エルダー2017年10月号
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2017.104経済協力開発機構(OECD)東京センター所長村上由美子さん横並びで昇進できる仕組みを採用してきました。このような日本特有の終身雇用や年功序列に関しては、弊害も指摘されていますが、他国にない強みであることは確かです。 この仕組みは、経済が右肩上がりで拡大していた時代には有効に機能しました。問題は、経済成長が横ばい、または先細りになっている今日において、企業が多くの社員に勤続年数に見合う昇進を約束できなくなったことです。そして、昇進街道からはずれ、働く意欲や、職務そのものを失っても、解雇されることなく「企業内失業」ともいうべき状況に置かれている人が少なからずいます。 そこで、一時的に失業を余儀なくされた人に対する社会的なセーフティネットの強化が必要です。一度失業しても、何度でも再起が可能で、よりよい仕事や職場を求めて転職しても不利がなく、または自ら起業し、ついには成功を手中に収めるようなキャリアが当たり前の雇用システムに変えるべきでしょう。―雇用システムの改革について、経営者や人事部門はどのような方向を目ざすべきでしょうか。村上 単純に、終身雇用や年功序列を廃止して成果主義を導入するということではありません。日本的な安定した人事戦略に成果主義を融合させる、つまり日本の強みを活かしつつ、世界でも競争力を持てる「ハイブリッド人事」を目ざすことです。 そのためには従来の新卒採用にかたよった採用のあり方を変えるべきです。新卒者を採用して長期的視点で育成するのは日本企業の強みですから、それは今後も継続すべきでしょう。 それと同時に、画一的な採用慣行のもとでとりこぼしがちだった多様な人材もバランスよく採用する必要があります。新卒採用にかたよった硬直的な採用では、労働力が減少するなかで優れた人材を確保することは困難です。そして処遇は年功序列の横並びではなく、世界の主流である成果主義や能力主義で行うことです。 年功序列人事のもとで生まれがちであった「出る杭は打たれる」、「右へならえ」的な人材ばかりでは、到底イノベーションは期待できません。先ほど紹介したPISA調査では、日本の若年層の基礎的学力は世界トップクラスでしたが、反面、「自己肯定力」(自信)や「大志」(挑戦意欲)といった項目ではスコアが低いのです。 日本の強みを伸ばしていくためにも、企業の人事のあり方を変えることから人材の活力を一層高め、勝機を確実につかんでいきたいものです。(聞き手・文/労働ジャーナリスト鍋田周一 撮影/福田栄夫)日本の長所は長期人材育成の仕組み成果主義との融合で「ハイブリッド人事」を村上さんは著書を通じて人口減が日本の好機と発信している

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