に資することを目的とするものである。 (2) 方  法 @ 学識経験者、行政、支援センター、特例子会社等で構成する研究委員会を設置し、全体の方針、運営に関して検討しながら、研究を進める。  A 特例子会社における精神障害者の雇用の実態を把握することを目的に、アンケート調査を実施する。 B アンケート調査の結果等をもとに、精神障害者雇用を行っている、あるいは検討し ている企業を選定し、採用計画の策定、受入れ体制の準備、採用、定着にいたる一連の取組について、ヒアリングおよび分析を行う。 C 特例子会社及び東京経営者協会の会員企業を対象に、精神障害者雇用促進を目的と した普及啓発のためのセミナーを実施する。 (3) 実施状況        @ 研究委員会等      平成18年度は、研究委員会を3回、特例子会社の事例研究会を1回開催し、アンケート調査やヒアリングの内容にかかる討議、結果の分析等を行った。 平成19年度は、研究委員会を3回開催し、ヒアリングの内容にかかる討議、結果の分析、研究成果のとりまとめ等にかかる討議等を行った。     A アンケート調査    平成18年9月に、その時点で特例子会社の認可を受けている198社を対象に実施した。有効回答は99社で、回答率は50%であった。 B  ヒアリング    特例子会社10社と精神障害者を多数雇用する一般の企業1社(参考)、精神障害者22名について、各企業を訪問し、雇用事例調査を行った。 C セミナー        以下のとおり、計2回実施した。 イ 第1回  開催日時 平成19年3月5日 13:30〜17:00 開催場所 日本工業倶楽部会館 大会堂     内  容 今後の障害者雇用について  東京労働局 根岸栄子氏 アンケート調査結果概要   (社)日本経済団体連合会 輪島忍氏 精神障害者の雇用とは    東京都福祉保健局 熊谷直樹氏 精神障害者の雇用事例    富士ソフト企画(株) 佐織壽雄氏      ロ 第2回 開催日時 平成20年年2月18日 14:00〜16:30  開催場所 日本工業倶楽部会館 大会堂      内  容 精神障害者雇用促進に向けた特例子会社の取組 東京経営者協会 丹下 一男氏 精神障害者の雇用促進に向けて (社福)JHC板橋会 清家 政江氏 精神障害者とともに働いて(パネル討議)       コーディネーター 東京労働局 伊藤 慎吾氏       パネリスト (株)キューピーあい 湯田 正樹氏              東京グリーンシステムズ(株) 長谷川 伸治氏             (株)ビジネス・チャレンジド 藤田 顕氏 2.特例子会社における精神障害者の雇用状況に関するアンケート調査 1.研究の目的及び方法 (1) アンケート調査の実施 @ 目 的 特例子会社で働く障害者の職務、賃金、労働時間等の労働条件や、精神障害者の雇用の実態等を把握することにより、今後の精神障害者雇用施策や雇用促進に資することを目的とする。 A 実施時期 平成18年9月 B 対 象 平成18年9月時点で、特例子会社の認可を受けている198社を対象とする。 C 内 容 障害者の雇用状況、障害別の従事職務、作業内容、賃金制度、精神障害者の雇用状況等について、特例子会社の経営者もしくは管理者が記述する内容となっている。あわせて、特例子会社からの関係各機関への要望について記載する欄も設けている。 (2) アンケート調査の結果 調査対象とした198社のうち、99社から有効回答を得た。(回答率:50%) なお、四捨五入の関係で、集計結果が必ずしも100%あるいは合計数値にならない場合がある。 @ 障害者の雇用状況 イ 従業員数 特例子会社における従業員数(正規従業員、出向者、臨時社員)は、「20人〜」が最も多い15社であり、次に「100人以上」が14社、「10人〜」と「30人〜」が13社であった。 図1 従業員数 ロ 従業員の人員構成(健常者と障害者)  健常者、障害者別の従業員の人員構成は、健常者については、全従業員の20%〜40%    を占めている企業が最も多く、43社であった。重度障害者については、全従業員の20%〜40%を占めている企業が最も多く、36社であり、重度以外の障害者については、全従業員の20%以下を占めている企業が最も多く、36社であった。 図2 従業員の人員構成(健常者と障害者) ハ 従業員の人員構成(正規・出向・臨時) 正規、出向、臨時別の従業員の人員構成は、正規従業員については、全従業員の80〜100%を占めている企業が最も多く、42社であった。また、出向者については、全従業員の20%以下を占めている企業が最も多く、58社であり、臨時社員については、全従業員の20%以下を占めている企業が最も多く、38社であった。  図3 従業員の人員構成(正規・出向・臨時) ニ 正規従業員の人員構成(健常者と障害者) 健常者、障害者別の正規従業員は、健常者については、全正規従業員の20%以下を占めている企業が最も多く、34社であった。重度障害者については、全正規従業員の従業員の40〜60%を占めている企業が最も多く、29社であり、重度以外の障害者については、全正規従業員の20〜40%を占めている企業が最も多く、29社であった。 図4 正規従業員の人員構成(健常者と障害者) ホ 出向者の人員構成(健常者と障害者) 健常者、障害者別の出向者は、健常者については、全出向者の80〜100%を占めている企業が最も多く、64社であった。重度障害者については、全出向者の20%以下を占めている企業が最も多く、5社であり、重度以外の障害者については、全出向者の20%以下を占めている企業が最も多く、7社であった。 図5 出向者の人員構成(健常者と障害者) ヘ 臨時社員の人員構成(健常者と障害者) 健常者、障害者別の臨時社員の人員構成は、健常者については、全臨時社員の80〜100%を占めている企業が最も多く、47社であった。重度障害者については、全臨時社員の20%以下を占めている企業が最も多く、9社であり、重度以外の障害者については、全臨時社員の20%以下を占めている企業が最も多く、8社であった。 図6 臨時社員の人員構成(健常者と障害者) ト 障害種別の従事職務・作業内容 表1 視覚障害 事務 一般事務 事務代行補助事務 手形・小切手発行業務 総務  文書・図面作成   パソコン操作 Webアクセシビリティチェック Webサイト運営  データ入力 キーパンチャー   接客 顧客対応 軽作業   組立 M/C加工 化学品製造 メール   社内郵便集配 清掃   オフィスの清掃 紙すき シュレッダー 販売   OA機器販売 植物栽培   造園 園芸 植樹 マッサージ   ヘルスキーパー ヘルスケア リラクゼーション その他   パソコンインストラクター スーパーの鮮魚部門 サービスカーの運転 聴覚障害 事務 一般事務 事務代行業務 手形・小切手発行業務 伝票チェック  顧客データ資料作成・保管照会業務 社員の各種証明発行  人事業務 給料計算  ポスター作成 保険代理店事務  デザイン   パソコン操作 CAD データ入力 DTPオペレーター Webサイト運営  PDF化作業 データベース作成 ホームページ作成  OAオペレーター 印刷機・製本機のオペレーター  印刷機オペレーター DTP編集 機械オペレーター  キーパンチャー パソコンセットアップ   管理 貸与品管理 情報機器管理   その他 茶器洗浄 情報処理・地図編集 原稿作成  健康保険証・雇用保険証の確認発送  軽作業 製造 製品の梱包組立作業 電子機器組立作業 組版 仕上ライン作業 紙加工(切断・貼付)   包装 成形加工品の点検包装 サービス部品の梱包作業 商品の箱詰め 各種テープの切断包装   検査 軽量器の精度検査 鋼片の硬度・粗さ測定 商品の検品  組版検品 資材管理   DM DM封入・封緘     その他 時計修理 物流作業 部品ピッキング作業 印刷   印刷 製本 コピー 名刺印刷 メール   社内郵便集配 郵便物の仕訳・受け渡し 清掃   寮の清掃 宿泊施設の清掃・ハウスクリーニング ゴミステーションの整理・環境整備 プログラミング   ソフト開発プログラマ その他   TVスポットデータ確認 運転業務 肢体不自由(上肢) 事務 一般事務 事務代行業務 経理 総務 経理業務 保険代理店業務  デザイン ポスター制作 文書・図面作成 生産事務   パソコン操作 データベース作成 データ入力 データ処理 デジタル関連業務 パソコンによる編集業務 Webサイトの運営 Web制作  Web管理 PDF化作業 マシンオペレーター DTP  キーパンチャー マルチメディア関連データ入力処理  組版オペレーター   接客 電話受付 会議室受付 病院予約受付   管理 貸与品管理 パソコン複合機レンタル管理   その他 書類の仕訳・頒布 情報管理業務 軽作業 製造 製品の梱包組立作業 仕上ライン作業 資材管理 組立   包装 機械操作(商品の包装)   検査 検品作業 計量 生産管理 検査業務   その他 発送・物流作業 各種テープの切断包装 組版、細断 印刷   印刷業務 コピー印刷 製本 名刺作成 製版 メール   社内メール 郵便等配送 郵便物の仕訳・受け渡し 清掃   床清掃 管理人   守衛 寮管理 独身寮管理人 プログラミング   ソフトウェア開発 販売   中古パソコンネット販売 物品販売 その他   マイクロ撮影保管業務 写真撮影 レジ 配送   工場内メンテナンス 用度品のピックアップ業務  コールセンターオペレーター 肢体不自由(下肢) 事務 一般事務 事務代行業務 ポスター制作 経理 総務 現場事務業務   受発注業務 デザイン 情報処理・地図編集 給料計算  文書・図面作成   パソコン操作 CAD データ処理 データベース作成 データ入力受付・検量 DTPオペレーター Webサイトの運営 PDF化作業  データ入力 Web制作 デジタル関連業務 Web管理  OAオペレーター パソコンセットアップ キーパンチャー   管理 制服管理 貸与品管理 パソコン複合機レンタル管理   接客 電話受付 マッサージ予約電話受付   DM DM等封入   その他 健康保険証・雇用保険証の確認発送 軽作業 製造 製造 組立 仕上ライン作業 電子機器組立 部品加工組立  組版 細断   検査 組版検品 軽量器の精度検査 鋼片の硬度・粗さ測定   その他 各種テープの切断包装 印刷   印刷物作成 製本 名刺作成 メール   社内メール・郵便等配送 管理人   守衛所業務 寮管理 プログラミング   ソフトウェア開発 システム開発 販売   中古パソコンネット販売 売店業務の商品の販売 営業     その他   コールセンターオペレーター 時計修理  福利厚生施設の運営 商品管理(在庫業) 肢体不自由(体幹) 事務 一般事務 総務 人事 経理 営業事務 事務代行 経理補助  管理部門   パソコン操作 CAD データ作成・処理 データ入力 データサービス  Webサイト運営 Web製作 Web管理 パソコン図面入力 OAオペレーター デザイン    接客 顧客対応 電話受付   管理 貸与品管理 パソコン複合機レンタル管理   その他 保険代理店業務 軽作業 製造 紙加工(切断・貼付)組立   検査 検品 仕上ライン作業   包装 各種テープの切断包装 印刷   組版オペレーター ポスター製作 印刷物作成 メール   郵便業務 清掃   清掃 プログラミング   ソフト開発 販売   中古パソコンネット販売 営業   営業 その他   IT関係 オペレーション 技術管理職 コールセンターオペレーター 肢体不自由(脳性まひ) 事務 一般事務 会計 事務代行 事務代行補助 段取等の事務準備   パソコン操作 データ入力 デザイン データサービス DTP  Webサイト運営 Web製作 マシンオペレーター   DM 封入   接客 電話受付   管理 貸与品管理 軽作業 製造 化粧品加工 生産補助   検査 品質環境課 調整(バネ)仕上ライン作業   包装 各種テープの包装・梱包作業   その他 整理 用度品のピックアップ作業 為替取引 マイクロ撮影保管業務 空箱清掃  印刷   版下作成 ポスター製作 メール   社内便の集配 清掃   ハウスクリーニング プログラミング   ソフト開発 システム担当 クリーニング   クリーニング 販売   販売 植物栽培   造園 園芸 植樹 内部障害 事務 一般事務 経理事務 人事 総務 事務代行 書類仕分・頒布 給料計算   パソコン操作 データ入力 データベース作成 データサービス  DTPオペレーター 資材のパソコン入力・事務処理  Webサイト運営 キーパンチャー プログラミング CAD  デザイン 文書作成 図面作成 パソコンセットアップ    DM 発送 封入   接客 受付 電話受付 テレフォンサービス   管理 貸与品管理 制服管理 仕分管理 事務用品発注管理 軽作業 製造 カートリッジ組立 製品製造   検査 検品作業 計量 軽量器の制度検査 鋼片の硬度・粗さ測定   包装 各種テープの包装・梱包作業   その他 マイクロ撮影保管業務 配送 商品ピッキング作業  時計修理 物流作業 印刷   軽印刷 製版 製本 名刺作成 メール   社内メール 郵便等配送  清掃   清掃 プログラミング   プログラミング ソフトウェア開発 販売   販売 営業   営業 その他の身体障害 事務 一般事務 事務代行補助業務 経理事務 デザイン   パソコン操作 データサービス 組版オペレーター   接客 マッサージ予約電話受付 電話受付 メール   支社間の社内便 契約書類確認発送 その他   福利厚生施設の運営 知的障害 事務 一般事務 顧客データ資料作成 文書作成 社員証作成 経理   パソコン操作 データ入力 コピーオペレーター パソコン入力  製本機のオペレーター   管理 制服管理 販促物管理 貸与品管理   DM ダイレクトメールの作成・発送 発送代行業務   接客 見学案内   その他 スキャナー 文書類仕訳 茶器洗浄 書類の仕分・頒布・発送  運搬補助 文書封入作業 軽作業 製造 菓子の製造 化粧品加工 組立 精密機械加工 包材加工  部品組立 製造補助 組立補助作業 光学機器の加工・組立  電子部品組立・材料準備 仕上ライン作業      包装 書籍・部品の包装 光学機器部品の梱包 電球の包装 成形加工製品の点検・包装・梱包作業  家庭用製品・化粧品の詰合せ・梱包作業 各種テープの包装 梱包組立作業 箱詰作業   検査 品質検査 検品    その他 シュレッダー 紙すき 廃棄文書処理 リサイクル作業  缶出し 水よけ作業 原料ボイル作業 型枠清掃及び油塗布 軽量物の運搬 スペーサーつけ 部品洗浄 物流 治工具整備 印刷   コピー 製本 名刺作成 印刷補助 メール   社内郵便集配 書籍の改装作業 契約書類等封入  清掃   窓清掃 一般ゴミの収集運搬作業助手 ゴミの回収 ハウスクリーニング事業 建物内外の清掃業務 工場内清掃 リサイクル分別 親会社宿泊施設の清掃 クリーニング   ランドリー(仕分け・洗濯・製品のたたみ等) クリーニング補助 販売   CD販売 パン製造・販売 飲料販売 植物栽培   花卉栽培の全般 植物レンタル 植栽管理 花卉栽培 花壇保守 造園 園芸 植樹 緑化維持管理 その他   マイクロ撮影保管業務 食肉盛付 工場内のメンテナンス 用度品のピックアップ業務 精神障害 事務 一般事務 一般事務   DM DM封入   パソコン操作 CAD データ入力・処理 Web  軽作業   原料のカット 選別 計量 検品 缶出し 組立 商品包装 印刷   印刷 製本 発送作業 名刺 DTP印刷 クリーニング   クリーニング補助 販売   販売 植物栽培   花卉栽培 花壇保守 その他   パン製造・販売 コーヒーショップ  写真撮影(証明写真等) チ 障害者雇用率 親会社と特例子会社及びグループ適用の場合は、関係会社を含めた全体の障害者雇用率は1.9%という企業が最も多く、15社であった。次に、1.8%が13社、2.0%が11社であった。 図7 企業全体の障害者雇用率 リ  障害者雇用に関する課題 障害者雇用に関する課題は、「従業員の能力開発」という企業が最も多く、51社であり、続いて、「障害者のキャリア・能力開発」が50社、「高齢化への対応」が44社、「人材の定着・確保」が39社、「障害者の職務開発」が34社、「従業員の活性化対策」が26社、「障害者の処遇・賃金」と「就労支援センターとの連携強化」が24社、「障害者の生活指導」が22社、「家庭とのコミュニケーション」と「家庭からの支援・協力」が15社、「障害者の引退対策」と「福祉施設との連携強化」が12社、「障害者の福利厚生」が10社であった。 図8 障害者雇用に関する課題 ○「その他」の内容 * より重度の障害者を雇用するためには、ケアコストが経営を圧迫する。今の行政や親会社の支援のみではカバーできない * 業務のマンネリとの戦い * 現在は上記項目にかかる課題はほとんど見当たらず、非常に順調に運営がなされている。 最近、安定した収入を得ている者に対し、親が逆に依存するようなケースがある。 グループホーム等への生活自立を勧めたい A 障害者の賃金制度 イ 賃金制度 賃金制度は、「特例子会社については、親会社と異なる賃金体系である」という企業が最も多く、90社であった。次に、「特例子会社の社員と親会社からの出向者とは処遇を分けている」が55社、「特例子会社では健常者と障害者で処遇を分けている」が17社、「特例子会社では障害の種別に応じて処遇を分けている」が5社であった。 図9 賃金制度 ロ 基本給の決定要素(管理職と一般職)  基本給の決定要素は、管理職では、「職務遂行能力」という企業が最も多く、58社であった。次に、「職務、職種等の仕事の内容」が56社、「業績・成果」が49社、「年齢・勤続・学歴等」が25社であった。 一般職では、「職務遂行能力」という企業が最も多く、82社であった。次に、「職務、職種等の仕事の内容」が66社、「業績・成果」が53社、「年齢・勤続・学歴等」が51社であった。 図10 基本給の決定要素 ハ 賃金形態(障害別) 基本給の算定単位は、身体障害者は「定額:月給:欠勤等による差引あり」という企業が最も多く、59社であった。次に、「定額:時間給」が14社、「定額:月給:欠勤等による差引なし」が7社、「定額制:年俸制」が3社、「定額:日給」が2社、「出来高」が1社であった。 知的障害者は、「定額:月給:欠勤等による差引あり」という企業が最も多く、53社であった。次に、「定額:時間給」が17社、「定額:日給」「定額:月給:欠勤等による差引なし」が5社、「定額制:年俸制」「出来高」が1社であった。 精神障害者は、「定額:月給:欠勤等による差引あり」という企業が最も多く、16社であった。次に、「定額:時間給」が7社、「定額:日給」「定額:月給:欠勤等による差引なし」が1社であった。 図11 賃金形態 ニ 初任基本給の額 初任基本給の額は、「10万円〜12万円」という企業が最も多く、33社であった。続いて、「12万円〜14万円」が22社、「14万円〜16万円」が21社、「16万円〜18万円」が9社、「8万円〜10万円」が5社であった。 図12 初任基本給の額 ホ 平均賃金 平均賃金は、「10万円〜12万円」「12万円〜14万円」「14万円〜16万円」「16万円〜18万円」という企業が、いずれも12社であった。続いて、「18万円〜」「20万円〜」が7社、「22万円〜」が5社であった。    図13 平均賃金 へ 定期昇給制度の有無と対象者 定期昇給制度の有無は、「ある」という企業が81社、「なし」という企業が15社であった。 「ある」と回答した81社のうち、「全員が定期昇給制度の対象になっている」という企業が64社、「一部が定期昇給制度の対称になっている」という企業が12社であった。 図14 定期昇給制度の有無と対象者 ト 定期昇給の決定方法  定期昇給の決定方法は、「全額考課査定」という企業が最も多く、50社であった。次に、「考課査定と自動決定」が24社、「全額自動決定(※)」が6社であった。 ※全額自動決定とは、考課査定以外の勤続年数や年齢等に応じて自動的に決定されるもの 図15 定期昇給の決定方法 ○今後導入したいと思っている考え方 * 「人事考課による昇給(評価給)」と、「年齢給・勤続給等の自動的に昇給」をあわせて、賃金システムを導入 * 考課差の幅の拡大 * 1〜2年以内に職務能力を反映させる。実績評価報酬制度の導入 * 一定の昇給はしつつも、ある基準(技能水準等)に該当する場合は、昇給額を抑制する仕組みの導入 * 賃金については、能力定義書に基づく能力評価を行うこととし、一定の幅をもたせた範囲能力給の制度を導入した。今後は、この制度の定着化と公正な評価制度の確立を図りたい   チ 最低賃金除外 最低賃金除外は、「全員受けていない」という企業が最も多く、89社であった。次に、「一部受けている」が4社、「過去に受けていたが、現在は受けていない」「今後、受ける可能性がある」が1社であった。 図16 最低賃金除外 リ 賞与・一時金 賞与・一時金の有無は、「ある」という企業が92社、「なし」という企業が6社であった。 