【表紙2】 『65歳超雇用推進事例集(2019)』を作成しました 65歳以上定年企業、65歳超継続雇用延長企業の制度導入の背景、内容、高齢社員の賃金・評価などを詳しく紹介した『65歳超雇用推進事例集』を作成しました。 継続雇用延長を行った企業の事例を増やすとともに、賃金・評価制度についての記述を充実し、新たに23事例を紹介しています。 23事例を紹介 図表でもわかりやすく紹介 索引で検索 この事例集では、65歳以上定年制、雇用上限年齢が65歳超の継続雇用制度を導入している企業について ●定年、継続雇用上限年齢の引上げを行った背景 ●取組みのポイント ●制度の内容 ●高齢社員の賃金・評価 −などを詳しく紹介しています。 ★制度改定前後の状況について表で整理しました ★企業の関心が高い賃金・評価・退職金などの記載を充実しました! 事例集は、ホームページでご覧いただくことができます。 http://www.jeed.or.jp/elderly/data/manual.html 65歳超雇用推進事例集 検索 独立行政法人 高齢・障害・求職者雇用支援機構 雇用推進・研究部 〒261-0014 千葉県千葉市美浜区若葉3-1-3 TEL:043-297-9527 FAX:043-297-9550 事例を大幅に入れ替えた『65歳超雇用推進マニュアル(その3)』もつくったよ 【P1-4】 Leaders Talk リーダーズトーク No.47 「生涯一社」では終われない時代キャリアを自身でデザインする自覚を 独立行政法人国立女性教育会館 理事長内海房子さん うつみ・ふさこ 1971(昭和46)年、日本電気株式会社(NEC)入社。2001(平成13)年NECソフト株式会社執行役員、2005年NECラーニング株式会社社長。2011年より現職。  女性活躍推進については、かねてよりその重要性が提起されていながらも、上場企業における女性役員比率は4・1%にとどまっており、その改善が求められています。今回は、男女共同参画社会の実現に向け、人材育成や調査・研究などさまざまな取組みを行っている、国立女性教育会館理事長の内海房子さんにご登場いただき、生涯現役時代の女性のキャリア観などについてお話をうかがいました。 男女共同参画社会づくりの拠点として40年を超える歴史を刻んできた ―まず、国立女性教育会館の役割について教えてください。 内海 1977(昭和52)年に日本唯一の女性教育に関するナショナルセンターとして、当時は「国立婦人教育会館」の名称で発足しました。1975年に開催された「国際婦人年世界会議」を機に、男女平等を促進する運動が世界的に盛り上がるなか、日本国内において、女性の地位向上の歩みを支える拠点としての役割をになってきました。  1999(平成11)年には男女共同参画社会基本法が施行され、2000年には「男女共同参画基本計画」が閣議決定されます。このころから「婦人」という言葉に代わり、「女性」という用語が一般化してきました。そんな時代背景の下、2001年、当館は名称を「国立女性教育会館」と改称し、独立行政法人になりました。英文表示のNational Women's Education Centerから、略称をNWEC(ヌエック)としています。 ―具体的にはどのような事業を行っているのですか。 内海 研修、調査・研究、広報・情報発信、国際貢献などが事業の柱となっています。研修は、地域における男女共同参画推進リーダーを育成するセミナーや、企業のダイバーシティ推進者や管理職を対象としたセミナー、教員を対象とした学校での男女共同参画の理念について理解を深める研修、女子大学生キャリア形成セミナーなどを行うほか、アジア地域の行政担当者やNGOリーダーが参加する課題解決型の実践的なセミナーなどを行っています。 ―内海さんが理事長に就任されてからの8年間は、特にどのようなことに注力してこられましたか。 内海 以前は館長、いまは理事長と呼びますが、歴代の館長・理事長は、ジェンダー教育や女性教育を専門とされてきた方々で、会社勤めをしてきた私のようなキャリアの人間がこのポストに就いたのは異例でした。NWECは、文部科学省所管の団体であるため、それまで企業との接点はあまりありませんでした。そのため私は、会社勤めの時代に形成した企業のリーダーとのご縁や、企業での女性活躍・ワークライフバランス推進の啓発に取り組んでいる団体などとのご縁を最大限活用して、企業への認知度を高めていくことに取り組んできました。いまではセミナーなどに企業で働く女性や人事担当者、役員・管理職の方々が多く参加していただけるようになりましたが、それでもまだNWECの存在感は、企業に十分浸透しておらず、一層のPRに努めていきたいと思います。 ―ところで、内海さんが日本電気(NEC)に入社されたころの働く女性へのまなざしは、いまとはずいぶん違っていたのでしょうね。 内海 私は大学を卒業し、1971年にNECに入社しました。はじめは1000人規模の事業部に配属され、そのなかで女性技術者は私一人でした。当時は、女性は結婚したら退職するのが当たり前という時代です。私は入社1年目で結婚し、その1年後には出産したので、周りからの「いつ辞めるのか」という視線は感じていましたが、退職することは頭になかったですね。大学時代、まだ電子計算機と呼ばれていたコンピュータのプログラミングが大好きで、その仕事を長く続けたいという理由で、家の近くのNEC(ソフトウェア開発の事業所)を就職先に選んだくらいでしたから、生涯の仕事ができる会社を辞めようとはまったく思いませんでした。  1980年ころからは、会社が技術系の女性を大量に採用するようになり、私も女性の多いソフトウェア開発本部に異動になりました。 たった一人の女性技術者から人事課長、そして経営幹部へ ―今日、女性活躍推進においてはロールモデル※の存在が重視されていますが、当時はそのようなロールモデルはなく、孤立感を深めることもあったのではないでしょうか。 内海 たしかに70年代は、そもそも長く働き続ける女性が周りにほとんどおらず、同期入社の大卒男性に比べて昇進も遅れていました。それでもNECは、世間の会社より早い時期に、いまでいう女性活躍推進に取り組んでおり、ソフトウェア開発本部には女性の部長もいました。その方は、若い人たちの話を親身になって聴いてくれる方で、私も仕事のことにかぎらず、プライベートなことも相談して、勇気づけられました。  私のキャリアの転機は、人事部に異動した1989年です。技術系から事務系への異動は、男性では珍しくありませんが、女性では初めてのことでした。こうした点でも男女共同参画に関する会社の施策は、当時としては進んでいたのだと思います。私が人事課長になってからは、旧姓使用のガイドラインづくりや、育児介護休業法がまだ制定されていない時期に育児休職制度などの施策の導入を行いました。その後は、技術者としての仕事から人事・人材育成をになう役割に変わり、NWECに来る前までは、NECの子会社の社長をしていました。 ―働く女性が増えているなかで、女性シニアが働き続けるうえでの課題もあると思います。例えば、がんばって働き続けてきた女性が、50代になって、孫の面倒をみたいからと、あっさり退職してしまうことも珍しくないと、ある企業の人事部の方が悩んでいました。 内海 その女性社員が、会社で仕事を続けるより、孫の世話をする生活に魅力を感じて自ら選ばれたことなら、何も問題はないのではないでしょうか。彼女が孫と向き合う生活を何年続けられるかわかりませんが、少なくとも退職を選んだ時点では、そちらの生活のほうが、会社で仕事を続けるよりもワクワクできると思えたわけですね。別の見方をすれば、会社の仕事にそこまでのワクワク感を期待できなかった。会社が50代まで、彼女のような女性にどのような仕事や役割を与えてきたかということと関係のある話だと思います。 自分のキャリアは自分でデザインするこれからは男女に関係なくこの自覚が重要 ―女性のキャリア形成を会社がどう考えるかということですね? 内海 企業も、男性と同じように長い目で女性を育てることに、もっと真剣であってほしいです。新卒採用で女性を3割や4割採用しても、幹部まで昇進する女性はほんのわずかという実態は、やはり企業が女性のキャリアに対する偏見を捨てきれていないためだと思います。 ―企業の姿勢だけでなく、女性の意識のあり方にも課題があると感じられることはありますか? 内海 「女性の昇進へのモチベーションが男性に比べて低い、だから女性の幹部社員が少ない」という指摘をよく耳にします。しかし、男性と同じ管理職登用試験を経た女性については、モチベーションの問題はクリアしているはずです。それでも執行役員や取締役になる女性は、男性に比べて圧倒的に少ないですね。人事部門が女性活躍推進に力を入れても、事業部門の責任者が男女別にキャリアを考える無意識の偏見から脱し、長い目で女性を育成しようという意識を持たないと、女性が活躍する企業風土は、なかなか職場に根づかないと思います。  その一方で、働く側も、生涯一つの会社で勤め上げる時代は終わったという現実を直視し、自分の人生は自分の責任でデザインするという自覚を強く持ってほしい。会社を常に自分の人生の中心に置く発想は、これからの長寿時代を生きるうえではマイナスで、このことに男女の区別はありませんが、キャリアコースに乗って一つの会社で定年まで勤め上げる、という機会が得にくかった女性の方が、マインドチェンジがむずかしい男性に比べ、柔軟な対応ができるのではないでしょうか。  もう一つ、日本の雇用システム上の課題があります。会社のOB会に行くと、私の同年輩は当然、男性ばかりなのですが、彼らは口を揃えて「働きたいけど、自分の知識やスキルを活かせる就職先がない」といいます。一方、どの企業も人材不足で、即戦力となるシニアはほしい。つまり、マッチングが成功していないのです。  この点を改善するには、従来のように仕事の範囲をあいまいにしてだれかに丸投げするのではなく、仕事の内容やプロセスを明確に定義して提示することです。そうすれば「この部分は自分ができる」、「この部分だけなら短時間就労や在宅勤務という働き方が選べる」といったように選択肢が広がり、マッチングがしやすくなるはずです。  そんなマッチングビジネスもシニアの魅力的な仕事の一つかもしれませんね。新たなキャリアのスタートは、男女とも年齢にかかわりなく、いつからでも挑戦できるのですから。 (聞き手・文/労働ジャーナリスト鍋田周一 撮影/福田栄夫) ※ ロールモデル……お手本になる人物 【もくじ】 エルダー(elder)は、英語のoldの比較級で、”年長の人、目上の人、尊敬される人”などの意味がある。1979(昭和54)年、本誌発刊に際し、(財)高年齢者雇用開発協会初代会長・花村仁八郎氏により命名された。 2019 March ●表紙のオブジェ イラストレーター 柳田ワタル(やなぎだ・わたる) 1947年 大阪府堺市生まれ。1970年 多摩美術大学卒業。アニメーション制作会社勤務ののち、1974年よりフリーのイラストレーターとなる。1977年よりオブジェ、立体クラフトなどの制作を開始。90年代からは写真撮影も始める。 特集 6 人生100年時代 継続雇用・定年延長を考える ―生涯現役社会の実現に向けたシンポジウム― 7 理事長挨拶 独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構 理事長 和田 慶宏 8 講演 高齢社員の人事管理 〜60歳代以降を考える〜 学習院大学名誉教授 学習院さくらアカデミー長 今野 浩一郎氏 10 調査報告 「継続雇用・定年延長の課題と効果」 独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構 雇用推進・研究部長 浅野 浩美 12 東京会場 企業事例発表@ 本田技研工業株式会社 企業事例発表A 明治安田生命保険相互会社 企業事例発表B 株式会社ヨロズ パネルディスカッション 「継続雇用・定年延長を考える」 本田技研工業株式会社/明治安田生命保険相互会社/株式会社ヨロズ 19 宮城会場 企業事例発表C 日東ベスト株式会社 企業事例発表D 大正建設株式会社 21 愛知会場 企業事例発表E 株式会社マキテック 企業事例発表F 社会福祉法人ひまわり福祉会 23 広島会場 企業事例発表G 広島電鉄株式会社 企業事例発表H 株式会社虎屋本舗 25 福岡会場 企業事例発表I エフコープ生活協同組合 企業事例発表J 内田運輸株式会社 1 リーダーズトーク No.47 独立行政法人国立女性教育会館 理事長 内海房子さん 「生涯一社」では終われない時代 キャリアを自身でデザインする自覚を 27 日本史にみる長寿食 vol.306 ニラパワーで長生き 永山久夫 28 江戸から東京へ 第78回 起承転々の男 鴨長明 作家 童門冬二 30 高齢者に聞く 生涯現役で働くとは 第59回 株式会社日本レーザー 技術部 坂本幹夫さん(66歳) 32 高齢者の現場 北から、南から 第82回 山口県 社会福祉法人光栄会 36 ケーススタディ 安全で健康に働ける職場づくり[第22回] 40 知っておきたい労働法Q&A《第11回》 団体交渉への対応、偽装請負と業務委託の違いとは 家永 勲 44 高齢者雇用と働き方改革 治療と仕事の両立支援のポイント 第5回 荻ノ沢泰司 46 特別寄稿 退職給付会計を学ぼう 玉川大学経営学部 准教授 石田万由里 50 2019年度 高年齢者雇用開発コンテスト募集案内 52 TOPICS 1 エイジマネジメント研究会と日本予防医学協会がシンポジウムを開催 54 TOPICS 2 JADA(中高年齢者雇用福祉協会)フォーラム 「人生100年時代の生き方・働き方」をテーマに開催 56 BOOKS 58 ニュース ファイル 59 読者アンケート結果 60 次号予告・編集後記 61 技を支える vol.298 花の個性を引き出し、お客さまに満足を提供する 1級フラワー装飾技能士 小泉 徹さん 64 イキイキ働くための脳力アップトレーニング! [第22回] パラレルアクション 篠原菊紀 【P6】 特集 人生100年時代 継続雇用・定年延長を考える ―生涯現役社会の実現に向けたシンポジウム―  当機構では、生涯現役社会の普及啓発、生涯現役を目ざす職場づくりに向けた先進事例の紹介を目的に、「生涯現役社会の実現に向けたシンポジウム」を毎年開催しています。本年度は厚生労働省のほか関係団体のご協力のもと、「継続雇用・定年延長を考える」をテーマに、昨年の10月から今年の1月にかけて、全国6カ所の会場で開催しました。本号では東京・宮城・愛知・広島・福岡の5会場の様子をお伝えします(大阪会場の様子は次号で掲載します)。当機構が実施した継続雇用・定年延長に関する調査結果の報告や、すでに65歳超の雇用に取り組んでいる企業事例発表など、高齢者雇用の取組みのヒントが満載です。ぜひ参考にしてください。 ※シンポジウムでの配布資料については、当機構ホームページ(http://www.jeed.or.jp/elderly/activity/haifusiryou.html)に掲載しています 【P7】 生涯現役社会の実現に向けたシンポジウム 理事長挨拶 独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構 理事長 和田慶宏(よしひろ)  日本は、急速な少子高齢化の進行により、高齢者の人口が増える一方、総人口は減少し続ける見込みであり、2035年には、国民の約3人に1人が65歳以上の高齢者となる社会が到来すると推計されています。  今後の日本経済、社会の活力を維持、発展させていくためには、高齢者を含め、すべての人たちが持てる意欲や能力を発揮することのできる生涯現役社会の実現が重要な課題となっています。  こうしたなか、当機構は、高齢者雇用にかかわる企業の個別具体的な課題解決の支援に取り組んでいます。本シンポジウムは、その一環として、企業の人事労務担当者や学識経験者などから、高齢者雇用の具体的な取組み、今後の発展について紹介、議論をいただき、生涯現役社会の実現に向けて、みなさまとともに考え、展望することを主眼として、毎年開催しています。  本年度は、2017(平成29)年3月28日に決定された「働き方改革実行計画」、ならびに「人生100年時代構想」にて議論されている内容などをふまえ、「人生100年時代 継続雇用・定年延長を考える」をテーマとしました。  人事管理がご専門で、高齢者雇用に深い知見をお持ちの学習院大学名誉教授の今野(いまの)浩一郎先生からご講演いただき、当機構から、継続雇用・定年延長実施企業の最新調査結果を報告させていただきます。  また実際に、定年延長・継続雇用に取り組んでおられる企業の人事責任者の方から具体的な事例を発表していただきます。さらには、事例を深く掘り下げるため、事例発表された企業の方々によるパネルディスカッションを行います。ご出演のみなさまにおかれましては、ご多忙のところ本シンポジウムで発表、議論いただくことに感謝申し上げます。  最後になりますが、当機構では、厚生労働省をはじめ、各関係機関と連携し、今後も高齢者雇用に取り組む事業主へのサービスの充実に努めてまいります。引き続き、みなさまのご支援、ご協力のほど、よろしくお願いいたします。 和田 慶宏(独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構理事長) 【P8-9】 講演 高齢社員の人事管理 〜60歳代以降を考える〜 学習院大学名誉教授 学習院さくらアカデミー長 今野(いまの) 浩一郎 5人に1人は60歳以上の高齢社員  本日は、人事管理の観点から高齢者の雇用について、特に60代前半層に焦点をあてた話をしたいと思います。本シンポジウムは、65歳以上の継続雇用・定年延長が主要なテーマとなっていますが、人事管理上、いまこの60代前半層への対応が最も重要と考えています。また、現在は定年60歳、再雇用65歳という制度を取り入れている企業が多く、この層への対応をきちんと行わないかぎり、定年を65歳に延長したとしても、人材の活用という面ではうまくいかないとも考えています。  日本では労働力人口の減少により、現在、約5人に1人が60歳以上の高齢社員となっています。もし、5人に1人の割合でやる気のない社員がいたら、経営は大変なことになります。したがって60歳以降の高齢社員をどう活用するのかは、会社にとって非常に重要な課題であり、高齢社員の戦力化は不可欠と考えていただきたいと思います。  先ほども触れましたが、高齢社員の人事管理の現状は、定年60歳、再雇用65歳とする制度が主流となっています。人事管理の設計からみると、多くの場合、60歳前の現役社員と60歳以降の再雇用社員とで、異なる人事管理をするという、一つの企業で二つの人事管理が共存する「1国2制度型」となっています。  この「1国2制度型」が悪いという訳ではないのですが、問題はその中身です。現状、多くの企業でみられるのが、「法律で義務づけられているから高齢者を雇用する」という「福祉的雇用」を前提にした人事管理です。定年して再雇用になると、仕事が変わる、あるいはあまり変わらなくても職責が落ちる、会社が期待する成果はグッと落とし、そのことをベースにしてきちんとした評価をしない、あるいはまったく評価をしない、賃金は定年後から一律3割や4割下げて65歳まで変わらない。これが「1国2制度型」によくみられる人事管理のパターンとなっています。  制度とは、社員に対する会社のメッセージです。ですから、きちんと評価をしない制度では、社員は「それに合わせるぞ」となり、やる気のない高齢者の集団をつくってしまうことになります。少人数ならまだしも、5人に1人がやる気のない社員集団になると、やる気のある社員集団の足を引っ張ることにもなります。つまり、現在多くの企業でみられる「福祉的雇用」を前提とした人事管理は、企業経営にとって大きな問題をはらむものなのです。したがって、人事管理の仕組みを変えることが不可欠と考えます。 高齢社員の「活用」と「処遇」  では、何をどう変えるのか。「福祉的雇用」を前提とせず、高齢者に活躍してもらう人事管理の構築を考えます。その際に配慮すべき点は、まず高齢社員の二つの特殊性を理解することです。  一つは、高齢社員は「いまの能力を、いま活用して、いま払う」という「短期雇用型人材」であること。もう一つは、労働供給、つまり働く時間・場所などが制約的になる「制約社員型人材」であることです。例えば子育てや介護をしている社員、治療をしながら仕事をしている社員、パート社員などが制約社員にあたります。日本ではいま、制約社員の比率が増していますから、その人たちが活躍できる人事管理を設計することはとても大事なことです。現在の高齢社員の人事管理は、その一環としてとらえてください。  次に、人事管理の基本戦略について、活用と処遇に焦点を絞ってポイントをお話しします。高齢社員を「再雇用する」ということは、定年を契機にして雇用契約を再締結する、あるいは、新たに締結するということです。つまり、企業は「高齢社員から何を買うのか」、高齢社員は「会社に対して何を売るのか」、このことを互いに明確に出し合ってマッチングするという視点が重要になります。  つまり「高齢社員のために仕事をつくる」といった供給サイド型の施策ではなく、会社は業務上の人材ニーズが何かを明確化し、それを満たす人材(高齢社員)を探して配置する、という構えが必要になります。  処遇については、先ほど述べたように、短期雇用型の特性に対応する「仕事ベースの賃金」が合理的です。次に「制約社員型人材」の特性に対応した制度を設計すること。例えば転勤の有無など業務ニーズにあわせて柔軟に働ける人と働けない人では、仕事が一緒でも賃金を変えないとフェアではありませんから、制約社員化した分だけ賃金が下がる調整が必要になります。ただ、このように賃金制度を設計すると、高齢者の賃金が下がることは避けられません。だからこそ高齢社員に対して、合理的な理由があることをしっかりと説明し、納得していただくことがたいへん重要となります。 高齢社員自身の意識の転換と会社のサポート  一方で、高齢社員に「雇用」の意味を再認識してもらうことも重要です。再雇用は雇用契約の再締結であり、雇用の内容は、会社と労働者のニーズのすり合わせで決まります。どのような役割を通して、会社・職場にどう貢献するかを認識してもらわなければいけません。「希望する仕事をする」、「仕事は用意してもらう」といった意識から、自身の「社内型再就職活動」である、といった意識を持っていただきたいと思います。  また、ここまで職業生活が長期化すると、「昇り続けるキャリア」ということはあり得ません。つまり、「上昇指向」から「水平指向」へのキャリア転換が求められます。「責任ある仕事」から「一担当者・プロとしての仕事」への役割転換は、通常のことであると考えることが重要だと思います。  その際は、役割転換に合わせた、働く意識・態度・行動が取れないと、活躍はむずかしいということになります。ずっとがんばってきてようやく掴(つか)んだポジションから降りて、若い社員の下で一担当者として仕事をする。そういう状況に耐えられるでしょうか。いまの日本では、その状況に慣れていない人が多いかもしれませんが、慣れればどうということはありません。ただし、働く意識・態度・行動を形成するためにも、会社は研修などで高齢社員を支援してほしいと思います。  本日は、定年60歳・再雇用65歳に焦点をあてた人事管理についてお話しました。定年延長・再雇用にかかわらず、まずは人事管理の中身をしっかり考えることを大事にして取り組んでいただきたいと思います。 【P10-11】 調査報告 「継続雇用・定年延長の課題と効果」 独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構 雇用推進・研究部長 浅野 浩美 『定年延長、本当のところ』  2017(平成29)年12月から2018年1月にかけて、定年延長、継続雇用延長を行った企業約1万社を対象に調査を実施して、その結果・分析結果を取りまとめました。 