エルダー2018年3月号
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2018.34桜美林大学大学院老年学研究科教授渡辺修一郎さんというと、ステレオタイプ的にネガティブな使われ方がされがちです。しかしながら、この10〜20年ほどの間に、心身の機能が5〜10歳程度若返っており、とくに65〜74歳は活発な社会活動が可能な人が増えてきました。こうした背景が、高齢者の定義を見直す機運を呼んだのです。そこで提言は、65〜74歳を「准高齢者」、75〜89歳を「高齢者」、90歳以上を「超高齢者」と定義すべきだとしています。 私もその背景については同じ認識ですが、高齢者の定義は、国連では60歳以上、世界保健機関(WHO)は国連の機関でありながら65歳以上としており、また、もともと人口学や老年学では、学術用語として、65〜74歳を前期高齢者、75歳以上を後期高齢者としているなど、統一されていません。その状況でまた新たな定義を持ち出すと、各種統計指標への影響など混乱をきたすこととなります。そのため、私個人の見解としては、学術用語としての定義は変えるべきではないし、変えるならば国際的な各種学会のコンセンサスを得たうえで行う方がよいと思います。また、学術用語の定義と社会保障制度における制度適用年齢とは区別して扱うべきであり、社会保障制度では高齢者という用語を使用しない方がよいと考えています。―最後に、健康寿命を延ばすために、高齢期を迎える前の各世代に求められる意識や行動についてお話しください。渡辺 まず、すべての世代に共通することとして、労働をはじめとした生活のなかで、さまざまな心身機能を過不足なく適切に発揮することが、健康の維持向上にとって最も重要です。一部の心身機能だけをくり返し使うことが求められるような仕事をしている人は、仕事以外の時間で意識的にほかの機能を使うような活動をするように心がけてください。 世代別の注意点として、まず学生世代については、先ほども触れましたが、若い女性の「痩せ」志向が過剰に高い現状の是正と、運動量の増加による骨量の増加は喫緊の課題です。また、勉強だけでなく、料理や身の回りの器具の簡単な修理など、衣食住の基本的な能力を身につけること、保健のためのセルフケア能力や人と交わるコミュニケーションスキルを高めることが大切です。 若年勤労世代は、健康管理面では、環境変化などのストレスが体重の変動に表れることが多いので、体重の維持を心がけてください。 中年期は、潜在的老化が進行し、生理的機能や体力が低下し、生活習慣病や更年期障害などの健康問題が生じやすい年代ですから、定期健診、がん検診をしっかり受けて、疾病の早期発見・早期治療につなげることが重要です。また、社会的ネットワークを広げておくことは老後の重要な資源になりますから、自分に適した集団を選択して、交流を深めていくようにしてください。 最後に年老いた両親とのコミュニケーションを増やし、必要に応じて社会的資源を活用しながら支援・介護する経験も、自らの将来に役立つでしょう。(聞き手・文/労働ジャーナリスト鍋田周一 撮影/福田栄夫)心身機能を偏りなく使うことを心がけ若いうちから健康への意識を持つことが大切

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