図17 賞与・一時金の有無 賞与・一時金が「ある」と回答した企業における配分算式は、「基本型(※)+人事考課」という企業が最も多く、59社であり、次に、「基本型」が15社、「基本型 + 人事考課+定額」が8社、「基本型+定額」が1社であった。 ※基本型:基本給×支給月数 図18 賞与・一時金の配分算式 ○「その他」の内容 * 基本型と基本型+人事考課 (7件) * 基礎給×支給月数±考課 * 基本型+人事考課+業績加算 * 契約給×支給係数 * 算式はない * 定額 また、年間協定は、「実施している」という企業が11社、「実施していない」という企業が81社であった。実施していると回答した企業のうち、「夏冬型で実施」が8社であった。 図19 年間協定 賞与の決定時期は、「賃上げとは切り離し決める」という企業が58社、「冬夏型のため該当しない」が21社、「賃上げと同時に決めている」が12社であった。 図20 賞与の決定時期 ヌ 障害基礎年金 障害基礎年金の受給状況の把握は、「全員把握している」という企業が18社、「一部把握している」が30社、「把握していない」が50社であった。 「全員把握している」と「一部把握している」と回答した48社のうち、受給状況を賃金に「反映させていない」という企業が42社、「反映させている」が5社、「両方」が1社であった。 図 21 障害基礎年金の受給状況の把握と賃金 ル 諸手当 諸手当の支給は、「時間外手当」が最も多く、93社であり、続いて、「通勤手当」が90社、「休日出勤手当」が81社、「生活手当:家族扶養」が51社、「勤務手当:役付」が50社、「生活手当:住宅」が36社であった。 図22 諸手当の支給の有無 ○「その他」の内容 * 在宅勤務手当 * 一部親会社業務以外の仕事とした際、300個の外注業務手当を支給 * 休業手当 * 特別出勤手当(年末年始出勤等) * 深夜手当22時以降 * 暑気手当(7月〜8月) また、諸手当の一月当たりの支給最高額は、「勤務手当:役付」が最も高額で、20万円であり、続いて、「時間外手当」10万円、「通勤手当」8万円、「生活手当:住宅」6.1万円、「生活手当:単身赴任」5.3万円、「勤務手当:技能技術」5万円であった。 図23 諸手当の最高額 表2 諸手当の項目、支給条件、算定方法 項 目 支給条件、算定方法 業績 手当等 個人別 労働者個人を単位として達成した労働の量的成果に対して支給 部門・ グループ別 部門別等のグループ単位として達成した労働の量的成果に対して支給 勤 務 手 当 役付手当等 管理、監督等職制上の地位にある者に支給 特殊作業手当等 危険、有害業務等の特殊な作業環境において勤務する者に支給 特殊勤務手当等 通常の労働者と異なる交替制勤務等の特殊な勤務に就いている者に支給 技能手当、技術(資格)手当等 特定の技能、検定資格等を有する者に支給 精皆勤手当、出勤手当等 出勤奨励のため出勤日数を基準として支給 通勤手当等 通勤費の全額又は一部を支給(定期券で支給している場合も含む) 生 活 手 当 家族手当、扶養手当等 ア)扶養家族の有無、人数に応じて支給 地域手当、勤務地手当等 イ)特定地域に勤務または居住している者に支給 住宅手当等 ウ)住居費の補助として支給 単身赴任手当、 別居手当等 エ)単身赴任等で家族と別居している者に支給 寒冷地手当、食事手当等 オ)生活補助として支給するものでア)〜エ)に該当しないもの 社会保険料等 社会保険料等で労働者負担分を事業主が負担するもの 調整手当等 諸事由により生じた賃金の不均衡を調整し、均衡を図るために支給 時間外手当 1日の所定労働時間の枠を超えて勤務した際に支給されるもの 休日出勤手当 休日に勤務した際に支給されるもの ヲ 退職金制度 退職金制度は、「ある」という企業が72社、「ない(制度採用の意向はあるもしくは検討中)」が13社、「ない(今後も検討の予定はない)」が12社であった。 図24 退職金制度の有無 退職金制度が「ある」と回答のあった72社のうち、退職金制度が「勤続年数比例方式」である企業は32社、「中小企業退職金共済制度」が21社、「ポイント方式」が9社であった。 図25 退職金制度の種類 ○「その他」の内容 * 基礎額×勤続係数×職能係数×退職事由係数 * 基本給×0.2×勤続年数別支給率 * (勤続年数ポイント+職種・職級別ポイント)×単価 * 退職慰労金として継続年数より支給 * 基礎金額×勤続年数別支給率(基本給) * 年収×支給率(2.43%) * 定額(勤続年数による) * 勤続ポイント×定額 * 勤続期間に応じた金額と資格等級に応じた金額の累積により支給額を決定(勤続年数ポイント+職務手当ポイント)×定額 * 勤続・職位・役付に対し基準表に基づき1年ごとにポイントを付与 * 職務給×係数 * 確定拠出年金企業型制度:年間付与ポイント×ポイント単価 * 基本給+(職務給+能率給)×0.4×勤続年数 * 企業年金基金 * 会社都合の掛率:100%・自己都合の掛率:60% ワ 賃金制度における配慮点と課題点 * 通勤ができない重度障害者を在宅勤務で雇用しているので、下記のことを配慮し処遇している。 1.ヘルパーや通院の際には、容易に仕事からの離脱をできるようにしている。 2.障害のケアのため、一人ひとりの状態に応じて就労時間帯を決定している。 3.重度障害者が働きやすいように、就業規則にとらわれない時給制契約社員  として扱い、仕事離脱の罪悪感を持たせないようにしている。 4.重度障害者のため就労時間を6〜7時間としている。 * 最低の生活給をベースとしている。個々人により、障害年金の受給状況が異なり、個人レベルでの収入総額には大きな差がある。(やむを得ないと考えているが・・・) * 初任給118,000円に対し、最高額は12万円に抑えている。  能力に応じた差はそれ程大きく設けておらず、多くの人を雇用できるように総人件費を抑えている。ただし、賞与については能力差を反映させ、最高額者は最低額者の2.5倍程になる。 * 将来、自立できる水準か、または福利厚生制度との関係を明確にしていくことが必要。 * 世間相場、仕事と支払賃金バランス(見合っただけ支払っているか、あるいは支払いすぎているか) * 給与では能力評価を加味しないで、賞与で能力、姿勢、業務の評価を反映している。 * 年齢、勤続を重視しつつも、一部勤務評定(毎年評価)を加減している。確実に成果として表れている人材と、障害者としての甘えで成果がついてこない人材とに分かれ、その公平感を配慮している。 * 就業時間と障害内容に沿った運用(7.45時間、7.0時間、6.0時間を届出している)。肉体の劣化に伴い、就労時間をシフトさせる。 * 健常者の低賃金是正が課題(改善中)。障害年金の考慮を検討中。 * 知的障害者ということでの賃金区分はしていない。製造一般職と総合職での区分で入社条件を明確にして、賃金制度を構築している。給与水準と生産性をどう合致させるか、そのための改善が急務である。 * 配慮点は、賃金水準(会社の経営維持に必要とする水準設定)。 ※最賃を上回るが、親会社は下回る水準  課題は、賃金に見合う能力を持った障害者が逼迫してきている。最低賃金の水準を引き下げれば、更に重い障害者の雇用も広がると思われる。 * 単なる成果だけではなく、努力も考慮する。障害の進行に限り、個人差が大きくなっていることが課題。 * 勤務中の通院に関して、月5時間までは減額しない。 * 県最低賃金への配慮。今後の課題は、評価制度の導入、賃上げ額、通勤手当の支給。 * 各人の業務能力に大きな差があるので、能力給に重点をおいている。 * 知的障害者に金銭の価値観がわからない者がいる。彼らにも生活があるのだが、賃金としての妥当性が課題と思われる。 * 能力差拡大に対する賃金制度の見直し * 障害の程度、部位によって大きく異なるため、すべての者を対象とした制度では管理できなくなりつつある。 * 親会社から継続勤務(転籍)している者の賃金は転籍後も100%補償で、特例子会社で採用した者との賃金格差がある。したがって、転籍者の賃金に関しては、職責から見て、今後、賃上げは考えにくく、賞与考課にて是正しているが、今後見直しを図りたい。職責に見合う統一基準を明確にしたい。 * 健常者、障害者ともに同一の賃金体系、水準のため、健常者の賃金水準が上がりにくい点が課題。受注にあたっては価格競争力があるよう、押さえ気味であるが、採用給は上積みできる仕組みを作っている。  業績による評価のほか、チャレンジ意欲・実績も評価し、賃金に反映させる。 * 親会社との適正格差を考えている途中である。 * 年数の割に賃金格差が少ない。 * 基本給の昇給について、評価S〜Dの5段階でS:2,000円〜D:0円と昇給額を決めているが、今後、障害者の評価を考えると、この昇給額の見直しをする必要がある。 * 配慮点は、福祉的側面と能力、利益貢献度評価のバランス。課題は、頭うちとなる年齢が低いこと。 * 配慮点は、 1.通院・検診等療養にかかわる不就業について賃金控除は0.4/月とし、(基  本給・職務給・役職手当・皆勤手当)×0.6は支給する。 2.賃金制度について障害者、健常者は処遇を分けていない。 3.職業訓練等の訓練機関も経験半数に加算する(基本給に加算する)。  課題は、職種・能力における賃金処遇について、他社の状況や、地域レベル等がつかめない。 * 契約社員・時給制にして「働いた分だけ収入が得られる」という意識の醸成。賞与支給によって、アルバイトではない、社会人としての自覚を促すことと、半期ごとの支給なので、就労継続(定着)モチベーションを高めることにつながっている。 * 採用後、勤務成績が悪かったり、業務遂行能力が極端に低下した場合でも、最低賃金を維持しているのが実情。授産施設と一般企業との賃金格差を考えると、弾力的な最賃除外の適用が望まれる。もう少し、気軽に除外適用を受けられるようにした方が雇用増につながるのではないかと考える。 * 3ヵ月毎に契約更新、面談実施し、時給の引き上げを行っている。 * 現行の賃金体系は障害者、健常者問わず一本化としているが、今後の企業経営を考慮すると、障害者の育成・強化と企業発展のためには、健常者の活用が重要課題となっており、賃金体系の別体系化を検討する。 * 障害の種類により分ける。 * パート従業員との報酬差(職務能力と報酬が逆転)。昇給額の抑制とモチベーション維持の両立。 * すべて独立した就業規則、賃金制度で運営されており、特例子会社だからという区別はない。 * 障害者と健常者の区別をせず、公正な処遇にすること。障害ゆえの非効率な部分をどう評価していくか。 * 最低賃金法に定める最低賃金を若干上回るようにしている。 課題は、当期純利益額が小額のため、賃金水準の引き上げがしづらい。 * 最低賃金除外は受けておらず、県最低賃金は更新の都度反映している。 透析者については、透析のための通院時間をカットしているが、精勤手当には反映されないよう配慮している。賞与等においても、時間カット(出勤率上)となるが、査定には反映しない。 * 障害基礎年金を受給している人と、していない人が同一賃金であるため、受給していない人にとっては低所得となってしまい、将来の管理職クラスとなるような能力のある障害者・人材の採用が難しい。 B 精神障害者の雇用状況 精神障害者の雇用状況は、「精神障害者の雇用経験はない」という企業が73社であり、「現在雇用している精神障害者がいる」が18社、「過去精神障害者を雇用していたが、現在は雇用していない」が4社であった。 図26 精神障害者の雇用状況 「現在雇用している精神障害者がいる」という企業について イ 初めて精神障害者を雇用した時期 「現在雇用している精神障害者がいる」と回答した18社が初めて精神障害者を雇用した時期は、2006年(平成18年)という企業が最も多く、7社であり、続いて、2005年(平成17年)が5社、2002年(平成14年)が2社であった。 図27 精神障害者を初めて雇用した時期   ロ 雇用している精神障害者の疾病名 雇用している精神障害の疾病名は、「統合失調症」という企業が最も多く、10社であり、「そううつ病」が4社、「てんかん」が3社、「その他の疾病」が5社であった。 図28 精神障害者の疾病名 ○「その他」の疾病 神経症・強迫神経症・高次脳機能障害 ハ 雇用している精神障害者が障害を有した時期 現在雇用している精神障害者が障害を有した時期は、「採用時に既に障害を有しており、その時点で把握していた」という企業が16社であった。「採用時に既に障害を有していたが、その時点では把握をしていなかった」「採用後に障害を有した」がそれぞれ2社であった。 図29 精神障害者が障害を有した時期 ニ 精神障害者を雇用するにあたっての配慮や工夫点 精神障害者を雇用するにあたっての配慮や工夫点は、「業務遂行を援助する者の配置」という企業が最も多く、11社であり、続いて、「通院時間の確保、服薬管理等医療上の配慮」が9社、「短時間勤務等労働時間の配慮」が8社、「配置転換等人事管理面についての配慮」「工程の単純化等職務内容の配慮」「関係機関等外部機関との連携支援体制の確保」が7社であった。 また、具体的な取組として、「行政の社会適応訓練に協力する形で実習を受け入れた」との回答があった。 図30 精神障害者を雇用するにあたっての配慮や工夫点 ○「その他」の内容 職務配置を2人体制とした(本人を含む) ホ 職場定着に関する外部機関との連携 精神障害者の募集・採用、採用後の職場定着に関して主に連携をとっている関係機関は、「ハローワーク」という企業が最も多く、12社であり、続いて、「地域障害者職業センター」が5社、「障害者就業・生活支援センター、障害者雇用支援センター」「医療機関(精神科病院、精神科診療所(精神科クリニック)、デイケア等)」が4社であった。    図31 職場定着に関する外部機関との連携       へ 募集・採用、採用後の活用制度  精神障害者の募集・採用、採用後の職場定着に関して主に活用している制度は、「トライアル雇用」という企業が最も多く、13社であった。続いて、「職場適応訓練」「社会適応訓練」「障害者雇用納付金制度に基づく助成金」が3社、「障害者委託訓練」「第2号職場適応援助者助成金」が2社であった。 図32 精神障害者の募集・採用、採用後の活用制度 ト 精神障害者保健福祉手帳の更新の把握 精神障害者保健福祉手帳の更新については、「各人の更新時期を把握し、更新の有無を確認する」という企業が12社であり、「採用時のみに手帳の有無を把握し、その後特に確認は行わない」が4社であった。 図 33 精神障害者保健福祉手帳の更新の把握 「過去精神障害者を雇用していたが、現在は雇用していない」という企業について イ 雇用していない理由  「過去精神障害者を雇用していたが、現在は雇用していない」と回答した4社が現在雇用していない理由は、「体調を崩しやすく継続勤務に不安があった」という企業が2社であり、「適切な雇用管理ができなかった(雇用管理の負担が大きかった)」「周囲の人間の負担が大きかった」「人間関係のトラブルが多かった」「その他」が1社であった。   図34 精神障害者を雇用していたが、現在は雇用していない理由 ○「その他」の内容 ・ 本人の意志(自己都合) 現在雇用している精神障害者がいる、いないにかかわらず、「過去に精神障害者の退職者がいた」という企業について イ 精神障害者の退職理由 過去に精神障害者の退職者がいた場合の退職理由は、「人間関係でのトラブル、人間関係の悪化」「体調不良・体調悪化」という企業が2社であり、「適切な雇用管理ができなかった」が1社であった。 図35 精神障害者の退職者がいた企業の退職理由 「精神障害者の雇用経験はない」という企業について イ 雇用しない理由 「精神障害者の雇用経験はない」と回答した73社の雇用しない理由は、「精神障害者に関する知識がなく、雇用に対して不安がある」という企業が最も多く、29社であった。続いて、「精神障害者に適した仕事がない」が27社、「社内の理解が得られない」が5社であった。 図36 精神障害者の雇用経験がない企業の雇用しない理由 ○「その他」の内容 * 平成18年4月まで障害者雇用率にカウントされなかった * 知的障害者を主に雇用している * 知的障害者を雇用し、関連会社がその他の障害者を雇用するようにしているため * 身体障害者用に設備を整えているので、これを活用したい * 現在検討中 * 雇用するための課題をクリア中 * 親会社に精神障害により療養中の者が複数在籍しており、将来的には当社が受け皿になる可能性がある * 精神障害者の雇用は親会社で検討する * 身体障害者の雇用に加え、他に心の病を発症した社員も複数おり、そのフォローも大変で、これ以上は対処できない * 医療の領域だと思われる C 今後の精神障害者の雇用 イ 今後の精神障害者の雇用に対する見通し 今後の精神障害者の雇用は、「多少は進むと思う」という企業が62社であり、「ほとんど変わらないと思う」が17社、「大きく進むと思う」が5社、「むしろ減少すると思う」が1社であった。 図37 今後の精神障害者の雇用 ○多少は進むと思う理由 * 雇用率への義務づけ * 精神障害者への雇用促進制度の推進 * 精神障害者の人数が増加傾向にあることと、雇用率に算定されたことにより、企業の意識が変化するのではないか。また、適合職域の研究が進み、支援力が高まると思う。 * 障害者雇用率に算定されたことにより多少は進むと思うが、企業内での精神障害者への理解や相談者の地位の明確化等の支援策、業務の創出、勤務しやすい職場環境等の条件が整わないと難しいと思われる。 * 法改正により、進むと思う。また、職種により雇用は可能だと思う。 * 雇用主の理解が一番である。精神障害者は業務遂行能力には問題がないので、就業環境の改善、配慮等なされれば、雇用は上向くと思う。 * 精神障害者の中でも働ける人たちがいることへの理解の促進。 * 障害特性への理解が進むと思う。 * 精神障害者の雇用管理については未だ模索の段階だが、雇用管理の仕組みができあがっていく中で、一歩一歩進んでいくと思う。 * 精神障害者の職業準備性が認知されつつあるため、多少は進捗するとは思う。反面、手帳を所持していないと雇用率に算定できないため、手帳を自ら進んで保持する人が少ない現状では、それほど進まないとも思う。 ○ほとんど変わらないと思う理由 * 職務開発(何ができるか)が不十分。本人からの申告がまだまだ難しい(本年の新規発掘も極少で、家族を含めて認知しようとする意識は変わってないようだ)。プライバシー保護の面で難しい対応もある。 * 適した仕事が少ない。 * 身体障害者や知的障害者に比べ、日常のケアが難しく、支援の経験が不可欠であると思われる。制度上の整備、ケアをする側の人材育成等、時間を有する課題が山積みである。 * 精神障害者に関する知識が受入れ側企業に不足しているため、雇用に対する不安が多く、大きく進むとは思われない。 リワーク支援や職業準備支援が活発にならない限り、精神障害者の雇用は進まないと思う。産業医が常駐している企業は別だが、精神保健福祉等の分野の知識が民間企業内にはない場合が多い。今後は、学習できる場所の提供も必要となる。 * 障害の程度にもよると思うが、製造業における安全管理、衛生管理面で解決すべき課題が多いと思う。 ○大きく進むと思う理由 * 知的障害者のケースと同様に進むと思う。 ○むしろ減少すると思う理由 * 精神障害者は社会的に増加しており、症状の範囲が拡大すると思われる。社会で受け入れる土壌、仕組みがないため。 ハ 自社における精神障害者の雇用予定 自社における精神障害者の雇用の予定は、「ほとんど変わらないと思う」という企業が36社であり、「従来より、多少意識して雇用をしていく」が34社、「むしろ消極的である」が11社、「積極的に雇用していく予定である」が4社であった。 図38 自社における精神障害者の雇用の予定 ニ 精神障害者の雇用を進めていくために必要なこと  精神障害者の雇用を進めていくために必要なことは、「雇用管理に必要なノウハウの習得」という企業が最も多く、53社であり、続いて、「医療機関との連携体制の構築」が51社、「精神障害者向けの職務開発、職務再設計」が41社であった。 図 39 精神障害者の雇用を進めていくために必要なこと ○「その他」の内容 * まずは精神障害への理解が必要 * 親会社の方針(知的障害者対象の特例会社なので) * 該当者を抱えた職場の負担軽減や援助 * 本人や企業が気軽に相談できる機関 D 「プライバシーに配慮した障害者の把握・確認ガイドライン」の活用状況等 「プライバシーに配慮した障害者の把握・確認ガイドライン」について、「内容までよく知っている」という企業は41社、「聞いたこと(見たこと)はあるが、詳細の内容はよく知らない」は25社、「全く知らない」は21社であった。 「内容までよく知っている」「聞いたこと(見たこと)はあるが、詳細の内容はよく知らない」(計66社)という企業のうち、「非常に参考になる」は19社、「ある程度参考になる」は38社であった。 同様に、「内容までよく知っている」「聞いたこと(見たこと)はあるが、詳細の内容はよく知らない」(計66社)という企業のうち、実際に精神障害者の把握・確認を「行った」は7社、「行っていないが、今後行う予定」は10社、「行ってはおらず、今後も行う予定はない」は24社、「行ってはおらず、今後については検討中」は23社であった。 