2015-04
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3働く広場 2015.4チを育てていくのも一つの手だと思います。――障害者雇用担当の人を配置する余裕はないという企業もあると思いますが。大橋 障害のある方を特別だと思っていると、そうなるのではないでしょうか。会社では病気やケガで休む社員がいます。長く働いていれば、だれでも心が折れるときもあります。年をとったら必ず障害者になるのに、自分は違うと思って生きている人が多すぎると思います。自分も同じだとみんなが発想を変えれば、むずかしいことではないと思います。 最近、レジリエンス(resilience)という言葉を知りました。へこんだら立ち直る力、逆境に勝てる強い力、精神的回復力という意味です。その力を一番持っているのが、この社会で生きていくのにものすごい努力をしてきている、障害のある人たちではないかと思います。一緒にいると、自分が悩んでいることがちっぽけに思えます。障害のある人たちがなぜこんなに、いきいき働いているのかと考えたとき、障害者雇用の枠を超えて、会社が生き残っていくためのヒントを持っている人たちではないかと気づいたのです。 ――どんな人材を求めていますか。大橋 会社にとって、利益につながること。それは、健常者も障害者も同じだと思います。さらに良好な人間関係を築けることと、生きる力が備わっていること。この3本は必要ですね。企業がほしい人材の基準を下げる必要はないと思っています。労働の対価としてお給料を払うのですから、会社の戦力になることが大前提です。そこまでいっていなければ、研修などで育てられるか、そういう要素を持っているかを見抜くことが大事です。――特別支援学校や就労支援の人たちに望むことはありますか。大橋 就職をするうえで、大事なことが3つあると思います。ご本人が自分のことを知っている、自分に肯定感を持てている、生きる目的を見出している。この3つがないと働き続けるのはむずかしいと思います。実習に来る高2、高3の生徒たちは、障害があるという自分と向き合っていない人たちが多いんです。先生にお聞きしたら、「高校では無理です。中学でやってくるべきことです」。中学の先生は、「それは家庭がやるべきことです」。親は、一番大事なことなのに、本人にきちんと伝えていないことが多いようです。 私は実習で最初にお会いしたときに、「あなたの手帳の種別は何ですか、あなたの特徴は?」とお聞きします。そのうえで、大事なこととして、自分のことを肯定できているかどうかも見させていただいております。後ろ向きの人は、いろいろなことを人のせいにしたり、まわりのせいにします。働くことと生きることはイコールだと思います。「労働の対価としてお給料を払える、そこに近づけるような人を送り出してください」と親御さんや支援者の方たちにはお願いしています。 ――障害者雇用にかける熱い思いをお持ちです。なぜですか?大橋 私は中学校の教員をしていました。個別支援学級を担当したとき、教え子が「普通になりたい」と努力する姿を見ていて、悲しかったのです。障害者手帳があっても、彼は彼のままで、幸せに生きていける社会にしたいと思いました。「障害のある人の働く場は少ない」といわれていたので、障害者を雇用する側にきてみました。 だれもが「生まれてきてよかった」と思える人生を歩めたらと思います。雇わない企業が悪い、社会が悪い、制度が悪い、法律が悪い、先生が悪いなど、何かのせいにしても、何も生まれません。本人は自分を受け入れて、自分のままで世の中をポジティブに生きていく。その人が元気になれるように背中を押す人がまわりにいると、社会がもっと豊かになっていくと伝えられたらと思います。――お好きな言葉はおありですか。大橋 「そのまんまで、素敵だよ!」。たまたま障害者手帳を持っているけれど、本質的なものは否定しなくていいんだよ。障害があるまんまでいいんだよ。私は手帳を持っていないけれど、将来は彼らたちの世界に入れてもらうんですよ。彼らが年金を払ってくれることを考えたら、そんなに差はないと思っています。障害者雇用の域を超えているかもしれませんが、ノーマライゼーションとはそういうことだと思います。――ありがとうございました。これからもますますご活躍ください。大前提は、会社の利益につながること「障害があるまま」で生きられる社会に

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