詳細は当機構のホームページ (http://www.jeed.or.jp/elderly/data/teinen.html)および本誌1月号特集をご覧ください。 定年延長の「連続タイプ」と「非連続タイプ」  本日は、65歳以上への定年延長を行った企業への調査結果をまとめた、当機構の『定年延長、本当のところ』を中心に、定年延長の効果や課題、さらに調査結果から読み取れるヒントなどについてお話しをさせていただきます。  まず、定年延長といっても実にいろいろあるのですが、ざっくりいうと二つのタイプにわかれています。一つは「連続タイプ」。役割や仕事内容、賃金が59歳以前と60歳以降で変わらない、というタイプです。もう一つは「非連続タイプ」で、60歳を境に、役割や仕事、賃金が変わる、というタイプになります。  連続タイプは、中小企業に多くみられますが、大企業にもないわけではありません。組織の若返りが課題になりそうですが、優秀な者は60歳以降も役職に就ける一方、早い段階から若手を登用しているという事例もあります。会社にとって賃金負担は増えそうですが、「役割給なので大きな問題はない」、「モチベーションが向上したのでデメリットは感じていない」という声が聞かれました。  非連続タイプは大企業に多く、60歳以降の役割は「プレーヤー」、「知識・スキルなどの伝承」、「管理職のサポート」などになることが多い。賃金も変わりますが、定年延長ですから、再雇用のときよりは上がります。その分を生産性向上で取り戻す企業もあれば、60歳までの社員の賃金制度を見直す企業もありました。  細かくみれば、もっといろいろありますが、大きくわけるとこの二つのタイプとなります。 9割を超える企業が定年延長に満足している  『定年延長、本当のところ』では、2010年以降、65歳以上への定年延長、または65歳を超える継続雇用延長をしたすべての企業に対してアンケート調査をお願いしました。  定年延長をはじめとする高齢者雇用は中小企業のほうが進んでいるため、回答のあった1840社の約8割が正社員100人以下の企業です。  まず、60歳以降から、延長された定年までの賃金についてみると、65歳時点の賃金水準は、「59歳時点の賃金の8割以上」という企業が77・2%を占めています。  定年延長した理由としては、「人手の確保」(74・7%)、「元気に働けるから」(65・4%)、「優秀な方に引き続き働いてもらいたい」(54・0%)などの回答が多くなっています。次に、定年延長の満足度と効果についてみると、「満足している」(55・7%)と「やや満足している」(36・8%)をあわせると92・5%となっています。  また、定年を延長して具体的にどのような効果があったのか聞いたところ、「人手の確保」(大いに効果があった38・6%・ある程度効果があった49・0%)、「優秀な社員に引き続き働いてもらえた」(同29・8%・同53・5%)、「遠慮せずに戦力として働いてもらえる」(同21・8%・同57・8%)などとなっています。 課題もあるが、解決のヒントもある  次に、定年延長の課題と、調査結果から読み取れる課題解決のヒントをお話しします。  まず、定年延長にあたっての課題は何だったのか聞いたところ、「賃金の設定」、「組織の若返り」、「健康管理」、「長く働く気持ちになってもらうこと」などがありました。  今回の定年延長を行った企業への調査と並行して、定年延長・継続雇用を検討中の企業に対しても、何が課題であるかを調査したところ、多くの企業が「若年・中堅社員の能力開発」、「組織の若返り」、「高齢社員の部下を持つ管理職のマネジメント能力」など、組織に共通する課題をたくさんあげています。これに対し実際に実施した企業が課題だったとしているのは、実施するうえでの課題です。実施すると決めた場合には、あれもこれも課題というわけではなかったといえそうです。  続いて、定年延長の効果が大きいのはどんな企業か分析したところ、一つは、「定年延長した理由の数が多い企業」だということがわかりました。つまり、いろいろなことを検討したうえで定年延長した企業は、やはり、その効果を感じているのです。二つ目は「仕事の同一性が高い企業」です。仕事の中身が同じであればあるほど、定年延長の効果がありました。「責任の同一性」の影響はそこまではありませんでした。冒頭で「連続タイプ」、「非連続タイプ」の話をしましたが、連続タイプとして定年延長できるところはそうされるとよいと思いますが、それがむずかしい場合は、役職はともかく、仕事の内容を同じにすることが大事だということがわかります。  最後に、「定年延長」と「継続雇用」、どちらが効果があったのか、ということについて、65歳以上への定年延長、65歳を超える継続雇用延長の両方を実施した企業を対象に、それぞれの施策の効果を、効果の程度によってポイント化した「効果ポイント」を使って調べてみました。  その結果、定年延長の方が1・14ポイント高く、統計的にも有意な差がありました。  したがって、あえていうならば65歳以上への定年延長の方が効果がある、ということになりますが、その一方で、継続雇用は取り組みやすい。それぞれの企業に適したやり方で取り組んでいただければと思います。 【P12】 企業事例発表 1 人総合力の最大化に向け総合的労働条件の見直しを実施 東京会場 本田技研工業株式会社 労政企画部 部長 影田 浩一郎  自動車業界はいま、環境対応や自動化などの開発が進み、大きな転換期を迎えようとしています。人事部門においても、こうした社会の変化に対応する仕組みをつくろうと、2013(平成25)年から労使による議論を開始しました。  当社の従業員数は、連結で約21万人、単体で約2万1000人、同一の人事給与体系で運営する労働協約適用会社で4万3000人です。  高齢従業員は増加傾向にあり、今後、高齢者のみならず、女性活躍推進の支援など、多様な従業員が能力を発揮できる環境づくりを重視して、2017年に定年を65歳に延長する制度改定を行いました。  定年延長に際して、目ざす姿は、「多様な従業員の働く喜びの最大化」と「ホンダのビジネス展開に寄与する『人領域の強化』」、つまり「人総合力の最大化」です。労使の議論は、社会動向や法改正の兆しをとらえ、先んじて手を打つという視点と、過去から積み上げてきた労働条件を見直すという二つの視点で展開しました。議論のなかでは、「多様な従業員の活躍を支えるうえで必要な部分に原資を再配分する」ことがキーとなり、今回の改定はコストイーブンで実現することができました。  当社では65歳定年延長に先駆け、2010年より希望者全員の再雇用制度を実施していますが、モチベーションを高く持ち、高齢従業員が主体的に働ける環境を整え、全従業員が安心感を持って働くためには、仕事に主体的に取り組むための環境整備が不可欠という考え方のもと、定年延長を判断しました。  定年延長と再雇用の場合を比較すると、給与水準は、再雇用時は59歳時点の約50%だったのに対し、定年延長では59歳時点の約80%となります。ただし定年延長では仕事の実績に応じて賞与の評価が上がり、59歳時とほぼ同様の水準とすることも可能です。仕事の範囲は59歳時の職務継続を基本とし、出向派遣、海外駐在も行ってもらいます。評価制度も59歳時と同じ評価を行い、昇格もあります。また、定年延長と同時に、選択定年制を導入しました。個人がライフプランを立て、半年単位で11通りから計画的に退職時期を選ぶことができる制度です。  これらの制度を導入して約1年半、定年に達する従業員の約85%が定年延長を希望して働いています。 定年延長概要 再雇用従業員と定年延長者の労働条件比較 項目 給与水準 再雇用従業員 59歳時点の約50% 定年延長者 59歳時点の約80% 成果に応じて90%超となる 項目 仕事の範囲 再雇用従業員 59歳時の職務の継続を基本とする ただし職制からは外れる 定年延長者 59歳時の職務の継続を基本とする 項目 異動の範囲 再雇用従業員 出向派遣・海外駐在は不可とする その他は59歳時点と同様 定年延長者 59歳時点と同様に制約なし 項目 評価制度昇格の有無 再雇用従業員 3段階評価 昇格無し 定年延長者6段階評価(59歳時点と同様) 昇格有り 項目 雇用期間 再雇用従業員 1年ごとの契約更新 定年延長者 60歳〜65歳の誕生日月+誕生日月の半年後の11通りから定年時期を選択する 60歳以降もより活き活きとチャレンジできる環境を整備するため、労働条件を引き上げる 【P13】 企業事例発表 2 「定年延長」は60歳未満と同等の活躍を期待するメッセージ 東京会場 明治安田生命保険相互会社 人事部 人事制度グループ 主席スタッフ 加藤 哲弥  当社は、全国に支社を94拠点、営業所を千拠点以上展開し、従業員数は約4万2000人です。このうち、「MYライフプランアドバイザー」と呼んでいる生命保険の外交員が3万1000人超です。MYライフプランアドバイザーは、従前より65歳定年となっており、定年以降も在籍して活躍することができます。  本日は、それ以外の約1万人の、主として内勤の従業員の定年延長についてお話します。  当社では、2013(平成25)年に希望者全員65歳まで雇用を継続する「エルダースタッフ制度」を導入しました。その後、職務範囲の拡大などの制度改定を行うなかで定年延長について検討し、2019年4月より定年年齢を満60歳から満65歳へと延長することとし、現在準備を進めています。  定年延長の検討においては、「高コストになるのではないか」、「年齢や健康面などから職責が果たせないのではないか」といった懸念や、高齢従業員が定年後にさまざまなライフプランを持っていることも想定されること、若年層への影響などといった課題がありました。  これらの課題には、職種再編、評価制度や処遇制度の改定、短時間・短日数で働きたい人の希望に応える嘱託制度の併設、研修の充実、処遇・職務面において若年層へは影響させない、といった方針で対応しました。  定年延長は、「60歳未満の従業員と同等の活躍を期待する」というメッセージであると同時に、役割・責任についても60歳未満と同水準を求め、処遇の引上げによる意欲の向上もねらいとしています。  また、従来はエルダースタッフとしていた60歳以上の従業員は、2019年4月からは「総合職シニア型」として、65歳までの定年延長の対象となります。総合職シニア型の職務は、基本的には60歳未満と同一ですが、転居・転勤はありません。処遇は、60歳以降は実能資格※の設定を廃止した体系としています。  一方、多様なニーズに対応できるように、「MYシニア・スタッフ」という嘱託再雇用制度を併設しています。こちらは、短時間・短日数の働き方が可能です。退職金を得て、再雇用の嘱託として働く制度です。 ※ 実能資格……スタッフなどの職制において、係長級、部長級などの実能資格に応じた資格加算を支給するもの 定年延長のねらい ねらい ○60歳未満の職員と同等の活躍を期待する「戦力」として位置づけを強化 ○役割・責任についても60歳未満の職員と同水準を求めるとともに、処遇の引上げによる意欲向上も促進 改正のポイント □定年年齢を満65歳まで引上げ  ⇒ライフプランや職員の負荷軽減を考慮し、希望勤務地での勤務が原則 □60歳未満の職員と同じ役割範囲とし、役割に応じた処遇水準は廃止  ⇒職務に応じた給与体系とする一方、異動範囲が限定されることをふまえ、全国型加算や実能資格に相当する処遇は廃止 □多様な働き方のニーズも踏まえ、退職後嘱託も準備(短時間・短日数勤務も継続)  ⇒退職金を得たうえでの継続勤務希望や、短時間・短日数勤務の希望に対しては、「MYシニア・スタッフ」として嘱託(1年更新)での雇用継続の道も準備 【P14】 企業事例発表 3 高齢社員の働き方の幅を広げる二段階の就労制度 東京会場 株式会社ヨロズ 常務執行役員 人事部長 春田(はるた) 力(ちから)  当社は、1948(昭和23)年に創業し、2018(平成30)年で創業70周年を迎えました。自動車部品・農業機械部品・生産設備の開発・設計・製造・販売事業を展開しており、社員数は連結で約7300人。このうち約2割の1500人が日本で働いています。  現在、働き方改革とダイバーシティの推進を中心に、企業力の充実に取り組んでいます。働き方改革では、社長が働き方改革委員会の委員長となり、社員のキャリア形成に注力することで、社員が成長を意識し、働きがいを感じることのできる職場の環境づくりを進めています。  その一つとして、継続雇用の延長に取り組んでいます。これは、2010年以降、相次いで海外に事務所を立ち上げ、国内人材が枯渇(こかつ)したこと、また、厚生年金の支給開始年齢の引上げをふまえ、できるかぎり長く働く機会を社員に提供したいと考えたことが背景にあります。  具体的には、60歳定年以降、希望者全員65歳まで継続雇用する制度に加え、70歳まで希望者全員が仕事に就けることを可能としました。  また、労働条件は全員同一としていましたが、改定しその選択の幅を増やしました。  60歳以降の就労制度は、「60歳から65歳」と、「65歳から70歳」の二つにわかれています。  65歳までの就労には、@職制契約社員、A嘱託SE※1、B嘱託の三つがあります。65歳から70歳までは、C嘱託EE※2、Dヨロズサービスへ転籍の二通りとなっています。  60歳から65歳の就労の特徴は、@職制契約社員は、59歳時点で管理職であった人が対象で、月給制で給与を変えずに65歳まで働くことができます。Aの嘱託SEも月給制です。Bの嘱託は1日4時間勤務で時給制となります。  65歳から70歳のC嘱託EEは、技能伝承を含む後継者の育成が可能と会社が認める者が条件となります。Dの転籍は、本人が希望する場合に、子会社のヨロズサービスに転籍し、本社の特定のプロジェクトなどに就いてもらいます。ヨロズサービスは派遣業の資格を有しているので、当社グループ以外の職場を紹介する場合もあります。  現在、本人の希望により65歳以降も、海外で働いている社員がいますが、海外で突然健康を害した際の対応が課題の一つです。また、家族の介護が必要になった場合の対応や、高齢社員が高い意欲を維持したまま活躍できる環境づくりについて、さらに検討を重ねて取組みを進めていきたいと考えています。 ※1 SE……Senior Expert ※2 EE……Emeritus Expert 65歳から70歳までの就労 制度 嘱託EE(8時間/日) 対象者 64歳時点で下記のいずれかに該当する者 @職制契約社員 A嘱託SE B嘱託 条件 技能伝承を含む後継者の育成が可能と会社が認める者 雇用契約 月給制または時給制 制度 ヨロズサービスへ転籍 対象者 64歳時点で下記のいずれかに該当する者 @職制契約社員 A嘱託SE B嘱託 条件 本人の希望 雇用契約 時給制 【P15-18】 東京会場 パネルディスカッション 「継続雇用・定年延長を考える」 コーディネーター 今野浩一郎氏 学習院大学名誉教授 学習院さくらアカデミー長 パネリスト 影田浩一郎氏 本田技研工業株式会社 労政企画部 部長 加藤哲弥氏 明治安田生命保険相互会社 人事部 人事制度グループ 主席スタッフ 春田 力氏 株式会社ヨロズ 常務執行役員 人事部長 浅野浩美 独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構 雇用推進・研究部長 企業プロフィール 本田技研工業株式会社 ◎創業 1948年 ◎業種  輸送機器および機械工業製造 ◎従業員数 (連結)21万5638名、(単独)2万1543名、(国内労働協約運用会社)4万3419名) (2018年3月末日時点) ◎特徴的な高齢者雇用の取組み 将来を見据えて労働条件を大きく見直すなかで、2017年4月、定年を65歳に延長。 明治安田生命保険相互会社 ◎創業 1880年(安田生命)1881年(明治生命)2004年(合併) ◎業種 生命保険業 ◎従業員数 4万2261名(うち外交員MYライフプランアドバイザー3万1776名、内勤職員等約1万人) (2018年3月末日時点) ◎特徴的な高齢者雇用の取組み 2019年4月、定年を65歳に引き上げる。多様な働き方のニーズに応えるための嘱託制度も併設。 株式会社ヨロズ ◎創業 1948年 ◎業種 自動車部品、農業機械部品、生産設備の開発・設計・製造・販売 ◎従業員数 (連結)7295人、(単独)507人 (2018年3月末日時点) ◎特徴的な高齢者雇用の取組み 60歳定年後の就労上限年齢を65歳から70歳に延長。65歳までと65歳以降の各制度を整備。 今野 継続雇用・定年延長を行う際、重要なことの一つに、60歳ごろを契機として、役割や仕事をどのように変えていくのか、ということがあります。役割や仕事を変える場合、どのようにすればスムーズに従業員の理解が得られるのか、そうしたノウハウやご意見について、みなさんにお聞きしたいと思います。 役職定年者を対象に59歳時にマインドセットのための研修を実施 影田 当社の場合、基本的に59歳時の職務を継続しますが、役職者には60歳で役職定年制を導入しており、このタイミングで准役職者となります。仕事は、役職者としてつちかった専門性や経験を活かした職務に就いていただきます。ほとんどのケースが、同じ職場内で継続して働きますので、役職定年の対象者については、59歳時点で研修を受けてもらい、今後の役割について認識する機会を設けています。  制度改定からまだ2年目で試行錯誤の段階ですが、もっと早い段階から「60歳以降何をしたいか」を自分で用意していけるような機会をつくる必要もあるのではないかとの考えもあり、検討を始めようとしているところです。 50代半ばから、60歳以降を見すえたマッチングをスタート 加藤 2019(平成31)年4月から導入する定年延長の総合職シニア型の場合、仕事は「変わるかもしれない」という表現があてはまるかと思います。というのも、60歳未満でも2〜3年ごとに仕事が変わることがあるように、そういう意味では、60歳未満との違いはあまりない、というのが総合職シニア型のイメージです。  ただ、60歳を過ぎてから新たな職務に就くのはむずかしい面もあり、地域も限定しますので、55歳ごろから希望を聞き、会社の都合とすり合わせます。58歳ごろに60歳以降も就くであろう職務と職場に近いところに異動してもらい、将来の仕事に近い仕事に就いてもらうということを、長期的なスパンで行っています。  また、経営管理職としての経験を活かして、つちかった知見や専門性を発揮してもらう「プロフェッショナル職制」という区分を、ポスト数とは関係ないところで設けています。それまでと違う部署に異動することが多く、異なる視点からマネジメントの補佐や、部長をフォローしてもらう形で活躍してもらっています。 今野 定年延長でも再雇用でも、役職から降りて、年下の昔の部下が上司になり、その下で働くということで、シニア社員のモチベーションが低下するのではないか、もしくは、上司が苦労するのではないか、という心配をされる会社もありますが、実際のところ、いかがでしょうか。 加藤 「やれば意外とできる」というところでしょうか。本人たちはそれなりに思うところはあるのかもしれませんが、特にモチベーションの高い人が部長職などをしていますから、引き続きがんばってもらえているのかなと感じます。それが今回の定年延長につながっていると思います。 早い段階から役割と目的を明確に伝えることが人事の役割 春田 60歳定年後、65歳までの働き方には、定年時点において役職者であった者を対象とした「職制契約社員」と、役職に関係なく8時間勤務を基本とした「嘱託SE」があり、後者の場合は役割や仕事の内容が変わります。人事の役割は、それらが変わることについて、なるべく早い段階から役割と目的をしっかりと伝えていくことだと思っています。 今野 活躍してもらうためには、基本的に役割を明確に伝えるということが大切なんですね。もう一つ、ヨロズさんでは、65歳以降も希望者全員を継続雇用することが大きな特徴ですが、60代後半になると、いろいろな人がいると思います。健康状態のこと、あるいは業務のニーズの面で、どう対応されているのでしょうか。 春田 全員が希望する職種に就けるということではなく、まずは希望を聞き、社内に仕事があれば就いてもらいます。仕事がなければ外から探してきます。登録制といったほうがよいのかもしれません。65歳を超えても、経営的な面や技術的な面などで能力を持っている社員が多いので、社外からのニーズもあり、「こういう人がほしい」という要望に応じてマッチングをしていきます。子会社が派遣業も手がけていますので、グループの外にも仕事を見つけることができます。 ホワイトカラー管理職への対応を課題にあげる会社が多い 今野 みなさん、ありがとうございました。お話を聞いて浅野さんはどう感じましたか。 浅野 役割が変わる場合の対応は、多くの企業で課題になっているようです。特に、ホワイトカラーの管理職に対して問題意識を持っている会社が多いですね。むずかしいところではあるのですが、一方で、非常に優秀な人たちなので、新たな役割のための研修や、パソコン操作についていくらでも聞けるような環境で研修をしてもらうといったことをされている企業もありました。また、上司の支援ということで、マネジメントのロールプレイのようなことをしている企業も、ごく少数ですがあります。 継続雇用・定年延長者の処遇はどのように考えて決めたのか 今野 続いて、処遇についてうかがいます。ヨロズさんでは、60歳以降「嘱託SE」になる場合、59歳時点の7割くらいの月給になるそうですね。なぜそのようにされたのでしょうか。 春田 まず、「嘱託SE」には転勤がありません。出張が少なくなるなど、役割が変わったことによる変更という意味合いが大きいですね。 今野 がんばっている人を評価する仕組みはありますか。 春田 一律7割ということではなく、評価によって幅を持たせる仕組みを今後導入していきたいと考え、検討している段階です。 今野 本田技研工業さんは、定年延長後の給与水準は59歳時点の約8割ということですね。 影田 はい。他社の定年延長について調べると7割という事例が多いことと、今回の当社の制度改定は、総合的労働条件のパッケージをコストイーブンで行うことを前提にしていたので、それらをふまえながら、労使交渉を行い、約8割に落ち着いたという経緯です。  ただ、仕事の実績に応じて、賞与などの評価によっては従前に近い水準に上がりますので、モチベーションを上げてがんばっていただきたいと思っています。 今野 明治安田生命さんではいかがですか。 加藤 「総合職シニア型」は、全国転勤がないことと、職能等級に近いところで「実能資格」、「資格給」というものがあるのですが、これらを60歳以降はなくしています。また、グレードに応じた部分も多少調整しているのですが、60歳未満の処遇を下げないなど、賃金全体のファンドのところからも調整をしています。 今野 ありがとうございます。浅野さん、賃金・処遇について、こうすればうまくいく、という話はありますか。 浅野 大きな会社や制度がしっかりしている会社は、そのぶんしっかりした仕組みとすることが必要で、大変なところがあるのだと思います。実際に企業の方のお話を聞いてみると、運用面で工夫をするとか、月例賃金だけでなく、退職金と合わせて賃金原資について考えるという、より大きな視点で見ているようなところもあります。また、従業員の考えを吸い上げる仕組みを工夫しているという例もありました。 戦略的方向は明確にして戦術は柔軟に 今野 最後に、これだけは強調しておきたい、ということをお聞かせください。 