働く広場2017年12月号
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19働く広場 2017.12小仲 邦生こなかくにお 1969(昭和44)年3月、デザインを学んでいる友人から「工芸ニュース」という冊子を渡された。そのなかの論文で、社会福祉法人太陽の家理事長(故)中村裕ゆたかは、『太陽の家は授産場から出発している。しかしその目標は、身障者が力を合わせ、一般の工場と全く同様に運営し、自からの手で社会的に自立することなのである。それはもはや授産場ではない。立派な生産会社であり、身障者の社会復帰、社会への参加の場である。税金の消費者ではなく、支払い者としての誇りを持つことができる。~中略~ 太陽の家の玄関には、“太陽の家の社員は、被ひ護ご者ではなく、労働者であり、後援者は投資者である”と大書してある。』(「工芸ニュース6」36)と記した。卒業後の進路も決まっていない時期、この論文をきっかけに、私は「いつか太陽の家で働きたい」と思うようになった。 その思いが届いたのか、1975年12月、別府に新設された障害者職業センターへの前任者の転出にともない、私は、後任のケースワーカーとして採用された。業務は、入所面接から就職支援まで広範囲に渡った。入所の可否を決める判定は、「メカニックトレイン」と称するプラスチック製の電車を用いて行った。「解体」、「組立て」、「ゼンマイを巻いて動かす」という一連の過程を、理学療法士、心理士、人間工学専門職、看護師、職業指導員、ケースワーカーなどが観察する。両上肢に障害のない脊髄損傷や、ポリオ後遺障害の人々は短時間でできるが、頸髄損傷、脳性まひ、筋ジストロフィー症、片麻痺やサリドマイド薬害などの方々は時間を要する。 見守る職員は、要する時間だけでなく、残存する機能をいかに活用しているか、なども注視する。なかでも授産場の指導員は、そこで得られた知見から“その人のもつ力”を引き出そうと、作業台や治工具の開発など、労働環境の改善に日にち夜や取り組んでいた。授産施設が“出口のないトンネル”と揶や揄ゆされていた時代に、職員は常に「障害のある人々の、働くことへの渇望感を、どのようにすれば達成感に代えられるか」を考えていた。まさに、理事長以下全員が“太陽の仲間たち”という意識だった。5年間の勤務ではあったが、いい尽くせぬ勉強をさせていただいたことに、心から感謝している。 1982年4月、熊本託麻台病院の医療ソーシャルワーカーとして勤務されていた齊さい場ば三み十と四しさん(「働く広場」編集委員)の紹介で、私は熊本理学診療科病院(現・熊本リハビリテーション病院)の医療ソーシャルワーカー(MSW)として勤務することになった。 福祉施設や、職業リハビリテーション領域の人々とかかわっていくうちに、「働きたい」と考えている重度障害者が多くいることがわかった。阿蘇で障害者雇用を積極的に進めている車いすメーカーの西にし嶋じま龍たつ文ふみさんは、太陽の家“授産生”であった。太陽の家を退所後、知人が興した車いすメーカーの総務兼営業部長をしていた。ともに「太陽の家に居た」ということで、重度障害者の就労環境の整備の必要性を話していくうちに「ならば自分たちでつくろう」と、数人の仲間と1988年4月、熊本市では第1号となる障害者地域生活作業所「ライン工房」を創業した。小さなプレハブだったが、夢の第一歩をふみ出した。 「重い障害があっても地域で暮らそう(Livelihood)」、「自立(Independence)の夢を思い描こう」、「そう考えることは普通(Normalization)のことではないか」、「そのためには生きていく力(Energy)を身につけていく場所(工房)が必要だ」と、頭文字を合わせ“LラインINE工房”と命名した。 1994(平成6)年11月、社会福祉法人としての認可が下り、翌年7月1日に定員20人の通所授産施設ライン工房が開設した。2007年4月からは、就労継続支援B型事業所「社会就労センター ライン工房」となり、現在約50人の障害のある仲間が通っている。2001年4月にはグループホーム「ゆうゆう館」を、2011年4月にはグループホーム「れん」を開設し、2018年春には、3カ所目となるグループホームを開設する予定である。障害の有無にかかわらず「“地域生活が当たり前”と思えるような社会をつくりたい」という思いは、これからも変わることがないだろう。地域で暮らす力をつけよう第3回こなかくにお 熊本保健科学大学リハビリテーション学科 非常勤講師。明治学院大学社会学部卒業後、社会福祉法人「日本点字図書館」での勤務を経て、1975(昭和50)年に社会福祉法人「太陽の家」、1980年に参議院議員八代英太事務所に勤務。1982年には社会医療法人熊本丸田会 熊本リハビリテーション病院、2001(平成13)年には社会福祉法人「リデルライトホーム」での勤務を経て、現在に至る。長年、医療と福祉、リハビリテーションにたずさわる。

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