実際に精神障害者の把握・確認を「行った」(7社)という企業の精神障害者の把握・確認の具体的な方法は、「従業員全員に呼びかけて把握・確認」という企業が4社であった。 図 40 「プライバシーに配慮した障害者の把握・確認ガイドライン」 ○「その他」の回答 * 障害者手帳の情報を利用するにあたって、社員から同意書を提出させた * 当社で行うことはないが、親会社を含めればあると思う E 意見・要望   イ 福祉部門に対しての意見要望  *   障害のある方をひとくくりに見るのでなく、それぞれの可能性を見出す福祉を行ってほしい。障害者はみんな一緒というスタンスでの権利要求は、一人ひとりの障害者の可能性をつぶすことになる。また、障害者はみんな働ける、一般就労できるというのは間違いであり、重い障害のある方へのケアがどれだけ大変なものか主張して欲しい。そうしないと、売れる製品もつくらず、一般就労への移行もさせられない施設の従業員は無能だということになる。障害者の生活支援やパニックがある人への対応等の日常に大わらわの真面目な方々に気の毒である。 *  障害者は月10万円以上の稼ぎができるというベストセラーになった本があるが、全員の障害者ができるものでもない。障害者を選考した上でのことである。施設は障害者を選考できないのであるから不可能である。良いもの、売れるものをつくるために勉強と努力をすることは大切だが、重い障害者のQOLのために努力することも大切だ。 障害者のため、社会のためどのような仕組みがよいか、自分たちの団体の延命ではない主張をしないと、障害者福祉団体、障害者当事者が共倒れになる危険がある。 *  施設の飽和が気になる。 *  民間企業との連携が必要である。 *  当社の場合は、大変支援していただき、感謝している。 * 就職や職場への定着のために、就業面における支援と生活面における支援が必要な方について、日常生活と社会生活上の相談を、一体的に合わせて実施して欲しい。 *  一般就労に向けた積極性ある取組。 * 将来の課題として、障害者の加齢問題がある。一般的に健常者より加齢が速いので、  障害者が加齢によって著しく生産性や意欲がダウンすることが考えられる。企業としては事業継続のためには、その時どう対応するか大きな問題になる。企業での就労後の障害者の生活を支える公的福祉政策が重要になる。産・官による具体的施策立案が求められる。 * 障害者と企業との間の橋渡し役としては、さらに重要度が増してくると思う。 本人の特性をよく理解するのと同様に企業サイドの仕事を充分把握して、適性のある方を訓練し、紹介・フォローしていただくようお願いしたい。 *  ジョブコーチ制度を利用して、知的障害者の指導をお願いしたが、結果的に何の進歩もなく終わってしまった。 *  非常に難しいのは理解できるが、もう少しいろいろな提案ができるように、ジョブコーチも研究、研鑽を重ねて欲しい。 *  当社では、平成19年4月政府が公布した「定年退職後の再雇用制度」の導入により、65歳までの雇用延長を障害者にも適用することにした。 知的障害者の特性と思われるが、年々、知力・体力の衰えにより、親に対する依存度が増している中で、親が亡くなり、親類の者が面倒を見ない場合、企業へ寄りかかることが想定されるが、企業の施策には限界がある。近年、グループホームが建ち始めているが、まだまだ不足であり、自立を目指す者に対する支援策の一貫として、グループホーム、あるいはそれらに類似した施策の拡大を望みたい。 *  福祉部門が行う障がい者の就業支援においては、障がい者側への支援に多大な労力がかけられ、企業側への人的支援が薄いのではないかと感じている。障がい者雇用を進めるには、障がい者に対し直接的具体的に実施してきた訓練・指導と同様に、企業に対しても直接的具体的な職場環境改善・職域開拓の人的支援が必要ではないかと考えている。 障がい者側にはその個々人のもつ障がい特性からくる限界があることを考えると、むしろ障がい者支援以上に事業主支援の方が重要ではないかとさえ感じている。つまり、社会モデル・文化モデル型の就業支援が必要であるということである。障がい者自身の職場適応能力・社会適応能力をいくら引き上げられたとしても、そもそも企業が変わらなければ雇用は進まない。また、行政指導や納付金・助成金制度は企業が障がい者雇用を考える有効なインセンティブになるが、それだけでは職場定着・適応が図れないのは言うまでもない。  自立支援を生涯で考えた場合、就労は中核的な位置づけであり、雇用を促進する法律等の取組の方向性は理解するが、定着しないのは企業内での理解が低いと言わざるを得ない。企業内では障がい者雇用に際し業務成果はもちろんであるが、服務規律や福利厚生面等においてのコントロールも必要である。それ以外にも加齢による体力・精神面、また生活環境におけるサポート等、定着に向け着目しなければならない課題が多い。解決するには、企業内でのサポート力を高める必要がある。  その業務をよく理解した社員、第2号ジョブコーチ等の制度が有効と思えるため、活用ならびに育成に対し惜しみないサポートを望む。 *  住宅施策について、最近は自宅から通勤可能の障害者も少なく(広い範囲の就職)、いわゆる居所変更しても、働きたいという人が多くなっている。重度障害者だけでなく、重度以外の障害者への助成も考えて欲しい。 *  会社設立から現在まで、障害者雇用を促進するうえで、福祉関係者との連携の重要性を強く感じる。 障害者特有の不調や、複雑な家庭環境にいたるまで、従業員の安定就労にきめ細かく、スピーディに対応してくれている。そのような支援機関がバックについてくれることによって、企業は一人で悩むことなく、安心して障害者雇用に取り組むことができる。信用できる支援機関の充実が、就労拡大に大きく寄与する。 *  一般就労のできる人に積極的に機会を与えて欲しい。 *  福祉は障害者を囲いこまず、就労可能の人はどんどん企業に送り込んで欲しい。 *  就労・生活支援ネットワークの強化。(社外での社会生活のサポートを含む) *  グループホームの拡充 * 一般就労のできる人の育成と就労への意識づけが必要である。現在は需要があっても、障害者人材の供給がついていけない状況。 ロ 教育部門に対しての意見要望 *  先生が対応できる就労プログラムではなく、社会・企業ニーズによる教育プログラムをつくって欲しい。脳性まひで手に不随意運動がある方が、障害者職業能力開発校で塗装を勉強したという。当然塗装の職では就職できなかった。塗装の先生がいるから、やらされたと思われる。 当社は 26 名の在宅で働く重度障害者社員がおり、10 年後は健常者の在宅勤務も当たり前になりそうだ。総務省が音頭をとりテレワークを強力に推進している。それに対応するために、通勤が困難な障害者に、早急にITC教育を行うべきである。10 年後にはパソコンにアクセス可能な障害者ならば、健常者と同一の仕事が可能になるのである。 *  職業教育に力を入れて欲しい。 *  企業への研修を積極的に行う。 *  行政側の教育関連部門が少々手薄のように感じた。 雇用を促進する立場の教育・研修の機会がもっとあってよいはずだ。 *  職業に必要な技能を修得することが、就職を容易にするので、多目的、多方面な職業訓練を実施していただきたい。 *  一般就労・他就労とのクラス分け。 *  安全、マナー、あいさつの初歩的教育。 *  リスクの事前勉強。 *  入社以降の技術的なことは企業サイドの教育の問題だと思うが、それ以前の社会人としてのマナー・エチケットは学校教育の中でも身につけさせてほしい。 *  聾学校及び養護学校、そして障害者職業能力開発校でも同様だが、とかく無理にでも就職させようとする傾向がある。もう少し障害者に適性のある仕事はどんな業務なのか見極めていかないと、結果的に途中で退職することになってしまい、障害者にとってもよいことではない。 *  養護学校教諭による企業での現場実習を体験していただいたが、皆さん熱心に取り組んでいた。 特例子会社での体験実習は必ず得るものがあるはずで、その得たものを、今後の生徒指導や進路指導に役立てていただきたい。特に障害者の仕事(さまざまな仕事内容・手順)や指導員の動き等が参考になっているはずである。 *  聴覚障害者専門の教育機関へのお願いだが、一般社会への適応訓練をカリキュラム化し、手話が通じない等の体験を始め、ストレス耐性を身に付けさせて欲しい。 *  当社の場合、障がい者の職業適性が問題となって、離職もしくは職場不適応になった者はほとんどいない。これは個々人の個性・特性に合った仕事を用意できているからだろうと感じている。またスキル向上には、特別な訓練よりもOJTが最も有効であると考えている。しかし、特に知的障がい者において、金銭にまつわるトラブルや対人関係によるトラブル等、職場外の事が起因となり職場不適応行動につながる者が多く、対応に苦慮する場合がある。 *  「漢字が読めない」 「計算ができない」ことは企業にとって大きな問題とならないが、社会ルールやマナー等が守れない場合は、雇用継続が困難になる場合がある。 *  社会ルールやマナー、モラルに関する教育に重点を置いていただきたいと感じている。 *  1年程度の技能教育・訓練機関であって、就労経験のない人の場合は、就職する・勤めるということに対する心構え教育にもっと力を注いで欲しい。 *  教育庁から養護学校への指示に「就職率40%」と掲げているが、障害者自身及び企業にとっては、継続的な就労、つまり「定着率」の方がよほど重要な指標になる。ただ、やみくもに内定を取ればよいというものではない。ミスマッチによる就労へのトラウマを生み出さないためにも、養護学校に別の指標を示唆すべきである。 全員ではないが、教職員は個人プレーの傾向が強く、「連携」意識が希薄である。さらに学校同士の連携も同様である。個々の教員では熱意のある人が多いが。 *  企業ニーズ・社会のニーズにあった教育を。 *  18歳になったら働くことを前提とした、教育・取組。 *  学校の先生の意識改革。 *  専門教育、階層別教育を通して、プロパーの監督職、管理職を育成していくことが重要である。 *  「お金の価値」「働くことの喜び」を教えて欲しい。 *  教職員の障害者雇用企業の実習→教育への活用   *  就労に必要なことがどんなことであるかの見極め。      *  基礎的な生活習慣の習得。 *  やる気(働きたい、社会的居場所を得たい)を持たせる。 *  目標値を伴った教育・指導計画の策定と実行。 ハ 地域社会に対しての意見要望 *  これから知的障害者を中心に、重い職業的障害を持つ方が一般就労に就くことが予想される。 地域社会は就職したら企業の問題とするのではなく、地域社会が就労を応援する体制をつくる必要がある。当社は地域の福祉NPO法人に知的障害者への社内での見守り支援をお願いしている。社員を呼ぶまでもない質問への対応や、休み時間、昼食時の話し相手になってもらっている。福祉の専門的知識もあるので、障害者対応のアドバイスももらっている。企業も含めた地域社会一体となった障害者福祉システムを考える必要を感じる。 *  障がいがあっても「共に生きる」というノーマライゼーションの考えを広く普及して欲しい。 *  人権教育啓発推進法の具体的実行が、地域で特に遅れていると思う。 *  コミットする場がないため、交流の場を設けて欲しい。 *  地域によってではあるが、福祉部門で連携を取って進めている地域が多くあることがわかった。民生委員が活躍している地域もあった。少しずつでも連携を進めていって欲しい。 *  障害の種類及び程度に応じた具体的な援助を行ってもらうこと、また、事業主に対して雇用管理に関する助言・援助を期待している。 *  就労援助センターを中心に会を結成した。ハローワーク、社会福祉協議会、福祉局、ボランティア企業が集まり、障害者就労と支援方法の枠を越えてスタートした。高い垣根がないことが証明され、一人でも多くの地域の就労件数アップを目指している。 *  自治体によっては、障害者雇用に対して、企業への助成金制度がある。全国統一した自治体による障害者就労に対する助成策の構築を望む。 *  企業では、勤務時間外の対応は困難なことが多い。障害者の生活面でのサポート(地域活動等)はお願いしたい。また、障害の重度化等で勤務が難しくなった方への受皿機能も作っていただきたい。 *  日本の社会では、障害者に対する理解がまだまだ不十分である。行政サイドがもっと力を入れて、地域社会から障害者との共生を考えた街づくり、活動が必要だと痛感している。 *  当社の近辺には養護学校4校・聾学校1校が存在し、毎年、各学校から数回にわたり、企業見学(生徒・保護者)を受け入れており、保護者から子供の卒業後の就労を依頼される。残念ながら、事業の形態から事前の採用計画がたてにくく、仕事ありきで採用を行うため、時の運・不運がある。 ハローワークの求職登録者もよいが、地域就労援助センターにてトレーニング中の人や、職業能力開発校から採用している。卒業後はできるだけトレーニングのできる学校や施設に通うことがベターだと感じる。 *  知的障がい者、精神障がい者、発達障がい者らにとって最も弱点となっているのは、「日常生活管理」や「社会生活能力」である。しかし、これらは企業内においてきめ細かな支援を行いにくい部分である。企業は障がい者の職場定着・適応を目指すために、地域の社会資源と連携していく必要があり、地域社会には障がい者の「日常生活管理」、「社会生活能力」に対するきめ細かな支援を期待したい。 知的障がい者であるが故に、交際している健常者の両親に結婚を許してもらえない社会がある。そのために、障がい者手帳を返納し現企業を退職して、健常者として転職し高収入を得ることで、相手の両親に認めてもらおうとする姿が理不尽に思えた。 そのようなことをしても、障がい者であることに変わりない。障がい者に対する社会の偏見が、このような行動をとらせてしまっている現実がある。おそらく重労働に耐えられず転職先を退職するはめになり、結局安定した収入が得られる定職に就くことができず、路頭に迷うことになると予想される。 企業としては、将来のことも踏まえて精一杯の退職慰留に努めるが、限界がある。障がい者本人が、仕事に対する強い誇りと自信を持って立派に自立できる姿を相手の両親に理解してもらう努力を続けることが最優先であるが、地域社会に対しても、障がい者に対する正しい理解促進を望みたいところである。 *  この地区は比較的障害者が多く、地域のサポート(福祉作業所・親の会・公共事業団等)が充実しており、企業の相談窓口も、ハローワークを筆頭に、しっかりしているので、安定した運営ができている。 *  知的障害者に対する興味と理解を。 *  働いている障害者をもっともっと見て欲しい。 *  雇用後に問題が発生した場合、第三者機関としての支援センター(生活・就労)の役割を強化していただきたい。養護学校等では就職後2〜3年のフォローを行えばそれで終わりと考えているが、企業は定年まで雇用することが義務付けられる。その間、家庭環境も大きく変わるので、支援機関の役割は大きなものがある。全ての問題を企業が背負い込むのは大変すぎる。 *  障害者を雇用している企業の見学を行い、それを通じて @障害者でもこれだけ働ける、A働いている障害者はいきいきしている、B過保護は障害者のためにならない、自立につながらない等を実感して、支援ネットワークを構築して欲しい。 ※養護学校や聾学校等については、学校教育法等の一部改正によって、平成19年4月より、「特別支援学校」という名称に変更されている。 3.雇用事例調査 (1) 企業別事例(11社) @  特例子会社A社 1)会社概要 設立は平成4年、従業員は121名、うち、身体障害者86名(重度65名)、知的障害者2名、精神障害者は2名である。 2)雇用までの流れ・経緯   イ 1名は、ハローワークで求人、トライアル雇用を実施、その後正社員として採用した。   ロ 1名は、ハローワークによるミニ面接会で管理選考を行い、契約社員として採用した。   ハ 採用にあたり、筆記試験と面接を実施。健康状態・体力、障害の程度、年齢、協調性、意欲・熱意、コミュニケーション能力等で総合的に判断した。 ニ 正社員の賃金水準等、すべて健常者と同水準である。職務内容は、名刺作成である。 ホ 契約社員の雇用賃金水準も、健常者と同水準である。 3)定着への配慮 イ 正社員 ・ 就労当初は、環境変化に順応してもらうために勤務時間を短くする等、様子を見ながらの勤務とした。 ・ 当初はやる気を見せ、必要以上に頑張ってしまう傾向があったが、短時間勤務の中で会社の様子や仕事にだんだん慣れていくことで、それほど症状を悪化させずに通常勤務に移行することができた。 ・ 管理職が本人の状況を細かく観察し、負荷とならないように業務量の調整を行う、残業をさせないようにする等、症状が出ないように配慮している。   ロ 契約社員 ・ 通院時間を確保するため、週4日の勤務にする等、体調の安定に配慮している。 ・ 特例子会社本社に勤務している者は少なく、グループ企業内に駐在勤務している者が大半を占めている。本人も、最初は駐在勤務であったが、症状が頻発するため、本社勤務に変更した。現在は、病状や体調、どのような状況になると症状が出やすいか等を見極めている段階である。今後これらを十分見極めたうえで、本社勤務にするか、駐在勤務にするかということについて、最終的に決定する予定である。  4)雇用している精神障害者の現状  イ 正社員 ・ 強迫的な傾向が見られ、トライアル雇用開始当初は、頻繁に手を洗いに行く、ビルへの入室に一歩踏み出せない等の状況が見られたが、トライアル雇用終了時には、粛々と業務を遂行できるようになった。 ・ 業務量が多くなり、納期に追われる時期になると、若干パニックのような状況に陥ることもあったが、入社後ある程度の期間を経ていたことと、管理職が本人の状況を細かに観察していたことで、パニックに陥る状況を事前に把握できるようになった。現在は、業務量を調整することで、症状が出ることなく順調に業務に励んでいる。     ロ 契約社員    ・ 障害特性等について当社がよく把握していない解離性障害であったため、面接の際に本人に症状の確認をしたところ、「時々記憶が飛ぶが、すぐにもどる」との説明であった。その状況を十分に理解・把握できないまま雇用したことで、業務遂行に若干影響が出た。 5)雇用した感想・意見 ・ 2名の雇用を通じて、比較的軽い状態ならば、配慮を行うことで、組織の中で十分にやっていけると感じている。 ・ ただし、実際に雇用してみて初めてわかることが多く、配属先の指導的立場にある社員が戸惑うケースが多く発生した。ハローワークから紹介される段階で、より詳しい情報があれば、もう少し負担感は減じられただろう。 ・ ハローワークを通じて採用を行っているが、支援センターや地域障害者職業センター等と連携を取っていない場合は、ハローワーク自身で、個々人の障害特性や、職務と障害の適性を把握する等、きめ細かい対応をとってほしい。 6)コンサルタント所見   A社では、初めて雇用した2名の精神障害者を通じ、雇用継続への一定の手がかりを得た。それぞれの症状について、管理職が普段から細かに観察することにより正確に把握し、対応策をとるよう努めていることが、継続の鍵となっている。 A 特例子会社B社 1)会社概要 設立は平成13年、従業員は34名、うち、知的障害者31名(重度9名)、精神障害者は2名である。 2)雇用までの流れ・経緯 イ ハローワークに求人票を提出するとともに、支援センターから人材の推薦を受けた。 ロ トライアル雇用を実施、その後契約社員として採用した。 ハ 清掃、事務補助(メール便の配送、コピー、日常事務)業務を中心に、体調に配慮しつつ働いている。    3)定着への配慮 ・ トライアル雇用期間中に、本採用となった場合に実際に行うこととなる職務を体験することで、職務内容をきちんと理解させてから本採用とした。 ・ 体調不良等による急な休みがあることも承知のうえで受け入れており、急な休みをとっても、本人が「迷惑をかけている」と感じさせないよう、負担軽減に努めている。 ・ 体調が比較的安定している知的障害者とペアを組ませることで、1人が休んだ場合でも、もう1人は出勤しているという状態をつくっている。このように、不測の事態を避け、欠勤による影響を最小限に抑える等、障害の特性に合わせた業務配分・配置を心がけている。 ・ 時間に追われることを非常に苦手にしているので、時間の制約が少ない仕事や本人に直接プレッシャーがかからないような仕事を配分する等、調整を行っている。 ・ 業務の都合上、親会社や関係会社に出向かなければならないこともあるが、1人で行かせないようにする等、急激な環境変化にさらさないように努めている。 4)雇用している精神障害者の現状 ・ フルタイムを希望しているが、支援センターから「先走りする傾向がある」との助言があり、現在は様子を見ている段階である。本人からの申し出と会社での様子だけを判断材料にすることなく、支援センターと相談しながら大局的な判断を下せる状況にある。 ・ 職務内容と待遇・処遇が見合わない感があるが、週20時間勤務で障害者雇用率の算定対象になるということで、社内を説得し、雇用している。 