働く広場2017年10月号
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28働く広場 2017.10研レ究ポ開ー発ト発達障害者のコミュニケーション・スキルの特性評価に関する研究(その2)ー新版F&T感情識別検査の試行に基づく検討ー1 研究の趣旨私たちは他人との対面コミュニケーションにおいて、無意識に相手の表情や声の調子から感情を推測することができます。しかし、「本音と建前」という言葉が表しているように、大人同士のコミュニケーションでは言葉のみからは本心が読み取れないことも多く、表情や声の調子などの「言葉に依よらない手がかり」が相手の心を読み取る上で役立つことがあります。ところが、発達障害、特に自閉症スペクトラム障害のある人については、表情や声の調子から相手の感情を読み取ることがむずかしいことを示す研究結果が報告されています。そのため、職場でのコミュニケーションに対する支援を考える上で、表情や音声から他人の感情を読み取る際の特徴を評価する方法が必要です。本誌2014年9月号において、表情や音声から感情を読み取る際の特徴を評価するツールとして、障害者職業総合センターが開発した「F&T感情識別検査4感情版」と「拡大版」を紹介しました。しかし、当時の「拡大版」の開発では、検査を受ける人の年齢によって検査結果の評価基準を変える必要があるかについて検討することが課題として残されていました。そこで、この研究では、20代から50代の300人近くの発達障害の診断がない在職者の方々に「拡大版」のデータ収集にご協力いただき、検査結果の評価基準を作成しました。また、20人以上の発達障害の診断がある方々に「4感情版」と「拡大版」の両方の検査を受けていただき、検査結果をお伝えすることを通じて、検査結果をフィードバックする際の留意点をとりまとめました。そして、これらの研究成果に基づいて、「4感情版」を改修した「4感情評定版」と「拡大版」を再構成した「快―不快評定版」の2つの検査をパッケージ化したソフトウェア「新版F&T感情識別検査」(以下、「新版F&T」)の完成に至りました。詳細な研究結果は報告書をご参照いただくとして、本記事では新版F&Tの概要を紹介します。2 4感情評定版の紹介4感情評定版の検査では、4人の登場人物のうち1人が、はっきりと感情を込めて話している動画や音声(以下、検査刺激)が呈示されます。登場人物が表現している感情は「喜び」、「悲障害者職業総合センター研究部門しみ」、「怒り」、「嫌悪」の4種類のいずれかです。検査刺激は3種類の条件別(以下、「呈示条件」)に呈示されます。「音声のみ条件」では、音声は呈示されますが、表情は呈示されません。「表情のみ条件」では、表情は呈示されますが、音声は呈示されません。「音声+表情条件」では、音声と表情の両方が呈示されます。検査を受ける人は検査刺激から読み取れた登場人物の感情を「喜び」、「悲しみ」、「怒り」、「嫌悪」のなかから最も当てはまるものを選びます。それでは、この検査を受けることでコミュニケーションのどのような特徴について評価できるのでしょうか。表1に検査結果の例を示しました。この表は検査刺激が表現した感情の種類別に、検査を受けた人が回答した感情の種類を表1 4感情評定版の検査結果の例(一部抜粋)*   の数字は正答数を、   の数字はネガティブな感情(悲しみ、怒り、嫌悪)間の混同による誤答数を表しています。上表は本記事の説明用に作成しており、検査用ソフトウェアで表示されるイメージとは異なります音声Aさんの回答喜び悲しみ怒り嫌悪呈示された感情喜び6002悲しみ0503怒り2150嫌悪3203合計11858

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