エルダー2018年3月号
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2018.314無理をしない働き方で勤務を続けている。賃金は、公的年金の受給をあわせて定年以前と手取り額が同程度となるように一人ひとりについて調整。また、継続雇用後も働きぶりを評価して、結果を賃金に反映している。役職は定年までだが、後継者がいない場合は継続することもある。また、特に優れた技能を持った元役職者には、定年後は「指導員」の肩書で若手従業員の育成をになってもらう。2018年1月現在の同社の従業員数は150人。60歳以上は41人(全体の27%)、そのうち65歳以上は21人(同14%)。最高年齢者は78歳の塗装作業を担当している男性従業員である。退職時期は自らが決めることとしており、70年間勤めて84歳で退職した男性従業員がこれまでの最高年齢である。熟練の技や勘に頼らないプログラム化、機械化を推進ものづくりの現場といえば、熟練者の技能、技術をいかに若手に伝えていくかが企業の存続にとって重要課題であるとよく耳にする。そのことを目的の一つとして高齢者雇用に注力する企業も多いが、辻井製作所の場合、直接的な技能、技術の継承がその目的ではなかった。というのも、同社ではより高度な製品づくりを追求して人材の育成に力を注いできたが、同社の辻井一男代表取締役社長は少子高齢化の進展によりそうした継承はむずかしくなることを見越して、十数年前から熟練者の技術のプログラム化に着手。熟練者の技や勘に頼らない製品づくりを目ざして、製造工程の標準化、機械導入による自動化も進めてきた。2003年には、木型を使わず、CADプログラムで形状を設計し、固めた砂を下方から切削加工し、砂型を直接製作する「倒立型マシニングセンタ」を開発するなどしてさらにIT化を推進。熟練の技がなくても、高度な製品づくりを可能とする生産体制を整えた。こうした取組みは、高齢の熟練技能者の仕事を奪うように見受けられるが、同社の熟練技能者からは「機械が導入されたことにより、作業が楽になった」という歓迎する声が聞こえてきた。プログラム化や自動化により、同じ製品をつくるにしても作業における身体的負荷の軽減が図られ、結果的に高齢従業員がより長く働ける環境が整ったのである。辻井社長が見越した通り、少子高齢化の進展、生産年齢人口の減少にともない、昨今、特に人手不足が深刻化している。同社においても、人材を募集しても川口市の工場では応募者がほとんどいない状況という。しかし辻井社長は「技能継承の観点から求人をしていますが、応募がなくても実務上の影響はほとんどありません。いまの人材で対応できています」と現在の状況を語った。また、同社で早くから高齢者雇用に取り組んできた理由を次のように明かした。「現在の当社があるのは、これまで勤めてくれた従業員と現在も長く勤めている従業員がいてこそのこと。そうした従業員にこれからも長く勤めてほしいと考えています。また、人生100年ともいわれ、健康寿命も延びていますから、気力、体力がある人がいつまでも勤められる会社でありたいと思います。そのために機械を導入したのです。機械化により、体力のいる作業はほとんどなくなりました」辻井社長は「長く勤めている従業員を大事にすること」を大切にしている。「あとは、毎日笑って、常にプラス思考でいること。思ったことは実現する。そのためにがんばることが私の役割でしょう」とにこやかに話す。しかし、振り返ると苦労もさまざまあった。例えば、リーマンショック後の景気後退期には仕事が激減し、本来の90%の給与を支払いながら全員に休んでもらった。そうした状況でも高齢従業員を含めて全員の雇用を守ってきた。現在、同社では年齢にかかわらず辞める人は

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