働く広場2018年10月号
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24働く広場 2018.10構築することといえるでしょう。 では、実際に在宅雇用されている人の現場はどうなのでしょうか。(1)病気とともに生きる愛知県で在宅社員をしている市村奈な津つさん(30歳)は、生後14日目の検診で、完全大血管転位症と診断された先天性心疾患があります。この完全大血管転位症とは、心臓の左右の心房と心室は正常につながっているものの、大動脈と肺動脈の血管の位置関係が反対(転位)になっている病気です。発生頻度は先天性心疾患全体の約4~8%を占め、手術の成功率は高いのですが、術後は成人期になっても難治性の不整脈や心不全を起こすとされています。市村さんは、4歳ころから手術のため入退院をくり返してきたのですが、自分の病気への自覚が深まるにつれて、「いつまで生きられるかわからないなかで、いまを精一杯生きていこう」という固い意志を持って毎日を送っています。大学へ入学した際も、体力の維持や健康状態が非常に厳しく、自力で通学するための運転免許取得を断念したほどでした。「入院しないで通学できること」が当24時の新年の願いだったそうです。不整脈と心不全は予兆なく突然襲ってくるために、症状のコントロールもできません。そのため、主治医・支援機関の担当者、そして何よりも家族(母親)の強固な支援ネットワークが不可欠です。大学卒業時やその後も就職活動を続けましたが、病気との兼ね合いからか不採用が続きました。そのため、就労継続支援A型事業所にしばらく通所しましたが、支援機関に関する情報や難病者に関する情報を入手できないなか、ハローワークで支援センターを知ってからようやく光明を見出し、現在の会社に採用されました。(2)働く現在市村さんは、今年1月の入社直後、またも不整脈と心不全が発症して入院しました。生死の境目をさまよい、ようやく2月に退院して在宅勤務に復帰したばかりです。入社直後は、本社からパソコンの設備や環境調整と技術指導のために1日だけ訪問を受けるのですが、それ以降はすべて「師匠」の指導下での個別指導です。仕事はグループ単位で行うため、本人の作業ペースに合わせてグループから役割が分担されます。何よりも大切なことは、日常的な健康管理です。基本的には、本人の自己管理が前提となりますが、突発的に症状が発現するリスクがあり、予測できないため、支援センターの担当者が頻繁にメールをしたり、月に1~2回ほど自宅訪問をするとともに、母親も勤め先や外出先から何度もメールをして体調の確認をします。本社への日報は必須です。体調や健康状態は必ず報告し、本社の管理部では見落としのないように複数の人でこれを確認しています。本人が自覚できていない可能性があるため、日報は体調の流れを知るうえで、極めて重要となっています。(3)将来展望市村さんには「後悔のない人生を送りたい」という願いがあります。まだ新人のため、仕事を覚えることに必死ですが、グループ内の役割を果たしていくことがⅢ心不全でも在宅就業母親の真美代さんと話す奈津さん愛知県在住の在宅社員、市村奈津さん

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