加藤 当社では、できるかぎり長く働いていただけるよう、定年を65歳に延長するという改定とあわせて、健康増進経営というかたちで、従業員に健康で長く働いていただき、かつ、病気を未然に防ぐような取組みも進めていきたいと考えています。まだ試行錯誤をしている段階ですが、今後より力を入れていきたいと思っています。 春田 これまでリーマンショックや海外進出といったなかで高齢者雇用に対応してきたのですが、時代が変わるとともに制度も変化せざるをえない、ということで、常に時代を読みながら取り組んできました。高齢者にもさまざまな方がいますから、そういった多様性も含めて、これからも随時、制度を見直していきたいと思っています。 影田 定年延長にあたり、当社ではこれまで積み上げてきた労働条件をすべてフラットな視点で見直しました。労働組合にとっては、労働条件の一部が引き下がるところもあったのですが、労使が同じ視点に立って将来を見据え、しっかりとした議論ができた結果、このような改定を行うことができたと思っています。今後ともこういったかたちで、時代適合性を得る将来を見据えた制度にしていきたいと考えています。 今野 ありがとうございます。浅野さんからも一言、お願いします。 浅野 今日お話をうかがって感じたのは、これだけの方がいろいろなことを考えておられるということです。会場には人事のご担当者がたくさんいらっしゃると思いますが、人事の方の力の大きさ、役割の大切さについて、あらためて実感しました。 今野 ありがとうございます。みなさんのお話をうかがって、個々の会社のトライする形態はいろいろであり、違いはありますが、戦略的な方向は大体決まったと思いました。あとは、その戦略を実行する段階で、それぞれの会社の事情がありますから、それらに対応して、上手に方策を立てていく。一言でいうと、「戦略的方向は明確にして、戦術は柔軟に」という感じかなと思います。  本日お話しいただいた企業の事例やパネルディスカッションをはじめ、本日のシンポジウムが、そうした戦術を考えるうえで有効な情報になればよいと思います。 コーディネーター 今野浩一郎氏(学習院大学名誉教授 学習院さくらアカデミー長) 影田浩一郎氏(本田技研工業株式会社 労政企画部部長) 加藤哲弥氏(明治安田生命保険相互会社 人事部人事制度グループ 主席スタッフ) 春田 力氏(株式会社ヨロズ 常務執行役員 人事部長) 浅野浩美(独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構 雇用推進・研究部長) 【P19】 企業事例発表 4 「社員は家族」の社風で65歳超の雇用を実現 宮城会場 日東ベスト株式会社 総務人事部 次長 遠藤 雅明  当社は、山形県寒河江(さがえ)市に本社を構える総合食品メーカーです。生産量全体の80%を占める冷凍食品を中心に、冷蔵食品や常温食品も手がけています。  もともと果物の缶詰からスタートした歴史があり、台形のコンビーフの缶詰を日本で最初につくったのが当社です。社員数は約1670人、そのうち正社員が約1260人です。缶詰製造の時代から女性が多く活躍しています。1969(昭和44)年に託児所を開設するなど、早くから育児と仕事の両立を支える環境・風土が築かれており、現在は社内保育園を2カ所運営しています。  高齢者雇用では、1993(平成5)年に定年を65歳に引き上げました。先代社長が、60歳定年で辞めていく人を見て、「もっと働けるはず」と考えたことがきっかけです。「社員は家族」という意識が強かったのだと思います。  65歳定年ではありますが、60歳以降の選択定年制を導入しており、数年前までは、62歳や63歳で退職する者も多くいましたが、最近は65歳まで働く者が増えています。退職金は、65歳の定年引上げにともない、確定給付年金※1から確定拠出年金※2に移行しました。  60歳以降は、59歳時点で管理職の場合は、課長であれば課長アドバイザー、部長であれば部長アドバイザーという肩書きになります。生産系の管理職は、そのまま同業務の管理職アドバイザーになることもあれば、二交代・三交代勤務の工場もあるので、夜間の工場長のような役割をになう場合もあります。  次に賃金ですが、60歳時点で59歳時の90%に減額し、以降、人事評価に基づいて5段階評価を行い、給与を定めています。平均的には90%台で推移していますが、成果を上げれば100%で継続する場合もあります。61歳以降は、その前年の標準の仕事をして95%となり、65歳に向かって緩やかなカーブを描いていきます。  65歳以降は、制度としてはありませんが、工場勤務者については、OBアルバイトとして登録し、繁忙期の貴重な労働力となっています。  今後は、営業部門での60歳到達者が増加していくため、制度の見直しを行う必要があると考えています。 ※1 確定給付年金……給付額が事前に決定しており、企業が拠出・運用・管理・給付までの責任を負う年金制度 ※2 確定拠出年金……給付額が掛金と運用の実績によって変化する年金制度。運用は個人が行う 60〜65歳の社員の役割の例 59歳以前の役割 部長 60歳以降の役割 部長アドバイザー 59歳以前の役割 課長 60歳以降の役割 課長アドバイザー 59歳以前の役割 生産系管理職 60歳以降の役割 管理職アドバイザー、夜間の工場長 など 60〜65歳の社員の処遇 60歳 59歳時の90%に減額(標準評価の場合) 61歳以降 前年の業務を5段階で評価し決定 ※標準評価の場合は前年の95% 【P20】 企業事例発表 5 定年延長と職場環境改善で社内の活性化を実現 宮城会場 大正建設株式会社 取締役 副社長 大槻(おおつき) 昌克(まさかつ)  当社は宮城県石巻市にある総合建設業、一般貨物運送事業、産業廃棄物収集運搬事業を営む社員40人の会社です。1971(昭和46)年に創業し、「顧客満足」と「信頼確保」のために全社員が協力して品質向上に努め、良質な製品の提供に注力しています。  定年は、高齢社員が安全に長く働き続けられる職場環境の実現を目ざして、2013(平成25)年1月に65歳へ引き上げました。少子高齢化や、東日本大震災以降の人口流出によるにない手不足のほか、若手・中堅への技術・技能継承のため、そして被災した社員の生活再建のための収入面の安心感になればとの思いもあり、社長が決断しました。  定年後の66歳以降も、基本的に本人の希望により上限年齢を設けずに継続雇用します。現在、60〜65歳が7人、65歳以上でも7人が活躍しています。  給与は、65歳まで昇給する仕組みとなっています。定年後は昇給はありませんが、65歳時点の水準が退職するまで維持されます。  高齢社員が増えるなか、「安全衛生会議のますますの活性化」、「新技術の導入」、「休日の確保」の三点を柱に、職場環境の改善に努めてきました。  安全衛生会議の活性化にあたっては、司会・書記を高齢者と若手・中堅の従業員を組ませることで、コミュニケーションの充実を図りました。また、ICT建設機械を導入し、勉強会をこまめに実施しています。  ICT建設機械はたいへん高額なのですが、高齢者や女性にとっての作業を容易にし、安全に扱え、生産性を向上させることができます。これにより、現在では、4週7休を確保できており、順調にいけば4週8休も可能だと思っています。  また、病気療養については就業可能になるまで休暇を与えています。職場復帰は、医師の診断書で確認します。  定年延長とこれらの取組みにより、新技術の活用による安全性の向上、会社に対する信頼性や仕事へのモチベーションの大幅なアップ、コミュニケーションも良好になるなど、多くの効果があり、以前よりも明るく活発な職場になっています。技術・技能の継承も少しずつ進んでいます。  今後も、高齢になっても高い意欲を維持したまま活躍できる環境整備を継続し、さらに増加が見込まれる高齢社員を含め、社員が安全に長く働き続けられる職場環境づくりに励み、安全性・生産性を向上させていきたいと思います。 定年制度・継続雇用制度の概要 定年制度 65歳 (2013年に引上げ) 継続雇用制度 希望者全員を年齢の上限なく継続雇用 賃金制度 65歳まで昇給あり ※65歳以降も65歳の水準を維持 【P21】 企業事例発表 6 最高齢は83歳、希望すればいつまでも働ける職場づくりを推進 愛知会場 株式会社マキテック 常務取締役 横井 茂  当社は、1946(昭和21)年に名古屋市熱田(あつた)区で創業しました。各種コンベヤの製造や太陽光発電などの環境エネルギー事業、介護事業、飲料水事業などさまざまな事業を展開しています。営業所は全国に70カ所、製造工場は13カ所を展開し、中国、ベトナムにも製造工場を有しています。社員数はグループ全体で国内に700人、海外に600人で、平均年齢は45歳です。社是(しゃぜ)は、「和をもって尊しとす 一致協力し、たえまなく前進に心掛け 創意工夫をこらし、安全で良い製品を より早く、より安く 製作して 国際社会の伸展に貢献する」。聖徳太子の十七条憲法にならった、創業者の思いがこもったものです。この思いが高齢者雇用にも引き継がれています。  高齢者雇用には、人材不足対策として以前より取り組んできました。1995(平成7)年に定年を60歳から63歳に引き上げています。さらに、2015年には定年年齢を65歳に引き上げ、現在に至っています。  65歳定年以降は、希望者全員を継続して雇用し、現在、定年を迎えた社員のほとんどが継続雇用を希望し働いています。基本的には同じ仕事をになってもらいますが、本人の希望によって、勤務時間の短縮や休日を増やすといった働き方にも対応しています。65歳以上の社員は現在46人で、国内社員の約6・5%を占めています。  当社は「体が丈夫ならば、いつまでも働いてよい」と考えており、現在の最高齢社員は83歳で、70代で通常勤務をしている社員も多数います。定年を迎えた社員は、苦楽をともにしてきた社員ですから、敬(うやま)う存在であり、つちかってきた経験を後進へ伝える役目もになってもらっています。  当社では、社員旅行の行先を海外にするなど、イベントや各種表彰制度の充実を図っています。高齢社員の場合は健康や家庭などの事情で海外旅行には参加できない場合もありますが、国内コースを設けたり、家族同伴での参加も可能とするなど、高齢社員も参加できるような取組みを進めているところです。  高齢社員は、体力的なこともあり、責任者として勤務してもらうことはむずかしくなりますが、とても頼りになる存在です。また、これは高齢者にかぎったことではありませんが、社員が2年後、5年後、その先のイメージを描けるように会社の方向性を明確に伝えることを心がけています。  高齢社員も当社にとって大事な戦力ですので、敬う思いを忘れることなく、今後も長く働ける職場づくりに努めていきたいと思います。 定年制度の推移と現状 定年制度の推移 1995年 60歳→63歳 ※希望者は、60歳定年退職可能 2015年 63歳→65歳 ※定年後、ほとんどの従業員が継続雇用を希望 定年制度の現状 65歳以上の雇用者数 46人 ※国内グループ700人の約6.5% 最高齢 83歳 ※70代が多数在籍 方針 身体が丈夫ならいつまでも働いてよい 【P22】 企業事例発表 7 定年65歳、高齢者が働きやすい職場環境と65歳以上の雇用上限年齢判断の構築 愛知会場 社会福祉法人ひまわり福祉会 事務次長 鈴木 達也  ひまわり福祉会は、愛知県尾張旭市に拠点を置き、尾張旭市と名古屋市名東(めいとう)区を中心に障害福祉サービスを提供している社会福祉法人です。基本理念に、「ひとりひとりが望む、その人らしい生活を支援」を掲げ、現在、障害のある方が生活する施設を2カ所、通所施設を2カ所と、グループホームなどを運営しています。  定年は65歳で、65歳を超えてからは希望に応じて非正規職員として働くことができ、現在76人の非正規職員のうち24人が65歳以上です。年齢層は、65歳から69歳が17人で、このうち60歳以降に採用した職員が12人います。また、70歳以上は7人で、この7人もまた60歳以降に採用した職員です。  高齢職員を含む一人ひとりの職員が働きやすい職場環境づくりを進めるなかで、直面した課題が雇用の上限年齢でした。2018(平成30)年4月から、有期労働契約職員に無期限転換への申込権が本格化することを受けて、65歳以上の職員について、例えば「70歳という第二定年制を導入したほうがよいのか」といった議論もしました。しかし、よい方法が見つからずに困っていたところ、高年齢者雇用アドバイザー※から提言をいただき、2018(平成30)年4月、65歳以上の雇用上限年齢判断の制度として、「生涯現役チェック退職判断基準票」を導入しました。加齢によって仕事がむずかしくなることは、だれにでも起こり得ることですが、個人差があるため、契約更新を希望する場合は、この基準に定める査定を行い、結果によって退職時期などを協議するというものです。  評価項目は、「職務能力・就業状態」、「協調性・モラル」、「健康状態」が三つの柱で、合計10項目。〇の判断が8個以上はAランクとし、現状の業務内容を継続して契約更新します。Bランクは契約更新をするが業務内容などは本人と協議して変更を検討する、Cランクは原則退職または雇止めとし本人と協議する、という内容です。実際の運用はこれからで、毎年1月に実施することを考えています。  最後に、介護業界は人手不足が深刻で、正規職員の採用が非常に厳しいため、今後は、よりきめ細かく仕事を分担化することが必要になる、と考えているところです。 ※ 高年齢者雇用アドバイザー……定年引上げや継続雇用制度の導入・改善など、高齢者雇用に取組む企業に対し、現状や課題の分析、助言を行う。当機構が認定を行い、全国で活動している 生涯現役チェック退職判断基準票 フリガナ 氏名 職種 所属部署 職名 生年月日; 年 月 日 採(再雇)用年月日; 年 月 日 常勤定年退職日; 年 月 日 生涯現役チェック退職判断問診査定票 各項目について、○×の2段階で考課し(○=はい、×=いいえ)、チェック結果はABCの3段階で自動算出する。 評価項目 職務能力就業状態 着眼点 1 職務上の役割や職務知識は理解できている。 2 日常業務に対して適切な判断力がある。 3 職務上の報告・連絡・相談・記録ができている。 4 勤務時間等を間違えたり、物を紛失することはない。 評価(判断) 年 年 年 年 年 評価項目 協調性モラル 着眼点 5 上司・同僚の意見を聞き入れている。 6 職場のルールを守ることができている。 7 利用者や職員間でのコミュニケーションがとれている。 評価(判断) 年 年 年 年 年 評価項目 健康状態 着眼点 8 持病や加齢等による体調不良で就業を妨げることはない。 9 現在の業務が体力的に負担となっていない。 10 職務継続のため健康維持・持病改善に取り組めている。 評価(判断) 年 年 年 年 年 面談結果 所見又は特記事項 【P23】 企業事例発表 8 雇用上限年齢を70歳とする「シニア社員制度」を導入 広島会場 広島電鉄株式会社 人財管理本部 人事部長 嶋治(しまじ) 美帆子  当社は、1912(大正元)年に開業して、2018(平成30)年で創業106年を迎えました。路面電車でおなじみの鉄軌道事業、路線バスを中心にした自動車事業、そして不動産事業を営んでいます。社員数は、2018年3月末現在で1755人、平均年齢は47・5歳です。45歳以上の割合が高く、今後多くの定年退職者が出てくることになります。全体の約9割が電車・バスに関する業務に従事しており、労働力の確保が最重要課題になっています。  これまでに行ってきた高齢者雇用の取組みとしては、1991年に「シニア運転士制度」を導入し、2006年にはシニア運転士制度を「シニア社員制度」に変更し、対象職種を拡大するとともに希望者全員を再雇用して高年齢者雇用安定法に対応しました。2010年には、正社員の定年年齢を60歳から65歳に引き上げました。  60歳以降の賃金は、60歳到達時の8割とし、退職金は65歳まで積み上げて、退職時に支給するというものです。また、定年年齢の引上げにあわせて、役職定年制も導入しました。  さらに2017年9月、多様な働き方を可能にするために、正社員のままで本人の都合により短時間勤務が可能になる「短時間正社員制度」を導入するとともに、「シニア社員制度」について、雇用上限年齢を70歳に延長するなど制度の拡充を行いました。  2010年1月から2013年3月までに60歳に到達した107人のうち、定年延長後、正社員として65歳を迎えた者が38人、定年延長後、シニア社員になって65歳を迎えた者が26人、この64人中65歳以降も働くことを選択した者が45人で、65歳に達した者の7割が、その後も働く意欲を持っているということになります。  また、高齢社員の増加にともない、健康診断のメニューを増やしました。65歳以上の運転士には、運転の適性診断も随時実施しています。  今後は、従業員の心身の小さな変化にも気づける、職場の管理者のこまめなフォローアップが課題の一つと考えています。当社のような運転業務に従事する従業員は、本人が健康であることが絶対の条件になります。「生涯現役社会」、「70歳雇用」といわれ始めたなか、高齢者の雇用が進めばそのニーズも多様化してきます。働き方や処遇のあり方を、現役世代も含めて検討する必要性も感じているところです。 高齢者雇用促進の取組み 1991(平成3)年 ◆シニア運転士制度の導入  (定年退職した運転士の再雇用制度。最長65歳⇒2001年〜最長66歳) 2006(平成18)年 ◆シニア社員制度の導入  (希望者全員再雇用・職種拡大) 2010(平成22)年 ◆正社員定年年齢引き上げ(60歳⇒65歳) 2017(平成29)年 ◆短時間正社員制度の導入  ・正社員のまま、短時間勤務ができる制度  ・理由は問わない ◆シニア社員制度の拡大  ・雇用上限年齢66歳⇒70歳  ・対象職種の拡大(事務職、技術職OK) 【P24】 企業事例発表 9 重要な戦力≠ナある高齢者の活用に向け75歳定年を実現 広島会場 株式会社虎屋本舗 代表取締役社長 高田 信吾  当社は広島県福山市にて菓子製造販売を営む会社です。江戸時代初期の1620年の創業で、私で16代目になります。  従業員は76人。週2回程度勤務の者も含めての人数になります。直営店が10店舗あり、店舗では女性従業員が多く働いていることから、女性従業員比率が高く76%を占めています。年齢別の比率を見ると、60代以上が46%です。  当社では労働力不足や後継者不在などの問題、職人の高齢化や技術伝承が困難な状況にあること、社内の活性化などの経営課題などを高齢者の活用により解決していこうという考え方でダイバーシティ経営に取り組んでいます。  当社のダイバーシティ経営のポイントは、大きく三つです。まず、高齢者の知恵と技術は会社の「財産」であること。当社には、高齢者を中心とした商品開発委員会があります。商品はベテランの職人と若手がペアになって開発しています。ここで「そっくりスイーツ」というお菓子が誕生したのですが、若い者がアイデアを出し、細部の技術や仕上げの部分ではベテランの力が加わって完成しました。また、計画的に後継者育成指導を行うことで、伝統技術伝承も同時に行うことができるようになりました。  ダイバーシティ経営の二つ目のポイントは、高齢者は制約社員ではなく、重要な「戦力」であるということです。この考えのもと、2007(平成19)年に定年年齢を60歳から70歳へ引き上げました。65歳以降の働き方を人事担当と話し合い、短時間勤務なども可能としています。2018年には定年を75歳に引き上げました。また、意欲と技術、経験のある高齢者は、待遇を下げることなく継続して雇用しています。さらに、最近は異業種で豊富な経験を持つ人たちを積極的に採用しています。  ダイバーシティ経営の三つ目のポイントは、「働きがい」を支えること。つまり、働きやすい環境を整えることに努め、例えば、身体的負担が重い作業を軽減させるために機械化や作業環境の改善に取り組んでいます。  また、社員旅行や社内レクリエーションを頻繁に行い、年齢を超えた親睦を図り、家族のような雰囲気でのびのびとした職場環境を実現しています。 ダイバーシティ経営のポイント @高齢者の知恵と技術を「財産」と位置づける A高齢者は大事な「戦力」と考え、制度を変更 B「働きがい」を支えるための環境を整える 支援装置の導入により女性や高齢者の身体的作業負荷を軽減(写真は全自動どら焼き機) 【P25】 企業事例発表 10 定年年齢を70歳に引き上げ誇りをもって働き続けられる職場環境を構築 福岡会場 エフコープ生活協同組合 常勤理事 島崎(しまざき) 安史(やすし)  エフコープ生活協同組合は、福岡県全域を事業エリアとして、約48万人の組合員向けに、主に、食料品・日用品などの注文を受けた商品を配達する無店舗事業、食料品・日用品などを地域で販売する店舗事業などを展開しています。  当組合は、2017(平成29)年4月に定年を65歳から70歳へ引き上げました。また、賃金制度についても見直しを行い、59歳までの賃金は、職務給と職能給で構成し、60歳以降は、職務給のみで構成することとしました。60歳以降は、生活上のニーズや健康状態などにより、短時間勤務などの柔軟な働き方が増すことなどを考えると、職務給のみとすることが適していると判断したためです。  また、すべての雇用形態で、基本的に同一の評価基準を用いることとしました。福利厚生制度についても、同一制度で運用することを基本としています。  働く側にとって重要になるのは、先ほども触れましたが、柔軟性だと思います。そこで、短時間勤務選択制度を導入しました。フルタイム勤務のほかに、週15時間以上35時間未満であれば短時間勤務を選択することができます。これは59歳以下の職員も、育児や介護、そのほかのニーズに応じて選択できることとしています。  定年延長と同時に、10年後、20年後の職員の年齢構成を想定し、計画的に世代間継承を行っていくために、60歳になったら現場に入り、現場を支援してもらうことにしました。管理職についても同様に、若い世代に渡していきます。  これにより、与えられる役割、求められる役割が変化していくことになりますので、仕事に対してどういう向き合い方をしていくのか、あるいは意識改革をどう進めていくかが大きな課題になると認識し、50歳以上のフルタイムの全職員を対象に「生涯現役エキスパート研修※」への参加を義務づけています。  私たちが考えているのは、「どのように生きていくかを自分自身で決断していく」ことです。生協で働き続けることを選択するのであれば、会社側とよく話し合い、会社のニーズを把握したうえで、誇りを持って働き続けられる状況を自ら切り開いていく、それを最大限支援するという考え方です。 ※ 「生涯現役エキスパート研修」については本誌2018年1月号(40頁)で詳しく紹介しています 生涯現役エキスパート研修 ●人生は、自分のもの→どのように生きていくかは、自身で選択、自身で決定 ●自身を取り巻く環境→正確に把握 ●自身にとって、何が大切か→働き方の選択 ●50歳以上必須研修→生涯現役 エキスパート研修 転職 生協 〈生協の事情〉 世代間継承 仕事=賃金 働き方の選択 独立・開業 働き方の選択 自身の希望や状況 ●重視すること:  収入、専門性の向上、やりがい、趣味… ●自身の状況  能力、体力・健康状態、貯蓄・借金の状況… 社会保障制度や雇用ニーズ等の外部環境 【P26】 企業事例発表 11 各種作業負担軽減の取組みで、高齢社員がいつまでも活躍できる環境を実現 福岡会場 内田運輸株式会社 常務取締役 管理本部長 小林 直隆  当社は、1960(昭和35)年創業で、主に、石油製品、高圧ガスなどの九州全県への輸送を行っています。社員数は138人です。  高齢社員は各分野のプロフェッショナルです。例えば、タンクローリーの安全運転や車両整備などについて豊富な経験や知識、技術を持っていますので、高齢社員が講師となり、持っている技術や経験を伝える勉強会を「○○塾」(○○は講師役の名前)と名づけて開講しています。