エルダー2017年12月号
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エルダー31FOOD日本史にみる長寿食食文化史研究家● 永山久夫 コーヒーの消費量が毎年のように伸びています。日本人の生活に、いまや不可欠になったコーヒー。日本人は、江戸時代には、すでにその黒い飲料の味は知っていましたが、評価はさんざんなものでした。 後になって、江戸一番の狂きょう歌か師しとして名をはせた蜀しょく山さん人じん(1749‒1823)も、長崎で口にしていますが、感想は最悪で、「こげくさくて、味わうに堪えず」と日記に記しています。 その後、黒船が来航するようになり、横浜や長崎などの開港地に、西洋料理の店がオープンし、メニューにコーヒーものるようになります。 明治時代になると、牛肉やバターなどが料理に用いられるようになり、その苦い飲み物も、ハイカラな文明の味に映りました。 1872(明治5)年の『新聞輯しゅう録ろく』に、「食後は、必ず珈琲を飲むべし、脂し油ゆを除く効あり」と紹介され、コーヒーの口中に残る油あぶら気けを除去する効能が知られていました。 1876年には、東京の浅草にコーヒー茶屋が出現。明治のなかごろには、上野で現在の喫茶店につながる本格的なコーヒー館かんが開店しています。紳士や淑女たちのデートの場所としても、人気があったようです。コーヒーは苦いセンブリの味田舎からはじめて上京した中年男の二人連れが、ビヤホールに入り、出てきたコーヒーを口にした一人が、「にげえ」といって顔をしかめると、同行の男が「センブリと思って一息に飲んでしまうべえ」と唸うなったと、当時の風俗誌にのっています。 コーヒーの大きな特徴は苦みにあり、その独特な味や香りは抗酸化成分のクロロゲン酸です。クロロゲン酸は、コーヒーの生なま豆まめに含まれるポリフェノールの一種で、ガンの予防作用で注目されています。 眠気を防ぐカフェインには、脂肪の燃焼を促進する効果、さらに集中力を高め、ダイエットの働きがあることでも知られています。ただ、摂りすぎると不眠症などの副作用が生じる場合がありますので、ご用心です。 最近ではコーヒーに寿命を延ばす効果があるという研究も増えており、コーヒーをよく飲む人は糖尿病のリスクも低くなる傾向があるそうです。1日に4杯前後が健康によいといわれています。コーヒーは文明開化の味291

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