エルダー2017年11月号
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2017.1162絶妙な腕の感覚で漆うるし刷ば毛けを巧みに使う。店頭の工房での作業は通りから見学できるので、足を止めて見入る通行人が多い学旅行の生徒さんも。そういえば“私の故郷は葛つづ籠ら町まち(滋賀県)というので訪ねてみたかった”という学生さんがいました。城のある町の方でしょうか、城下の職人町の名なごり残かもしれませんね」店内には漆塗りを終え乾燥途中の製品が天井から吊り下げられ、その下で作業をする岩井さんの背後には完成した朱しゅ赤あか、黒、茶の製品が並ぶ。撮影中も多くの人が窓越しにのぞき込んでいく。岩井さんのつづらは、竹かごに和紙を貼り、防虫・防カビ効果のある柿かき渋しぶを塗と布ふして、カシューナッツを原料とした“カシュー漆うるし”を塗って表面を光沢ある質感に仕上げる。竹かごは京都や茨城の業者から仕入れ、和紙貼り以降が岩井さんの作業だ。「カシュー漆に顔がん料りょうを混ぜて色竹と和紙と漆でつくる日常用具「会社勤めから32歳で転身して35年。“つづら”はお客さまにとって一生ものの品です。仕上げには細心の注意を払います」業は幕末の文ぶん久きゅう年間に駕か籠ご※屋が本業であった信のぶ四し郎ろうがつづらの製造を手掛けたのが始まりで、そこから数えれば6代目となりますが、初期のことは詳しくわかっておりません」着物の収納箱としての“つづら”は元禄時代に江戸の商人が婚礼の道具としてつくりだして一般にも普及、呉服の街として名高い日本橋近辺につづらづくりの職人が多く存在した。日用品としても美しい収納箱として全国に広まり、昭和初期には全国で250軒を超えるつづら店があったといわれ、組合も組織されたが、現在は都内にかぎれば「岩井つづら店」の1軒だけである。「着物を着る機会が減りましたからね、全国でも数軒でしょう。うちは甘酒横丁という江戸情緒豊かな場所にお店を構えているおかげで、テレビや雑誌などで取り上げられ、散歩や観光の方が立ち寄ってくださいます。校外学習や修※ 人を乗せて人力で運ぶ乗り物

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