その道のプロが話すことですから、みんなが熱心に聞き入る指導・育成の場になっています。そのほか、管理者向け、乗務員向け、全社員対象の講座を、毎年数回実施しています。  次に、作業負担を軽減するための取組みですが、タンクローリーの配管内の残油による引火防止のため、チルト機能(配管をスイングさせ、傾斜を持たせる)のある車両を導入しました。これにより、配管の残油をしぼる必要がなくなり、作業時のストレスの軽減と安心の確保に加え、作業の効率化を図ることができました。  荷下ろしの際には、タンクローリーのハッチ確認のため、約3mの高さの昇り降りが必要となります。これがとても過酷な作業なのですが、コンピューターで管理できる車両を導入しています。また、大型タンクローリーは、通常の洗車でも30分はかかります。長時間走行して会社に戻ってから洗車するため、作業負担軽減のため、タンクローリーの形状にあう自動洗車機を導入しました。これにより、体力的な負担の軽減と時間短縮、洗車時の災害を回避することができました。  一方、高齢により運転業務ができなくなった社員への対応例として、78歳の従業員がITを活用した運行管理業務を担当しています。運行管理の講習を受けて資格を取り、パソコン操作にもとても前向きに取り組んでいます。60歳定年の時代に退職してから担当していますので、すでに18年、この第二の仕事に就いています。定年退職後、運行管理補助者として活躍している人はほかにもいます。必要な資格試験にかかる費用は会社が負担しています。  当社には定年退職者の会があり、会員数は76人です。いつまでも会社を好きな人たちが、会社にかかわってくれる環境を、今後もさまざまな形でつくり続けていきたいと思います。 高齢者が講師を務める「○○塾」の様子 「大野塾」講師:67歳 タンクローリーの安全運転のプロです。30年間無事故・無違反の極意を教えています。 「脇山塾」講師:66歳 タンクローリー整備のプロです。構造や始業前点検の適切なやり方を教えています。 【P27】 日本史にみる長寿食 FOOD 306 ニラパワーで長生き 食文化史研究家● 永山久夫 ニラは実力派の野菜  ニラは、ニンニクのスタミナ強化作用とホウレンソウなどのもつビタミンをあわせ持つ、パワフルな野菜といってよいでしょう。  ニラ特有の臭いのもとは、ニンニクにも含まれている硫化アリル。疲労回復に役立つビタミンB1の活用効率を高めてくれる、ありがたい成分です。  老化や肌の衰えなどを防いで、風邪やガンなどの病気に対する免疫力を強化してくれるビタミンAやカロテンなども、ホウレンソウと同じように豊富に含まれています。  ほかにも、若返り作用のビタミンE、肥満防止のビタミンB2、胃を丈夫にするビタミンK、免疫効果として期待されるビタミンC、脳の若さを保つ葉酸なども多く、お通じをよくする食物繊維もたっぷりです。  ニラ料理といえば、何といっても「ニラレバ炒め」が人気。レバーには、ビタミンAやB1、B2、Dなどが多く、絶妙の「医食同源」料理といってよいでしょう。 石田三成(みつなり)が死の直前に食べたニラ雑炊(ぞうすい)  ニラが、古くから東北地方など寒い土地で多くつくられてきたのも、保湿作用があり、冷え性やしもやけ、風邪などを予防する免疫力を強化するためといわれています。  かつては、冷え性からくる腹痛や夜尿症予防のため、ニラ雑炊やニラのみそ汁をよく食べたものです。  江戸時代の『本朝食鑑(ほんちょうしょっかん)』という食べ物の効果を述べた書物にも、「ニラは家々で栽培し、育てて食べている。(中略)およそ、ニラは体を丈夫にする野菜であり、野菜のなかではもっとも、滋養に富んだものである」と記されています。  江戸時代、江戸の町の長屋の狭い庭などでもニラを栽培し、ふだんからみそ汁などにして食べ、病気にかからないようにしていたようです。  戦国時代の末期、天下分け目となった関ヶ原の合戦では、徳川家康ひきいる東軍と、石田三成を中心とした西軍が戦い、西軍は負けて三成はとらわれてしまいます。  三成は処刑される前、最後に食べたい物を聞かれ、ニラ雑炊を所望。三成はとらわれる前の逃走中に腹を下して苦しんでおり、免疫効果の高いニラ雑炊を求めたのです。 【P28-29】 江戸から東京へ 第78回 起承転々の男 鴨長明(かものちょうめい) 作家 童門冬二 老いてますます盛ん  孔子は  「四十にして惑(まど)わず・五十にして天命を知る」  といった。四十歳のときの言葉を「不惑」といい、五十歳の言葉を「知命」として、論語を学ぶ人は大体自分の生涯の心得にしている。筆者自身は、とてもそういう悟り方ができずに四十歳のときは「惑々(惑って惑ってとめどがない)」であり、五十歳の時も「天命を知るなんてとんでもない」と考えて、さらに自己発展のために試行錯誤をいろいろと行った。歴史上にもそういう人物がいる。鴨長明だ。かれには有名な著作がある。「方丈記(ほうじょうき)」だ。  「ゆく河の流れは絶えずして、しかももとの水にあらず。よどみに浮ぶうたかたは、かつ消えかつ結びて、久しくとどまりたるためしなし。世の中にある人とすみかと、またかくのごとし」  と書き出している。一読すると、 この文章からくる印象は世捨て人 の無常観と、一種のニヒリズム(虚 無主義)のように読める。ところ が、書き手の長明はそんな悟りを 持つような玉ではまったくなかっ た。かれは五十歳のときに隠居し たが、隠居後の活躍は隠居前のそ れとは打って変わって、逆に活動 的になっていた。かれは転居の名 人である。「方丈」と名づけた移 動式の住宅を造った。方丈という のは、四方が一丈(約3m)とい うことで、四面がすべて約3mの 長さだということだ。こういう真 四角な家を造って、かれは京都の なかをこの方丈を引きずって歩い た。おそらく車がつけてあったの かもしれない。移動式であると同時に組立て式だった。かれにすれば、  「必要に応じて、すぐどこにでも移動する」  という住宅なのだ。何のためにそんなことをしたかといえば、かれはそのころ頻繁に起こる諸災害のルポルタージュを行っている。「方丈記」そのものが、すでに、  「京都における災害史」  を克明に綴(つづ)ったものである。長明は京都の神社の神官の家に生まれた。しかし、一族のなかで争いがいろいろあって、父が死んだときも長明の望む父のポストを引き継ぐことができなかった。長明は僻(ひが)んだ。そして、  「なぜ、自分はこんな悲運に遭うのか」  とその原因をいろいろと探った。すると、必ずしも一族の争いだけではないことがわかった。 もの凄い隠居力  かれの出した結論は、  「諸悪の根源は武士である」  ということだ。世を僻(ひが)んで一旦は隠居したが、かれはたちまち活力を取り戻した。  「この事実を世に訴えよう」  と考えた。この事実というのは、  「諸悪の根源は武士である」  ということだ。災害には、天災と人災がある。長明が受け止めたのは、  「たしかに災害には天災もあるが、人災の方が多い。そしてその人災を起こしているのは悉(ことごと)く武士である」  と短兵急(たんぺいきゅう)に結論づけた。そのために、災害があるたびにそこへ飛んで行き、被害の状況を克明にメモした。それを文章に仕立てる。特に、住んでいる京都の災害について、災害状況を克明に凝視(ぎょうし)し、記録している。普通なら、隠居後は心を静かに保ち、いままでの経験を振り返りながら、為になることは知る人に告げるというような静かな暮らしを送る。ところが長明の暮らしぶりは非常に騒々しかった。つまりかれは自分の災害の記録史によって、  「武士に対する恨みつらみを喚(わめ)き立てる」という姿勢を保ち続けた。長明は京都で生まれ育ったために、京都を愛していた。京都が故郷であり、また、  「どこにもない日本で唯一の都だ」  という誇りも持っていた。その京都が安元三年以来の大火・飢饉(ききん)・平安の遷都(せんと)(京都から福原へ)・大地震などの災厄に立て続けに見舞われた。長明はつくづくと嘆(なげ)き、  「こんな京都にだれがした」  と思い、自ら、  「それは武士だ」と結論づけた。そうなると長明にとって「武士」という存在はろくなものではない。おそらく、  「武士よ、この世から消えろ」  と思ったに違いない。だからかれは、年齢に応じた悟りのある静かな生活を選ばずに、加齢するたびにいよいよ喧(やかま)しく騒々しく騒ぎ立てるような言行を平気で実行し続けた。いってみれば、かれにとって隠居とは、  「思い切っていままで抑えてきた恥をかくことだ」  ということだったのである。かれも学者だから、「論語」は当然読んでいる。孔子が年齢別に設けた「人間の生き方」は、十二分にわきまえていたに違いない。そしてあるころは、他人にそのことを教えたこともあっただろう。しかしかれは自分自身に教えることはできなかった。「武士」に対する憤懣(ふんまん)がたぎっていて、とても孔子のいうように年齢別の生き方ができなかったからである。むしろ逆に、老齢になるにしたがっていよいよ体内から活気が迸(ほとばし)り、その迸った活気に応じて行動するという思い切った生き方をした。当然多くの人の顰蹙(ひんしゅく)を買い、  「長明は恥知らずだ」  といわれることもあっただろう。また、多くの義理を欠くようなことも敢えてした。長明にとって、そんな恥を掻くとか義理を欠くという問題はあまり意味がなかったからである。かれにとっては、  「この世から武士という種族を消し去る」  というのが目的だった。大望だ。そして、歴史にも逆らう。それまで公家の犬として人間扱いされなかった「武士」が、この時を一つのきっかけにして台頭したからである。その意味では、長明の武士に対する憎悪と復讐めいた行動は、  「歴史との闘い」  といえる。長明の必死の闘いにも拘(かかわら)ず、その後の「武士」はいよいよ力を増していったからである。大きな潮流に対する闘いを敢然と長明は挑んだ。それがたとえ蟷螂(とうろう)の斧(おの)、あるいは負け犬の遠吠えであっても、長明は闘うことに意味を感じていた。これがかれの凄まじい隠居力の発揮であった。 ※童門冬二氏の新刊エッセイ『90歳を生きること 生涯現役の人生学』を「BOOKS」(56頁)で紹介しています 【P30-31】 第59回 高齢者に聞く 生涯現役で働くとは  技術畑ひと筋に歩き続けてきた坂本幹夫さん(66歳)。これまでつちかってきた技術を活かせる職場で第二の人生がはじまったことに感謝し、次の世代に技術を継承することを自らの使命として今日も仕事の第一線に立つ。  常に前向きな坂本さんが、生涯現役の未来を語る。 株式会社 日本レーザー 技術部 坂本(さかもと)幹夫(みきお)さん 通信士に憧れて  私は広島県安芸郡(あきぐん)戸坂村(へさかむら)の生まれです。現在は市町村合併により、広島市東区戸坂となっています。高校時代は新聞奨学生として新聞配達を続けました。いま思えば、そのときの経験が私の人生の原動力となっています。  高校卒業後、東京の大学へ進学するために単身で上京しました。船乗りになるのが夢だった私は、その方面の学部を選びましたが、現実はなかなか厳しく早々にあきらめました。ただ、通信士として船に乗る道もあると考え、電気通信大学の夜間部に入り直しました。結局、船に乗る夢は叶いませんでしたが、通信専攻科と合わせて5年間通信技術を学んだことが、後に天職というべき仕事につながるのですから、人生は面白いものです。  大学を卒業すると、当時、大学OBの就職先の一つであったエレクトロニクスの専門商社に技術者として採用されました。入社当初はトランジスタの交換などが主な仕事でしたが、そのうち「除振台(じょしんだい)」の組立てや調整を担当するようになりました。  少し専門的な話になりますが、業界では、床から発生する振動を精密機器に伝えないようにすることを除振といい、そのために除振台を使用します。米国のメーカーから輸入した除振台を納品するとき、組立てや調整に高度の技術が求められますが、私は、それができる数少ない技術者の一人であったと自負しています。  単身で上京し、遺跡調査のアルバイトをしながら5年間大学の夜間部に通った。高校時代の新聞配達を合わせると十代の大半を働きながら学び続けた。「働くこと」はまさに「よりよく生きること」であった。 ピンチをチャンスに変えて  小さい頃からものづくりが好きで、発明工夫コンクールで賞をもらったこともあります。船乗りの夢は大学卒業のころにはあきらめましたが、新婚旅行でハワイに行ったときにひどい船酔いに苦しみましたから、技術畑に進んだのは賢明だったかもしれません。  専門商社では、米国やフランスなどのメーカーでの技術研修にも行かせてもらい、やりがいのある職場でしたが、58歳のとき、会社の事情で早期退職を余儀なくされました。一瞬目の前が暗くなりましたが、働く意欲は人一倍旺盛でしたから、ハローワークへ通う日々が続きました。  あるとき、株式会社日本レーザーが技術者を募集していることを知り、さっそく面接を受けました。技術に自信はあるものの年齢を考えると不安がありましたが、米国の会社の商権が以前勤めていた会社から日本レーザーに移ったという幸運も重なり、技術サービスの分野で採用されました。  家族は早期退職を受け入れるのは最後まで反対でした。将来のことがわからないのですから当然であり、私自身、これまで研鑽(けんさん)してきた技術を必要としてくれる会社があったことに驚いたほどです。人生は簡単にあきらめてはいけないと、あらためて思っています。  日本レーザーは1月入社が慣例となっており、早期退職から十カ月経った2010年の1月、第二の人生がスタートしました。  レーザー機器専門の輸入商社である日本レーザーの近藤宣之(のぶゆき)会長は、社長時代に本誌に登場、「社員を徹底的に大切にする会社」について熱く語っている(2015年2月号「トップインタビュー」)。最近、『社員を「大切」にするから黒字になる。「甘い」から赤字になる』(あさ出版)※を上梓(じょうし)した。 技術を次の世代へ継承  年齢の心配は杞憂(きゆう)でした。定年は65歳ですが、定年年齢を超えた先輩たちが活き活きと働いています。近藤会長の「社員第一主義」が職場の風通しをよくしていることを、実感しています。  現在の役職は嘱託で、一年に一度面談があり、契約を更新しています。勤務時間は9時半から17時半まで、毎日除振台などと向き合っています。除振台は小さなものでも畳一畳分くらいはあり、組立てには体力がいります。また、どんどん新しい機器が入ってきますから、勉強することばかりですが、定年を過ぎても緊張感のある日々を送れることに感謝しています。  いま一番気にかかることは若い人への技術の継承です。お恥ずかしい話ですが、レーザー専門の輸入商社にいて、正直レーザーのことはあまりわかりません。その代わり除振台のことなら何でもわかります。  例えば、除振台を使う際は水平に設定しなければならず、そのために水準器を用いますが、水準器の使い方一つとっても経験と勘が物をいいます。体力のあるうちに自分の知っていることを次の世代へ伝えておきたいと思っています。  私が今日まで頑張ってこられたのは自分にしかない技術を磨き続けてきたからです。いまの若い人たちはとても真面目で勤勉ですからどんどん経験を重ねて自分の腕を磨いてほしいと願っています。そのために私も微力を尽くしたいのです。 働き続ける喜びを胸に  早期退職でしたから退職金も上乗せされましたが、58歳でリタイアする気持ちはまったくありませんでした。自分の技術を受け入れてくれる会社があったからこそ、私はいま、ここに立っており、働き続けることで社会とつながっていることを幸せに思います。  いまのところ70歳までは働けるそうですし、会社はきっとその先を考えていてくれると思います。長く働き続けるために、とにかく健康でいなければと気を引き締めています。  4年前に会社の定期健康診断で大動脈瘤が見つかったときは驚きましたが、発見が早く、事なきを得ました。45歳で剣道を始め、いまも続けています。剣道を習い始めた娘を送迎するうち、だんだん上達する娘を指導するには自分が始めるしかないと思ったのがきっかけでした。おかげさまで四段まで進み、休日には近所の小学生に教えています。  唯一趣味といえるものがあるとしたら、天体観測です。景気がよかったときにボーナスをはたいて天体望遠鏡を購入しました。組立て式ですが大型なので、わが家の狭いベランダには置けず、近所の川辺で星を眺めています。冬は星座がよく見えますから、最高のリラックスタイムです。  最近、「人生100年時代」という言葉を耳にします。100年生きるということではなく、その時代をどう働くかということが問われているようですが、一年一年ていねいに積み重ねていくしかないと、私は思います。 ※「BOOKS」(56頁)で紹介しています 【P32-35】 高齢者の現場 北から、南から 第82回 山口県 このコーナーでは、都道府県ごとに、当機構の65歳超雇用推進プランナー※(以下「プランナー」)の協力を得て、高齢者雇用に理解のある経営者や人事・労務担当者、そして活き活きと働く高齢者本人の声を紹介します。 期待と役割を明確に伝えて希望者全員70歳まで再雇用 企業プロフィール 社会福祉法人光栄(こうえい)会(山口県宇部市) ▲創業 1969(昭和44)年 (「社会福祉法人うべ芝光会」として設立) ▲業種 高齢者介護、障害者支援 ▲職員数 492 人 (60歳以上男女内訳)男性(26人)、女性(107人) (年齢内訳)60〜64歳 40人(8.1%) 65〜69歳 52人(10.6%) 70歳以上 41人(8.3%) ▲定年・継続雇用制度 定年60歳。希望者全員70歳まで再雇用する制度あり。70歳以降は1年ごとに面談し、条件があえば雇用延長する 特別養護老人ホーム「日の山園」。この施設をはじめ、光栄会では高齢者介護と障害者支援の34事業を展開している  本州の西端に位置し、三方が海に開けている山口県は、早くから大陸文化流入の門戸として栄えてきました。産業は、長州藩の時代から鉱業や水産業、織物業などの分野で技術開発が進み、近代には瀬戸内海沿岸地域に造船、化学、機械、金属などの工場が立地。第二次世界大戦後には石油化学コンビナートが形成されるなど、全国有数の工業県として発展しました。  山口県内の企業(31人以上規模)では、60歳以上の労働者数が増え続けており、2018(平成30)年「高年齢者の雇用状況」集計結果によると3万4196人で、5年前の2013年と比較すると7724人増えています。  当機構の山口支部高齢・障害者業務課の佐藤建夫(たけお)課長は、「高齢者雇用を推進するために事業所の実情に則して、将来に向けた65歳以上の定年引上げや65歳を超えた継続雇用延長などの制度改定に関する具体的な提案を行っています。また、事業所が抱える高齢者雇用を推進するうえでの課題を把握し、制度改善を図るための条件整備の支援をしています」と同支部の取組みを話します。 65歳以上も働ける職場へ  今回は同支部で活躍する65歳超雇用推進プランナー・片山民夫さんの案内で、社会福祉法人光栄会を訪ねました。  光栄会は、1957(昭和32)年と1965年に創業した二つの社会福祉法人を前身に、1969年に設立された社会福祉法人で、「一人ひとりの尊厳を一番に考え、その人らしい生活を目指す」ことをモットーに、高齢者と障害のある人たちに、適切な支援を行うための事業を継続。現在は、宇部市と山口市内の13カ所で、34事業(介護サービス事業・障害福祉サービスなど)を展開しています。  要介護・要支援の高齢者や高齢の障害者の増加などにより、光栄会の役割は年々増しており、ここ数年、毎年事業を拡大しています。といっても、「まず、職員の確保を考えることから始まります」と光栄会の吉久浩之常務理事は語ります。新たな人材を募集する一方で、いま働いている人に長く勤めてもらうことが重要と考え、早くから高齢者雇用に取り組んできました。  片山プランナーは、2008年に初めて光栄会を訪問。そのときすでに、定年60歳、希望者全員65歳まで再雇用する制度を整備していたといいます。しばらく後に再訪すると、事業規模の拡大などもあり、ルールはないものの65歳以上であっても、勤務に支障のない人については貴重な戦力として継続雇用していたことから、片山プランナーは、「65歳以上であっても、必要な人材を雇用する旨のルールを制定することで、モチベーションの向上につながる」ことをアドバイスしました。  光栄会ではこれを受けて、再雇用制度の充実に向けて検討し、2017年度から、希望者全員70歳までの再雇用を制度化しました。  「この制度化により、高齢の職員から『安心感を得られた』という声が聞かれました。以前は、『まだ、働いていていいですか』とたずねる職員がいたのです。そうした不安感を払しょくすることができました」と吉久常務理事。  また、理事で施設全体のまとめ役を務める藤本尚希施設長は、「この制度により、雇用する側の意識にも変化が生じました。いまは、元気に働ける方であれば、65歳を超えていても採用しようと考えるようになりました」と話します。 希望に沿った働き方を実現  2017年度は、60歳以降の働き方改革にも取り組みました。定年後は非常勤職員となり、1年ごとに面談を行い契約を更新します。これは従来からの制度ですが、それまで以上に、一人ひとりの希望に沿った働き方が実現できる職場へと改革したといいます。  吉久常務理事は、「従来は、フルタイムか一定 の短時間勤務か、夜勤が可能か否かの選択肢でし たが、現在は、希望する働き方・時間・曜日を聞 き、配属先の管理者が責任を持って勤務表を作成 し、人員を整えています。管理者には負担がかか りますが、毎月の管理者会議で課題を共有してお り、いまのところ問題なく実現できています」と 改革内容を説明します。  同時に、「夜勤専従」希望者を募ったところ、複数の高齢職員から手があがり、高齢であっても無理なく勤務できる施設で、夜勤専従として働いてもらう働き方も新たに実現しました。  「子育て世代の職員が夜勤を回避できるようになりました。また、法人内の保育園を2018年4月に開園し、職員の子どもも受け入れています。これらにより、子育て世代の職員が増えました」と吉久常務理事は話します。  現在、定年を迎える職員はほぼ100%再雇用を希望し、働き続けているとのこと。また、65歳で退職し、数カ月後に再雇用した職員もいます。保育園の開園などにより、若年の求職者が増え、定着率も向上するという成果もみられています。 高齢者と若い人が役割を分担  片山プランナーは、「事業者からの期待を明確に伝えることと、高齢職員に対しても適切な教育を行うことが高齢者雇用に効果的です」ということも光栄会に伝えていました。吉久常務理事は、「高齢の職員の力を引き出すうえで重要なこと」と受け止め、入職後は年齢にかかわらず研修を行うこと、また年3回ほどは全職員を対象にした研修の実施を継続しています。これにより、職員の能力向上に加えて、「高齢職員は主に利用者への傾聴などを、若い職員は力が必要な業務を進んで行うという役割分担が自然にできる職場になってきました」と吉久常務理事は効果を話します。  光栄会ではいま、リーダーを若い職員に任せていくための組織改革にも取り組んでいますが、全職員を対象にした研修などで組織の理念を共有する機会をつくっているため、リーダーを降りた職員もモチベーションを下げることなく仕事に臨み、若いリーダーを支えるなど、組織改革も順調に進んでいるそうです。  今回は、勤続43年のベテランの男性職員と、72歳に採用されてはじめて介護の仕事に就いた女性職員にお話を聞きました。 活き活きと働き続ける  知的障害のある人たちが生活をしながら軽作業を行う「光栄会はばたき」で働いている国清(くにきよ)一誠(いっせい)さん(67歳)は、光栄会に勤めて43年。