エルダー2018年3月号
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高齢者に聞くエルダー31会社を辞めたものの、まったくの素人がどこまで葬儀の世界に入り込めるのか不安もありましたが、もともとのん気な性格の私はできることから一つずつやっていこうと気楽に構えました。手始めに自宅の一角を事務所にし、葬儀会社の部長職に就いていた妻の大学時代の友人を専務に迎えることに成功しました。この人には妻だけでなく、私の父や義父の葬儀でもたいへんお世話になりました。社長の私、葬儀のプロの専務が中心となり、4人で葬儀会社「アイユーメモリー」のスタートを切りました。最初から株式会社の体制を整備したのはこの業界への期待が大きかったからです。しかし、現実は厳しく軌道に乗るまで3年ほどかかりました。ほかの人の給料は何とかひねり出しましたが私は1年間無給でした。現代ではほとんどの人が病院で亡くなります。だから病院には指定業者がいて一切を取り仕切るわけですが、ここになかなか切り込めませんでした。営業の経験を活かして病院に日参しますが、同業者がどっしり居座っていてとても歯が立ちません。結局効果があったのは、昔の仲間のつてでした。周囲の応援があって、やっと二つの病院の指定業者になることができ、そこからは口コミで少しずつ仕事が広がっていきました。最初に葬儀を依頼してくれたのもかつての私の部下で、何と社葬でした。人脈は金脈に勝ります。「アイユーメモリー」の特徴はリピーターが多いということ。前に家族を見送った方が、親族などを亡くされるとまた依頼があるという。最近は「小さなお葬式」という名称で取り上げるマスコミも増えている。内山さんの先見の明が光る。人生の旅の終わりに寄り添って世界に類を見ないような高齢化社会は、日本古来の葬儀の形も変えつつあります。見送られる人も見送る人も高齢ですから、見送る人に負担がかからないような葬儀の形をこれからもいろいろ考えていきたいと思います。形ではなくそこに「心」があるかどうかだと思い「真心」と「信頼」という言葉を社しゃ是ぜに掲げました。私たちの仕事は、断るということができません。365日24時間体制です。病院からの連絡が主ですが、時には個人で連絡してこられることもあります。事務所の2階に寝起きしている私は電話口に出ることも多く、突然の事態に動揺するお客さまに心を込めてお話しするようにしていますが、営業マン時代に会話の力を徹底的に鍛えられたことがいま、役に立っています。何事も経験が大切だと若いスタッフには折に触れ話しています。当社では一般の葬儀だけではなく「国際霊柩」も手掛けています。これは駐在や旅行など海外で亡くなったご遺体を空港からご自宅まで搬送させていただく仕事です。一般の葬儀よりも複雑なご事情が背景にあって、また、異国の地で亡くなられた無念を思えば本当に心が痛みますが、それだけに少しでもよい形でご自宅にお送りしようと、スタッフは心を一つにしてご遺体と向き合います。チームワークがなくては成り立たない仕事です。「国際霊柩」のお話も、私のかつての古巣である会社の系列保険会社から声をかけていただきました。多くの方のご支援があってのいまがあることを、肝に銘じたいと思います。けっこう体力がいる仕事なので、毎日ジムで1時間ほど汗を流しています。ゴルフはずっと続けていて、いまも年3回はコースに立っています。健康面では血圧が少し高いくらいで、特に心配はしていません。お酒は好きですが煙草は若いころやめました。ゴルフ仲間は、私のようにフルタイムで働いている人は少ないですが、それでも何らかの形で社会にかかわっています。社会貢献というとおこがましいですが、だれかの役に立ちたいという気持ちが生涯現役につながるのではないでしょうか。70歳の私は果たしていつまでがんばれるかわかりませんが、中野にしっかり根を下ろし、人生の旅の終わりにそっと寄り添い続けたい。30年間、旅のお手伝いをし続けてきた私にふさわしい仕事だと思っています。

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