働く広場2017年11月号
5/36

3働く広場 2017.11「面白い」ととらえていただければ、障害があろうがなかろうが、みんなが楽しく働けることにつながっていくのではと思います。 一方で、福祉側も、企業から学ぶことはたくさんあると思います。いま、福祉施設はいろいろなチャレンジをしてきていますので、福祉と企業の壁を超えて、さまざまな工夫を取り入れるお手伝いができればと思います。――企業に就労している知的障害者が働き続けるためには、何が必要だと思われますか。上村 まずは、生活面でのサポートだと思います。企業が生活面にまで入っていくことはむずかしいですが、本人の変化をキャッチすることはできると思います。 「虐待されているようだ」とか、「子どもの収入を勝手に使っているようだ」とか、「落ち着きがなくなった」とか、「職場内で金の貸し借りがある」とか、一緒に働いている相談員や指導員の方が、いままでと違う状況を察知して、問題を発見していただくことがポイントだと思います。 就労支援の方々は、いつも職場にいるわけではないので、後から問題について聞いたりする場合もあります。大事なのは、風通しのよいネットワークをつくっていきつつ、企業の最前線で一緒に働く人だからこそ気づける情報を共有することです。企業と就労支援機関の担当者と一緒に参加する勉強会もありますので、活用するとよいでしょう。そして、解決に関してはソーシャルワークをになう就労支援機関や就業・生活支援センターがうまく連携していくことも重要だと思います。――著書では「一緒に働く従業員の理解も大切だ」と、説かれています。上村 先日、ある特例子会社で「虐待について」お話をさせていただきました。私は、それぞれの職場に合った合理的配慮をきちんと考えていけば、虐待は起こらないと思います。もともと企業には、お互いを支えあうチームワークを重視する文化があるので、合理的配慮も含めて企業内で考えることが大事だと思います。 ただ、合理的配慮は非常に個別性の高い話です。求められる配慮はそれぞれ異なるので「知的障害者だからこうすればいい」というように、決めつけるのは危険ですね。「障害者だからできない」というわけではなく、同僚として力を発揮してもらうには、ちょっとした配慮が必要な人たちです。どの職場でもチームワークは必要ですが、障害者雇用の職場では、より大事ではないかと思います。――就労を継続していくうえでの一番の課題は何でしょうか。上村 生活の支援と労働の支援をいかに統合的に行えるかではないでしょうか。継続支援のむずかしいところは、“終わり”がないので、介入するタイミングがはっきりしないことです。だからこそ、最前線で一緒に働いている方の目が大事ですし、それを吸い上げる職場内の風通しと就労支援機関との連携も大事だと思います。 よかれと思ってあまりにも手厚くするのは企業として不自然ですし、“障害者だから全部支援する”というのは、結果として本人の自立を妨げたりします。人が人を“支える”という“考え方”自体にもむずかしいところがあると思います。 障害者、特に知的障害のある方たちと接した経験を持つ企業の方は多くはないでしょう。「障害者は働けるの?」と思う方もいると思います。障害者雇用の意義、価値は、たくさんの障害のない一般の従業員の目に触れて、障害者であっても「こんなこともできるのだ」、「障害者手帳を持っていても働けるのだ」とわかってもらうことにあると思っています。そのような情報を共有し、専門家だけではなく、みんなで共生していくことが大事ですね。――企業で働いた経験、ジョブコーチの経験、障害者と一緒に働いた経験からのお話は説得力がありますね。上村 私は、障害者雇用だけではなく、福祉の分野においても、答えは現場にあると思っています。ですから、障害者雇用に関して研究していくうえで現場とかかわっていくのは必須だと思います。この分野は悩むことをやめたらいけない。障害のある方たちの個別性を大事にして、過去の経験に甘んじることなく、これからもお手伝いしていければと思います。――今後の活躍も期待します。専門家だけでなく、みんなで共生を生活面のサポートと同僚の理解

元のページ  ../index.html#5

このブックを見る