光栄会が運営する障害者支援施設で長年働いてきて定年を迎え、いまもフルタイムで、この施設で手がける軽作業のリサイクル品回収と、回収した段ボールや空き缶の仕分け作業などを利用者に教えながら一緒に行っています。  「リサイクル品回収時の安全運転と仕分け作業の安全、利用者のみなさんの安全に努める毎日です」と話す国清さん。吉久常務理事は、「利用者の方々に長年寄り添い、見守り続けているので、『国清さんだからこそわかる』ということが多々あります。できればずっといてほしい存在です。きっと利用者も同じ気持ちでしょう」と話します。  定年前は、吉久常務理事の上司だったこともあるそうですが、国清さんは「上司とか部下とか、意識したことはありません。いま、みんなが働きやすいようにいろいろ考えてやってくれていることに感謝しています」と話し、「仕事は人生のすべてです。老化をいい訳にせず、迷惑をかけないでいられるところまでは働いていたいと思っています」と胸の内を明かしてくれました。  岡田輝子(てるこ)さん(77歳)は、72歳で光栄会の職員になりました。会社員として勤務した後、ガソリンスタンドを経営しましたが閉店し、その後求職活動をしたものの、70歳を過ぎていたことから面接までこぎつけずにいたそうです。そんななか、光栄会の求人に問い合わせたところ、「面接をしてくださいました」と岡田さん。  この面接を担当したのは、吉久常務理事でした。「たまたま、ガソリンスタンドで働いていたころの岡田さんを覚えていました。笑顔で一生懸命に車を磨いている姿が印象に残っていたのです。ですから、この方ならいい仕事をしてくださると確信し、採用を即決しました」と吉久常務理事。  岡田さんは、「介護職は未経験でしたが、初任者研修を受けて、特別養護老人ホーム『日の山園』に勤務し、午前・午後・1日勤務(夜勤なし)のいずれかの時間帯で月20日ほど働いています」と活き活きとした表情で話します。「日の山園」では、入浴や食事の介助、食器洗い、シーツ交換などの仕事を担当しています。  「私が元気でいられるのは、仕事があり、入所者のみなさんから元気をいただいているからです。情熱と感謝の気持ちを持ち続けて、必要とされる間は働き続けたいです」と岡田さん。健康の秘訣は、「人生を楽しむこと」と話してくれました。 年齢に応じた働き方ができる職場づくり  片山プランナーは、高齢職員が自らの力を存分に発揮して活き活きと働いている姿と、そのための職場づくりをしてきた光栄会に敬意を表し、「年齢に応じて働く意味を、一人ひとりの職員が考え、事業者はそれぞれに適した働き方を提供すること、また、法人の期待とそれに応じた教育をすることは、職員規模が拡大するほど大事になります。  これからも、支援を続けます」と話しました。吉久常務理事は、「次の世代が安心して働ける職場づくりを目ざし、今後は処遇面の見直しを検討したいと考えています」と働く環境をさらに充実させたいと語りました。(取材・文 増山美智子) ※65歳超雇用推進プランナー……当機構では2018年度から、高年齢者雇用アドバイザーのうち経験豊富な方を65歳超雇用推進プランナーとして委嘱し、事業主に対し、65歳を超えた継続雇用延長・65歳以上への定年引上げなどにかかわる具体的な制度改善提案を中心とした相談・援助を行っています 片山民夫 プランナー(69 歳) アドバイザー・プランナー歴:19年 [片山プランナーから] 「自社で永年勤務し経験やノウハウを持っている従業員は貴重な人的資源であることから、上手に活用することは事業活動のうえからも重要です。従業員にとっても能力を末永く活かすことは生きがいや充実感につながるため、労使ともに未来志向は合致しています。しかし高齢の従業員はそれぞれ特有の事情を抱えているため、個々人に合った処遇や労働環境の整備などの施策を考える必要があります」 高齢者雇用の相談・助言活動を行っています ◆山口支部の佐藤課長は、片山プランナーについて次のように話します。「中小企業診断士としての専門的知識と豊富な知見に基づき、事業所に寄り添った助言や、就業意識向上研修をはじめとする多くの支援を行っています。また、高齢者雇用推進の専門家として地域ワークショップや企業の集まりによる勉強会の講師など幅広く活躍しています。当支部一番のベテランプランナーであり、支部を引っ張るとともに、まとめ上げていく頼もしい存在です」 ◆山口支部高齢・障害者業務課には6人の65歳超雇用推進プランナーが在籍しています。2018年度は延べ約400社の県内事業所を訪問し、定年65歳以上の制度や希望者全員66歳以上の継続雇用制度の導入など、65歳超雇用推進に向けた提案活動に取り組んでいます。 ◆各事業所の状況に即した相談・助言を無料で実施しています。お気軽にお問い合わせください。 ●山口支部高齢・障害者業務課 住所:山口県山口市矢原1284-1 ポリテクセンター山口内 電話:083(995)2050 吉久浩之常務理事 藤本尚希施設長 リサイクル品を分別する作業場で、スチール缶やアルミ缶の見分け方を教える国清一誠さん 施設に入所する方の隣に腰かけ、にこやかな表情で話を聞く岡田輝子さん 【P36-39】 ケーススタディ 安全で健康に働ける職場づくり 高齢労働者が安全・健康に働ける職場づくりについて、労働災害や業務上疾病などの事例をもとに専門家が解説。今回は、早稲田大学スポーツ科学学術院の岡浩一朗教授に、「座りすぎ」の健康への影響について、解説していただきました。 第22回 高齢労働者と座りすぎ 早稲田大学スポーツ科学学術院 教授 岡 浩一朗 はじめに  経済協力開発機構(OECD)による国民の労働時間に関する調査によると、日本人の一人あたり平均年間総実労働時間は、ここ40年間で徐々に減ってきており、1990(平成2)年では年間2031時間でしたが、2015年には年間1719時間となっています。これは週休二日制の普及などによる労働時間の減少や非正規労働者の増加などの影響が考えられます。  その一方で、平日一日あたりの労働時間は増加傾向にあります。特に、在社中の残業時間は約90分と、ほかの先進諸国に比べて非常に長く、アメリカやフランスの約3倍にもおよびます。  このような状況が、週あたり60時間以上働くような長時間労働者が減少しない一因となっています。結果として、労働者に疲労の蓄積や睡眠・休養不足、血管病変の加速をもたらし、重大な健康障害(例えば、メタボリックシンドローム、重度の腰痛や首・肩痛、うつ病など)を誘発するだけでなく、生産性やワーク・エンゲイジメント※1の低下、アブセンティズム※2・プレゼンティズム※3を引き起こす可能性がある点は大きな問題と考えられます。  これら長時間労働の問題に加え、今日の技術革新にともなう仕事内容の急速な機械化・自動化と相まって、労働者における長時間の座位行動(座りすぎ)がもたらす健康リスクが注目されるようになってきました。  そのため、いかにして就業中の座位行動に費やす時間を減らすことができるかが公衆衛生上の大きな関心事となっています。特に、長時間のデスクワークや会議などにより、労働者(特にデスクワーカー)がどのくらい座りすぎているのか、それら座りすぎは労働者の健康や労働にどのような悪影響をおよぼしているのかを知り、労働者の座りすぎを減らす効果的な取組みにつなげていくことは、現在、国をあげて進めている「働き方改革」や「健康経営」といった取組みを、さらに推進していくことに寄与すると考えられます。 日本人労働者の「座りすぎ」の実態とは  筆者を含むグループでは、40〜64歳(平均年齢50歳)の中高年労働者345人(男性55%、女性45%)を対象に、就業日(就業時間内・外)および休日における座位行動のパターンについて、仕事形態別(デスクワーク、立ち仕事、歩き回る仕事、力仕事)に詳細に調べました(1)。  調査は、オムロンヘルスケア社製の「活動量計」を用いて1週間にわたって行い、睡眠や入浴などを除き、1日約15時間装着してもらいました。その結果を表したものが図表1です。  勤務日における座っている時間の割合を仕事形態別にみると、立ち仕事では41%、歩き回る仕事では46%、力仕事では37%であったのに対し、デスクワークでは63%とかなり高い値を示しています。これを勤務日の勤務時間内にかぎってみると、デスクワークでは勤務時間中の約7割は座っていることになり、ほかの仕事形態に比べ、1・7〜2・6倍の時間を座って過ごしていることがわかります。  また、デスクワークでは、就業時間中の23%は30分以上座り続けている状態であることもわかりました(立ち仕事・歩き回る仕事9%、力仕事7%)。  これらの調査結果から、日本でデスクワークに従事する中高年労働者の約7割が、就業時間の7割近くを座って過ごしており、かつ長時間連続して座っている実態が明らかとなりました。 仕事における座りすぎの健康影響および労働影響  一方、40〜64歳の中高年労働者430人を対象に、座位行動によるメタボリックシンドロームの発症への影響について調べた研究では、30分以上連続した長時間の座位行動が多い場合、3年後のメタボリックシンドロームの発症に大きな影響をおよぼすことが明らかになりました(2)。  また、50〜74歳の中高年労働者3万6517人を対象に、就業中の座位行動と総死亡リスクの関連について10年間にわたって追跡した研究では、第一次産業に従事する男性労働者の場合、就業中の座位行動が3時間以上の人は、1時間未満の人と比べて総死亡リスクが高くなる可能性が示唆されています(3)。  さらに、日本の40歳以上の中高年齢者1680人を16年間追跡調査した研究でも、就業中の座位行動の長さが、総死亡リスクに有意に影響をおよぼすことが証明されています(4)。  こうした座りすぎによる健康への影響のメカニズムについては十分に解明されているとはいえないのが現状ですが、最先端の研究によると、座りすぎによる身体活動(特に下肢)の低下により、血流の低下や血圧の上昇、血液中の中性脂肪の増加などの影響が指摘されています。これにより生活習慣病を引き起こす可能性が高まるほか、腰や肩への負荷により腰痛や肩こりが起こることで、ますます動くのが億劫(おっくう)となり、筋力や体力、血管機能などが低下し、老化が加速していくことになると考えられます。  また、最新の研究では、仕事の生産性やワーク・エンゲイジメントとの関連について、興味深い知見が報告されています(5)。  20〜59歳の労働者2572人のデータを横断的に分析した結果、20〜30歳代の場合、就業中の座位時間割合が多い労働者は、少ない労働者に比べて、「ここ最近の生産性(仕事の効率)が低かった」という回答が1・38倍多く見られました。さらに、40〜50歳代に目を向けると、座位行動が多い労働者の場合、ワーク・エンゲイジメント、特に「活力(仕事から活力を得て活き活きしている)」が低い労働者が1・43倍、熱意(仕事に誇りややりがいを感じている)が低い労働者が1・61倍、「没頭(仕事に熱心に取り組んでいる)」が低い労働者が1・39倍多くなっています(図表2)。  このように「座りすぎ」は、健康への影響だけではなく、仕事の生産性や活力にも影響があることが明らかになっています。 職場における座りすぎ対策  座りすぎによる健康などへの影響についての研究は、世界中で進められており、Buckleyら(6)は、デスクワーカーの座りすぎに警鐘を鳴らし、世界各国のこの研究分野の専門家らの議論をふまえ、「座りすぎ是正対策に関する国際合意声明」を公表しました。  具体的には、就業時間中に少なくとも合計2時間はデスクワークにともなう座位行動を減らし、低強度の活動(立ったり座ったりする、軽く歩いたりするなど)を行い、理想としてはそれを4時間まで拡げることとしています。そのために、スタンディングデスク※5などを有効活用することなどを奨励しており、労働者の座りすぎを減らす有効な対策を考えていくうえでの画期的な提言がなされました。  しかしながら、スタンディングデスクなどをオフィスに導入することがむずかしい職場も多々あるかと思います。まずは、仕事時間中に座りすぎないことを意識し、できれば30分のうちの3分程度、少なくとも1時間のうちの5分程度は、座りっぱなしの状態をやめ、少しでも身体を動かすよう意識することが大切です。  そこで、職場で手軽にできる体操を紹介します。図表3は「ふくらはぎ」を刺激する体操です。かかとを上げたり下げたりするだけですが、筋肉のポンプが働き足の血流が改善します。ゆっくり動かすことで、筋肉を効果的に刺激することができます。  図表4は「太もも」を刺激する体操です。太 もも前部の大腿四頭筋(だいたいしとうきん)を鍛えるスクワット体操で、血流も代謝もアップします。  これらの体操を取り入れながら、座りすぎとならない職場環境、作業環境の見直しに取り組んでいただければと思います。 〔参考文献〕 (1) Kurita et al. Patterns of objectively-assessed sedentary behavior and physical activity among Japanese workers : a cross - sectional observational study. BMJ Open, 2018 (in press). (2) Honda et al. Sedentary bout durations and metabolic syndrome among working adults: a prospective cohort study. BMC Public Health, 2016; 16: 888. (3) Kikuchi et al. Japan Public Health Centre (JPHC) study group. Occupational sitting time and risk of all-cause mortality among Japanese workers. Scand J Work Environ Health, 2015; 41: 519-528. (4) Sakaue et al. Association between physical activity, occupational sitting time and mortality in a general population: An 18-year prospective survey in Tanushimaru, Japan. Eur J Prev Cardiol, 2018:2047487318810020.doi:10.1177/2047487318810020. [Epub ahead of print] (5) Ishii et al. Work Engagement, productivity, and self-reported work-related sedentary behavior among Japanese adults: A cross-sectional study. J Occup Environ Med, 2018; 60: e173-e177. (6) Buckley et al. The sedentary office: an expert statement on the growing case for change towards better health and productivity. Br J Sports Med, 2015; 49: 1357-1362. ※1 ワーク・エンゲイジメント……仕事から活力を得て活き活きしている状態 ※2 アブセンティズム……欠勤や遅刻、早退などにより、職場におらず業務に就けない状態 ※3 プレゼンティズム……出勤はしているものの、心身の健康上の問題により、パフォーマンスが上がらない状態 ※4 オッズ比……ある事象の起こりやすさを二つの群で比較して示す指標 ※5 スタンディングデスク……立ったままデスクワークが可能な机 図表1 仕事形態による総座位時間の差異 (%装着時間) 勤務日 デスクワーク 63.2% 立ち仕事 40.6% 歩き回る仕事 45.5% 力仕事 36.8% 勤務内 デスクワーク 68.5% 立ち仕事 34.6% 歩き回る仕事 40.0% 力仕事 26.5% 勤務外 デスクワーク 54.0% 立ち仕事 49.8% 歩き回る仕事 52.5% 力仕事 56.5% 休日 デスクワーク 59.8% 立ち仕事 56.3% 歩き回る仕事 58.2% 力仕事 60.3% 出典:Kurita et al., 2019より作成 図表2 就業中の座位行動と生産性およびワーク・エンゲイジメントの関連 生産性(仕事の効率) <20〜30歳代> オッズ比※4 最高 座位時間割合低群 1.0 座位時間割合高群 0.89(0.67-1.17) 最低 座位時間割合低群 1.0 座位時間割合高群 1.38(1.05-1.81) <40〜50歳代> オッズ比※4 最高 座位時間割合低群 1.0 座位時間割合高群 0.98(0.74-1.29) 最低 座位時間割合低群 1.0 座位時間割合高群 1.03(0.79-1.33) ワーク・エンゲイジメント <20〜30歳代> オッズ比※4 活力 座位時間割合低群 1.0 座位時間割合高群 1.20(0.91-1.57) 熱意 座位時間割合低群 1.0 座位時間割合高群 1.30(0.99-1.70) 没頭 座位時間割合低群 1.0 座位時間割合高群 1.08 (0.82-1.42) <40〜50歳代> オッズ比※4 活力 座位時間割合低群 1.0 座位時間割合高群 1.43 (1.09-1.86) 熱意 座位時間割合低群 1.0 座位時間割合高群 1.61(1.23-2.11) 没頭 座位時間割合低群 1.0 座位時間割合高群 1.39(1.07-1.81) 出典:Ishii et al., 2018より作成 図表3 「ふくらはぎ」を刺激する体操 @座ったまま足をそろえ、手は太ももの上に Aつま先に体重をかけながら、かかとをゆっくり上げる Bかかとをゆっくり床に下ろす。これを5回以上くり返す 図表4 「太もも」を刺激する体操 @片方の足を膝を伸ばした状態でゆっくり持ち上げる。膝が伸びたときにつま先が上を向いていると効果的 Aゆっくり足を下ろす。左右交互に5回以上くり返す 【P40-43】 知っておきたい 労働法Q&A  人事労務担当者にとって労務管理上、労働法の理解は重要です。一方、今後も労働法制は変化するうえ、ときには重要な判例も出されるため、日々情報収集することは欠かせません。本連載では、こうした法改正や重要判例の理解をはじめ、人事労務担当者に知ってもらいたい労働法などを、Q&A形式で解説します。 第11回 団体交渉への対応、偽装請負と業務委託の違いとは 弁護士法人ALG&Associates 執行役員・弁護士 家永 勲 Q1 団体交渉の申し入れに対する対応方法について教えてほしい  このたび、当社の従業員が加入した労働組合から団体交渉の申し入れがありました。自社内には労働組合が存在しなかったため、これまでに団体交渉というものを経験したことがありません。  交渉事項は会社の役員の変更や労働環境の改善など多岐にわたっており、協議しても合意に至る見込みはないと考えています。 A  たとえ、外部の労働組合であっても、労働組合からの団体交渉については応じなければなりません。交渉事項について合意に至る見込みが低い場合であっても同様です。  仮に、団体交渉に応じなかった場合には、労働委員会という機関に申し立てをすることで、労働組合法に基づく救済を命令されることにつながります。 1 労働組合について  かつては、社内労働組合がある企業からの相談もありましたが、最近の相談では、外部の労働組合からの団体交渉の申し入れが増えているように思われます。  社内労働組合は、社内の状況を把握したうえで、会社の労働条件や労働環境の改善を目ざして活動していましたので、労働者全体にとっての改善に向けて話合いを進めるような場面も多く、必ずしも会社と対立するばかりではありませんでした。  ところが、最近は、労働組合からの団体交渉申し入れを受け、それにどのように対応したらよいのかわからないといった企業も増えています。会社からすれば、外部の団体からの突然の申し入れですので、まずは拒絶しようという発想になる場合も少なくありません。  しかしながら、労働組合からの団体交渉の申し入れは、労働組合法によって保護されていますが、会社としては、単純に拒絶するだけでは紛争の場面を拡大することにつながってしまうため、正しい知識を持って対応を試みる必要があります。 2 団体交渉について  労働組合が申し入れてくる団体交渉とは、労働組合法に基づくものです。団体交渉の意義は、労働者を集約することにより交渉力を増し、可能なかぎり会社と対等の立場に立ったうえで、労働条件の改善を目ざして活動することにあり、社内労働組合によって行われる場合には、ストライキなどの争議行為も背景にした交渉力が重要と考えられています。  外部の労働組合の場合は、労働者を集約しきれているとはかぎらず、必ずしも交渉力は大きくありません。現状では、労働組合法に基づく保護を前提とした交渉および労使間のコミュニケーションの場面としての価値が重視されているとも考えられます。  ここでいう労働組合法に基づく保護というのは、団体交渉を拒絶することは、「不当労働行為」という労働組合法に違反する違法な行為であるとされ、その効果として、労働委員会による救済命令の対象となることや、状況によっては不法行為に基づく損害賠償請求の根拠となることがあります。  「不当労働行為」とは、労働組合法特有の考え方ですが、労働組合の存在意義をなくさないための労働組合の活動に対する特別の保護ルールです。例えば、団体交渉についていえば、「使用者が雇用する労働者の代表者と団体交渉をすることを正当な理由がなくて拒むこと」が労働組合法では不当労働行為と整理されています。  したがって、今回のご相談も、「正当な理由がなく」団体交渉を拒絶してしまうと、不当労働行為となってしまいます。この規定を根拠として、会社には、誠実交渉義務があると考えられており、労働組合から求められた要求や主張に対して、具体的な内容を回答し、資料の提供もしながら、相互に合意に向けた努力を行わなければなりません。一方で、交渉が行き詰まってしまい相互に譲歩する余地がなくなった状況においてもなお、交渉を継続する義務まではありませんので、一定程度具体的な交渉を重ねた後であれば、団体交渉を打ち切ることも許されます。  なお、労働組合法がいう、「使用者が雇用する労働者」については、在籍中の労働者が含まれることは当然ですが、失業者なども含むと考えられていますので、団体交渉の交渉事項においては、解雇した労働者に対する解雇通知の撤回などが提示されることもあります。 3 労働委員会による救済命令について  万が一、団体交渉を正当な理由なく拒絶した場合、労働組合は労働委員会という公的な機関に対して、救済命令の申し立てという手続きをとることができます。個別の労働者が裁判所という第三者の公的機関に救済を求めることと比較すると、労働組合にとっての裁判所のような存在が労働委員会といえるでしょう。  裁判所との違いは、労働委員会による救済命令の方法は、裁判における判決とは異なり、柔軟な命令を出すことができる点でしょう。  例えば、団体交渉の拒否という不当労働行為に対しては、団体交渉を打ち切った理由を根拠として拒否してはならないと命じたり、一定の事項について誠実に団体交渉に応じることを命じる場合もあります。個別の事件ごとに、どのような命令によって不当労働行為を救済するかについては、労働委員会の裁量が広く認められています。  ほかには、不当労働行為を行ったことを陳謝し、今後くり返さないことを誓う内容を社内に掲示することを命じる場合もあります。 