5)雇用した感想 ・ 精神障害者の作業能力は一般的に高いが、体調不良による休みも多く、障害者雇用率算定対象の週20時間の短時間勤務でさえも継続的に就労することが難しいのが現状である。 ・ 勤務時間の柔軟性や、ワークシェアリングの形態を考える等、精神障害者の特性を考慮した柔軟な体制があれば、雇用も進むのではないかと期待している。個々人が勤務可能な時間数を自由に選択することで、社会復帰の道が開かれる。 ・ また、企業側も週20時間以下であっても、確実に出勤してきてくれる方が、業務の段取りや配分を行いやすく、業務への影響が少なく円滑に処理される。また、本人の負担感も軽減され、成果を確実に計算できることになるので、社内の理解も得やすくなる等、双方にとって良い結果が期待できる。   ・ 精神障害者の場合、手帳の更新が2年ごとなので、採用後手帳が更新されなくなることも考えて採用していかねばならない。ただし、採用後に復調した結果、手帳が更新されなくなった場合も、完全に健常者と同様の負荷をかけられるかというと疑問である。このようなことも、精神障害者の雇用がそれほど進んでいない原因の一つではないだろうか。 ・ 今後は、採用時に手帳を所持していた人が、採用後しばらく経過して手帳が更新されなくなった場合も、一定期間障害者雇用率の算定対象にする等の仕組みがあれば、企業として雇用しやすくなると感じている。 ・ 支援センターには社風や職務を理解してもらっており、全面的にお世話になっている。 支援センターで気づいた点等についてこまめに連絡があり、連携が非常にうまくいっていると感じている。   ・ 支援センターから受けた具体的な支援としては、業務開始時においては、実際に就労してもらう人の推薦、ジョブコーチとしての指導、生活面及び精神面でのサポート役としての定期的な見守り等であった。また、仕事の選定時においては、業務内容が障害者に向いているか、1人作業が可能か、仕事に穴をあけない体制づくりをどうするか等について、一緒に考えてもらった。そして、現在も、本人が定期的に支援センターに通い、職員と相談する、仲間と話し合いの機会を持つ等、支援センターの持つ機能を利用し、生活面、仕事面、精神面での安定を心がけてくれている。  6)コンサルタント所見 B社では、安定した継続雇用に向けて、配置や職務内容の工夫、支援センターの活用等を行っているが、勤務時間や手帳について精神障害者の就業実態に合った制度のあり方を深く考察し、悩みつつ活路を探っている。  B 特例子会社C社 1)会社概要 設立は平成5年、従業員141名、うち、身体障害者46名(重度43名)、知的障害者48名(重度8名)、精神障害者は4名である。 2)雇用までの流れ・経緯    イ 地域障害者職業センター、職業能力開発校を利用している人を中心に、採用活動を開始。    ロ 地域障害者職業センターの職務試行法、トライアル雇用を実施し、本人の適性を総合的に判断し、正式な採用とした。地域障害者職業センターからは、適性検査等の職業カウンセリングを受け、個性や特性について十分アセスメントされた人の推薦があったため、ミスマッチを極力避けることができた。   ハ 雇用形態、就業日数、賃金水準もすべて健常者と同じである。   ニ 職務は、一般事務、花卉栽培、花壇保守等である。 3)定着への配慮 ・ 職場定着までは、月1回程度、地域障害者職業センターの障害者職業カウンセラー同席のもと、定期的にケース会議を開催し、情報共有を行うとともに、今後の方針等について検討した。 ・ 本人を通して、産業医(精神科医)に対し、主治医と連携をとってもらうよう働きかけた。当社は、産業医から日常の雇用管理にかかる配慮事項について助言してもらう体制をとった。 ・ 一般社員を対象に、障害者雇用にかかる研修を年8回実施し、病状等について理解を深めている。 ・ 就業規則に短時間勤務の項目を追加し、精神障害者の特性に合わせた働きやすい環境整備を行うようにしている。 ・ 通院時間を確保し、体調の安定を心がけてもらっている。 ・ 定期面談、カウンセリングを実施し、体調や就業環境の把握に努めている。 4)雇用している精神障害者の現状   統合失調症やそううつ病の場合、一定期間集中的に支援することで、その時抱えている課題が解決したような感があるが、その状態が将来にわたって職場定着に繋がるとは限らない。就労のリズムがある程度確立されても、特に大きな原因もなく、崩れてしまうことがある。 5)雇用した感想     地域障害者職業センターや雇用開発協会の協力のもと、ケース会議等を開催、定着に向け連携している。採用時だけでなく、将来にわたって長く関係機関から協力を得られる体制や制度が必要である。       6)コンサルタント所見    C社では、産業医活用を含めた社内体制整備や支援機関との協力等により、4名の精神障害者の継続雇用を図っているが、安定した継続雇用には、将来にわたって長く関係機関から協力を得られる体制や制度が欠かせないと考えている。 C 特例子会社D社 1)会社概要 設立は平成15年、従業員は47名、うち、身体障害者19名(重度14名)、知的障害者8名、精神障害者は1名である。 2)雇用までの流れ・経緯   イ ハローワークより紹介を受けた。 ロ (財)東京しごと財団の障害者委託訓練、トライアル雇用を実施し、その後契約社員として採用した。   ハ 筆記試験と面接を総合的に判断のうえ、採用を決定した。 ニ 業務内容は、発送代行業務である。 ホ 就業日数、賃金水準等は健常者と同じである。 3)定着への配慮 ・ 本人の了解のもと、主治医から就労の際の注意点についてアドバイスを得る等、事前に社内体制を整えた。また、地域障害者職業センターで行われた「雇用管理サポート講習会」等、さまざまな講習会に参加し、精神障害に対する知識・理解を深めた。 ・ 服薬管理をきちんと行うよう、周囲で配慮している。 ・ 勤務時間等については、本人と相談しながら決定している。 4)雇用している精神障害者の現状 ・ 他の従業員とのコミュニケーションをとるのが苦手なようで、どのような形で組織内の一員としてうまくやってもらえるかが課題である。 ・ 突然休むことがあるため、期限の決まった仕事を配分しにくい。 ・ 突然の休みに対応するため、本人と相談して、休みの取り方や配置等を工夫し、業務に支障が出ないようにしていく必要を感じている。 ・ 相談で時間をとられることが多い。 5)雇用した感想・意見    ・ 社会適応訓練事業の協力事業所の認定を受ける等、積極的に関わるようにしている他、就労支援センターや、他企業からの会社見学を受け入れる等の協力を行っている。 ・ 主治医とも連絡をとりながら、本人がいかに継続して働いていけるか検討しているが、雇用管理に手間がかかる印象を持っている。 6)コンサルタント所見 D社は、精神障害者の雇用について、模索している段階にある。今後、何らかの形で活路が見出せるよう、支援機関や他社の事例等、必要な情報を提供していく必要があると考える。 D 特例子会社E社 1)会社概要   設立は平成9年、従業員は25名、うち、知的障害者16名(重度6名)、精神障害者は1名(知的障害との重複障害)である。 2)雇用までの流れ・経緯    イ 地域障害者職業センターを通じて応募があった。トライアル雇用を実施し、その後正社員として採用した。    ロ 障害の程度、年齢、業務遂行能力、意欲、熱意等を総合的に判断うえ、採用を決定した。 ハ 業務内容は、検品、包装である。 3)定着への配慮 ・ 通院時間を確保し、病状の安定に配慮している。 ・ 精神障害について、勉強会を開催している。 ・ 当該障害者の理解を深めるために、地域障害者職業センターに相談等を行っている。   ・ 定期面談を行う中で、状態を把握し、不満、問題点等を早期に把握するように努めている。 4)雇用している精神障害者の現状 ・ 症状のひとつに発作がある。きちんと服薬管理を行っているので、発作を起こしたことはないが、ボーっとしていたり、ニヤニヤしたり、怖い表情、独り言等が見られることがある。また、本人が「わかっています」「わかりました」と言っても、実際は完全には理解しきれていないことが多い。     ・ 読み書き、計算、知識等の学力はあるが、適切な場面で応用できないことがある。    ・ 自己の障害について十分に認識できていない状況が見られる。 5)雇用した感想・意見          精神障害について、ひとくくりで論じて良いのか、疑問を感じている。統合失調症、てんかん、うつ、そううつ等は基本的に別の症状であり、対応も別にしなければならない。目に見えない部分が多い障害だけに、それぞれ異なる障害であると考えていかないと、一般社会の理解が得られにくいと思う。     6)コンサルタント所見    E社の事例は、精神障害と知的障害との重複障害者の事例であり、それぞれの障害特性に対する理解・配慮に加えて、個々の状態に応じた理解・配慮が雇用継続の鍵であることが示されている。  E 特例子会社F社 1)会社概要 設立は平成16年、従業員は43名、うち、身体障害者28名、知的障害者11名(重度1名)、精神障害者は4名である。 2)雇用までの流れ イ ハローワークへ求人票を提出するとともに、連携している支援センターから人材の情報提供を受けた。 ロ 支援センター職員に同席してもらい、仕事内容、処遇等の会社説明を行った。 (支援センター職員に同席をお願いしたのは、雇用後の支援センターとの連携を考えてのことである。会社の状況を職員に直接聞いてもらうことにより、雇用後の問題にも適切に対処してもらえること、求職者(障害者)の安心感が増すこと、職務内容や勤務条件の誤解を防げること等のメリットがあるとの判断である。) ハ 支援センターのプログラムの一環として、雇用後実際に勤務を予定している職場で、1〜2週間職場実習を行った。 ニ 実習期間中に、人事担当者が本人と面談をする、周囲、同僚の反応を観察する等、適合性を判断して、本採用とした(現時点では、職場実習を行った者は全員本採用となっている)。    ホ 主要な業務は、契約書や保守記録等のスキャナーによる読み込み、整理、契約書の記載事項の点検等である。      3)定着への配慮    ・ 雇用者全員が自分自身の障害を他の従業員にオープンにすることを希望しているので、最低限のことについては、人事担当者から、上司、現場担当者に対して話している。病状の詳細等については、本人が直接職場で話し、周囲の理解を得る形にしている。   ・ 通院や服薬、のどが頻繁に渇くので水分の補給を行うこと等、体調維持のための方策については、優先すべき当然のこととして、周囲に気を使わず行うことができるようにしている。     ・ 採用時に保護者の職場見学会を実施し、就業環境、職務内容等への理解を深めるようにしている。     ・ 企業、保護者、支援センター、行政機関、地域障害者職業センターのジョブコーチと連携をとり、いつでも、誰かが見守ってくれるという安心感を与えるようにしている。      ・ 医療機関とのやりとりは支援センターにお願いし、企業から直接医療機関に連絡をとることは行っていない。 ・ 時間の制約や納期が厳しい業務、また急ぎの仕事や他人との連携で続けなければならない業務等については、本人がプレッシャーを感じやすいので、割り当てないようにしている。    ・ 雇用継続が第一であり、離職を避ける方策のひとつとして、残業はさせないようにしている。   4)雇用している精神障害者の現状 ・ 支援センターが求職者の病状、家庭環境、特性および自社の職務内容等を熟知しているため、そこの利用者を受け入れる場合はミスマッチがなく、当社、本人双方にとって満足できる結果となっている。信頼できる支援センターと連携することが、雇用・定着への重要な要因となっている。     5)雇用した感想 ・ 雇用前はマスコミ等で一部報道されている他害、自傷等について、上層部も雇用担当者自身も心配していた。しかしセミナーや研究会等で知識を深めていくうちに、そのような誤解はなくなり、ともかく一歩踏み出すということで1人雇用してみたら、思いのほか順調な経緯をたどり、成功であった。同僚も、当初はどのような会話をしたらよいのか等の懸念があったようだが、杞憂に終わった。精神障害者の特性(=プレッシャーに弱い)を理解すれば、職務は創出できるし、雇用も進むと感じている。   ・ ハローワークへの要望として、障害者雇用全般に言えることだが、求職者の個人の特性と職務の特性が合致しなければ、途中で辞めることになり、企業側が自信をなくし、従業員の心にも傷を残す結果となる。企業は雇用に真剣に取り組んでいるので、求職者、求人者双方の事情、職務等を把握して紹介して欲しい。機械的なマッチングでは、障害者の就職を実現させることは難しいと感じている。担当者の知識、障害者雇用への理解等に、人によって差がありすぎる。また、地域により企業との連携の考え方が異なるのか、ハローワークによって対応に差があり戸惑いを覚える。全国的に障害者雇用を行っているので、ハローワークである程度統一された対応をしてもらえれば、これまでの障害者雇用の経験を活かすことができる。 6) コンサルタント所見 F社は、地域障害者職業センター、支援センター等との緊密な連携体制のもと、マッチングから定着まで、安定して行っている。  F 特例子会社G社 1)会社概要 設立は平成11年、従業員は38名、うち、身体障害者1名(重度2名)、知的障害者35名(重度18名)、精神障害者は2名である。 2)雇用までの流れ・経緯 イ ハローワークに求人票を提出するとともに、支援センターから人材の推薦を受けた。 ロ トライアル雇用を実施し、その後契約社員として採用した。 ハ 補助食品工場のライン、メール便の発送、直営店の副店長等、特性に応じて、主に軽作業に配置している。  (現在、支援センター、学校の訓練の一環として実習生を年間50名程度受け入れているので、就職を希望する実習生を採用するようにしている。実習生の大半が当社への就職を希望しているので、選別に苦慮している。) 3)定着への配慮 ・ 障害種別にかかわらず、本人の適性に合った職務を提供している。当社の行うことは、就業環境の整備である。 ・ 食品関連のライン作業を希望した者に対して、衛生面を徹底的に指導した結果、問題なく職務を遂行している。どのようにすれば、本人の意向に合い、かつ企業としても問題のない形で仕事を行うことができるか考えるのが、企業の役割と考えている。 ・ 1名はかなり能力が高いので、現在の仕事内容では本人の能力を十分活かしきれていないように感じている。親会社への異動も視野に入れ、特例子会社の枠にあてはめず、より難しい仕事に就かせることによって、本人の能力向上も考えていきたい。 ・ 精神的に不安定な様子を感じた時には、支援センターに連絡を入れ、担当者による訪問やカウンセリング等をお願いし、早めに対処するようにしている。 ・ 休憩は、昼食時の1時間に加え、3時の休憩を15分間とる等、疲労が蓄積されないようにしている。  4)雇用している精神障害者の現状 ・ 現在、1名を現場の副責任者として配置しているが、全く問題がなく、責任者も任せられると感じている。ただし、責任者として完全に現場を任せてしまうと、本人を管理し何かあった際に対処する存在がいなくなる。体調や情緒面の不安がまだ残っているため、責任者として全て任せていくかは未定である。真面目なだけに、頑張りすぎてしまい、体調、症状が悪化してしまうことが心配される。 5)雇用した感想     ・ 精神障害者を雇用してみて、現状で特に問題は感じていない。 ・ 困ったときや、いざというときに頼りにしている。何かあっても支援センターが対処してくれることが、障害者雇用を進める上での安心感に繋がっている。 6)コンサルタント所見    G社では、実習制度の活用や支援センターと連携のもと、職務のマッチングに重点をおいて精神障害者雇用を進めている。 G 特例子会社H社 1)会社概要 設立は平成14年、従業員は54名、うち、身体障害者3名(重度2名)、知的障害者30名(重度20名)、精神障害者は3名である。 2)雇用までの流れ・経緯 (知的、身体、精神の全部の障害者を受け入れたいとの意向があった。ベーカリーとクリーニングの業務開始が時期的に重なり、人手を必要としていたことも精神障害者雇用に踏み切った一つの理由である。週20時間以上働くことが可能で、接客のできる人材を念頭におき、求人を行った。) イ 従業員である知的障害者にジョブコーチ支援制度を利用したことで、支援センターと関わり始めた。この時期とベーカリー、クリーニングの業務を開始した時期が重なり、精神障害者雇用も視野に入れ始めた。   ロ 面接会に参加し、面接を実施した。 ハ トライアル雇用を実施し、その後契約社員として採用した。 ニ ベーカリーの接客部門に配属、レジ、商品の袋詰め、トレーやトングの洗浄、パンのスライス等全般的にこなしている。 3)定着への配慮 ・ 体調の不安定さが見られるので、平均して1週間に20時間勤務するということを目標にしている。現在、採用後1年以上経過しているが、週20時間をかろうじて達成している状況である。 ・ 通院、服薬は優先的に行ってもらうようにしている。 ・ 1日5時間勤務であるが、途中に休憩を入れながら行っている。 ・ 支援センター、地域障害者職業センターの障害者職業カウンセラー等と連携をとりながら定着を図っている。 ・ 現場の管理責任者が月に一度、面談の時間を作り、体調や就業環境について問題はないか等の確認を行っている。 ・ 日々の業務の中では、本人からの体調不良の申し出を待たずに、管理責任者側が事前に本人の様子を察知して、業務調整や仕事の割り振りを変える等、本人に過度の負荷がかからないようにしている。また、管理責任者以外でも、誰かが必ず本人の状況を確認するように、店全体で見守るようにしている。 ・ 仕事に対する自己評価がかなり高く、自分がいなければ業務が回っていかなくなるとの思いが強いため、本人の自尊心を傷つけないように、一方で、無理が重なり体調悪化に繋がらないように、バランスをとりつつ、仕事を配分している。 ・ 注意するときは、事実のみを指摘し、何がどのようにできていないか、どうすればよいのかをわかってもらうような形にしている。 ・ 店内でイベントを行うと、一度に客が押し寄せることもあり、本人がやらなければという気持ちの焦りが先行し、しっかりと業務をこなせなくなることもある。そのような場合は、店の裏で他の仕事を行う等の指示を出しているが、本人の自覚もあるのか、特に問題とはなっていない。 4)雇用している精神障害者の現状 ・ 雇用前は、週20時間勤務はそれほど難しくないと考えていたが、実際はかろうじて達成している状況である。本人の体調を見て、本来業務の現場担当から裏方業務に変える等、状況に応じたきめ細かい配置を行い、週20時間を下回らないようにしている。 ・ 2名を採用して1年3ヵ月になる。支援センターによる本人に対する支援への報酬が1年3ヵ月以降は発生しない仕組みがあり、そのことをよく理解しており、支援センターを頼ることへのためらいや申し訳なさを感じている。申し訳ないと感じている分、さらに自分を追い込んでいるように見受けられる。実際に、1年3ヵ月経過後から、精神的不安定さが昂じてきているように感じ、再支援が必要な状況かどうか、慎重に観察している段階である。 5)雇用した感想 ・ 企業が戦力とするには、週20時間の勤務時間は必要である。接客の現場で働くことができる人材が必要なので、どのようなやり方が良いのか、お互いに試行錯誤している状況である。 ・ 精神障害者の場合、安定した状況に落ち着き、細かい目配りを必要としなくなるまでには、かなり時間を要すると感じている。 ・ 地域障害者職業センターについて、支援期間が終了した後十分なフォローがなく、障害者本人も企業も、孤立し取り残された印象を受けた、という経験をした。突発事項が発生したときや、専門的な相談が必要なとき等に、いつでも応えられる長期的な支援体制を整えて欲しい。 ・  ハローワークについて、担当者が短期間で異動してしまうため、関係づくりが困難であり、また担当者の異動とともに、対応の仕方が変わってしまうこともあるので、継続性を求める。 ・ 支援センターについて、ジョブコーチや担当者が期間経過後も立ち寄る、電話で相談にのる等の対応をしてくれているので、雇用が続いているというのが実感であり、大変感謝している。  6)コンサルタント所見 H社では、本人の希望と実際の勤務実態とのバランスに配慮しながら、3名の精神障害者の週20時間勤務を維持するべく、試行錯誤を行っている。支援センターの支援体制が雇用継続の大きな鍵となっている一方で、支援制度の限界も見えてきているため、今後ほかの機関や制度の利用も含めて、長期的かつ広範な支援体制を検討していく必要がある。 H 特例子会社I社 1)会社概要 設立は平成17年、従業員は37名、うち、身体障害者10名(重度4名)、知的障害者12名(重度2名)、精神障害者は5名である。 2)雇用までの流れ・経緯 イ 一般求人からの紹介、個人や医療機関等からの推薦を受けた。 ロ 面談の上、最初は、短時間勤務のパート社員として採用した。 ハ 職場に慣れた頃から、1時間単位で時間数を増やし、順調に推移した場合に、正社員とすることを目指している。 3)定着への配慮 ・ 体調に配慮し、安心して働けることを心がける。 ・ 「慌てず焦らず正社員をめざす」という方針で雇用している。