働く広場2018年10月号
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28働く広場 2018.10研レ究ポ開ー発ト難病のある者の雇用管理に資するマニュアルの普及と改善に関する調査研究 「障害者」なのに障害者雇用率制度の対象ではない? 企業の人事労務担当者や地域の支援者の多くは、この状況に戸惑うのではないでしょうか。「難病による障害」は障害者総合支援法でも障害者雇用促進法でも「障害者」としての支援対象となり相談も増えています。しかし、その多くは障害者手帳をもっていないのです。 障害者雇用率の対象にならないと、専門的な就労支援が受けられないのでしょうか? これまでの調査研究から、難病患者の就労には治療と仕事の両立のための「合理的配慮」や「差別禁止」、「医療や職場との連携」が重要であることが示されてきました。また法制度上でも、障害者手帳制度の対象ではない難病患者も「合理的配慮提供」や「障害者差別禁止」の事業主の法的義務の対象であり、職業リハビリテーションの対象です。難病患者にそのような支援を実現するためには具体的にどうすればよいのでしょうか?  そのヒントは、実際に難病患者を雇用している企業の取組みと、国や企業ががん患者に対して行っている「治療と仕事の両立支援」の動向から得られました。1 企業はなぜ難病患者を雇用するのか? 「法的な雇用義務や助成金などがないと、企業が難病患者を雇用するメリットはない」とまるで常識のように語られることがあります。しかし、あらためて障害者手帳のない難病患者を雇用している全国の企業を訪問して、経営者、上司や同僚、そして患者本人のお話を聞くと、その実際はまったく違っていました。(1)「障害者差別禁止」、「合理的配慮」の実際 訪問した多くの職場では、難病患者といっても外見ではわからず、職場でも特別な配慮がされているとは一見してわかりませんでした。しかし、患者本人から話を聞くと、過去の職歴では、体調悪化で退職、職場からの退職勧奨、職場での体調管理のむずかしさなど、大きな苦労を経験していました。現在の職場では、体調変化に合わせて無理なく通院でき休日がとれることで、障害者職業総合センター研究部門 社会的支援部門仕事が続けられているのです。一方、職場の認識としては、休日シフト制や職場においてチームで引継ぎができる体制などは、特に難病を意識したものというより、子育て中の従業員の雇用管理などと同様の、あたり前のことと認識されていました。 これは、これまでの膨大な患者調査・分析結果とも一致します。難病患者に必要な合理的配慮は、無理のない仕事内容や通院や休憩などへの職場の理解・配慮であることは、くり返し示されてきました。障害者手帳制度で認定されない難病患者は、最初は「軽症」であるため本人も支援を必要と感じず就職も問題なくできることが多いのですが、合理的配慮がないと、治療と仕事の両立が困難になりやすく、症状が重度化し生活・就労が困難に陥りやすいのです。これが、従来の「固定した障害」とは異なる「難病による障害」の大きな特徴です。(2)企業ニーズとしてのインクルーシブ雇用 では、企業はなぜこのような配慮をしてまで、難病患者を雇用しているのでしょうか? それは、地域の企業にとって優れた人材の確保こそが最重要課題であるからです。人材の確保が困難ななか、子育てや介護、持病などの事情について適てき宜ぎ配慮したうえで、意欲があり能力・適性のある人材を採用し、定着してもらえるように取り組むことが、企業にとって死活問題になっています。

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