4 具体的な対応について  団体交渉の申し入れがあった場合、たとえ交渉事項が、応じる見込みがほとんどない場合であっても、これに応じることなく頭ごなしに拒否することは、不当労働行為に該当します。  したがって、まずは、団体交渉の場を設定し、労働組合からの質問や交渉に応じる必要があります。しかしながら、日時や場所については、会社の担当者の予定を調整する必要がある場合や、場所が一方的に定められている場合に、調整することを求めたとしても、ただちに団体交渉を拒否したことにはなりません。まずは、あわてることなく、日程および場所を調整することが必要です。なお、団体交渉においては、直接面会して交渉する義務も誠実交渉の一環として必要と考えられていますので、書面のやり取りのみで交渉することは得策ではありません。  次に、だれが、団体交渉に参加するのかという点も決める必要があります。会社の立場では、代表者を交渉の席に常に参加させるわけにはいかない場合もありますが、参加する担当者は、少なくとも誠実に交渉したとは認められる程度に権限を有している者とする必要があると考えられます。  また、誠実交渉を尽くしたといえるようにするためには、具体的な回答や資料を提示したうえで、交渉に応じることができない理由を説明し尽くしたといえなければなりません。団体交渉の席を設けても、同じことのくり返しになった場合は、交渉打ち切りを検討してもよい状況に至っていると考えられます。 Q2 どんなときに偽装請負と認定されるのか知りたい  取引先からの要望に基づいて、当社から数名の従業員を取引先に常駐させて業務に従事させています。  情報管理の側面から、取引先内部での業務処理が求められるといった状況や、取引先が導入しているシステムを利用しなければならないなどの事情があるのですが、このような場合においても偽装請負として問題になる余地はあるのでしょうか。 A  直接の指揮命令を発注者に行わせないこと、時間外労働や休暇取得の判断など労働時間の管理について発注者に行わせないこと、機械や資材の調達を自ら行ったうえで、賠償責任も負担することを前提とした契約とするなど独立性を維持する措置をとっておく必要があります。  なお、形式ではなく実質で判断され、故意に偽装請負を免れる目的がある場合には、労働者派遣法または職業安定法違反になるおそれがあります。 1 偽装請負とは(違反時の効力含む)  かつて、「偽装請負」が社会問題となり偽装請負について争われた事件が最高裁まで争われ、大きな話題となりました。  その後、厚生労働省などは、適正な請負(業務委託)とはどのような形態であるのかについて、整理してガイドラインなどによって公表しています。  ガイドラインなどの内容を検討する前に、そもそも「偽装請負」とは何が問題なのかを紹介しておきたいと思います。  社会的になぜ「偽装請負」が行われるようになったのかというと、派遣事業が法律により規制されることになる一方で、対象となる業務がかぎられていたことがあります。対象業務以外の業界においては、派遣の形式ではない、類似の方法を採用するために、業務委託や請負契約を締結し、実際には労働者を受け入れて、現場で直接指揮命令をしたり、労働時間を管理したり、給与を事実上決定するなどの状況が生じました。  労働者に対して、直接指揮命令をしてよいのは、直接雇用をしている使用者か、適法に実施した派遣契約に基づいて、派遣先が指揮命令する場合、出向中の労働者に対する出向先からの指揮命令にかぎられます。業務委託や請負契約に、たとえ直接の指揮命令が可能であると定められていたとしても、それは法令の適用を回避しようとしているに過ぎません。  偽装請負の方法によりますが、偽装請負は労働者派遣法に違反する、または職業安定法が禁止する労働者供給事業に該当する違法な行為になります。  労働者派遣法は、このような労働者派遣法の義務を免れる目的の契約によって労働者を受け入れた場合には、労働者は、派遣先に直接雇用を申し込む権利があり、受け入れ先はこれを拒否することができないとされています。 2 偽装請負と業務委託の区別について  それでは、業務委託や請負契約に基づき、労働者が外注先において執務することはまったく許されないのでしょうか。例えば、システム開発の現場では、受注した企業の労働者が、顧客に赴いて直接作業を行う形態での業務委託契約があります。このような場合が、すべて偽装請負となるわけではありません。  重要な点は、発注者は、受注した企業の労働者に対して、@直接の指揮命令を行うことはできないこと、A労働時間の管理を行わないこと、B発注先が事業者としての独立性を維持することなどがあげられます。これらの要件は、「労働者派遣事業と請負により行われる事業との区分に関する基準」(「昭和61年労働省告示第37号」と呼ばれています)において整理されています。  まず、@については、労働者に対する業務の遂行方法に関する指示その他の管理および業務遂行の評価等に係る指示やその他の管理を(受注者)自らが行うことが必要とされています。受注者が、自らの判断と責任で人員の配置を決定することを意味しており、例えば、発注者が面談した労働者を担当者にするなど、事実上、人員の選択を委ねている場合は、偽装請負の要素が強くなります。  次に、Aについて、労働時間の始業および終業時刻や休暇の取得や、時間外労働や休日労働の指示などについても(受注者)自らが行うことが求められています。発注者の事業所において執務している場合、時間外労働や休日労働の必要性については、間近で見ている発注者の方が判断しがちです。しかしながら、直接の指揮命令ができない以上、時間外労働などを含む労働時間の管理については、受注者が行わなければなりません。  さらに、B独立性の維持として、服務規律に関する事項に対する指示、労働者の配置の決定および変更を(受注者)自らが行い、さらに、業務の処理に要する資金を受注者が調達し支弁したうえで、独立した事業者として受注者が損害賠償責任を負担することなどが必要とされています。まず、服務規律については、懲戒権を有しているのはあくまでも受注者である以上、服務規律に関する指示などについても受注者が行えなければなりませんし、また、労働者の配置も受注者自身で決定できなければなりません。資金の支弁や損害賠償責任の負担については、受注者にとって不利益な要素のようにも見受けられますが、独立した事業者であるかぎりは、責任を負うことは一般的な契約においては通常の規定であり、それが排除されていることは独立性を疑わせる要素になります。  このほか、業務に必要な機械や設備、材料や資材は受注者自ら調達することや、自らの専門的な技術や経験に基づいて業務を処理することなどが求められています。特に、後者の内容から、単純労働については、労働者派遣法の適用を免れる目的があると見られやすいため、特に注意が必要でしょう。 3 具体的な対応などについて  ご相談の状況については、システム利用などの必要性があると見受けられますが、そのことのみをもって、偽装請負ではないとはいえません。  発注者の事業所で執務するのであれば、直接の指揮命令を受けることがないように留意する必要があります。よく採用される手法としては、直接の指揮命令を行わないことを前提に、連絡を取り合うために、相互に担当者を定めたうえで、状況を共有し、あくまでも受注者の立場で時間管理や休暇の調整などを実施する方法です。このような方法で連絡を取り合う場合でも、受注者が発注者の要望をそのまま労働者に命じており、自身の判断ではない場合、規定に違反する可能性が生じるため、独立性が維持されているとは評価されないので注意が必要です。 【P44-45】 高齢者雇用と働き方改革 治療と仕事の両立支援のポイント  「働き方改革」で重要なのは、長時間労働の是正や処遇改善だけではありません。高齢従業員の増加にともない、病気を抱える高齢者が、持っている能力を安心して発揮できるよう、病気の治療と仕事の両立を支援する取組みがいままで以上に重要になります。そこで、事業者に求められる両立支援のポイントについて解説します。 第5回 従業員が循環器疾患(心筋梗塞・不整脈など)に罹患した際の対応 産業医科大学 両立支援科・第二内科学 荻ノ沢(おぎのさわ)泰司 はじめに  心筋梗塞や不整脈など循環器疾患は高齢者に多い病気ですが、壮年期から中年期においてもまれな疾患ではありません。「心臓発作」という言葉があるように、何の前触れもなく働き盛りの人が倒れることもあります。また、一口に循環器疾患といっても、同じ病名でも発病前とほとんど変わらない生活が送れるものから、退院すらままならないものまで重症度の幅が広く千差万別です。 循環器疾患患者への安全配慮と両立支援  循環器疾患は再発のリスクが高いことが知られており、回復後も二次予防としての治療の継続および生活習慣の改善を図ることが重要です。労働安全衛生法では使用者に安全配慮義務が課せられているため、特に心不全や失神のリスクが高いものについては、業務にともなう疾病の悪化や事故・労働災害を防ぐための合理的配慮を行う必要があります。  しかしながら、必要以上にリスクを過大評価してしまうと労務をすべて制限する方向に向かい、結果として休職から退職へと追い込まれてしまいがちです。一方、両立支援の考え方は、適切なリスク評価に基づいて、本人および職場が許容しうるリスクと対応可能な配慮を見極めて、バランスを取りながら治療と仕事の両立を図ることにあります。 休職時の対応  循環器疾患には、心筋梗塞や致死的不整脈のように突然発症して緊急入院が必要なものと、弁膜症による心不全など比較的緩やかな経過をたどり、外来加療を基本に必要に応じて計画的入院治療を行うものがあります。急な発症で業務を引き継ぐ間もなく欠勤することになれば、職場は担当業務の割振りなど突然の対応を迫られることになります。事業者は普段から「お互いさま」と思える両立支援のための職場の風土づくりを行うとともに、本人の支援だけではなく、負担の増える同僚や上司などサポートする側のケアをすることも大切です。  本人には急性期は治療に専念してもらい、病状がある程度落ち着いてから企業内に設置した両立支援の窓口(職場の上司・人事担当者、産業医や保健師などの産業保健スタッフ)に状況と見通しを連絡してもらいます。最近は手術が必要であっても、身体に対する負担が小さくて済むように治療も進歩していますので、数日間の入院で治療が完結し、有給休暇だけで職場に復帰できる場合も少なくありません。有給休暇の範囲を超える場合には休職扱いになりますが、就業規則に定められた期間や満了後の扱いなど社内規程の確認が必要です。 復職時の対応  治療が一段落して復職を考慮できる状況になれば、復職に向けた対応を検討することになります。重症度や治療内容によって考慮すべき事項が異なりますので、必要に応じて当該従業員を介して病状や治療に関する留意事項などの意見書を主治医から発行してもらいます。  意見書を依頼する際には、実際にどのような職場環境で働いているのか、どのような懸念事項や配慮が想定されるかを職場側から主治医に伝えるとよいでしょう。医療機関側も職場での状況がわからなければ「職場復帰可能だが、過労を避ける必要がある」といったような具体性のない意見書になってしまいます。本人・職場・医療機関が連携することで、より職場での現状に即した具体的かつ必要十分な配慮を行うことが可能となります。 循環器疾患の両立支援における検討事項  循環器疾患の就労への影響は、@疾患の重症度・特性によるもの、A治療によるもの、にわけてそれぞれの配慮事項・検討項目を整理すると理解しやすいと思います。循環器疾患に特徴的な検討事項を下記に示します。 (1)身体的負荷の許容範囲  心臓の働きが悪くなると、身体的負荷に対応しきれず心不全や不整脈をきたすことがありますので、心機能に応じた身体的作業量の制限を考慮する必要があります。日本循環器学会のガイドライン※1では、安静時と比べたエネルギー消費量で仕事の活動強度を評価して許容範囲を示していますが、業務すべてを網羅しているわけではないため個別の判断が必要です。また、バイパス手術などの外科的手術後では、心臓自体は治療により回復していても開胸後の傷が安定するまでの一定期間、重いものを持たないなどの配慮が必要です。 (2)勤務形態や職場環境管理  夜勤や交代勤務などの不規則なシフトワークは虚血性心疾患や不整脈などのリスクを増加させることが知られており、病状に応じて就業時間の制限を検討する必要があります。また、虚血性心疾患患者では禁煙が原則ですが、職場の禁煙・分煙化がなされていない場合には環境整備も重要です。 (3)心臓デバイス植込み患者の電磁干渉※2  ペースメーカなどの心臓植込みデバイスは、電磁波により影響を受けて誤作動をきたす可能性があります。職場に発電機など強力な電磁波を発生させる装置がある場合には職場環境調査を行い、影響をおよぼす恐れがある区域を明らかにして、立ち入り制限を行うこともあります。また、溶接など行うことができない作業もありますので、心配な場合には医療機関に確認した方がよいでしょう。 (4)ICD植込み患者の運転制限※2  心臓デバイスのなかでも、植込み型除細動器(ICD)は、急激に脈拍が速くなり血液を送り出せなくなる致死的不整脈を防止し、心臓突然死を防ぐデバイスです。意識消失を突然きたす恐れのある患者さんに植え込まれることから、自動車の運転制限が定められています。一定期間、作動がなければ、資格を持った医師の記載した診断書を公安委員会に提出することによって運転は可能となりますが、旅客を乗せる第2種運転免許や大型免許の適性はありません。仮に普通免許であっても、営業など業務として長時間運転をする場合には方法を検討する必要があります。 おわりに  循環器疾患の病態と職種・職場の多様性のかけ算は無限大です。治療と仕事を両立するためには本人・職場・医療機関が連携し、個々の患者の病状・病態ならびに就労現場のすりあわせを行い、そこに生ずる「リスク」の適切な評価と、具体的な「困りごと」に対する可能な配慮を、バランスよく行っていくことが重要です。 ※1 『心疾患患者の学校、職域、スポーツにおける運動許容条件に関するガイドライン(2008年改訂版)』 ※2 『ペースメーカ、ICD、CRTを受けた患者の社会復帰・就学・就労に関するガイドライン(2013年改訂版) 【P46-49】 特別寄稿 退職給付会計を学ぼう −−65歳定年時代の退職金制度を理解するために−− 玉川大学経営学部 准教授 石田万由里(まゆり) 1 はじめに  企業会計では、法令により年に一度、財務諸表を公開することにより、さまざまな利害関係者(投資家、株主、債権者、行政機関など)に財政状態と経営成績を報告する義務があります。今回取り上げる退職給付は、退職時に支払われる退職一時金と、退職後に支払われる退職年金(企業年金ともいう)のことをさしますが、これらは財務諸表の以下の項目に表示されています。  貸借対照表に表示される「退職給付引当金」は、連結財務諸表の場合は「退職給付に係る負債」として表示されます。損益計算書における退職給付費用は、「製造費用または販売費および一般管理費」として総額が表示されていますが、金額は注記の「一般管理費」の内訳項目としてみることができます。退職給付会計とは、財務諸表に表示するそれらの金額を決定するためのプロセスのことをいいます。その計算過程は下の図表のようにあらわすことができます。  このように金額を算定するまでの過程がそれぞれに異なり、さまざまな数値を使って算出されます。では、これらの金額がどのように決定されるのかをみてみましょう。 2 貸借対照表にみる退職給付会計の算定方法  退職給付に関連した会計数値は、貸借対照表の負債の部(固定負債)に「退職給付引当金」(個別)または「退職給付に係る負債」(連結)として表示され、損益計算書の製造費用または販売費および一般管理費に「退職給付費用」として表示されます。これらの金額はどのように算定されているのでしょうか。まず、貸借対照表からみていきましょう。  図表で確認したように、「退職給付引当金」は「退職給付債務」から「年金資産」を控除して求められます。「退職給付債務」とは、一定期間労働を提供したことなどの事由に基づいて、退職以後に支給される給付(退職給付)のうち、認識時点(期末に退職給付債務を算定するとき)までに発生していると認められる部分を割り引いたものをいいます。つまり、次のような手順で算出します。 @ 退職給付見込額(退職時に見込まれる退職給付の総額の見積り)の計算 A 当期までに発生したと認められる退職給付見込額の見積り B 退職給付見込額のうち期末までに発生していると認められる額に対して、割引率を用いて割引計算  まず、@の退職給付見込額は、さまざまな退職事由を想定した予想退職期ごとに従業員に支給される一時金の見込額や、退職時点における年金現価の見込額に、退職率や死亡率を加味して計算します。さらに、予想される昇給や、年金加算金、資格加算金など、臨時に支給される退職給付を含める必要があります。  当期末までに発生したと認められる額は、退職給付見込額に基づく次の期間帰属方法によって算定されます。その方法には「期間定額基準」と「給付算定式基準」の2つがあります。前者は、退職給付見込額を全勤務期間で除した額を各期の発生額とする方法です。後者は、退職給付制度の給付算定式にしたがって各勤務期間に帰属させた給付に基づいて見積もった額を、退職給付見込額の各期の発生額とする方法です。これらは、継続的に適用する必要があります。ここでは多く採用されている「期間定額基準」の計算式をとりあげます。 期末までに発生したとみなされる退職給付見込額=  @で算定した退職給付見込額の総額×期末時点までの勤続年数÷退職時までの勤続年数  さらにBの割引計算で使用する割引率は、安全性の高い債券の利回りを基礎として決定する、とされており、割引率の基礎とする安全性の高い債券の利回りとは、期末における国債、政府機関債及び優良社債の利回りをいう、とされています。なぜ割引計算を行うかといえば、退職金は将来の退職時に支出する費用なので、将来に備えて、現時点で必要な金額を計算することを「割引計算」、そしてこの計算によって算出した金額を「割引現在価値」といいます。退職時までに支払う必要のない資金を運用することによって、原資を増やそうという考え方です。  他方、「年金資産」とは、企業年金制度に基づいて退職給付に充当するために積み立てられている資産であり、期末における公正な評価額(時価)によって測定されます。また退職給付会計では、退職給付信託といって、母体企業が有価証券等を退職給付の支払いという目的に限定して、信託銀行にその運用を委託したものがありますが、この資産も年金資産に含むことができます。このように算定された退職給付債務から年金資産を差し引いた金額が退職給付引当金となります。  このように退職給付会計で用いる数値の多くは、仮定(予想)に基づいて計算されていることから、予測と実績の金額に差が出ることがあります。例えば、年金資産の期待収益と期末に算定された実際の運用収益の差異や退職給付債務の数理計算に用いた見積り額と実際の差異などは、数理計算上の差異と呼ばれ、退職給付債務から年金資産を差し引く際に加減されています。 3 損益計算書にみる退職給付会計の算定方法 損益計算書では、「製造費用または販売費および一般管理費」に「退職給付費用」は含まれています。退職給付会計では、「退職給付費用」の計算には「勤務費用」、「利息費用」、「期待運用収益」を算定する必要があります。  まずは「勤務費用」からみていきましょう。「勤務費用」とは、1期間の労働の対価として発生したと認められる退職給付のことをいいますが、算定は以下の手順で行います。 @退職給付見込額の算定 A退職給付見込額のうち当期発生分の算定 B勤務費用の算定  @は前述した退職給付債務の算定と同様です。Aは次の式で求められます。  退職給付見込額のうち当期発生額=   退職給付見込額×(1÷入社時から退職時までの勤務年数)  Bの「勤務費用」はAで算定した金額を用いて次のように算定されます。  勤務費用=  退職給付見込額のうち当期に発生した額×{1÷(1+割引率)残存勤務期間}  次に「利息費用」ですが、利息費用とは、割引計算により算定された期首時点における退職給付債務について、期末までの時の経過により発生する計算上の利息をいい、次の計算式を用います。 利息費用=  期首退職給付債務×割引率  そして「期待運用収益」とは、年金資産の運用により生じると合理的に期待される計算上の収益をさします。具体的には企業年金制度における制度資産の運用によって発生すると規定される収益であり、期首の制度資産に一定率の期待運用収益率を乗じて算定されます。  したがって、これらをまとめると退職給付費用は以下の計算式で求められます。 退職給付費用=  勤務費用+利息費用±期待運用収益  では、これらの用語や計算式を使って、具体的な例をみてみましょう。 【設例】  入社(加入)から5年後に退職金500万円を支給する。  期間定額基準は、次の通りとする。割引率:0%(*割引率が0%なので毎年、加入期間で均等配分) 加入 1年後 100 退職給付債務 100 2年後 100 100 退職給付債務 200 3年後 100 100 100 退職給付債務 300 4年後 100 100 100 100 退職給付債務 400 5年後 100 100 100 100 100 退職給付債務 500 加入 1年後 勤務費用 100 退職給付債務 100 2年後 前期退職給付債務 100 勤務費用 100 退職給付債務 200 3年後 前期退職給付債務 200 勤務費用 100 退職給付債務 300 4年後 前期退職給付債務 300 勤務費用 100 退職給付債務 400 5年後 400 前期退職給付債務 勤務費用 100 退職給付債務 500 4 退職給付会計をめぐる動向  企業経営には有能な人材の雇用が不可欠です。人件費は人事管理という視点からみれば労働費用というコストになります。総労働費用は、現金で支払われる現金給与総額(毎月の給与、賞与・期末手当)と、退職金、法定福利費などからなる現金給与以外にわかれ、現金給与総額は総労働費用の8割強を占めます。企業は競争力を維持するために労働費用を戦略的に管理し、賃上げ率の抑制や賃金制度を改革し、総額の伸びを抑制する施策を試みています。しかし、現金給与以外である福利厚生と退職金の費用はそのメカニズムとして自己膨張するという特徴を持っているため、結果的に総労働費用としては増加してしまいます。  今回取り上げた退職給付は、社員の定着率をあげるため勤続年数の長い高齢者に有利なように制度設計がなされてきました。したがって社員の高齢化が進むにつれて企業の退職金の負担額は増大します。そこで企業は従業員に支払う退職金を退職時に一括して支払う退職一時金と、長期にわたって支払うことにより毎期の費用の支出額を平準化する退職年金を導入しました。企業は年金の支払いのために毎期、複雑な計算式で概算額を算出し積み立てておきます。この積立金を資金として運用し、退職した社員に年金を支払います。しかし、資金運用は株価の変動や経済状況に左右されやすく、実際の運用収入が予想収入を下回った場合、不足分は企業の負担となり企業の経営状態の悪化を招きます。さらに少子高齢化により、企業の退職給付は毎年増加しています。また、退職給付は法定福利厚生のように政府の政策によって決定されるものではなく、企業の裁量によって決定されるものです。  企業会計における退職給付会計の重要な課題として、以下の三つがあげられます。一点目は、企業の将来支払うべき退職金や企業年金の、積立不足が巨額である企業が多いことです。確定給付型の企業年金では、積立資産の運用利回りの低下や資産の含み損などが発生するためです。このような状況から、企業年金の財政状況の情報公開の必要性が高まっています。  二点目は、従業員給付の会計基準に関する世界的な潮流の影響です。