体慣らしからはじめ、1時間単位で就業時間を延長している。 ・ 体調不良時には無理をしないこと、休むこと、勤務中に調子が悪くなったら、自己責任で相談員に伝えることを徹底している。 ・ 悩みや困ったこと等をいつでも相談できる環境を整え、健康に配慮をする。 ・ 対人関係に自信が持てない場合、本人の同意のもと、勤務時間を利用して、コミュニケーションの練習を行う。具体的には、認知行動療法のSST=Social Skills Training 技法を利用、個別に語り合える場を設けている。   ・ 業務内容として、なるべく期限がなく、過度のプレッシャーにならないものを選び、丁寧な仕事を目指す。   ・ 親会社、グループ企業等、関連会社から依頼された業務の請負に加え、関係部署との話し合い・調整を行いながら、特例子会社でできる仕事を切り出し、それを請け負う形で業務を創出している。具体的には、パソコン入力作業、封入・発送作業、ラベル貼り、制服管理、データ入力、退職者の書類準備、製本作業、各種原稿編集、校正、他課の繁忙時の補助等、多岐にわたっている。 ・ 現在5名の精神障害者を雇用しているが、10月から精神障害者を中心とした部署を新設し、マイペースで仕事に取り組むことのできる環境を提供している。 4)雇用している精神障害者の現状  ・ 真面目で着実に仕事をこなしている。 ・ 服薬管理の大変さ、薬の副作用による眠気との戦い、体調のコントロール、生活リズムの調整等、いろいろな事柄をクリアしつつ、前向きに頑張って働いている。     5)雇用した感想・意見      ・ これまでの人生でさまざまなつらい経験をされてきた人も多く、その経験の多くは個人が責任を問われる状況ではなく、社会全体の問題であることを痛感している。 ・ 今後も、就業環境を少しずつでも整え、精神障害者が長く働けるように支援をしていくつもりである。関係機関に対して、以下を要望したい。    イ 行政機関 ・ 自立支援法の就労支援の対象とならない障害者について、実態調査と雇用促進を行ってほしい。   ・ 職員によって、精神保健福祉分野への理解の差をかなり感じるので、担当者は一定水準の知識の習得に努めてほしい。 ・ パンフレット、講演会だけでないアウトリーチ方式、現場出張サービス等、現場にサービスを浸透させるような方法も試みてほしい。 ・ 雇用事業所、専門職向けの研修会を開催し、正しい知識の普及に努めてほしい。 ロ 支援センター  ・ 各市区町村の支援センターの機能の充実を望む。現在は、新たな就労に力が注がれているが、既に就労している人への支援体制の強化等の必要性を感じている。   ・ 福祉施設で提供する作業内容と企業での業務内容(実際の就労業務)が異なっていることを理解し、実務に役立つという視点に立った就労訓練の実施を望む。 ハ 医療機関   ・ 医師、看護師、薬剤師、作業療法士、精神保健福祉士等に対する障害者雇用に関する基礎知識の習得や、企業実態に対する理解をお願いしたい。 ・  障害者就労における、医療デイケアの役割の重視と強化をお願いしたい。(デイケアがうまく機能すれば、就労支援の大きな助けになると日頃から感じている) 6)コンサルタント所見 I社では、1時間という短い時間単位での段階的な勤務時間延長やパートタイム制度の活用等、正社員までのステップを工夫しているほか、対人関係に自信がもてない場合のコミュニケーション法の練習等、多様な角度から職場適応への配慮をすることで、5名の精神障害者の継続雇用を図っている。 ? 特例子会社J社 1)会社概要 設立は平成13年、従業員は151名、うち、身体障害者51名(重度32名)、知的障害者21名(重度1名)、精神障害者は51名である。 2)雇用までの流れ・経緯 イ 委託訓練事業を行っているので、その修了者の中の希望者を採用する、また支援センターから推薦を受ける、一般求人からの紹介等、採用経路はさまざまである。 ロ 精神障害者の能力の高さ、業態から、IT関連業務に限定。1週間実習を行い、技能や現場への適応能力等を考慮し、トライアル雇用を実施、その後本採用としている。    3)定着への配慮   以下の点に配慮し、離職率4%以下を達成している。    ・ 短時間勤務から始め、1ヵ月単位で変更可能とする。(カウンセラー等を介して状況をよく確認してから、徐々に延長する)    ・ 時間外労働はほとんどさせない。やらなければならない場合は、事前に計画する等、変則的にならないようにする。(精神障害者は他の従業員より勤務時間を短く設定しているので、時間外労働を行っても他の従業員の所定労働時間内にはおさまっている)    ・ 体調が優れないときは、積極的にフレックス制度を利用する。 ・ チーム作業を基本にし、急な休みにも対応できる体制を作っている。 ・ 昇進、役職付けによる過度の緊張や負担感を与えないよう、慎重に判断している。 ・ 厳しいノルマではなく、自主的な目標を掲げるように指導する。 ・ 潜在能力を最大限発揮させるため、長所を引き出し、失敗は責めない。 ・ 希望を優先したうえで、適材適所の配置を心がける。 ・ 個人が抱えているストレスを把握し、そのストレス要因をつくらないように配慮している。 ・ あいまいな指示を与えないようにする。 ・ 仕事がないとき(昼休み等)にも調子を崩すことがあるので、注意する。 ・ 本人の同意のもと、障害の内容をできるだけ社内に開示している。 ・ 社内にカウンセラー(社員が兼務)役を置き、生活面、仕事面のあらゆる相談に対応するとともに、上司もよく話を聞くようにしている。    ・ 暖かい職場の雰囲気作りを心がける。 ・ 職務内容は、ホームページ作成、データエントリ、サーバー管理、機器販売、ダイレクトメールの作成・発送、ASPサービス、名刺作成、各種印刷、生命保険・損害保険代理店業務、不動産管理等、納期が比較的緩やかなものにしている。 ・ 委託訓練の講師は、カウンセラーである健常者1名の他は、精神疾患をもった社員4〜5名で行っている。精神障害者の職域の幅を広げるとともに、受講生がやればできるという希望、目標を感じ、就労意欲を持たせる要因の一つとなっている。 4)雇用している精神障害者の現状 ・ 感受性が鋭敏で、生真面目な性格の人が多い。就職という大きな節目やそれに伴う環境の変化は、症状に少なからず影響を与えている。就職に伴うさまざまな不安や心配事、気分・体調の変化について、個別の面接(カウンセリング)により「よく聴き、理解して、必要な配慮を行う会社の対応」こそが、最も効果的なサポートである。     ・ 精神障害者の多くは、「会社の中に、一人でも自分の病気について理解してくれる人がいれば、働いていける」と言っている。これは、就職して病気と前向きに付き合うためには、会社の理解と配慮が不可欠なことを意味している。こういう部分を理解し、配慮しなければならないという点を除けば、健常者と同じであり、能力もあり、仕事への真剣さでは健常者を上回っている場合が多い。       ・ 情報化社会がますます進展することが予測されるので、委託訓練等でパソコンスキルを習得することで、職域が拡大され、雇用率が伸びると感じている。 5)雇用した感想      ・ 最近、精神障害者の採用が特に増えている。これは潜在能力をもった精神障害者が多い反面、一般企業になかなか思うように就職できない状況の現れではないかと感じる。     ・以下、行政機関等への要望である。 イ 現在、精神障害者の職場適応を促進するための支援法が明確に確立していない中で、実際に雇用が始まっているのが現状だと思うので、まず確立して欲しい。今後、精神障害者への支援法が整備され、国全体に波及し、認識が深まるような施策を望んでいる。 ロ 従来の福祉の支援法では、精神障害者にそのまま通用しないのは言うまでもない。支援法に関する明確な方針を厚生労働省に打ち出して欲しい。「精神疾患をもつ人々に対する就労支援について、どうしたらよいのかわからない」という福祉関係者、就労支援者、障害者教育機関が多い現状があることを認識して欲しい。     ハ 今後、精神障害者への理解が深まってくると思われるので、行政機関、支援センター、企業等が一体となって就労支援に邁進できる体制を整えてほしい。  6)コンサルタント所見    精神障害51名を雇用しているJ社の取組は、一見すると他社には真似ができないと思われるかもしれないが、一つひとつの取組の集大成ということである。特に、カウンセリングにより「よく聴き、理解して、必要な配慮を行う」という対応は、他の企業にも参考になる取組であると思われる。 (参 考) J 一般企業K社(小売業) ※K社は特例子会社ではないが、今回取り上げた特例子会社10社同様に、熱心に精神障害者雇用に取り組んでいる事例のため、参考として紹介する。 1)会社概要    設立は昭和23年、従業員は2649名、うち、身体障害者24名(重度14名)、知的障害者42名(重度12名)、精神障害者は27名である。 2)雇用までの流れ・経緯 イ 最初は、グループ就労モデル事業実施期間中に、現場から是非雇用したいとの声があったため、3ヵ月後にパートとして雇用した。その後は、ハローワークの合同面接会等を利用している。 ロ 体力、通勤時間、職務への適合性、意欲、熱意等で総合的に判断して、採用している。(採用面接には時間をかける) ハ 職務、待遇はすべて健常者と同じである。職務内容は、在庫管理、陳列、販売管理、仕分け等である。    3)定着への配慮 ・ 採用面接時に、本人から配慮事項を聞きとる。そして、配属先の責任者に本人の障害特性、配慮事項等を伝え、後は現場に任せている。 ・ 通院時間を確保するようにしている。 ・ 勤務時間帯や時間数は、本人の希望を最優先にして決定している。 ・ 職務の変更、配置替え、昇格等は本人に十分納得してもらい、了解を得た上で行っている。 ・ 健常者のパート従業員と同様、年に4回、契約更新・評価の面談を行っている。 ・ 繁忙期は他のパート従業員と同様に時間外勤務、休日出勤等もあるが、代休を取らせる等、総枠で決められた労働時間を超えないようにしている。 ・  個人の状況に合わせた目標設定を行っている。(他のパート従業員より低めに設定する等の配慮は行っている) ・ 人間関係を苦手とする精神障害者には、まず仕事をしっかりとやることを心がけるように話す。仕事をきちんと行っていれば、周囲に自然に仲間として受け入れてもらえることについて、助言を行っている。 4)雇用している精神障害者の現状 ・ 配慮しなければならない面は多少あるが、健常者と同じ職務、勤務体系で、問題なく働いている。    ・ 急な休みもなく、執務態度も真面目で成果を挙げており、十分戦力となっている。 5)雇用した感想   ・ 今後も障害の有無に関わらず、必要な職務に適切な人員配置をしていく方針である。(雇用率とは関係なく雇用している) ・ 行政機関には、精神障害者に対する偏見が払拭されるような方向に社会が進んでいくよう、働きかけてほしい。 ・ 企業の障害者雇用に理解を示し、障害者の面接には公民館の利用を許可する等の配慮が得られるとありがたい。 (2)  個人別事例(22名) 表3 Aさん 性別 男性 病名 強迫性障害 部署 営業部 職務 名刺作成 雇用形態 正社員 就業日数 休憩 1時間/日 賃金 月給制 賃金水準 健常者と同等 採用基準 健康状態、体力、障害の程度、年齢、協調性、意欲、熱意 コミュニケーション能力 配慮事項 (社員向) 特になし (本人向) 勤務時間(雇用当初のみ) 支援制度・ トライアル雇用 体制の活用 研修・指導 指導担当者配置 採用、定着時等に ハローワーク 活用した関係機関 Bさん 性別 女性 病名 解離性障害 部署 総務部 職務 データ入力等 雇用形態 契約社員 就業日数 週4日 計31時間 休憩 1時間/日 賃金 月給制 賃金水準 健常者と同等 採用基準 健康状態、体力、障害の程度、年齢、協調性、意欲、熱意 コミュニケーション能力 配慮事項 (社員向) 特になし (本人向) 通院時間の確保 支援制度・ なし 体制の活用 研修・指導 なし 採用、定着時等に ハローワーク 活用した関係機関 Cさん 性別 男性 30歳代 病名 統合失調症 部署 業務課 職務 一般事務 雇用形態 正社員 就業日数 休憩 1時間/日  賃金 月給制    賃金水準 健常者と同等  採用基準 健康状態、体力、障害の程度、業務遂行能力、意欲、熱意 配慮事項 (社員向) 年8回社員向け研修実施、就業規則に短時間勤務の項目追加 (本人向) 定期面談、 カウンセリング、精神科医と産業医との連携 支援制度・ 特定求職者雇用開発助成金  トライアル雇用 体制の活用 社内のジョブコーチ(第2号職場適応援助者)が中心となり、月1回ケース会議実施 研修・指導 OJT、新入社員教育 採用、定着時等に 地域障害者職業センター、職業能力開発校、雇用開発協会 活用した関係機関 Dさん 性別 男性 30歳代 病名 統合失調症 部署 園芸課 職務 花卉栽培、花壇保守 雇用形態 正社員  就業日数 休憩 1時間/日 賃金 月給制    賃金水準 健常者と同等  採用基準 健康状態、体力、障害の程度、業務遂行能力、意欲、熱意 配慮事項 (社員向) 年8回社員向け研修実施、就業規則に短時間勤務の項目追加 (本人向) 定期面談、 カウンセリング、精神科医と産業医の連携 支援制度・ 特定求職者雇用開発助成金  トライアル雇用 体制の活用 社内のジョブコーチ(第2号職場適応援助者)が中心となり、月1回ケース会議実施 研修・指導 OJT  採用、定着時等に 地域障害者職業センター、医療機関、雇用開発協会 活用した関係機関 Eさん 性別 女性 20歳代 病名 統合失調症 部署 職務 雇用形態 契約社員 就業日数 週4日 計20時間 休憩 0.75時間/日 賃金 日給制 賃金水準 健常者と異なる 採用基準 配慮事項 (社員向) 特になし (本人向) 定期面談、勤務時間、職務の工夫、通院時間の確保 支援制度・ 外部のジョブコーチ及び相談員、社内の相談員 体制の活用 研修・指導 OJT、OFF−JT 採用、定着時等に ハローワーク、地域障害者職業センター、市役所福祉課 活用した関係機関 Fさん 性別 男性 20歳代 病名 統合失調症 部署 職務 雇用形態 契約社員 就業日数 週4日 計20時間 休憩 0.75時間/日 賃金 日給制 賃金水準 健常者と異なる 採用基準 配慮事項 (社員向) 特になし (本人向) 定期面談、勤務時間、職務の工夫、通院時間の確保 支援制度・ 外部のジョブコーチ及び相談員、社内の相談員 体制の活用 研修・指導 OJT  採用、定着時等に ハローワーク、域職障害者職業センター 活用した関係機関 Gさん 性別 男性 30歳代 病名 統合失調症 部署 職務 雇用形態 契約社員 就業日数 正社員と同じ (週5日 計40時間) 休憩 0.75時間/日 賃金 日給制 賃金水準 健常者と異なる 採用基準 配慮事項 (社員向) 特になし (本人向) 定期面談、勤務時間、職務の工夫、通院時間の確保 支援制度・ 外部のジョブコーチ及び相談員、社内の相談員 体制の活用 研修・指導 OJT、OFF−JT 採用、定着時等に ハローワーク、地域障害者職業センター 活用した関係機関 Hさん 性別 男性 30歳代 病名 パニック障害 部署 職務 雇用形態 契約社員 就業日数 正社員と同じ (週5日 計40時間) 休憩 0.75時間/日 賃金 日給制 賃金水準 健常者と異なる 採用基準 配慮事項 (社員向) 特になし (本人向) 定期面談、勤務時間、職務の工夫、通院時間の確保 支援制度・ 外部のジョブコーチ及び相談員、社内の相談員 体制の活用 研修・指導 OJT、OFF−JT 採用、定着時等に ハローワーク、地域障害者職業センター 活用した関係機関 Iさん 性別 男性 20歳代 病名 抑うつ 部署 発送代行チーム 職務 発送代行業務 雇用形態 契約社員 就業日数 正社員と同じ  休憩 0.75時間/日 賃金 日給・月給制 賃金水準 健常者と同等 採用基準 配慮事項 (社員向) 特になし (本人向) 服薬管理、勤務時間 支援制度・ 障害者委託訓練、特定求職者雇用開発助成金、トライアル雇用 体制の活用 研修・指導 OJT 採用、定着時等に ハローワーク、医療機関(主治医) 活用した関係機関 Jさん 性別 男性 病名 てんかん(知的障害と重複) 部署 業務課 職務 検品、包装 雇用形態 正社員 就業日数 正社員と同じ (週5日 計37.5時間) 休憩 0.75時間/日 賃金 日給制 賃金水準 健常者と異なる 採用基準 障害の程度、年齢、業務遂行能力、意欲、熱意 配慮事項 (社員向) 特になし (本人向) 服薬管理、定期面談、通院時間の確保 支援制度・ 特定求職者雇用開発助成金、トライアル雇用 体制の活用 研修・指導 OJT 採用、定着時等に 地域障害者職業センター、障害者就業・生活支援センター 活用した関係機関 Kさん 性別 男性 30歳代 病名 そううつ病 部署 職務 軽作業 雇用形態 正社員 就業日数 休憩 1.25時間/日 賃金 月給制 賃金水準 健常者と異なる 採用基準 健康状態、体力、意欲、熱意 配慮事項 (社員向) 特になし (本人向) 特になし 支援制度・ 特定求職者雇用開発助成金、トライアル雇用 体制の活用 社内の相談員 研修・指導 OJT 採用、定着時等に 障害者就業・生活支援センター 活用した関係機関 Lさん 性別 男性 30歳代 病名 統合失調症 部署 職務 軽作業 雇用形態 正社員 就業日数 休憩 1.25時間/日 賃金 月給制 賃金水準 健常者と異なる 採用基準 健康状態、体力、意欲、熱意 配慮事項 (社員向) 特になし (本人向) 特になし 支援制度・ 特定求職者雇用開発助成金、トライアル雇用 体制の活用 社内の相談員 研修・指導 OJT 採用、定着時等に 障害者就業・生活支援センター 活用した関係機関 Mさん 性別 女性 30歳代 病名 統合失調症 部署 事業部 職務 販売員 雇用形態 契約社員 就業日数 週5日 計20時間 休憩 0.5時間/日 賃金 時給制 賃金水準 健常者と異なる 採用基準 業務遂行能力、協調性、意欲、熱意、通勤経路・時間 コミュニケーション能力、薬等の自己管理・自己申告能力 配慮事項 (社員向) 社員向け障害特性等の研修 (本人向) 定期面談、勤務時間 支援制度・ 特定求職者雇用開発助成金、トライアル雇用、障害者委託訓練 体制の活用 外部および社内のジョブコーチ(第2号職場適応援助者)、相談員 研修・指導 OJT 採用、定着時等に ハローワーク、地域障害者職業センター、精神障害者就労支援機関 活用した関係機関 Nさん 性別 男性 20歳代 病名 統合失調症 部署 事業部 職務 販売員 雇用形態 契約社員 就業日数 週4日 計20時間 休憩 0.5時間/日 賃金 時給制 賃金水準 健常者と異なる 採用基準 業務遂行能力、協調性、意欲・熱意、通勤経路・時間 コミュニケーション能力、薬等の自己管理・自己申告能力 配慮事項 (社員向) 社員向け障害特性等の研修 (本人向) 定期面談、勤務時間 支援制度・ 特定求職者雇用開発助成金、トライアル雇用、障害者委託訓練 体制の活用 外部および社内のジョブコーチ(第2号職場適応援助者)、相談員 研修・指導 OJT 採用、定着時等に ハローワーク、地域障害者職業センター、精神障害者就労支援機関 活用した関係機関 Oさん 性別 女性 30歳代 病名 てんかん 部署 サービス課 職務 相談員 雇用形態 正社員 就業日数 休憩 1.3時間/日 賃金 月給制 賃金水準 健常者と同等 採用基準 業務遂行能力 配慮事項 (社員向) 特になし (本人向) 服薬管理、通院時間の確保 支援制度・ 特になし 体制の活用 研修・指導 特になし 採用、定着時等に ハローワーク、医療機関 活用した関係機関 Pさん 性別 女性 20歳代 病名 統合失調症 部署 サービス課 職務 入力作業他 雇用形態 正社員 就業日数 休憩 1.3時間/日 賃金 月給制 賃金水準 健常者と同等 採用基準 業務遂行能力 配慮事項 (社員向) 特になし (本人向) 定期面談、カウンセリング、勤務時間(当初は短時間から)、通院時間の確保 支援制度・ 必要に応じた面談とSSTの実施 体制の活用 研修・指導 OJT(課全員が精神障害者) 採用、定着時等に ハローワーク、医療機関 活用した関係機関 Qさん 性別 男性 30歳代 病名 部署 職務 事務(郵便の配布、書類の電子化など) 雇用形態 パート・アルバイト 就業日数 週4日 計24時間 休憩 1時間/日 賃金 時給制 賃金水準 採用基準 業務遂行能力、意欲、熱意 配慮事項 (社員向) 特になし (本人向) 定期面談、通院時間の確保、勤務時間(体調を最優先) 定期的に支援センターに通所し、面談を行う 支援制度・ トライアル雇用 体制の活用 研修・指導 外部のジョブコーチ 採用、定着時等に 障害者就業・生活支援センター 活用した関係機関 Rさん 性別 女性 30歳代 病名 部署 職務 事務 雇用形態 パート・アルバイト 就業日数 週4日 計20時間 休憩 1時間/日 賃金 時給制 賃金水準 採用基準 業務遂行能力、意欲、熱意 配慮事項 (社員向) 特になし (本人向) 通院時間の確保、勤務時間(体調を最優先) 支援制度・ トライアル雇用 体制の活用 研修・指導 外部のジョブコーチ 採用、定着時等に 障害者就業・生活支援センター 活用した関係機関 Sさん 性別 男性 30歳代 病名 統合失調症 部署 物流部 職務 加工品の仕分け、在庫管理 雇用形態 パート 就業日数 週5日 計35時間 (当初は週25時間) 休憩 1時間/日 賃金 時給制 賃金水準 健常者と同等 採用基準 健康状態、体力、意欲、熱意 配慮事項 (社員向) 個人の障害特性、注意点等を責任者に伝える (本人向) 通院時間の確保、勤務時間 支援制度・ 社内相談員の配置 体制の活用 研修・指導 OJT 採用、定着時等に 活用した関係機関 Tさん 性別 女性 30歳代 病名 統合失調症 部署 店舗 職務 商品の陳列、販売管理 雇用形態 パート 就業日数 週4日 計16時間 休憩 なし 賃金 時給制 賃金水準 健常者と同等 採用基準 健康状態、体力、意欲、熱意 配慮事項 (社員向) 個人の障害特性、注意点等を責任者に伝える (本人向) 通院時間の確保、勤務時間 支援制度・ ジョブコーチ、社内の相談員 体制の活用 研修・指導 OJT 採用、定着時等に ハローワーク、障害者就業・生活支援センター 活用した関係機関 Uさん 性別 男性 30歳代 病名 統合失調症 部署 店舗 職務 商品化、陳列 雇用形態 パート 就業日数 週5日 計30時間 休憩 1時間/日 賃金 時給制 賃金水準 健常者と同等 採用基準 健康状態、体力、意欲、熱意 配慮事項 (社員向) 個人の障害特性、注意点等を責任者に伝える (本人向) 通院時間の確保、勤務時間 支援制度・ 障害者委託訓練 体制の活用 社内相談員の配置 研修・指導 OJT 採用、定着時等に ハローワーク、共同作業所 活用した関係機関 Vさん 性別 女性 30歳代 病名 統合失調症 部署 店舗 職務 商品陳列・販売管理 雇用形態 パート・アルバイト 就業日数 週4日 計14時間 休憩 なし 賃金 時給制 賃金水準 健常者と同等 採用基準 業務遂行能力、意欲、熱意 配慮事項 (社員向) 個人の障害特性、注意点等を責任者に伝える (本人向) 通院時間の確保、勤務時間 支援制度・ 外部ジョブコーチ、社内の相談員 体制の活用 研修・指導 OJT 採用、定着時等に 地域障害者職業センター 活用した関係機関 4.