2015年3月号
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25働く広場 2015.3ことがありました。毎日新しいことをするので、「慣れる」ということができず、冷や汗が流れたり、急に鼻血が出たり、毎日かなりの緊張状態でした。西村 私も担当する学生が病院実習をしているので、参考にさせていだきます。 2つめの質問ですが、取得した国家資格を職業として生かすことは、考えなかったのでしょうか?井戸川 薬剤師になるという選択はできませんでした。働き始めたことにより、「人間として」の自信は回復してきましたが、「薬剤師として」の自分に、どうしても信頼が置けなかったのです。医療を学んだ者の最後の意地のようなものです。西村 職業意識や、ご自身に対する厳しさが表れていますね。 最後の質問ですが、もしも大学で就職支援を受けるチャンスがあったなら、どのような支援がほしかったですか。井戸川 私は発達障害者である自覚を持つチャンスがなかったので、それを指摘いただける機会があればよかったと思います。 また、自己分析には非常に時間がかかります。できれば大学卒業後すぐに就職できる体制を作りたいので、在学中から、第三者の支援のもとで自己分析できる機会があるといいと思います。西村 ありがとうございました。離職理由の9割は「ソフトスキル」松矢 指定討論者として、宇都宮大学教育学部特別支援教育専攻の梅永雄二さん、各提言をふまえ、今後のニーズや有効な支援ついてお聞かせください。梅永 私は、もともと障害者職業センターのカウンセラーとして、15年ほど働いていました。これまで、600人ほどの発達障害者の就労支援に関わりましたが、先ほど岡田さんがおっしゃっていた通り、就職しても定着しない方が多かったのです。 当事者にうかがった離職理由は、「簡単な作業ができなかった」など仕事そのもの、「会社でいじめを受けた」など対人関係、「自分のペースで働けなかった」など発達障害者の適性の3つに分けられます。仕事そのものが理由の場合は「ハードスキル」、対人関係や発達障害者の適性が理由の場合は「ソフトスキル」といいます。米国のある機関の報告によれば、発達障害者の離職理由の約9割が「ソフトスキル」だそうです。つまり、仕事そのものに対する支援・指導も必要ですが、それ以外の支援のほうが、はるかに需要が高いということです。 経団連によれば、大学の新卒に必要な能力の1番がコミュニケーション能力だそうです。この能力について不得手なのが、発達障害者です。女性のアスペルガー症候群の方で、昼休みの女性同士の会話がいやでいやで、仕方なくトイレでご飯を食べているという方がとても多いことにも、象徴されています。 さまざまな事例から見えてきたことなのですが、いま、支援者は、仕事を教える役割から、企業と発達障害者の間に立ってコーディネイトするような役割に変化してきています。「ソフトスキル」の支援が求められていることを実感します。 本日はパネリストのみなさんのお話にとても共感しました。ありがとうございました。参加者からの質問質問者1 本日のような内容は、経営者の方向けにお話しする機会はあるのでしょうか。佐藤 地域障害者職業センターでは、障害のある方だけではなく、事業主の方、関係機関の方も支援対象としています。個別相談や事業主支援ワークショップなどにより対応しています。また、センター以外でも、セミナーを開かれる機会は増えています。質問者1 ハンディキャップを持った方を支援する社会が、本当にいい社会になると思うので、ぜひ経営者の方に発信していき、社会全体で考えていくことを進めていただけたらと思います。質問者2 感覚過敏の引きこもり状態にいる人に対し、在宅雇用は考えていますか。通うことにハードルがある方はたくさんいると思うので、ぜひお聞きしたいと思います。梅永 私が親しくしているアスペルガー症候群の男性は、在宅のプログラマーとして頑張っています。また最近、カナダではセルフエンプロイメントという、発達障害者が1人でやる仕事も増えているようです。障害者職業センターではいかがでしょうか。佐藤 事例はまだ少ないです。ただ、今後の可能性としてはあるのではないでしょうか。松矢 2018年度から、精神障害者のいわゆる雇用義務化が始まります。本日、たくさんの課題が出ましたが、新しい時代を見据え、これらの課題を一つひとつ解決していかなければなりませんね。本日はありがとうございました。梅永雄二さん障害者週間連続セミナー「『働く広場』公開座談会」誌上採録平成26年12月5日(金)、有楽町マリオン「朝日ホールスクエア」で開催

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