資本市場のグローバル化が進展するなかで、財務諸表の比較可能性や信頼性の観点から、わが国でも会計基準の世界的潮流を意識せざるを得ない状況であり、国際的な会計基準との調和のため、従業員給付に関する会計基準が整備される必要があると考えられます。  最後に、雇用形態の変化にともない、企業による従業員給付全般の改革が進展してきていることがあります。これまでの退職給付は、終身雇用や年功序列などの要素が重視されていましたが、近年、日本でも雇用体系や給与制度が大きく変化した影響もあり、従来の終身雇用、年功序列を前提とした企業年金制度そのものでは対応できなくなりつつあります。また、ベンチャー企業の隆盛にともなうストック・オプション※などの活用も増えつつあります。このような企業年金やストック・オプションなど従業員給付に関する活用方法が変わるなかで、会計基準が法制度やそれらに対応した内容へと移行する必要性が高まっています。現在は、ゼロ金利政策により、割引計算に用いられる割引率は0%と認められています。退職給付会計では、ゼロ金利は想定されていなかったのです。  このように退職給付会計は、予測数値と経済状況によって企業年金資産の運用が左右されるため、会計の機能である情報公開としての財務諸表では、これらの金額がみえるように制度設計されたのです。 〔参考文献〕 伊藤邦雄責任編集、伊藤邦雄、徳賀芳弘、中野誠著『年金会計とストック・オプション』中央経済社、2004年。 今野浩一郎、佐藤博樹著『マネジメント・テキスト人事管理入門(第2版)』日本経済新聞出版社、2009年。 今福愛志著『年金の会計学』新世社、2000年。 企業会計基準委員会「退職給付に関する会計基準」、2016年12月16日最終改正。https://www.asb.or.jp/jp/wp-content/uploads/taikyu-5_1.pdf 田中建二著『財務会計入門(第5版)』中央経済社、2018年。 ※ ストック・オプション……株式会社の経営者や従業員が、自社株をあらかじめ定められた価格で購入できる権利 図表 退職給付会計の金額決定プロセス 貸借対照表(B/S) 【資産】 【負債】 流動負債 固定負債 退職給付引当金 (退職給付に係る負債) 【純資産(資本)】 退職給付会計に基づく貸借対照表に表示される金額 退職給付引当金 年金資産 退職給付債務 割引計算 退職給付見込額 うち当期までに発生した分 損益計算書(P/L) 【費用】 製造費用または販売費および一般管理費 (退職給付費用) 当期純利益 【収益】 退職給付会計に基づく損益計算書に表示される金額 期待運用収益 退職給付費用 利息費用 勤務費用 割引計算 うち当期までに発生した分 退職給付見込額 【P50-51】 2019年度 高年齢者雇用開発コンテスト 〜生涯現役社会の実現に向けて〜 高年齢者がいきいきと働くことのできる職場づくりの事例を募集します 主催 厚生労働省、独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構  当コンテストは、高年齢者が長い職業人生のなかでつちかってきた知識や経験を職場で有効に活かすため、企業などが行った創意工夫の事例を広く募集・収集し、優秀事例について表彰を行っています。  優秀企業等の改善事例と実際に働く高年齢者の働き方を社会に広く周知することにより、企業などにおける雇用環境整備への具体的な取組みの普及・促進を図り、生涯現役社会の実現を目ざしていきます。  多数のご応募をお待ちしています。 T 募集テーマ 働くことを希望する高年齢者が、年齢にかかわりなく生涯現役でいきいきと働くことができるようにするため、各企業などが行った雇用管理や職場環境の改善に関する創意工夫の事例を募集します。なお、創意工夫の具体的な例示として、以下の改善項目を参考にしてください。 改善項目 1.制度面の改善 内容(例示) @定年制の廃止・定年年齢の延長・継続雇用制度 A賃金・評価制度の改善 B短時間勤務等柔軟な雇用形態 C役割の明示  等 改善項目 2.高年齢者の戦力化 内 容(例示) @高年齢者の力を活用した生産性の向上 Aミスの防止やムダな動きの削減などの取組み B安全衛生管理(5S 活動、安全衛生委員会、事故防止対策)  等 Cその他 改善項目 3.意識・風土面の改善 内 容(例示) @職場風土の改善 A職場コミュニケーションの推進 B従業員の意識啓発の取組み  等 改善項目 4.能力開発(研修、資格取得、OJTなど) 内 容(例示) @高年齢者を対象とした教育訓練やキャリア形成支援の実施 A高年齢者による技能継承(技術指導者の選任、マイスター制度、マニュアル化、高年齢者と若年者のペア就労)  等 改善項目 5.健康対策 内 容(例示) @高年齢者を対象とした健康管理・メンタルヘルス(健康管理体制、健康管理上の工夫・配慮) A福利厚生(休憩室の設置、レクリエーション活動、生活設計相談体制)  等 U 応募方法 1.応募書類など  イ.指定の応募様式に記入していただき、写真・図・イラストなど、改善等の内容を具体的に示す参考資料を添付してください。  ロ.応募様式は、各都道府県支部高齢・障害者業務課にて、紙媒体または電子媒体により配布します。また、当機構のホームページ(http://www.jeed.or.jp/elderly/activity/2019_koyo_boshu.html)からも入手できます。  ハ.応募書類などは返却いたしません。 2.応募締切日  2019年4月15日(月)当日消印有効 3.応募先  各都道府県支部高齢・障害者業務課へ提出してください。 V 応募資格 1.原則として、企業からの応募とします。 2.応募時点において、次の労働関係法令に関し重大な違反がないこととします。 (1)平成28年4月1日〜平成30年9月30日の間に、労働基準関係法令違反の疑いで送検されておらず、また、公表されて いないこと。 (2)「違法な長時間労働や過労死等が複数の事業場で認められた企業の経営トップに対する都道府県局長等による指導の実施及び企業名の公表について」(平成29年1月20日付け基発0120第1号)に基づき公表されていないこと。 (3)平成30年4月以降、職業安定法、労働者派遣法、男女雇用機会均等法、育児・介護休業法に基づく勧告又は改善命令等の行政処分等を受けていないこと。 (4)平成30年度の障害者雇用状況報告書において、法定雇用率を達成していること。 (5)平成30年4月以降、労働保険料の未納がないこと。 3.希望者全員が65歳まで働ける制度を導入(※)し、高年齢者が持つ知識や経験を十分に活かして、いきいきと働くことができる職場環境となる創意工夫がなされていることとします。 ※ 高年齢者雇用安定法の経過措置として継続雇用制度の対象者の基準を設けている場合は、希望者全員が65歳まで働ける制度には該当しないことから、当コンテストの趣旨に鑑み、対象外とさせていただきます。 4.応募時点前の各応募企業における事業年度において、平均した1月あたりの時間外労働時間が60時間以上である労働者がいないこととします。 W 各賞 【厚生労働大臣表彰】 最優秀賞 1編 優秀賞  2編 特別賞  3編 【独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構理事長表彰】 優秀賞  若干編 特別賞  若干編 ※上記は予定であり、次の「X 審査」を経て入賞の有無・入賞編数等が決定されます。 X 審査 当機構に、学識経験者などから構成される審査委員会を設置し、審査します。 Y 審査結果発表など 2019年9月中旬をめどに、厚生労働省および当機構において各報道機関などへ発表するとともに、入賞企業等には、各表彰区分に応じ、厚生労働省または当機構より直接通知します。 また、入賞企業の取組み事例は、厚生労働省および当機構の啓発活動を通じて広く紹介させていただくほか、本誌およびホームページなどに掲載します。 Z 著作権など 提出された応募書類の内容にかかわる著作権および使用権は、厚生労働省および当機構に帰属することとします。 [ お問合せ先 ●独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構 雇用推進・研究部 研究開発課  〒261-0014 千葉県千葉市美浜区若葉3丁目1番3号  TEL:043-297-9527  E-Mail:tkjyoke@jeed.or.jp ●独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構 各都道府県支部高齢・障害者業務課 連絡先は65頁をご参照ください。 みなさまからのご応募をお待ちしています 事例の紹介 当機構のホームページでは、入賞企業の取組み事例を紹介する事例集を掲載しています。高年齢者雇用を含め、よりよい雇用環境整備にご活用いただけると幸いです。  詳しくは、「jeed 表彰事例 資料」でご検索ください。 jeed 表彰事例 資料 検索 【P52】 トピックス TOPICS 1 エイジマネジメント研究会と日本予防医学協会がシンポジウムを開催 「働くための体力とエイジマネジメント」をテーマに発表  2018(平成30)年11月7日、公益社団法人日本産業衛生学会エイジマネジメント研究会と一般財団法人日本予防医学協会が共催するシンポジウムが都内で開催された。テーマは「働くための体力とエイジマネジメント」。高齢者雇用において気になる高齢者の体力とエイジマネジメントの観点から、各方面による報告、意見交換が行われた。 ☆ ☆ ☆ 作業関連疾患および疾病の発症と対策を発表  最初のシンポジストは、マツダ株式会社安全健康防災推進部で産業医を務める山下潤氏。山下氏は「腰痛・筋骨格系障害予防の取り組み」と題し、社内の労働災害防止活動における作業関連疾患および疾病の発症とその対策について、資料や動画などを交えて報告した。  同社の近年における高齢者の傷病発生状況については、「年齢が高くなるほど疾病が増えるという傾向は見られない」と報告。同社で実施している高齢従業員に対する配慮については「55歳以上の高齢者を作業配置する際、体力の衰えを十分に考慮し、原則的に作業負荷の少ない区分に配置すると定めている」と説明した。  一方で、長年同じ作業を続け、まったく疾患性がなかった高齢従業員が、新しい作業が増えたことで疾病が発生した事例をあげ、「作業に慣れている従業員でも作業工程の変更の際には注意が必要」と注意喚起した。  山下氏は「人手不足と従業員の高齢化にともない、高齢従業員にも作業負荷が高い仕事をになってもらわなければならなくなる。これにどのように取り組むのかが課題」と述べ、今後の施策の一つとして、アシストスーツ※の導入をあげた。アシストスーツの導入による生産性の向上とともに、疾病防止の視点を加え、その評価をしていくと今後の展望を述べた。 高齢者の転倒を予防する歩行と姿勢づくりを推奨  二人目に登壇したのは、東京大学医学部附属病院22世紀医療センター運動器疼とう痛つうメディカルリサーチ&マネジメント講座特任研究員の川又華代(かよ)氏。「中高年の生活習慣と体力」をテーマに、中高年に最適な体力づくりとして、歩行とよい姿勢づくりを紹介した。  最初に「加齢との関連性が認められている転倒は、下肢の筋肉の衰え、バランス感覚の低下が原因」としたうえで、「体力チェックをすることで若いころとは違うことを自覚するのも必要」と述べ、実際にシンポジウムの参加者と体操を実践しながら体力・筋力チェックを行った。  次に、比較的健康な高齢者を対象にした歩行速度と転倒のデータを示し、「歩行速度が遅いと転倒する回数が増え、また、歩幅が狭くても転倒する回数が増える」と報告。歩行速度を上げる方法として、よい姿勢づくりを強調した。  「ジムなどで行う運動より、身体活動全般の方が1日のエネルギー消費量が多い。普段の活動や動き、歩数を増やしていくことが大事で、高齢者の体力づくりに向いている」と締めくくった。 企業の健康づくり・体力測定活動の事例を紹介  続いて登壇したのは、企業の健康づくり・体力測定を行う、株式会社総合体力研究所代表取締役の三村浩(ひろし)氏。「企業における体力づくりの実際〜成功事例・失敗事例から〜」と題し、同社が企業の相談を受けて活動した事例を紹介した。  まず、成功事例として、年代別体力向上セミナーとプログラムを実施した企業での活動をあげた。これは、「運動習慣がない30代の従業員にメタボが増えており、高齢になっても元気に働いてもらうための取組みがしたい」と企業側から相談を受けて始めたもの。  産業分野の特性に合わせ、柔軟性、敏捷性(びんしょうせい)・バランス感覚、筋力などの項目に基準を設けて体力測定を実施。基準以下の従業員を対象に体力づくり活動を行った。その結果、各項目で基準以下だった従業員の大半が、基準値をクリアしたと成果を語った。  また、失敗事例として、同様の目的で活動を実施したものの、うまく周知を図れず、測定をしない従業員がいるなど、データを正確に取得できず活動が終了したケースを紹介した。「従業員の意識改革と同時に、管理・監督者への理解、指示系統を徹底することで、継続的な活動を構築できる」と述べ、「近年の動向としては、年代ごとに必要な体力を養成する活動が中心になってきている」と報告して締めくくった。 ☆ ☆ ☆  3名のシンポジストの報告後、当機構雇用推進・研究部の浅野浩美部長が指定発言者として登壇。「高齢者は体力に個人差があるといわれている。今回は体力チェックや生活活動での体力づくりが重要だとわかった」と発言した。  同シンポジウムは、エイジマネジメント研究会が一般に向けた情報発信を目的に開催しているもので、今回で5回目を数える。最後に総合討議を行い、参加者から熱の込もった質問が投げかけられ、シンポジウムは盛況のうちに閉幕した。 ※ アシストスーツ……荷物を持ち上げるなどの際の身体への負荷を軽減する機材 マツダ株式会社安全健康防災推進部 産業医 山下潤氏 東京大学医学部附属病院22世紀医療センター運動器疼痛メディカルリサーチ&マネジメント講座特任研究員 川又華代氏 株式会社総合体力研究所代表取締役 三村浩氏 【P53】 トピックス TOPICS 2 JADA(中高年齢者雇用福祉協会)フォーラム 「人生100年時代の生き方・働き方」をテーマに開催  2018(平成30)年12月10日、一般社団法人中高年齢者雇用福祉協会(JADA)が主催するフォーラムが都内で開催された。「人生100年時代」の到来が現実味を帯びるなか、長い人生を有意義に生きるために、生き方と働き方の両面から、3人の有識者による講演が行われた。 体系的なキャリア支援対策が鍵に  最初に登壇したのは、厚生労働省職業安定局雇用対策部長の北條(ほうじょう)憲一(けんいち)氏。「高年齢者雇用対策の現状と課題」をテーマに、国政の最新情報を交えながら講演を行った。まず、今後日本でかつてない急激な人口減少と高年齢化率の上昇が起こるという推計を示したうえで、現在では65歳以上の就業希望者が5割を占めており、高齢者の労働力人口は年々増加していることを報告した。  続いて高齢者の就業理由として、60代前半では「生活の糧を得るため」がもっとも多いが、65歳後半では「健康にいいから」、「生きがい、社会参加のため」という就業理由が増える傾向にあると指摘した。特に女性の場合は、60代前半から生きがいを求めて就業する傾向がうかがえ、注目すべきポイントとしてあげられた。  また、国による70歳までの就業機会の確保に向けた高年齢者雇用対策・年金制度改革の方向性について、「各事業者の自由度のある法制を検討している」と述べ、今後拡充すべき高年齢者雇用就業対策については、キャリアコンサルタントの存在がポイントになると提言。「企業がキャリアコンサルティング面談と、キャリア研修などを組み合わせて、体系的・定期的に従業員の支援を行い、従業員の主体的なキャリア形成を促進・支援することが重要になる。高齢従業員は、職務経験や教育訓練受講の積み重ねなど、段階的な職業能力の形成(キャリア形成)に努めることが大切」と話した。  また、今後は高齢者の派遣従業員が増えると予測し、「高齢従業員が担当する仕事を自社内で確保することがむずかしいなど、一企業で抱えきれない高齢従業員を派遣する構造が望ましい」と述べ、最後に「明るいイメージでの65歳以降の働き方を、実現に向けて進めていきたい」と締めくくった。 「自分ごと化」で高齢者も成長を  次に登壇したのは、本誌12月号の「リーダーズトーク」にもご登場いただいた、法政大学名誉教授の諏訪(すわ)康雄氏。「人生100年時代の職業生活〜キャリアはどこまで延ばせるか〜」をテーマに、高齢者のキャリアのあり方について提言した。  慢性的な労働力不足や、雇用確保年齢の上限引上げなどの情勢もあり、就業者の年齢が上がっている。将来的に高齢者が職場の中核人材になると予測する一方、「単にキャリアの時間軸を伸ばすだけでは、高齢従業員・本人の熱意を損失し、ひいては職場の熱意、効率、生産性の低下につながる。高齢従業員のモチベーションを高め、能力を発揮してもらうことが大切」と述べ、「そのためには中高年齢者が成長を感じ、やりがいを感じるかがポイント」と説いた。  さらに、60〜65歳の読解力と数的思考力といった学力は、25〜29歳のピーク時と比較してその8〜9割を維持しているという調査結果を示し、実務能力も9割維持していると推測できることから、企業は中高年齢者をもっと活用し、一方の中高年齢者自身はもっと主体的に学び、成長する必要があると力を込めた。  そのため、企業が50代よりも早い、中年期の時期からキャリアを考える機会を提供することが望ましいと提唱。職業生活の節目で企業がキャリアコンサルティングを実施し、従業員のキャリア意識を高め、自覚させることが重要であり、実際にキャリアコンサルタントと面談を行った人材は、仕事に対して意欲的になると説いた。  「中高年齢者は十分に能力があり、成長もできる。キャリアの軸を何にするかを考え、自分の仕事に対してもっと『自分ごと化』することが大切。高齢者も成長しないといけない」と締めくくった。 「人とのつながり」が健康に寄与  最後に登壇したのは予防医学者で医学博士の石川(いしかわ)善樹(よしき)氏。「人がよく生きるとは何か」をテーマとした学際的研究で知られ、斬新な「生き方論」を展開する石川氏は、「人生100年時代の生き方」をテーマに、ライフプランの基本思想について提言した。  戦後直後には50歳だった平均寿命は、およそ20年後の東京オリンピックが開催された1964(昭和39)年には70歳になった。終戦直後は人生は働くことで占められていたが、人生70歳時代になると学び、働き、定年後休むというライフスタイルに変化した。これからの人生90歳時代では、定年75歳が視野に入ることから「『100年生きる時代』にどう生きるかを考えたとき、65歳以上は人とのつながり、かかわり合い、地位がキーになる」と石川氏は提唱する。  例えば、急性心筋梗塞で入院した75歳以上の患者について、入院中に世話をする人の数が3人以上だった場合、6カ月以内の死亡率が低かったという調査結果を報告。ほかにも、所属する組織の数が3組織以上の場合は、介護状態になりにくく、所属組織において役職がある方の死亡率は低下するなど、65歳以上の高齢者を対象に行った調査結果を提示し、人とのつながりと病気、介護の関係性などを示した。  さらに、「孤独はタバコよりも長生きを阻害する。人とのつながりをつくるためには、よく学び、よく遊び、よく働くこと」と述べ、一般的に寿命を縮めるとされる喫煙、飲酒、運動不足、肥満などの要因と、人とのつながりを比較し、人とのつながりがある人の方がより長命であると解説。人とのつながりをつくるために、学ぶ・遊ぶ・働く、それぞれのコミュニティを持ってほしいと話し、最後に「100歳まで元気に生きるには、元気な高齢者のモデルケースを見ること。歳を取ることによいイメージを持つこと。そして、若さではなく歳を重ねることに価値を置く社会の実現を」と結んだ。 会場の様子 【P56-57】 BOOKS 社員を徹底的に大切にすることで20年以上黒字を続ける会社のノウハウを公開 社員を「大切にする」から黒字になる。「甘い」から赤字になる 近藤宣之(のぶゆき) 著/ あさ出版/ 1500円+税  社員数約60人という規模でありながら、「日本でいちばん大切にしたい会社」大賞で中小企業庁長官賞を受賞するなど、数々の受賞歴を誇る「株式会社日本レーザー」。本書は、同社社長として20年以上も陣頭指揮を執ってきた著者(現会長)が、社員を徹底的に大切にすることで手に入れた経営手法を余すところなく公開したもの。「実際にどうすればよいのか」との視点から実践的なノウハウが紹介されているので、生きた「経営の教科書」といえるだろう。  多くのビジネス書はトップの経営理念の紹介にとどまることが多いが、本書には同社の採用制度や教育制度、人事制度、賃金制度、総合評価制度などが紹介されており、さらに巻末の資料(約40頁)には、就業規則や賃金規程、退職金規程の特徴的な部分、総合評価表、人事制度改革の年表などが収録されている。そこまでするのは、「社員を大切に、幸せにして、なおかつ利益を上げ続ける会社が増えてほしい」という著者の願いからだ。  同社は、社員本人が希望すれば70歳まで働くことができる。今号の「生涯現役で働くとは」(30頁)には、同社の坂本幹夫さん(66歳)に登場していただいた。あわせてご覧いただきたい。 生きていくことにワクワクする力をもらえるエッセイ集 90歳を生きること 生涯現役の人生学 童門(どうもん)冬二(ふゆじ)著/ 東洋経済新報社/ 1200円+税  本書は、本誌の長期連載「江戸から東京へ」でおなじみの歴史小説家・童門冬二氏が、自身の近況を軽妙な言葉でつづったエッセイ集。  童門氏は1927年生まれ。「生涯現役、一生勉強」をモットーに、90歳を超えてなお、作品を書き続けるとともに、歴史に見る経営術やリーダーシップなどをテーマにした講演を全国各地で行い、好評を博している。  本書には、そうした日々のなかで自問すること、老化の実感、体の不調、遭遇した新たな危機、また、歴史上の人物の好きなエピソードなどが記されている。童門氏によれば、本書は「いつまでたっても悟り切れない、文字通り起承転転(きしょうてんてん)≠フ転≠生きる、いわば転々悶々(もんもん)≠フ呻(うめ)き」であるといい、「呻きの中にも喜びあり」という実感もあると付け加えている。  孔子(こうし)が「論語」で生涯行うべきことを一文字で表した「恕(じょ)」(相手の身になってものを考える優しさ、思いやり)にはじまり、「仁」、「道」、「誠」、「縁」をテーマにまとめられた内容は、読者にも自問自答の機会を与えたり、心の糧(かて)となったり、笑顔にさせてくれる。生きていくことにワクワクする力をくれる、活き活きとしたエピソードが満載の一冊である。 万一の備えや労災の未然防止にも役立つ、労災対応や手続きを解説 労災民事賠償マニュアル ―申請、認定から訴訟まで 岩出(いわで) 誠 編集代表/ ロア・ユナイテッド法律 事務所 編/ぎょうせい/ 3500円+税  労働災害の発生件数は、長期的には減少傾向にあるものの、いまだに毎年900人前後の人が亡くなり、休業4日以上の死傷者は11万人を超えている。加えて、メンタルヘルスに関わる労災認定件数も高止まりする傾向が続いており、業種や規模を問わず、企業は労災認定の問題やそれにともなう損害賠償請求に直面したときのことを想定しておいたほうがよいだろう。  本書は、労働災害として認定される補償の種類や傷病の性質から、業務起因性の認定、損害賠償額の算定、後遺症の認定など、労災の申請から認定まで、さらには民事賠償訴訟の手続きまで解説している。労災の未然防止の観点からは使用者による安全配慮義務や、健康診断と健康配慮義務にも触れており、労災上積み補償の解説はセーフティーネットの構築に役立つ。  