精神障害者の就労支援の促進について 〜コンサルタント総合所見〜 精神障害者が障害者雇用率の算定対象となってまだ日も浅いこと等から、精神障害者の雇用はそれほど進んではいないのが現状である。障害者の受入れ体制が整っている特例子会社においても、精神障害者の就労は、身体障害者、知的障害者に比べてまだ進んでいない。そのような中、障害者雇用に熱心な一部特例子会社において、精神障害者を雇用し、定着に向けて取り組んでいる事例調査を踏まえ、一般企業も含めたすべての企業における精神障害者の雇用促進に向けて必要と思われる事項について、取りまとめたものである。 (1) 就労を希望している精神障害者に求められること @ 精神障害者の多くは、服薬管理、通院治療等が必要で、体調の安定を図ることが第一である。仕事をするということは、制約された条件のもと、一定の成果を継続して出す必要がある。そのためには、まず体調を安定させ、決められた時間数を出勤できるような状況にする必要がある。 A 仕事は単独で完結するものではない。自分の業務の前後を誰かが受け持ってくれ、  職場の構成員一人ひとりの作業の集積が成果となり、仕事をするとはその繰り返しである。つまり、決して一人ですべてを背負っているわけでもなく、また一人だけなら手を抜いても構わないということではないのである。そのためには、仕事上必要な情報は全員で共有することや、自分の前後の工程の進捗状況等にも気持ちを向けていくこと等が求められる。障害をオープンにして就職した方がクローズにして就職するよりも定着率が良いと言われているが、それは、企業に自分の状態を理解してもらうことにより、適正な配置や仕事の配分等の配慮が得られやすく、安定した体調の維持に繋がりやすいからである。 B  職場とは、仕事だけをしている場ではない。人間が集まって成り立っている場所であるからには、そこは一つの社会である。その中でお互いに理解し合い、助け合い、自分の意見を述べ、他人の意見に耳を傾け、お互いがお互いを尊重し合うことが必要である。自分の足りないところは他人に補ってもらい、他人の不得意な分野は自分が補うという共助の精神と働きたいという意欲が職場には不可欠である。このようなことを予め理解し、そのために自分がどうあらねばならないかをきちんと踏まえて、その中で自分なりの成果をあげていく、という気持ちを持って就労に向けて歩き出していくことが大切である。 C 就労や定着を果している精神障害者の多くは、生活を安定させ、仕事をするという意味を理解し、企業での教育を受け入れられる素地を整えた、いわゆる「職業準備性」を整えたうえで、就労を開始している。そこに至るまで、障害者就業・生活支援センター及びその他の地域支援機関(以下、「支援センター」という)、地域障害者職業センター(以下、「職業センター」という)、医療機関等多くの機関で、実習や支援を受けている場合が大半である。 例えば、支援センターを利用して生活の安定のための訓練を受け、ある程度の期間が経過した後、企業内で就労に向けた委託訓練を受け、就労に至ったという人も増えてきている。その多くが比較的順調に定着しており、採用した企業からの評判も高い。このような取組も、今後の選択肢の一つとして大いに活用されていくことが望まれる。 (2) 企業に求められること @ 障害者雇用というと、特別なことと考える企業も多いが、基本はその人に合った就業環境を整えるということである。精神障害者を雇用し、戦力としている企業の多くは、障害の有無に目を向けるのではなく、その人が何をできるか、何を期待できるかということに着目して教育訓練を行っている。確かに、仕事の切り出しや創出等が必要で、就業環境を整えるのに時間がかかる場合もある。しかし、このような現場における創意工夫が企業全体の仕事の手順の効率化や業務見直しに繋がることも多く、決して無駄な作業とはならないといえる。 A 採用には、そもそもリスクやコストが伴うものである。新卒一括採用、中途採用等の健常者を対象にした採用でも、リスクやコストは発生している。障害者採用だけ、リスクやコストをゼロにできるような方策はない。それをどう吸収し、どう活かすかは、企業の長年の文化であり、企業力の一部である。実際に精神障害者を採用した企業からは、「職場の雰囲気が明るくなった」、「思っていたより成果を出している」、「相手を思いやる気持ちが醸成され、チームワークが良くなった」等の感想が得られている。現実の社会を見渡してみると、社会を構成しているのはいろいろな個性、特徴、疾病、障害を抱えた老若男女である。企業は社会の公器であると考えるのならば、その社会の縮図が職場に実現されるのが当然というべきではなかろうか。単に障害者雇用率を達成するためという消極的な考えから抜け出し、企業の社会的使命と考え、積極的に障害者雇用に取り組む姿勢の中から、新たな道が開けてくると考える。 B ただし、熱意だけで雇用は進むものではない。現に、精神障害者を雇用し、定着に向けた取組を行っている企業は、事前に就業環境の整備を行っている。各企業ともその取組が就労に向けての一時的なものではなく、定着を目指した長期的な取組であるということが共通している。具体的には以下の取組があげられる。 ・他の社員に対して、精神障害について理解を深める事前研修を行う ・服薬や通院時間を管理する ・時間的制約の厳しい職務への配置を避ける ・上司が定期面談を行い、体調や仕事の状況を細かに把握する ・カウンセリングの機会を設ける ・支援センター、職業センター、医療関係等の関係機関と連携をとる また、当然のことながら、障害の有無にかかわらず、適正に評価していくことが必要である。 (3) 支援センターに求められること @ 支援センターについては、採用時や定着時等に活用した関係機関として名前をあげる企業も多く、採用後もきめ細かい支援を継続する点に対し、評価している企業も多い。 精神障害者の雇用を促進するうえでは、支援センターを中心に、就労する者、企業、全員が満足のいく就労支援の方向性をより一層強固にしていくことが望まれる。 A 支援センターの中には、就労支援の経験がまだ浅いことから、企業の実態に対する理解が不足しているところも見受けられる。支援センターが、企業の実態や働くとはどういうことか等について、今一度確認したうえで支援を行うことで、より一層雇用のミスマッチや早期離職等が避けられることなる。  現在、多くの支援センターが清掃、軽作業、事務補助を中心とした訓練を行っているが、職域をその分野に限定する必要はない。企業では今何が求められているのか、一般的に必要とされている技術は何かの視点を持ちながら、精神障害者の特性である易疲労性、体調の安定を維持することの困難さ、時間的制約下での作業との相性等を勘案し、就労訓練における職域拡大を行っていく必要がある。 まだ多くはない事例ではあるが、ある特例子会社では、ソフトウェアを使わないホームページ作成、ソフト作成の受託作業への従事、訓練事業の講師等、情報化時代の流れを捉えた職域拡大に成功している。雇用されている精神障害者の体調や業務量の管理、就労環境の整備等に十分配慮しているのは、言うまでもないことである。精神障害者の雇用には、ジョブコーチ、管理者等、人的コストがかかる面も否定できない事実である。そのコストの高い従業員に付加価値の高い仕事を適切に割り当てることで、この会社は企業側、従業員側ともにWIN−WINの関係を築いている好事例といえる。 また、別の特例子会社では、花卉栽培を事業にしており、付加価値の高い高級品種を栽培することで、収支の改善に取り組んでいる。 以上のような企業の視点を支援センターがもつことで、就労に向けてどのような訓練を行っていけばよいのかということについて、理解が深まるであろう。 (4) 医療機関に求められること   @ 精神障害者が就労を継続するうえで、体調の安定は重要であり、それには医療機関の力が不可欠である。 就労した後は、通勤時間を含めて起きている時間の多くを職場で過ごすことになるが、職場では、手探りをしながら精神障害者に対する理解を進めている場合が多い。精神障害者の状態や配慮事項は、雇用を促進するうえでの大きな要素となるにもかかわらず、個人情報保護のもとに、必要以上に企業に提供されていない状況もうかがわれる。雇用管理上必要な情報については、本人の同意が得られる範囲において、できるだけ多く企業にも提供されることが必要である。 A 医療機関によって、就労可能という判断にかなり差が見られる。企業で働くということはどういうことなのかということについて理解を深めたうえで、判断することが求められる。医療機関から就労可能と診断されたのに、就労に結びつかない、あるいは就労できてもすぐ辞めざるを得ない状況は、企業や支援者はもちろん、本人にとってもどうしたらよいかわからない状況であり、病状の悪化に繋がる場合もある。何が本人のためになるか、慎重に見極めることが望まれる。 また、個別の企業の立場に立ち、その企業の実態をよく理解した精神科の医師が、産業医として企業に助言を与えることが重要であり、そのような体制の充実が切に望まれる。 (5) 行政機関に求められること   @ 行政の施策、取組により、精神障害者の雇用がここ数年で着実に実績をあげている。企業、就労支援機関、医療機関等における精神障害者の就労に向けたさまざまな取組は、背後に行政機関の存在があるからこそ成り立っている。しかし、一方で、地域や担当者によって対応に差があったり、手続きに時間がかかる場合が見られることがある。精神障害者の就労は一過性のものではなく、支援が長期にわたること、適切なタイミングで必要な支援がすぐに受けられることが望ましいこと等は、関係機関が声をそろえて言っている。地域や担当者の違いにかかわらず、様々な有用な支援制度や支援のあり方について、一層理解を深めることが望まれる。 A ハローワークの障害者の職業紹介部門においても、地域や担当者の違いにかかわらず、障害者の就労支援への理解を深める研修等を徹底することが望まれる。また、専門的知識のある担当官が地域の実情に精通した頃に異動することが多く、地域の他機関との関係構築をまた一から始めなければならない場合も多い。一般の職業紹介部門の人事異動とは別の配慮をした人事異動システム、担当者が異動する際は後任者へ時間をかけて十分に引き継ぎを行うこと等、継続性を意識した対応が望まれる。 (6) 最後に 精神障害者と企業、上記に述べた関係機関等がそれぞれ適切な取組を継続するとともに、支援のネットワークを形成することが、雇用促進の鍵になるといえる。 5.専門委員の所属する各機関の取組 (1) 職業安定機関 東京労働局職業安定部職業対策課  障害者雇用対策係長 伊藤 慎吾 @ 概 況  精神障害者については平成18年4月から実雇用率にカウントされることとなり、平成18年6月の雇用状況報告において、初めてその雇用状況が把握された。平成19年6月の状況については、去る11月20日に報道発表がなされたところであるが、今年の6月時点では全国で3,733.0人の精神障害者が雇用されており、昨年の1917.5人と比較して94.7%の増加となった(短時間労働者である精神障害者は0.5人とカウントされるため、小数点以下第1位まで表示している)。身体障害、知的障害、精神障害の3つの障害を合計した全体の増加率は6.7%で、近年の実績の中では高い水準となっているが、精神障害者の増加は、この水準をはるかに上回っている。   また、このうち調査時点の前の1年間に新たに雇用された人は1325.0人で、こちらについても昨年の567.0人と比較して133.7%の増加となり、障害者全体の増加率14.0%を大きく上回っている。   ただし、雇用障害者、302,716.0人の障害別の構成比を見ると、身体障害者は251,165人で83.0%、知的障害者は47,818人で15.8%、精神障害者は上述のとおり3,733.0人で1.2%となっている。   障害者雇用促進法の改正法施行から2年という短い期間の中で、精神障害の雇用は急激に拡大しているものの、全体に占める割合はまだ小さなものに留まっているといえる現状である。 A 企業規模別の状況   企業規模別に雇用状況を見ると、1,000人以上規模の企業が全体の47.2%にあたる障害者を雇用しており、精神障害者についても他の企業規模を上回る1,387人を雇用している。   障害種別の構成比では、精神障害者の占める割合が50〜99人規模の企業で1.7%と最も高く、1,000人以上規模の企業で1.0%と最も低くなっているが、改正法施行から2年という期間も考慮すると、今後、傾向に変化が現れるかもしれない。 表4 企業規模別、障害種別の雇用障害者数と構成比(平成19年6月1日現在) 企業規模 雇用障害者数 構成比 身 体 障害者 知 的 障害者 精 神 障害者 計 身 体 障害者 知 的 障害者 精 神 障害者 計 50〜99人 19,304 8,454 468.5 28,226.5 68.4% 30.0% 1.7% 100.0% 100〜299人 49,706 11,840 921.5 62,467.5 79.6% 19.0% 1.5% 100.0% 300〜499人 24,714 4,767 469.0 29,950.0 82.5% 15.9% 1.6% 100.0% 500〜999人 33,795 5,015 487.0 39,297.0 86.0% 12.8% 1.2% 100.0% 1,000人以上 123,646 17,742 1,387.0 142,775.0 86.6% 12.4% 1.0% 100.0% 計 251,165 47,818 3,733.0 302,716.0 83.0% 15.8% 1.2% 100.0% B 産業別の状況   今年の雇用状況報告の企業数15,678社を産業別に見ると、サービス業が最も多く、3,479社、続いて卸売・小売業が3,294社、製造業が3,096社の順となっている。   一方、障害者を最も多く雇用している産業は、製造業で34,685.0人、続いてサービス業が18,575.0人、卸売・小売業が14,798.0人の順となっている。   そこで、精神障害者についてみると、最も多く雇用しているのはサービス業で、338.0人、続いて製造業の298.0人、卸売・小売業241.0人となっており、身体障害者と知的障害者が製造業において最も多く雇用されていることと比較すると、精神障害者の雇用のひとつの特徴となっている。 C ハローワークにおける職業紹介状況   平成18年度にハローワークの紹介で就職した障害者は43,987人であり、初めて4万人を超える水準となった。また、精神障害者の就職数6,739人も、過去にない高い水準となった。   このように、精神障害者の就職者数が増加した背景には、雇用率に算定されるようになったことが大きな要因としてあげられるが、近年の新規求職申込件数の動きを見ると、精神障害者自身の就職に向けた意欲の高まりも大きな要因であるといえる。 表5 新規求職申込件数と就職件数の推移(カッコ内は対前年比) 年 度 新規求職申込件数   就職件数         うち精神障害者     うち精神障害者 14年度 85,996 (2.9%) 6,289 (16.8%) 28,354 (4.7%) 1,890 (16.0%) 15年度 88,272 (2.6%) 7,799 (24.0%) 32,885 (16.0%) 2,493 (31.9%) 16年度 93,182 (5.6%) 10,467 (34.2%) 35,871 (9.1%) 3,592 (44.1%) 17年度 97,626 (4.8%) 14,095 (34.7%) 38,882 (8.4%) 4,665 (29.9%) 18年度 103,637 (6.2%) 18,918 (34.2%) 43,987 (13.1%) 6,739 (44.5%)   ハローワークにおいては、トライアル雇用や委託訓練等、精神障害者の障害特性に配慮した支援メニューを活用する一方、企業の職場を訪問して職域開発を行い、障害者就業・生活支援センター等の支援機関と連携してジョブコーチ支援や定着指導を行いながら、精神障害者の就職の促進に努めており、平成19年度から医療機関等と連携したジョブガイダンス事業をすべてのハローワークで展開している。   また、厚生労働省においては、平成20年度に向けて、精神障害者の特性に応じた支援策の充実強化を図るため、「精神障害者ステップアップ雇用奨励金(仮称)」の創設等に向けて努力しているところである。 (2) 支援センター              障害者就業・生活支援センター ワーキング・トライ 社会福祉法人JHC板橋会  雇用支援ワーカー 清家 政江 @ はじめに  障害者就業・生活支援センターは、平成14年5月の障害者雇用促進法の法改正で誕生した事業である。障害者の身近な地域で雇用、保健、福祉、教育機関の連携の拠点となり、障害者の職業生活における安定と自立を図る目的で就業面、生活面を一体的に支援するセンターである。 ワーキング・トライ(以下「WT」と記す。)の母体法人であるJHC板橋会は、昭和58年に精神障害を持つ人達の地域での拠点作りを目指して、11人の専門家の共同出資により設置された社会福祉法人である。就労移行支援施設、地域活動支援センター、グループホーム、そして、小規模授産施設5箇所、クラブハウス等の施設を併せ持ち、精神障害者の地域での自立生活支援、就労支援を行なっている。 WTはこれらのネットワークを基盤に、障害者就業・生活支援センターとして、平成14年5月より活動を行っている。JHC板橋会の創設からもわかるように、利用者の大半が精神障害者である。利用者の働きたいという思いを大切に、そして、その思いをチャンスに、相談から職場定着まで一貫した支援を行っている。また、企業に対しても雇用、職場定着に関する相談を行っている。 A 法定雇用率に精神障害者が算定されるようになって   障害者雇用促進法の一部改正により、平成18年4月より法定雇用率の算定対象障害者に精神障害者も加えられた。これ以前の精神障害者の求職活動は、ハローワークの一般求人の中から障害者自身の条件と求人票の条件をすり合わせながら、これならばと思う求人を選び、障害のあることを伝え(オープン)応募するか、あるいは障害については伏せて(クローズ)応募していた。障害をオープンにしての応募では面接にこぎつけるまでにも非常に時間がかかった。雇用する企業も、雇用率とは関係のない中小の企業が主であった。 しかし、法改正によりその状況が明らかに変化しているのを表6より読み取ることができる。 表6  就職者の推移 平成17年度 平成18年度 平成19年度 (11月現在) 障害をクローズにして就職 12人(38.7%) 12人(41.4%) 2人(13.3%) 障害をオープンにして就職 19人(61.3%) 17人(58.6%) 13人(86.7%) うち従業員301名以上の企業に就職 3人(15.8%) 6人(35.3%) 13人(100.0%)                                      法改正を受けて、企業が雇用率カウントを視野に入れながら精神障害者を雇用しようという動きが見受けられる。 