2015-04
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12働く広場 2015.4 弱視者がものを見るとき、これまで遠くのものは「単眼鏡」、近くのものは「拡大鏡」などの視覚補助具を使用するのが一般的でした。ところが、これらを使用することに、抵抗感をもつ弱視者が多いのだと氏間先生はいいます。 「いくら便利だからといって実際に、『さあ、あしたから使おう』と思う人は多くありません。なぜなら、目立つし、かっこわるいから。周囲は、『それなら、使いたくなるような魅力的な視覚補助具をつくろう』とはなりません。『本人が恥ずかしがるから、しかたない』と、利用しない原因を、障害者本人に当てはめてきました」 しかし、2010(平成22)年、iPadを発売日の翌日に購入した氏間先生は、視覚障害者の生活環境を変えてくれるアイテムになると信じ、研究を始めました。 「iPadのいいところは、弱視者に限らず、だれもが日常的に使用するところ。見た目にも、スタイリッシュでかっこいい。いわゆる『普通のもの』を視覚補助具として活用できるようになることは、弱視者やその支援者にとって、とても大きなできごとなのです」 氏間先生の専門は、主に教育現場での支援。具体的には、どのようなIT活用事例があるのでしょうか。新たな活用方法を考える際、氏間先生は、「SAMRモデル」というフレームワークを参考にするのだそうです(次ページ参照)。 「第一のステップは、これまで使用していたものの『代替』としてITツールを使用すること。例えば、机上の資料を読むとき、文字を大きくする役割を、拡大鏡からiPadに代替する。iPadのカメラ機能は、画面を指で操作するだけで、映した範囲の文字サイズをかんたんに調整できるのです。とてもイメージしやすく、取り入れやすい」 ただし、それだけではITの魅力が生かしきれない、というのがこのフレームワークの考え方です。iPadに搭載された機能を活用して、これまで以上に効率化することを目指します。 「先ほどの例でいうと、カメラ機能で拡大した文字を、リアルタイムで読むのが『代替』なら、撮影後、記録した画像に文字を書き込むなどするのが『増強』。機能を生かし、増強することで、より便利に使うことができるのです」 iPadに直接大きな文字を書き込んだり、PDF化して拡大した教科書を読んだりするなど、活用方法は広がりま障害者のための情報バリアフリー化事情「だれもが使えるiPadを視覚補助具に」新発想が弱視者の社会参加を支える視覚障害者の学びや就労を支える視覚補助具。とりわけiPadは、弱視者やその支援者にとって、便利なアイテムとして注目されています。なぜ、このようなITによる支援が進んでいるのでしょうか。その理由を知り、応用することで弱視者がより生きやすい、働きやすい社会の実現につながるかもしれません。IT活用の現状と魅力について、弱視者支援の研究を行う広島大学大学院 氏うじ間ま和かず仁ひと准教授にお話をうかがいました。Vol.5抵抗があった「拡大鏡」からスタイリッシュな「iPad」に「代替」から始める弱視者支援の具体的事例NOTE広島大学大学院教育学研究科 氏間和仁 准教授自身も弱視者。盲学校で12年間の教員生活を送った後、福岡教育大学講師・准教授に就任。その後、広島大学教育学部、同大学大学院教育学研究科准教授に就任し、現在に至る◉ 従来の視覚補助具とiPadとの違い●見た目がかっこいい●障害のない人も普通に使える●汎用性があり、購入しやすい視覚補助具としてiPadを使用従来の視覚補助具(右:単眼鏡、左:拡大鏡)

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