エルダー2018年3月号
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2018.338 ある日夜勤時に職場でボヤを起こしてしまいました。そこで上司が事情をたずねたところ、「黙ったまま泣き出して対応に困った」ということで、労働衛生コンサルタント(保健師)への相談につながりました。【対応のポイント】①Aさんへの対応 これまでの健診結果の経過から大酒家であることがわかり、「飲まずにいられなくなり」、「夜勤の合間の仮眠のときもつい飲んでいた」③職場への対応 ストレスチェックの結果に職場の問題は見えませんでしたが、「ソーシャルサポート(職場内の相互支援)」は十分でないことがうかがえたため、お互いを思いあえるような声かけの工夫を考えてもらいました。④その後の経過 Aさんはこの一件を重く受け止め、アルコール専門外来受診で禁酒に成功。「体がとても楽になった」とのこと。干渉しない雰囲気の職場ながらお互いに関心を持ち、夜勤を気遣った「眠れている?」、「ご飯は食べられている?」といった声かけが自然にできるようになりました。【事例からの示唆】•「ミス・事故・トラブル」に着目し、その要因に高齢労働者の特性への対応の必要性を見いだせました。•本人の判断力が落ちている場合は、ご家族などに説明し、理解を得ることが必要です。•産業医や保健師などの専門職は上司の代わりはできませんが、個人の仕事に関連した健康課題を整理し、職場のメンタルヘルス対策につなげられることがあります。•メンタルヘルス対策は、小さな思いやりとちょっとした「声かけ」から始められます。•高齢になると持病を持つことが増えるからこそ、労働者が「仕事のできる体調にコントロール」できるよう働きかけることが重ことを確認しました。 飲酒と喫煙だけを楽しみに夜勤のつらさを紛らわせていたこともわかりました。 退職後、子どもが家を離れ、職場に親しい人はいません。かつての後輩である上司とは「遠慮があって」、お金を得るためだけに出社していたというつぶやきも聞かれました。 仕事に関連した「ミス・事故・トラブル」は心身不調のサインの場合もあります。今回のボヤ騒動は飲まずにいられなくなり、酔ったうえでのたばこの火の不始末が原因。アルコール依存症の可能性があること、「この機会に今後の仕事と生活について考え、適切な治療を受けることでこれからが変わる」旨を妻同席の場で伝え、アルコール専門外来への受診をすすめました。②管理職への対応 注意のむずかしい関係でも、「仕事の支障となる変化のサインは見逃さず伝える必要がある」ことを伝え、小さな変化も感じ取れる信頼関係を意識したコミュニケーションを積極的にとることをすすめました。1.視機能の変化、聴覚機能の変化◦照度を上げて明るくする、大きめの文字やコントラストのはっきりした色使いを用いる◦背景騒音を減少させる、警告音だけでなく視覚での警告情報が伝えられるようにする2.筋骨格や身体反応の変化◦長時間筋力を要する作業を減らしたり、補助具を用いる◦重量物取扱いの基準を検討したり、取り扱い重量物には重量表示を行う◦とっさの反応を必要とする作業をなくす◦滑ったり転倒したりしないような段差や床材、手すりなどの工夫を行う3.温度への耐性の変化◦暑熱職場や寒冷職場の温熱対策や保護具の着用や継続時間の低減などを行う4.生理機能の変化◦呼吸が激しくなる作業を減らしたり、曲げ、伸ばし、ひねりの少ない作業にする◦できるだけ立ちっぱなしの作業を減らす◦仕事の合間に手洗いに行きやすくする5.判断力や記憶力の変化◦作業前に計画を立て作業内容をはっきり具体的に伝える◦できるかぎり定型の作業手順にもとづく業務とする6.生活習慣病などの疾病罹患リスクの増加◦いわゆる生活習慣病を抱える人が増え、関連する脳心臓血管疾患やがん、長年の飲酒習慣の影響からのアルコール依存症への罹患リスクも高まる。持病のリスクを本人が理解しコントロールできるように、仕事との適応について医師や保健師などの専門職からの支援を活かす7.個人差の拡大◦本人と一緒に業務の適性や適応の確認をこまめに行い、利点やサポートの必要な点について年齢差のある同僚などとの相互理解をはかる◦「仕事を行う」うえで必要となる健康情報については、健康診断や日々の体調確認などを通して管理者、本人で食い違うことのないよう過不足なく共有する図表4 加齢による心身の機能の変化にともなうストレッサーとその軽減策の例出典:厚生労働省「高年齢労働者に配慮した職場改善マニュアル」をもとに一部改編

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