今年度は、障害者の合同面接会や各ハローワークで行なわれている面接会に参加し、採用される利用者が増えてきた。また、ハローワーク雇用指導官より企業を紹介されることや、企業より直接WTへ精神障害者の雇用について相談が入ることがあり、求職中の利用者とマッチングを図り雇用へと繋げている。 B 精神障害者の就労支援について 〜ワーキング・トライの実践より〜 <A特例子会社との出会いとその関わり> A社では知的障害者をすでに30数名雇用し、社員はメールセンター、印刷室、清掃等、親会社の各部署にて活躍している。しかし、特例子会社として障害者雇用を発展的に行なっていくうえで、また、業務創出という面からも精神障害者の雇用を検討することとなり、WTに相談に来られた。業務内容は、メールセンターで仕分けされた郵便物を各課に配達する仕事及び事務補助であった。A社から相談された業務が過渡的雇用(※注1)で行っている業務と同じであったので、この経験を活用しながら無理なく行うことができると感じた。早速企業の現場を訪れ、実際の仕事と職場環境を確認した。担当者からの「一人ひとりに合わせ、無理なく行きましょう。」という言葉に、支援者としても安心感を与えられた。 求職中の利用者と相談を行い、職場見学→実習→トライアル雇用→本雇用へと進むが、必ずしもスムーズに進んだわけではなかった。通勤の大変さ、仕事に対する緊張感、思うようにできない自分自身へのもどかしさ、他の障害者とともに働くことへの抵抗感等に苦しめられた。そのフォローについて、担当者とWTとの連絡、個別での話し合い(本人・担当者、本人・WT)、3者(本人・担当者・WT)での話し合い、WTでの仲間とのグループミーティング等により行ってきた。また、担当者から本人に対して職場での評価(できていること、課題等)を直接伝えていただいていること等が、非常に励みになっている。本人の一方的な認識ではなく、職場の方からの評価を得ることは、職業人としての等身大の自分自身を受け入れ、職業生活を続けるうえで、大切なものとなっている。 7月に1名が実習をスタートし、現在までに3名が実習を経て雇用されている。A社にとっても、そこで働く障害者にとっても、踏み出したその一歩は勇気のいるものであったと思う。その一歩を次の一歩へ繋げるため、今後も連携を持ちながら職場定着を図っていきたい。 (※注1)過渡的雇用 JHC板橋会と企業で業務契約を結び行っている、1年間の期限付き試験雇用プログラム C 終わりに 〜「働くこと」「働き続けること」の希望をかなえるために〜 表7 4 終わりに 〜『働くこと』『働き続けること』の希望をかなえるために〜  上記リストは、平成17年から平成19年11月末までの間に、就職者が就いた職種の一覧である。 多様な場でそれぞれの能力を発揮し、戦力となり活躍している。 WTでは利用者一人ひとりに合わせてプログラムをつくり、支援を行っている。基本的職業スキル(働く上での体力、心と体の健康管理、挨拶、時間の管理、作業を行う上での連絡、報告、相談等)があるか?1日何時間、1週間何日であれば無理なく働けるか?職種は?利用者それぞれの現状を確認しながら就労へ進んでいく。(図1はWTにおける支援の流れである。) 雇用率1カウントを目指し1週間30時間の勤務時間が求められるが、30時間の勤務が十分可能な方もいれば、短時間の20時間から徐々に積み重ねていく方もいる。一人ひとりの状況に合わせ柔軟に対応していただければ個人が持っている能力を発揮し、企業に貢献する人材となる。 障害者雇用に対する国の施策、そして、それを受けての企業の動き、これらの中で支援者として障害を持たれた方の「働きたい」「働き続けたい」という希望をかなえるパートナーとして、最善の目標設定と実施を目指し、支援を行っていきたい。企業に対しては、企業のニーズに応えられるような支援、障害者というよりもむしろ企業に貢献できる人材としての雇用支援を展開していきたい。 図41 就労支援の流れ (2) 支援センター 障害者就業・生活支援センターオープナー  施設長 天野 聖子 @ 精神障害者を取り巻く環境 昭和35年に身体障害者の雇用促進を目的に制定された「障害者雇用促進法」において平成10年から知的障害者が雇用率に算定されるようになり、平成18年から精神障害者も雇用率の対象に拡大する等、雇用拡大に向けた方策がとられてきた。平成19年から障害者自立支援法も施行され、「福祉から就労へ」が確実な流れとなってきた。 身体障害者や知的障害者は、これまでの経験の蓄積、特別教育支援校との連携、経験等、ある程度の支援体制は形成されてきた。 精神障害者は、発病時期が成人以降という人も多く、支援機関からの援助が他の障害者に比べて薄かったのが現状でなかろうか。 事実、障害者職業能力開発校や心身障害者職能開発センターでは、知的、身体の障害者は受けているが、精神障害者の訓練は殆ど実施されていない。 また、服薬管理、通院、体調面の不安定さも精神障害者の就労を妨げる一因であったのではないかと思う。 このような状況下で、限られた資源を活用しながら、精神障害者の就労支援を展開しているのが現状である。 A 就労促進に向けた取組み   企業にお願いしたいのは、精神障害者は、環境が整えば就労は十分可能であるので、まず雇用してみてください、ということである。   精神障害者というと、自傷、他害等の傷害事件の発生等を心配される方が多いが、雇用の場にでてくる精神障害者に関しては杞憂である。我々が就労支援している精神障害者の多くは、自分の病気を自覚しており、仕事をしたいという強い意欲を持っている。就労支援機関では、専門家が本人の病状、生活、特性等を生活訓練、技能訓練、面接、話し合い、実習等を通じて就労可能と判断した人々の雇用を促進しているので、安心して取り組んでいただきたい。   これまでは、支援機関が取り組みやすい「清掃」「厨房補助」を中心とした職場を開拓してきたが、今後は、実際の職場で何ができるか、どのような仕事を組み合わせれば精神障害者が無理なくできるか等を考えながら、職域・職場を拡大するための技能訓練を実施していきたい。   例えば、事務職では、パソコン操作ができることが当たり前になっている昨今、精神障害者がパソコン操作をマスターすれば、入力作業、事務補助等を行うことができ、より雇用の機会が拡大する。また、他の社員はより創造的で高い付加価値を生む作業に従事することが可能となり、全体として生産性が向上することになり得る。残念ながら、作業所等の実習機関で対応できていないのが現状なので、福祉機関や行政にも今後働きかけて、より実践的な実習が行えるようにしていきたい。   B 今後の展望   自立支援法が制定され、「福祉から就労」の流れが作られようとしている。支援機関が企業と連携し、職場でどのような職務に障害者が従事できるか等の職務の切り出しを行うとともに、それに伴う必要な技能、技術を就労希望者が習得できるように、作業者、実習機関と連携していくのが自立支援法で期待されている連携のあり方だと考えている。しかし、各関係機関とも従来の思考から抜け出せず、旧態然とした授産作業を行っている。また、作業所自体にも自立を求められているため、一定の能力を有する障害者を作業所に引きとめ、作業所の効率を上げるという本末転倒な事態に陥っている作業所も少なからず存在するようである。   各地で就労支援センターが設立されている動きはとても歓迎している。「就労支援」は、人と職場を繋ぐマニュアル化や機械化ができない作業である。どの職場にどのような仕事があり、職場環境はどうか、どの作業所でどのような人が実習をしているか、その人は何ができるか、どのようなストレスに弱いか、服薬管理、通院は、主治医の見解はどうか等把握しなければならないことが多いが、人的ネットワークに頼るところが大きい。支援センターが増え、情報収集量が増えることで、より良質なサービスを提供することができる。 実際の活動としては、就労希望者を生活面、精神面、体調面、能力面等、全般において就労可能な状況に至る段階まで面接、実習・作業訓練を行い、どのような就業環境でどのような職務が可能か等を見極めて、適切な職場に紹介している。その間、本人への面接はもちろん、作業所、ハローワーク、企業へと何度も足を運ぶ。就職後も、本人への精神面の支援、作業面での動機付け、企業側との面接等、定着し、継続させるための関わりは終わることがない。企業側からも、何か問題が起こったり、対応に苦慮したりするときに「支援機関」が付いていると安心して雇用できるとの声もあり、決して途中で手を離せる状況ではない。また、企業の信頼を失ってしまったら、精神障害者の雇用が頓挫してしまうとの懸念をもっている。現在、常勤職員3名で分担して活動しているが、支援者が増えれば増えるほど活動量が多くなり、現体制で関係者に満足してもらえる活動ができるかが不安である。 現在、就労機関は厚生労働省、文部科学省から委託金を受けて事業を行っている。活動報告、資金管理等きちんとしなければならないのは当然であるが、それぞれの省向けに別々の書式、計算方法等で報告しなければならず、事務作業にかなりの時間を割 いている。今後、経過報告等、捕捉する人数が増えれば増えるほど、事務作業も増えてくることが予想されるので、統一書式で報告できるようにする等の配慮をお願いしたい。 また、委託金の水準の人件費では、職員の生活が成り立たないのが現状である。意欲もあり、適性も十分な人材が確保できなくなってしまうと、活動全般が低調になりかねない。職員自身の生活も安定したものとすることも、今後の課題と考えている。 (3) 企業 東京グリーンシステムズ株式会社  取締役 長谷川 伸治 @ 精神障がい者との出会い 平成14年秋に市内の支援センターより、精神障がい者の紹介を受けた。経験も無く、不安要素が多かったので最初はお断りするつもりでいたが、「訓練のつもりで」ということだったので、「適応できなければお引取りいただく」ことを条件に、12月に1人、翌年2月にも1人を受け入れた。支援センターとはそれまでにお互いにざっくばらんに言い合える信頼関係を築いていた。 A 配属とその後の状況   12月に受け入れた男性は、喫茶室のレジ係りとして、一日3.5時間×4日間からスタート。徐々に時間を延ばし、現在では胡蝶蘭の栽培に職種を変えて、フルタイム勤務(月〜金9:00〜17:30)まで到達した。栽培に関わっていろいろな仕事を担当しているが、特に胡蝶蘭の水遣りには彼の几帳面な性格がマッチして、貴重な戦力となっている。 2月に受け入れた男性は名刺作成担当として、一日4時間×5日間から勤務を開始して、現在一日6時間まで勤務時間を延ばしている。担当顧客を持ち、電話での応対から、受注・作成まで一手に引き受けている。本人はフルタイムまでなんとかしたい、との思いが強いが、まだ不安定要素があり、実現していない。2人とも5年の勤続を通じてパイオニアとなって道を切り拓いてくれた。   B その後の採用 昨年4月から精神障がい者が雇用率に反映されることになり、求人を出すごとに応募者も増えてきた。当社でも「その職種で戦力になるかどうか」を判断しながら障がいの内容にかかわらずに面接を行った結果、トライアル雇用を経て4人の採用を行っている。特長や性格は様々であるが、3人は最初からフルタイム、1人は短時間勤務である。フルタイムが難しければ、1人分の仕事を2人で担当してもらうことだって可能である。幸い当社にはそういう職域がある。 ただ、1人だけ失敗した例があり、親会社で精神疾患になった社員を休職期間満了とともに当社で受け入れたことがあった。短時間勤務から始めたのだが、3ヵ月経って、残念ながら病状が完全に回復していなかったことにより、結局一旦会社を離れ、再度治療を受けることになった。それぞれによって違うが、本人がそのことを受容し、働ける状態になるまでにはかなりの期間を要するものと思われた。 C 継続して仕事をするためのヒント 当社の場合、採用した精神障がい者全員が社内で障がいのことをオープンにしてくれている。採用時に「いろいろな障がいを持った社員が働いているのだから、様々な理解や配慮ができる。だからできれば君もオープンにしてほしい」と話すと、全員が「わかりました」と言ってくれた。 一つの鍵は、周囲にオープンにできるか、そのことを周囲が受け止められるか、実は継続にはこのことが一番重要な要素だと思う。 人によって違うが、多かれ少なかれ、精神状態に波が生じ、不安定な時期が必ずある。自己管理でうまく乗り切る社員もいるが、やはり突発的に休んだり、仕事の間に休憩を取ったりせざるを得なくなることも起こる。その時に周囲が理解して、また仕事に向かわせる気持ちにさせられることが大事である。 それまでの経験をいろいろと聞いてみると、病気のことを言えずに、それでも普通を装って仕事をしようとして本当に辛かった、と異口同音に話す。全員が「障がいのことをオープンにできているので、周囲の目を気にせずにリラックスできる」と言っている。とりも直さず、そのことが長続きしている一番の理由だと考えている。 余談であるが、ある学生の卒論の題材のためのインタビューを、という要請により声をかけたら皆が協力をしてくれて、その場が自分の精神障がいや経験についての座談会のようになった。これも大きな驚きであったとともに、新鮮な感動をもってそのことを聞いた。 また、当社では週一回、臨床心理士の先生にカウンセリングをお願いしている。4箇所のオフィスを巡回するので、毎週受けるわけにはいかないが、やはり他の障がいを持つ社員よりは頻度は高いようである。もう一つは、社内ジョブコーチが常駐しているので、普段ちょっとした壁に当ったときや心身の状態が不安定なとき等相談に乗ってもらっている。 他には支援機関がついているかどうか、会社がその支援機関といかに連携をとっていくかというところが大事である。会社の中では仕事を通じて面倒を見ることはできるが、一歩外に出たら私的な部分は関わることができない。したがって、そこを支援機関にフォローしてもらい、連携を密にすることで、解決していくのである。 それまでに支援機関と関わりを持たなかった社員には、支援機関を紹介することもある。1人で悩まないで専門家に相談する道をつけてやる。 採用してみれば、普通に仕事ができる精神障がい者はたくさんいる。その職種にマッチする人をいかに見つけるか、裏を返せば、支援する側からはその人にあった働き方や職種をいかに見つけていくか、ということがポイントだと考えている。 (3) 企業 株式会社 日立製作所  労政人事部主任 藤原 敏 「我邦十何万ノ精神病者ハ実ニ此病ヲ受ケタルノ不幸ノ外ニ、此邦ニ生レタルノ不幸ヲ重ヌルモノト云フベシ」 大正7年、東京帝国大学精神医学教室教授呉秀三がその著書「精神病者私宅監置ノ実況及ビ其統計的観察」の中でわが国の精神病者の置かれている実態を嘆かれた有名な言葉である。あれから90年の歳月が流れているが、精神障害者のおかれている状況はどれだけ変わったと言えるのだろうか。医学の領域ではクロルプロマジンやハロペリドールの抗精神病薬の登場、オランザピン、リスペリドン、クエチアピン、ペロスピロンの第二世代新薬の開発、心理学の分野では認知行動療法やSSTによる心理療法の導入、行政・立法面では「私宅監置」を禁止した精神衛生法の施行から、クラーク勧告、精神保健法の制定、社会復帰支援事業を経て障害者自立支援法により他の障害者と同様のサービスが受けられるようにもなった。雇用面では、実雇用率の算定に入れられるようになり、厚生労働省発表資料によれば、平成18年度における障害者の職業紹介状況では精神障害者の新規求職申込件数、有効求職者数、就職件数とも飛躍的に伸びているという結果が示された。あらゆる分野において、精神障害者を取り巻く環境は呉の時代に比べるとかなり改善されたように思われる。本事業におけるテーマは特例子会社における精神障害者雇用のケーススタディであり、本報告書についても特例子会社での精神障害者の雇用促進・拡大について言及すべきものとは理解しつつも、私の職務が日立製作所における障害者雇用の企画・立案・施策の実行ならびに雇用状況の把握・管理ということで、ここではその立場でこのテーマについて意見を述べさせて頂くことを了承願いたい。  先般厚生労働省から発表された平成19年6月1日現在における障害者の雇用状況報告によると、雇用されている精神障害者の数は前年の2,189人から4,223人と倍増、特例子会社のみでは前年の54人から155人と約3倍の増加となっている。しかし、当事者ならびにその家族や支援に携わる人々との交流からは、数字どおりに精神障害者の雇用が進んでいるとは思えない。その実態を裏付けるように、当社にあっても、本社人材部門の障害者雇用専門チームが主体となって、社内研修等で精神障害者の雇用問題について取りあげ社員の意識啓発を行い、自らの部署で委託訓練生を受け入れることもしているが、残念ながら新規雇用には未だ至ってはいないのが現状である。新規雇用が進まない理由として、@職場に在籍メンタル不調者を抱えていることもあり、中の問題を解決しないまま新規雇用までは各職場が踏み切れない状況にあること、A支援機関で行われている職業能力向上のための訓練・作業と企業で必要とされるものが乖離していること、B特例子会社での雇用を進めようにも親会社からのサポート、助成金に頼らなければ維持できない脆弱な経営環境では安定した労働力に頼らざるを得ないこと、C精神障害者に対して漠然と抱いている誤解がある。これらは当社のみに限ったことではなく、この国の多くの企業が抱えている共通の悩みではないだろうか。それが解消されないままに企業が単独で精神障害者の雇用を拡大していくのは極めて難しい。だが、働く意欲も能力もあり、かつ支援があれば働ける精神障害者がこのまま施設に留まることを余儀なくされ、就労意欲も失せ、無為に過ごす状況が続くのは社会の損失であり、また、病気を隠して好ましからぬ労働環境下で働いた結果、病状を悪化させて再発・再入院ということにもなり、現代の精神障害者は90年前の「私宅監置」の時代とはまた別の意味で、「此邦ニ生レタルノ不幸」を背負っていると言わざるをえない。 障害者雇用の促進等に関する法律施行規則における精神障害者の定義には、症状が安定し、就労が可能な状態にあるものと明記されているが、その判断は企業の人事担当や職場の管理職が面接や講習会で身につけられるものではなく、また、職場定着面でも知的障害に対する支援技法は通用せず、ジョブコーチよりはむしろカウンセラーの存在が欠かせない。精神障害者の中には高度なスキルを持った者や企業が求める能力を持つ人材が多数いることは、各種の交流会を通して実感している。ただ、その者たちの大半が、支援機関に登録していないというのもまた事実である。企業としては、病気の自己管理ができ支援機関のサポートが得られる人材であれば、安心して雇用が可能となる。職業能力向上訓練と企業のニーズとの乖離については、支援機関に対して高度な知識・能力をもつ人材の育成の全てを委ねるのも無理な話であろう。支援機関には、企業にはできない生活訓練・病状自己管理の訓練ができる。企業は、ビジネス上のマナー・ルールから実務上のスキルまで人材育成のノウハウを持っている。お互いのできるところで協働しあう関係を築き上げる必要があるだろう。精神障害者の雇用を拡大していく過程で、既存スタッフでは対処しきれないケースも増えてくることが予想されるので、今後は企業内にもこの分野に精通したスペシャリストを配置し、職場と関係機関との連携を図ることも必要であると考える。行政に対しては、能力・意欲・適正がある者がその障害のみの理由で特例子会社に雇用され続けるのではなく、十分な能力を身につけた障害者については、親会社あるいはグループ会社への雇用の道が開かれるようなインセンティブの付与、またはグループ適用を受ける会社に対しては何らかの条件設定の検討をどうかお願いしたい。すべての障害者が、「この国に生まれたことを幸せに思う」時代にすることこそが、今の時代に生きる私たちに課せられた使命である。「社内に多くのメンタル不調者を抱えているため、精神障害者の新規雇用は考えられない」云々は所詮言い訳に過ぎないことを、企業の人事担当者は肝に銘じておかなければならない。 (3) 企業 株式会社 キユーピーあい  代表取締役社長 湯田 正樹 @ はじめに 当社は、キユーピー株式会社が100%出資の特例子会社であり、平成15年6月に設立、12月に事業開始した。従業員は総勢47名(障害者29名)で、精神障害者の方は現在1名で、男性、27歳、神経症の方である。 彼は合同面接会場に登録せずに直接来て、当日ハローワークに登録を済ませ応募して来た方である。当社は以前より精神障害者の方を採用するチャンスを狙っていたところに、うまくマッチングした格好となった。二次面接で会社に来て頂き、会社見学と入社試験を行い、職場実習に進んだ。面接時から、「障害の開示」「フルタイム勤務」「喫茶の仕事」等の要望が出ていた。採用を決めた理由は、障害種別の開示を望んでいたことや考え方が前向きであったことである。 勤務体系は本人の意向がフルタイムであったが、会社としてスタート時は3時間を数週間、5時間を数週間、後にフルタイムと、時間の延長を行った。また、本人の様子をみて、変化があれば主治医と相談しながら就業時間を少なくする等の工夫を行った。その結果、入社して1年が経過し、フルタイムで2つの仕事をこなすようになった。(売店・喫茶と発送) A 精神障害者雇用に際して事前に確認しておいた方が良いこと イ 求職は精神障害者であることを開示して勤務できる方かどうか 本人の問題ではあるが、開示しない(クローズ)場合には、残業時間やノルマの遂行等、健常者と同じ様な勤務体制となり、精神的な症状が出たり、服薬管理がしがたい状態も加わったりして、症状が悪化するケースがある。また、いつ会社や同僚に障害がわかってしまうかと心配する余り、精神的なプレッシャーが加わることもある。その点、開示する(オープン)場合には、会社や同僚の理解により、就業しやすい環境の確保が可能である。障害者就業・生活支援センターの方が来社しても、同僚の方を含めて支援していただける。  ロ 障害者就業・生活支援センター等に登録している方かどうか 健常者、障害者を問わず、会社が関わることができる範囲には限界がある。また、終業時間外の私生活において、会社が必要以上に関わることは、個人的問題と業務以外の経費が増加することを意味している。特に、精神障害者の方は、メンタル面のフォローが大事である。そのためには、第三者的な専門家が必要となる。本人や家族の方が登録することで、色々な援助が受けられる。会社と当事者の橋渡しができる存在の機関があることが重要である。 ハ 主治医と会社が直接話せる様に、主治医が会社への個人情報の開示を認めることに同意して貰える方かどうか 主治医も、企業や業態について、周知しているわけではない。障害者就業・生活支援センター等を通じて主治医に本人の状況を説明し、アドバイスを頂き、アドバイス内容を企業に戻してもらうことは、意思伝達のスピードが遅く、また内容の80%くらいしか伝わらない。また、誤解の元になる。直接主治医と連絡をとることにより、職場環境と社員の関わり方、症状の把握、対処へのアドバイス等がスムーズに行うことができる。主治医は患者の診療やカンファレンスがあるので、相談できる時間帯の事前確認が重要と思われる。 ニ カウンセリングの重要性 予算や職場環境が整うようであれば、定期的な社内カウンセリングの機会があればさらに良い関係が生まれるものと思われる。カウンセリングは、障害がある社員のみならず、指導者的立場の社員に有効な手段である。構成社員にもよるが、助成金の対象となる可能性もある。 B 職域拡大には 会社は、事業展開により収益性を高めなければなりない。そのためには、最低限給与等の経費は自ら稼いで欲しいと考えている。しかし、障害のある方は、障害を克服してできる仕事があるのか(マッチング)ということが、重要な就労ポイントであるように思う。会社としては、既存の仕事ができると望ましいわけであるが、このことだけに固守すると、就労する機会が少なくなる。人数との兼ね合いはあるが、ワークシュアリングのできる仕事創出が必要である。複数人で一つの仕事を進めることにより、急な体調不良で休む場合でも、他の社員で進める事が可能になると考える。一連の流れのある仕事から精神障害者の方に適した仕事を分離し、切り出すことで、職域の拡大に繋がる。   精神障害の方でも生まれ持った性格があるので、同じ行動パターンにはならない。その人の性格と状態(症状)を判断して、職場の環境や仕事の種類を考えてほしい。障害がある方の中には、他者と一緒に働くことが苦手な方や、仕切られた部屋で仕事をする方が効率の良い方等、様々な方がいる。しばらくの間はよく見守って、適切等バイス(休憩の一声かけや不明な点の有無等)をしてほしい。 日頃から精神保健福祉士の方等の支援者とコミュケーションを取ることも、重要な役割の一つと考える。 6.総 括 〜精神障害者雇用促進・拡大のために〜 本編は、2年間にわたる調査研究経過及び専門委員会における意見を踏まえ、明治学院大学社会学部教授・八木原律子委員がとりまとめた。 (1) 最近の国内外の動き 国連は、1983年「ILO第159号条約」、2006年12月に「障害者の権利に関する条約」を採択した。それを受けてわが国も1992年6月に「ILO第159号条約」に批准し、2007年9月に「障害者の権利に関する条約」に署名している。 障害者が社会から阻害され、働く能力を持っていても十分に教育や訓練を受けるチャンスが得られずに、またこれらのチャンスがあったとしても低賃金労働に限定されてきた障害者雇用のあり方を人権問題が生み出す障害として、障害者が社会の生産性に算入できるように社会の責任において改善していくことを示しているものである。 ILO障害担当上級専門官であるMs.Debra Perryは、IA2007国際会議(2007年11月16日:開催地 静岡市)の講演で、「ILO第159号条約」や「障害者の権利に関する条約」を基盤に、これまでに条約は批准こそされるが、遵守されるに至らなかったことを反省したうえで、障害者にも適切な職業を提供する必要性を促した。そのためには適切な訓練と教育が雇用の現場にスムーズに移行していくような具体的なシステム作りが重要であると述べ、その時代の要求に応じて柔軟に対応できるための、地域連携による社会の責任としての改善を呼びかけた。 国内の動きをみていくと、2006年度から精神障害者も雇用率に算入できるようになった。そこでハローワークを中心とした障害者の雇用促進強化で、雇用率未達成の企業へ指導が進んでいることは周知の通りであり、今後は精神障害者の新規雇用が一段と増加の傾向になっていくであろうと予測されるところである。一方、福祉領域においても「障害者自立支援法」の本格的施行を受けて、就労支援への関心が高まっているところである。しかしながらその就労支援は、各福祉施設や機関が独自路線で進んでいて、知識や技術の共通理解の甘さに危惧するところもみられる。 今回のアンケート調査や各報告書から、これまでの特例子会社が知的を中心に障害者雇用促進の一翼を担ってきた時代から、精神障害者を含めた雇用の対象拡大に向けて、特例子会社が果たす新たな役割を検討していくことは、時宜にかない、今後の障害者雇用の促進や支援に、効果的な示唆に富んだ方法が提示できると期待されるものである。 (2) 今後の活動のあり方についての検討 様々な立場から現状での配慮や工夫を踏まえ、今後の活動のあり方をみてみる。 @ 行政の動き 精神障害者も「障害者雇用促進法」の対象として明文化された2002年頃から、精神障害者に関連する法改正や新規事業の立ち上げ等、毎年慌ただしい動きが続いている。その時代に即した改正や事業であるとはいえ、事業を活用してみての評価が十分に開示されないまま新旧の事業が混在した上に、新たな事業の開設、しかも同じような名称の事業に戸惑いを覚える。特に地域の支援機関は、「今、目の前にいる障害者のニーズをアセスメントして、就労支援計画を立て、就労意欲を損なわない配慮と目標達成に向けた支援」が優先されなければならないはずなのに、改正に伴う手続き上の書類の処理や日常の業務に追われ、事業の要綱を熟読し、理解する時間を確保できない等の事情がある。従ってどの機関もスムーズな対応ができているとは言い難い。  それに、国や地方公共団体が率先して障害者雇用を行なう取組みに、障害者の体験実習があるが、対象となる障害分野に偏りがみられ、必要とされる就労支援モデルには成り得ていない。説明会に参加しても、精神障害者の体験実習には「対処方法が分からない」、「サポートする人がいない」等を理由に、後手に廻されているのが現状である。体験実習中の精神障害者の全員が、一般就労に向いているとは思わないが、行政機関は、体験実習の対象者に障壁を作らず、体験実習を希望する障害者が登録している就労支援機関との連携で、新しい雇用のための移行支援システムを構築するチャンスを得て欲しいものである。そうすれば障害者雇用に難色を示す企業や企業内部署、就労支援に必要な知識や技術をもたない支援機関にも、支援のヒントを提示できるのではないだろうか。そこで、行政機関にもこれらの事業をコーディネートする人材を配置し、課題解決に向けた協働体制が得られることを提案したい。 A 企業・特例子会社の動き 調査結果からもわかるように、特例子会社では、知的障害者や身体障害者の雇用の受け入れ態勢は整ってきていると理解し、今後は精神障害者の雇用に、その経験が生かされるものと期待している。精神障害者を雇用した経験のない企業では、作業内容や運営管理に不安を持つ要因と、支援者となるナチュラルサポーターとしての従業員不在という人的要因にわけられる。それだけに障害者雇用の促進を進めるためには、企業内の部署間の閉塞性を無くし、開かれた環境で障害者理解のための啓発が必要となる。 特例子会社の役割は、以前は知的障害者の雇用を作り出すために一箇所に集中して雇用されたという経緯があるが、最近では、本社の仕事を請け負い、障害者が各関連事業所に出向き、仕事をこなすという方法も取られている。その結果、周囲がやさしくなったという環境改善が可能となり、障害者は従業員の情操教育を兼ねたキャリア形成に一役買っているといえる。更に先駆的な取り組みをしている特例子会社では、専門的な人材、例えば、社会福祉士や精神保健福祉士、臨床心理士等が雇用されていて、障害者の継続支援や家族支援等に力を入れている。これらの専門家は企業と地域や家族とのネットワークを構築することで、障害者が働きやすい環境作りを目指して、障害者の自立に向けた雇用の場の創出を目指しているのである。 最近、成果主義やダイバーシティという用語を耳にする。合理的な経営に合わせて業務の見直しは必要であろうし、多様な試みは地域ネットワーク構築の上でも必要不可欠である。特に成果主義を求める企業では、フォロー体制がセットでなければ殺伐とした職場になってしまうだろう。 まずは障害者に体験実習の場を、そのために企業に出入りするジョブコーチから、障害者との支援関係や距離のとり方等を学んで欲しいと提案したい。そこから、職場内におけるナチュラルサポーターの育成が開発され、企業内の障害者雇用促進に向けた啓発が生まれるものと確信している。 B 地域就労支援機関 「障害者自立支援法」が具体的に動き出していることで、これまで就労支援活動をしてこなかった福祉施設の支援者に、支援能力の格差がみられるのは仕方がないが、これからは研修等を受けて、職業リハビリテーションの理念や知識や、支援法の理解が深まれば懸念も解消されると思われる。ただ、Competitive Employment(競争力のある労働力)であることを自覚していないと、福祉的就労の延長のままで企業に就職を依頼することになってしまい、企業との折り合いを付けるのが困難になり、精神障害者を雇用に繋ぐことはできない。「本人が働きたいと言っているから・・」、「作業所では、十分、他の人のリーダーとして作業をこなしている・・、だから雇用して・・」、では通用しない。支援者の意識改革が必要である。何故ならば、企業は障害者を雇用するとき、経営の視点でプラス効果を狙うし、支援者は、障害者自身が周囲の仲間たちに勇気を与え、お互いにエンパワメント(力を与えられる存在)されることで、企業を含む地域社会に波及効果を生み出すということを理解した上で、支援にかかわりたいからである。 精神障害者支援の取り組みは、地域で暮らすための社会的スキルの獲得からであり、基本的生活習慣やコミュニケーションスキル、社会資源の活用法(銀行や郵便局等のカード利用の仕方・交通機関のカード利用・電話のかけ方等)の指導と、就労支援特有の働く意欲、動機づけ、労働条件の見方、そして何より本人の意思確認が重要となる。そのために支援者は、障害者自身が主体性を身につけ、自己決定ができるように働きかけをしていくことが望まれている。障害者と十分に話し合い、お互いに了解した上で次のステップへと進むべきものであるし、職場環境調整や生活支援は、福祉側支援者の専門性を発揮する領域であるということを自覚したい。 また、ハローワークの業務は人材銀行ではなく、適合性を踏まえた職業紹介・人材斡旋であり、それにより、障害者、企業も安心して雇用関係が結べるということを今一度自覚して、今後も障害者のアセスメントを行っていただきたいと切に願う次第である。 今回の調査結果からみても、企業は、精神障害者の就労に向けての準備性を支援機関に期待していることがうかがわれる。スキルの学習や訓練したことが現実と乖離しすぎていたり、精神障害者が学んだことを職場で生かせなかったりするのは、障害者自身の問題というよりは、支援者が適切な指導をしてこなかったという反省の上で改善をしていかなければならない。訓練→体験実習→雇用という移行がスムーズに行なわれるためには、個別化された支援プログラムの見直しを絶えず行ないながら、就労支援に望んでほしい。それは、訓練終了した障害者に職場が見つからず、以前の福祉施設に戻る人が多いという現実を認識していくことでもある。 C 障害者自身 では障害者自身はどうであろうか。働きたいと願う障害者が、職場で役割を持ち、期待されて作業を遂行していくためには、その実感が持てなければ働く意欲を持続させていくことは難しい。働くことを通して社会的ルールを身につけ、対人スキルが向上していくことは、障害者自身の新しい社会的な質の向上が高まることでもある。それは訓練中や体験中でも同じことが言える。最近は、障害者自身が学習できる機会が増え、社会生活能力を改善し、高めていくためのプログラムが用意されている。さらに委託訓練事業やトライアル雇用が用意され自分自身が見通しを持って望むことができるし、作業能力を確認することができる。訓練や体験を受けたら、その後の振り返りを「障害者」、「支援者」、「企業側」、の3者で持ち、仮に旨くいかなかった場合は、どこを改善したらよいかを話し合い、次の体験に繋がるように、障害者自身も人任せではない主体性が要求されているのである。 D 医療機関 精神障害者が医療・保健と福祉にまたがる障害である以上、退院後、働き出してからも医療と切り離すことはできない。職場では通院時間を確保したり、ゆれる障害であるという特性に配慮して短時間労働からスタートしたりする等、障害者の個人に焦点を当てた雇用への努力がされている。医療と職場の間に支援機関が参加していれば、事故や問題が発生したときの対応は比較的速やかにできるが、医療機関のみだと担当者が不在の場合には、早急に対処することが困難になる。そこで医療機関に求められるのは、日ごろの障害者雇用の状況を把握していることと、担当者の単独支援から、複数の職員によるチームケアを院内及び地域関係支援機関とで、ネットワークを形成して、緊急時の対処に備える配慮が必要といえる。 (3) 今後の改善策 こうして立場ごとにみていくと、連携の重要性、その連携を取り仕切るコーディネーターの存在、機関の壁を超えたネットワークの構築等、各機関の支援者が協働で開発していくことが就労支援のキーワードになろう。そこで人と職場を含めた環境に焦点を置き、今後の就労支援に必要な準備性を高めていく改善策についてまとめてみる。 @ 障害者にとっての準備性 学校や訓練校、及び支援機関で技能を身に付けても実際にそれを活かす場がない、つまり就職先がない、という現実を重く受け止める必要がある。訓練から実習、そして職場へとスムーズな移行システムを創出するには、実習や訓練の内容が、現状にマッチした技能群から成り立っているかどうかをチェックすることである。 オーストラリアのNew South Walesには、普通高校で特別支援を必要としている生徒たちに、地域の就労支援センターの職員が、学校に出向き、5回のセッションで、働く動機付けから、職業に必要な基礎知識を学習する職業支援教育の機会が与えられている。卒業と同時に@就職か、A進学(訓練校も含む)か、B支援センターを利用するかの何れかを選択をしてもらい、仮に支援センターを利用するという選択であれば、センターリンク(日本の社会福祉事務所、職業安定所が統合されたような機関で生活、教育、就労が一体的に集約されている)に知らせておく。通学中から生徒が迷わないように、卒業後の移行をスムーズにしている。一方、学校教育の一貫で地域のコミュニティセンターのプログラムに、学校から参加して、これらの実践教育を受ける方法もある。移民の国、オーストラリアでは、初等教育から高校まで、学年に応じた内容のプログラムが用意されていて、共生社会を理解しなければ生活できないということが実感として伝わってくる。    またアメリカのミシガン州立大学では、教育支援プログラムに障害者のニーズを反映させ、近在のクラブハウス等と協働で、高等教育を受けたい人に入学の準備教育を立ち上げ、このプログラムで習得できた単位を、入学後の単位に換算されることで、移行がスムーズに行なわれ効果を得ている。この場合の教育支援プログラムには職業訓練プログラムも含まれており、障害者の多様な地域生活支援策がうかがわれる。    我が国では、職業準備教育プログラムを学校教育の中で学ぶ機会は少ないが、就職し、労働社会に参加する準備教育の開発が求められているところである。現実社会の厳しさや働く喜び、生きがい、そして職場のマナー、リスクマネジメント、社会的ルール等の学習が、就職した際に効果的であることはいうまでもない。2006年度から特別支援教育が始まったわが国の教育制度にも、学外の各関係機関が出入りすることで、生きた社会との連携のあり方が学べることができるといえる。 A 人材育成のための準備性 対人業務を職業とする支援者に必ず行って欲しいことに「自己覚知」がある。それは、障害者と対峙した時にみられる言葉の表現や、行動、態度等の振り返りであり、支援者が所属部署や職名で示されている立場を、十分に認識しているかが障害者の支援に大きな幅を作り出す。それは支援者自身が、障害者を障害者として接することなく、労働者である視点で、彼らの主体性を重んじ、働く権利を擁護して働きかけていくことでもある。それは業務中に問題が発生したときに責任を持って、臨機応変な対応が、瞬時にできるかということでもある。 一部の福祉施設に見られることだが、障害者に一般就労への準備性が十分備わっていても、環境の変化への対応を危惧してか、一般就労への移行に消極的であったり、逆に本人の就労意欲や準備能力を過大評価してハローワーク、地域障害者職業センター、障害者就業・生活支援センターへ紹介してきたりすることがある。関係機関との連携とは、社会資源である機関のサービスを活用し、支援者同士が役割を分担しながら進めていくことであることを、確認しておきたい。 支援機関のサービスを活用する前に、相互の研修を提案し、サービス内容の確認と支援方法を明確にしていくことで、協働による効果的な支援に期待したい。 また、わが国で準備されているジョブコーチ(職場適応援助者)は、本来のジョブコーチの役割の一部であると理解している。地域障害者職業センターの障害者職業カウンセラーの支援計画を元に、現場による支援を行なう職務となっている。   しかしながら、ジョブコーチ業務の全体像が見えていないと仕事の形骸化が起こり、企業内の従業員によるナチュラルサポーターへと移行できなくなってしまう危険も孕んでいる。障害者への直接支援と併せて、間接的な障害者雇用の進め方、職務分析、課題分析、仕事の探し方、雇用管理の仕方、従業員研修、アドバイス等の支援も行なえるように研修時に学ぶ必要があるといえる。それは企業がジョブコーチに求めるのは、初期は障害者への直接的支援を、次には企業への間接的支援、つまり仕事の切り出し方等の提言ではないかと思われるからである。 またピアサポーターの存在も貴重である。仲間からのアドバイスは、従業員や支援者からのアドバイスよりも自然に受け止められやすく、普通のジョブコーチに比較して遜色がないという統計もある。同じ職場で、同じ業務に限定したピアサポートは、仲間の励ましや安心、自信にも繋がるので、同一の職場に、複数の障害者が雇用されていくのも今後の検討に値するものといえる。 (4) まとめ 障害者雇用に関しては、支援者の育成と周囲への啓発活動が鍵概念だと思われる。従って、企業や教育、福祉、医療や保健の領域が障害者と同じテーブルで検討し合えるようなコミュニティ作りが今こそ要求されているのだと認識する。 また、少子化と高齢化に伴う労働人口の減少は世界的に広がっている。我が国も例外ではなく、当然、障害者にも波及してくる課題である。これからは、昇っていく就労支援と、降りていく就労支援も視野に入れた障害者雇用対策が必要であろう。退職された高齢障害者の短時間労働者としての採用等、新たな雇用支援の検討が待たれるところである。 いつの時代も課題は山積みされているし、遅々として改善されない部分もあるが、障害者支援の理念は変わらない。変化しているのは障害者と障害者を取り巻く環境、それを支援する方法が改善されているのだとILOのMs. Debra Perryは報告していた。障害者自身も自分達の人生を他人任せにしない、自分で切り開く意欲が必要である。誰もが社会の一員として、経営や経済生活に貢献できるように、自分を磨き、更に相互支援を深めたいと願うものである。 平成19年度:研究調査報告書 通刊265号 特例子会社における精神障害者雇用のケーススタディ 平成20年3月 発行 編集兼 発行所          独立行政法人高齢・障害者雇用支援機構              〒105-0022 港区海岸1-11-1ニューピア竹芝ノースタワー               電話 :03-5400-1625 (雇用開発推進部 職域開発課)               FAX :03-5400-1608 URL: http://www.jeed.or.jp/