編者は労働問題を専門に手がける法律事務所だけあって、解説は実務に即したものとなっており、記載例がついた労災保険関連様式は担当者の実務の手助けとなるはずだ。働き方改革関連法によって労働安全衛生法が改正され、企業に求められる法律上の義務が高まる状況のなか、人事労務担当者が手元に置く価値がある書籍といえそうだ。 経験豊かな認定産業医が現実的で効果的な方法を指南 実践! ストレスマネージメント ストレスの解決・解消と職場のコミュニケーション 渡辺洋一郎 著/ 日本生産性本部 生産性労働情報センター/ 1500円+税  職場の人間関係や仕事に対する緊張感、現場で起こる理不尽な出来事にイライラが募るなど、現代社会はストレスと無縁で生きていくことはむずかしい。だからといって、アルコールや好きなことなどに頼ってうさを晴らしても、単にストレスから逃げているだけで、同じことがくり返される可能性が高く、根本的な解決にはつながらない。著者は、それゆえに「現実的で効果的なプランを考え実行するという、ストレスマネージメントが必要」とその重要性を説く。  本書は、多数の大手企業で産業医を務める著者が、延べ数万人の社員と面談をしてきた経験をもとに、ストレスをはね返す力である「レジリエンス」の話から、ストレスの処理方法とその実践についてわかりやすく指南。また、職場のコミュニケーションや人間関係をよりよくするために考えたいことや、「上手な話の聴き方」、「意見が対立したときの話のすすめ方」、「心の健康の10の法則」なども解説している。  働く人のストレスマネージメントを、「よりよく生きる」という視点からとらえて平易な言葉でまとめており、生き方のヒントを与えてくれる内容となっている。年齢、職業、役職を問わず、多くの人の役に立つ一冊といえるだろう。 ビジネスパーソンが人生の後半戦を生き抜くために必要な教養とは 人生の教養 佐々木常夫 著/ ポプラ社(ポプラ新書)/ 800円+税  著者の佐々木氏は、病を抱える妻と長男を抱えながら東レやその関連会社の取締役との両立を果たし、ワーク・ライフ・バランスのシンボル的存在として知られている。本誌では2016年2月号の「リーダーズトーク」に登場していただき、高齢者が無理なく働ける社会の実現について語っていただいた。本書は、こうした佐々木氏の経験にもとづき、ビジネスに必要な「教養」のあり方が語られている。  佐々木氏のいう教養とは、博学であることを意味しない。多読によって豊富な知識を身につけただけの人や、一流大学を卒業した人が必ずしもビジネスで成功しているわけではないことをふまえ、ビジネスで求められる「生きた教養」とは何かが紹介されている。大切なのは組織の中でチームのメンバーと心をひとつにして実績を残すための教養であり、随所に織り込まれた東レ時代のエピソードによって、そのことが実践可能であることが理解できるはずだ。  佐々木氏は「人はその気になりさえすれば、年齢の制限を受けることなく、いくつからでも学び、伸びていける」と述べている。人生の後半戦を生き抜くために、真の教養を身につけたいビジネスパーソンに一読をすすめたい。 ※このコーナーで紹介する書籍の価格は、「本体価格」(消費税を含まない価格)を表示します 【P58】 ニュース ファイル NEWS FILE 行政・関係団体 厚生労働省 均等・両立推進企業を決定  厚生労働省は、2018(平成30)年度「均等・両立推進企業表彰」の受賞6社を決定した。  この表彰制度は、女性労働者が能力を発揮できるための積極的な取組み(ポジティブ・アクション)や、仕事と育児・介護との両立を支援する取組みを実践し、ほかの模範となるような企業を表彰するもの。1999年度から毎年行っていて、今回で20回目となる。  今年度は、「厚生労働大臣優良賞」の受賞企業として、均等推進企業部門2社、ファミリー・フレンドリー企業部門4社の合わせて6社が受賞した。なお、「厚生労働大臣最優良賞」の該当企業はなかった。受賞企業とその主な取組みは以下の通り。 【均等推進企業部門】(2社) ◆株式会社丸井グループ(東京都)→「女性イキイキ指数」を設定し、「見える化」を推進 ◆株式会社新日本科学(鹿児島県)→女性のマネジメント育成と女性社員活躍の環境整備に注力 【ファミリー・フレンドリー企業部門】(4社) ◆社会福祉法人平鹿悠真会(ひらかゆうしんかい)(秋田県)→すべての職員が働きやすい職場環境整備を推進 ◆株式会社千葉銀行(千葉県)→復職のための充実した支援など仕事と家庭の両立支援を推進 ◆アフラック生命保険株式会社(東京都)→両立支援の施策の拡充と柔軟な働き方を実践 ◆株式会社デンソー(愛知県)→さまざまなシーンを想定した介護支援に関する情報提供を実施 厚生労働省 「過重労働解消相談ダイヤル」の相談結果  厚生労働省は、11月の「過重労働解消キャンペーン」の一環として昨年11月4日に実施した「過重労働解消相談ダイヤル」の相談結果をまとめた。  それによると、寄せられた相談件数は合計501件。相談内容の内訳をみると、「長時間労働・過重労働」に関するものが204件(全体の40・7%)と最も多く、ほかには、「賃金不払残業」174件(同34・7%)、「パワハラ」69件(同13・7%)などとなっている(1件の相談で複数の相談内容が含まれているものがある)。  相談者の割合は、「労働者」が313件(全体の62・4%)、「労働者の家族」129件(同25・7%)、「その他」39件(同7・7%)。主な事業場の業種は、「製造業」68件(全体の13・5%)、「保健衛生業」65件(同12・9%)、「商業」46件(同9・1%)となっている。  同省では、これらの相談のうち、労働基準関係法令上、問題があると認められる事案については、相談者の希望を確認したうえで労働基準監督署に情報提供を行い、監督指導を実施するなど、必要な対応を行った。  労働条件に関する相談は今後も、都道府県労働局や労働基準監督署、「労働条件相談ほっとライン」で受けつける。 ●労働条件相談ほっとライン(相談は無料) [電話番号]0120-811-610  携帯電話・PHSからも利用可能 [相談対応曜日・時間]月〜金曜 17時〜22時 土・日曜 9時〜21時 調査・研究 明治安田生活福祉研究所 「人生100年時代に向けた意識調査」結果  株式会社明治安田生活福祉研究所(東京都千代田区)は、全国の40〜64歳の男女1万2000人を対象として実施した「人生100年時代に向けた意識調査」の結果を発表した。  調査結果から、現在働いていて、定年後や65歳以降も働きたい人のうち、学び直しの意欲を持つ人の割合(「ぜひ学び直したい」+「どちらかと言えば学び直したい」)をみると、正社員希望の場合は男性73・6%、女性75・1%、非正社員希望の場合は男性59・8%、女性71・0%となっている。  次に、希望する働き方別に学び直したい動機をみると、正社員希望では男女とも「将来または定年後もより長く働き続けるためには、新しい知識や訓練が必要だから」が最も高く、男性40・4%、女性49・2%。非正社員希望では、男性が「将来または定年後もより長く働き続けるためには、新しい知識や訓練が必要だから」37・2%と「個人的な興味・趣味のため」39・4%が同水準、女性は「個人的な興味・趣味のため」が44・4%で最も高く、「将来または定年後もより長く働き続けるためには、新しい知識や訓練が必要だから」が35・8%で続いた。  また、学び直す主な手段をみると、正社員・非正社員希望の男女とも「資格取得の勉強を通じて」がそれぞれで最も高くなっている(正社員希望男性36・8%・女性42・0%、非正社員希望男性40・9%・女性45・5%)。 【P59】 読者アンケートにご協力いただき、ありがとうございました  いつも本誌をご愛読いただき、ありがとうございます。2018年7月号で実施しました「読者アンケート」には、みなさまから多数のご意見・ご要望をいただきました。心よりお礼申し上げます。今後の企画・編集の貴重な資料として活用させていただき、よりよい誌面づくりに努めてまいりますので、引き続きご愛読をよろしくお願いいたします。  読者アンケートの結果の一部をご紹介いたします。 参考になる 69.2% 非常に参考になる 27.0% あまり参考にならない 3.2% 参考にならない 0.0% 無回答 0.6% ◎本誌に対する評価 「『エルダー』は参考になっていますか?」の質問には、「非常に参考になる」27.0%、「参考になる」69.2%と、9割以上の読者から前向きな評価をいただきました。 ◎参考になった記事とその理由 【特集】 ・高齢者雇用の現状と今後の展望がまとめられていて参考になった。 ・高齢者雇用に関する制度や対策が掲載されており勉強になる。 【リーダーズトーク】 ・高齢者雇用に実績のある企業のトップの話は参考になる。 ・先進的な取組みとしてとても刺激を受ける。 【ケーススタディ 安全で健康に働ける職場づくり】 ・事例があってわかりやすく、高齢労働者が安全に働ける環境づくりに活かしたい。 ・安全と健康のための新たな視点に気づかせてくれる。 【知っておきたい労働法Q&A】 ・実際の例にもとづいて解説されているのでわかりやすい。 ・労働法制は労務管理の上で重要であり、情報収集や確認に役立つ。 【高齢者に聞く 生涯現役で働くとは】 ・人生100年時代と言われるなか、生涯現役で働くためのヒントになる。 ・さまざまな人生が書かれてあり、読んでいてポジティブな考えになる。 【高齢者の現場 北から、南から】 ・各職場の個別の事情を垣間見ることができ、参考になる。 ◎もっと充実を図ってほしい記事や内容 ・「マンガで見る高齢者雇用」は、もう1〜2ページ増やしてほしかった。 ・「ケーススタディ 安全で健康に働ける職場づくり」は、高齢女性の転倒災害を予防するための運動やストレッチなどを図解入りで紹介すると、もっとよい。 ・「高齢者の現場 北から、南から」は、他社の取組みを知りたいので、複数の事例を掲載してほしい。 ・労働安全衛生法の情報を、もっと盛り込んでほしい。 ほか ◎今後取り上げてほしい内容などのご要望 【特集や連載テーマに対するご意見】 ・高齢者の賃金制度で中小企業でも使えるものを紹介してほしい。 ・第三次産業での安全衛生面、高齢者の災害防止に関する取組みがあれば非常に参考になる。 ・高齢者にとって働き方改革とは何かを具体的に解説してほしい。 ・親の介護による退職者が増えてきているので、介護離職を減らすための取組みを読んでみたい。 ・定年を引き上げる企業が増加することが予想されるので、導入までの経過と改善内容について企業規模別に取り上げてほしい。 ほか 【その他のご要望・ご意見】 ・若者が嫌がり、高齢者がになっている仕事にスポットを当ててほしい。 ・役職を退いた人がやっている仕事の紹介を増やしてほしい。 ・中小企業で高齢者雇用に取り組むなかでの苦労話や失敗談を知りたい。 ・体力が必要とされる介護、福祉や医療の現場で働いている人の声を紹介してほしい。 ・表紙が暗い号もあるので、明るくしたほうがよい。 ・文章が長く写真が少ないので、図表や写真でわかりやすくしてもらいたい。 ほか 【P60】 次号予告 4月号 特集 産業別高齢者雇用推進ガイドライン リーダーズトーク 飯尾祐次さん(コーケン工業株式会社 代表取締役社長) 〈高齢・障害・求職者雇用支援機構〉 メールマガジン好評配信中! 詳しくは JEED メールマガジン 検索 ※カメラで読み取ったQR コードのリンク先がhttp://www.jeed.or.jp/general/merumaga/index.htmlであることを確認のうえアクセスしてください。 お知らせ 本誌を購入するには 本誌の定期購読は株式会社労働調査会にお申し込みください。 1冊ずつの購入もこちらで受けつけます。 ★定期購読についてのお申し込み・お問合せ先:株式会社労働調査会  〒170-0004 東京都豊島区北大塚2-4-5  電話03-3915-6415 FAX 03-3915-9041 ★雑誌のオンライン書店「富士山マガジンサービス」でご注文いただくこともできます。  URL http://www.fujisan.co.jp/m-elder 編集アドバイザー(五十音順) 今野浩一郎……学習院大学名誉教授 大嶋江都子……株式会社前川製作所コーポレート本部人財部門 金沢 春康……サトーホールディングス株式会社人財開発部 人事企画グループ人事企画担当部長 菊谷 寛之……株式会社プライムコンサルタント代表 阪本 節郎……株式会社博報堂エルダーナレッジ開発 新しい大人文化研究所所長 清家 武彦……一般社団法人日本経済団体連合会 労働政策本部 上席主幹 深尾 凱子……ジャーナリスト、元読売新聞編集委員 藤村 博之……法政大学経営大学院 イノベーション・マネジメント研究科教授 真下 陽子……株式会社人事マネジメント代表取締役 山ア 京子……アテナHROD代表、学習院大学特別客員教授 編集後記 ●当機構では、昨年10月から今年1月にかけて、全国6カ所で「平成30年度生涯現役社会の実現に向けたシンポジウム」を開催しました。ご登壇いただいたみなさま、そしてご参加いただいたみなさまに、改めてお礼申し上げます。  シンポジウムのテーマは「人生100年時代 継続雇用・定年延長を考える」。健康寿命の延伸により人生100年時代が現実のものとなりつつあるなか、人手不足などに悩む企業が、持続的な成長を続けていくためには、高齢人材の活用がキーとなります。そこでシンポジウムでは、当機構が実施した継続雇用・定年延長の効果や課題に関する調査結果について報告するとともに、高齢者雇用に取り組む先進企業の取組み事例発表や、学識経験者をコーディネーターに迎えてのパネルディスカッションなどを行いました。本号特集では、その模様を余すところなくお届けしています。これから高齢者雇用への取組みを本格化させていきたいと考えている読者のみなさまはもちろん、65歳、さらには70歳超雇用の取組みを検討中のみなさまにとっても、大いに参考になる内容となっています。ぜひご一読いただければ幸いです。 ●昨年7月号で実施した「読者アンケート」の結果の一部を59頁で紹介しています。ご協力ありがとうございました。みなさまからのご意見を参考に、よりよい誌面づくりに努めてまいります。引き続き『エルダー』をよろしくお願い致します。 ●本誌で20年以上にわたりルポライターとして活躍されている吉田孝一さんが逝去されました。特に「技を支える」では、連載第1回から取材・執筆をご担当いただき、超長期連載企画として読者のみなさまからも大変ご好評をいただきました。吉田さんのこれまでのご貢献に改めて感謝するとともに、心よりご冥福をお祈り申し上げます。 月刊エルダー3月号 No.473 ●発行日−−平成31年3月1日(第41巻 第3号 通巻473号) ●発 行−−独立行政法人 高齢・障害・求職者雇用支援機構 発行人−−企画部長 片淵仁文 編集人−−企画部次長 中村雅子 〒261-8558 千葉県千葉市美浜区若葉3-1-2  TEL 043(213)6216(企画部情報公開広報課) ホームページURL http://www.jeed.or.jp  メールアドレス elder@jeed.or.jp ●発売元 労働調査会 〒170-0004 東京都豊島区北大塚2-4-5  TEL 03(3915)6401  FAX 03(3918)8618 *本誌に掲載した論文等で意見にわたる部分は、それぞれ筆者の個人的見解であることをお断りします。 (禁無断転載) 読者の声募集! 高齢で働く人の体験、企業で人事を担当しており積極的に高齢者を採用している方の体験などを募集します。文字量は400字〜1000字程度。また、本誌についてのご意見もお待ちしています。左記宛てFAX、メールなどでお寄せください。 【P61-63】 技を支える vol.298 花の個性を引き出し、お客さまに満足を提供する 1級フラワー装飾技能士 小泉 徹(とおる)さん(69歳) 「生花店の仕事が華道やフラワーアーティストと違うのは多様な花の個性を生かし、お客さまに満足していただくことです」 父親の花屋を手伝いフラワー装飾と出会う  2018(平成30)年11月に厚生労働省の「現代の名工(平成30年度卓越した技能者の表彰)」を受賞した1級フラワー装飾技能士、小泉徹さんが代表を務める株式会社白楽花園(はくらくかえん)本店は、神奈川県横浜市港北区の東急東横(とうよこ)線白楽(はくらく)駅前にある。1947(昭和22)年に父親によって営業を開始したこの生花店で少年時代から仕事を手伝ってきた。  いわゆる町の花屋さんだが、小泉さんがアメリカ発祥のフラワー装飾に出会ったのは、東京農業大学農学部入学後の18歳のときだったという。  日本におけるこの分野のスタートは戦後の駐留軍将校の夫人たちによるサークル活動といわれている。小泉さんはその進化・発展形として1947年に創立された日本初のフラワーデザインスクールである東京フラワーデザイン研究会初代会長で、この分野の先駆者でもある大石寛ひろし氏から、フラワー装飾を学んだ。1971年の大学卒業後、父の経営する白楽花園に入社すると、欧米諸国における複数の研修に参加して研鑽を積み、1973年のJFTD(Japan Florists Telegraph Delivery Association・日本生花通信配達協会、現在の一般社団法人JFTD:通称「花キューピット」)主催の第1回フローリスト・コンテストにおける農林大臣賞を皮切りに、国内外のコンテストで多数の受賞を重ね、1998(平成10)年にJFTD全国大会で内閣総理大臣賞を受賞、1999年には横浜市経済局によって「横浜マイスター」に認定された。 「花物(はなもの)・葉物(はもの)・実物(みもの)」の特性をアレンジする  「横浜市経済局によるマイスター認定の技能分野は、厚生労働省認定の国家資格“フラワー装飾技能士”とは異なり、“花卉(かき)装飾”と表記されています。一般の方は『花卉(かき)』といわれてもピンとこないかもしれませんね。花卉の『卉』は草を意味し、花卉とは観賞用の花をもつ草を含んだ植物全般をいい、『花物・葉物・実物』があります。  これらの植物の色や形、風合い(質感)などの特性を把握して花束やブーケを仕立て、結婚式などのイベント会場のフラワー・アレンジをするのが私たちの仕事です」  そのような考えに基づき、取材当日の撮影中に仕上げられたのが上の写真の作品である。アレンジされた植物は壁面を装飾するために、防水性と保水性を備えた小泉さん考案の壁掛け用具にセットされている。  「この壁掛け用具は特許取得を目ざして、まだまだ発展途上の余地がある装置です。内部には花(はな)留め用の吸水性スポンジが装填(そうてん)されています。これを覆うプラスチックによって、植物からの水分の蒸散が防がれ、水分が減った場合はスポイトなどをつかって給水することができます。  このような職人としての独創的な創意工夫は必要ですが、ただ、華道の生け花やフラワーアーティストのような修業や自己表現と、私たちのような生花店の最大の違いは、最終的にお客さまの要望に応え、満足していただくことを目的としていることです」 1+1を無限大にできる仕事  小泉さんは、フラワー装飾の国家検定試験の中央検定委員や各種コンクールの審査委員を務めるなど、生花店業界の技術力・デザイン力の向上に尽力してきた。関東地区には、横浜市を中心に8カ所の経営拠点を展開し、生花店や花屋の若い後継者も受け入れて、指導している。  「お客さまに満足していただける“技能”の裏づけとなるのが“経験”の積み重ねです。日々の指導や講習会で若い人たちにいうのは、『この仕事は1+1が2ではない。1+1は無限大になるからね』ということです。これが私の決め言葉です(笑)」 株式会社 白楽花園 TEL:045(432)3939 FAX:045(432)3940 http://hakurakukaen.co.jp/ (撮影・福田栄夫/取材・吉田孝一) 小泉さんがアレンジした色とりどりの花の饗宴「作品『宴』」(撮影・小泉徹さん) 小泉さん考案の壁掛け用具に植物をアレンジする。黄色系の花々に実物系の植物を合わせ、上部に向かうツタの葉で動きを加味して63ページ右上の作品に仕上げた 花茎を短く裁断した植物を吸水性スポンジを覆うプラスチック面に刺していく 「現代の名工」の表彰状と楯 壁掛け用具内はスポイドなどで水分を補給できる 前ページ写真@から左上写真Aの手順を経て、この作品に仕上げられた 業界内で評価の高い小泉さんの著作群は同社ホームページで書名を確認できる 本社作業場でスタッフに囲まれて 【P64】 イキイキ働くための 脳力アップトレーニング!  今回は体を使った脳トレです。歳をとると同時作業が苦手になってきたり、不器用になったりします。チャレンジしてむずかしかったら、少し時間をおいてから再チャレンジしてみましょう。このような課題は一晩寝るとうまくなることも知られていますので、気長にチャレンジしましょう。 第22回 パラレルアクション 目標10分 [やり方] @右手の人差し指で「直線(↓、↑、↓、↑…の順)」を書く A左手の人差し指で「三角(↓、←、ナナメ、↓、←、ナナメ…の順)」を書く B@とAを同時に行い、三角を5回書けるまでくり返す 同時処理能力  今回は、脳トレ問題というより脳トレ体操です。「パラレルアクション」と呼ばれ、右手と左手を同時に使うことで、同時処理能力が鍛えられ、脳のワーキングメモリや小脳を鍛えることができます。  右手は左の脳の運動野がコントロールし、左手は右の脳の運動野が支配します。このとき、左右の運動野は連動しがちですので、左右別々の動きをすることは困難になります。本来は連動しやすい左右の動作をそれぞれ独立させ、再学習していくために必要な脳の部位は前頭前野です。そして、ここに関与してくるのが小脳であり、微細な運動を調整し、スムーズで滑らかな動作を生み出します。  今回のパラレルアクションを間違わずにスムーズに行えるようになったら、左右を逆にして行ってみましょう。  また、同時処理能力は、複数の仕事を並行して進めたり、複数の料理を一度につくったりすることでも鍛えられます。忙しくて大変なときこそ、脳の力を高めるチャンスなのです。 今回のポイント  10分以内に間違わずにスムーズに行えるようにがんばりましょう。  初めてのチャレンジから30分以内に間違わずにスムーズに行えると素晴らしいです。 篠原菊紀(しのはら・きくのり) 1960(昭和35)年、長野県生まれ。公立諏訪東京理科大学医療介護健康工学部門長。健康教育、脳科学が専門。脳計測器多チャンネルNIRS を使って、脳活動を調べている。『中高年のための脳トレーニング』(NHK出版)など著書多数。 【P65】 (独)高齢・障害・求職者雇用支援機構 各都道府県支部高齢・障害者業務課 所在地等一覧  独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構では、各都道府県支部高齢・障害者業務課等において高齢者・障害者の雇用支援のための業務(相談・援助、給付金・助成金の支給、障害者雇用納付金制度に基づく申告・申請の受付、啓発等)を実施しています。 2019年3月1日現在 名称 所在地 電話番号(代表) 北海道支部高齢・障害者業務課 〒063-0804 札幌市西区二十四軒4条1-4-1 北海道職業能力開発促進センター内 011-622-3351 青森支部高齢・障害者業務課 〒030-0822 青森市中央3-20-2 青森職業能力開発促進センター内 017-721-2125 岩手支部高齢・障害者業務課 〒020-0024 盛岡市菜園1-12-18 盛岡菜園センタービル3階 019-654-2081 宮城支部高齢・障害者業務課 〒985-8550 多賀城市明月2-2-1 宮城職業能力開発促進センター内 022-361-6288 秋田支部高齢・障害者業務課 〒010-0101 潟上市天王字上北野4-143 秋田職業能力開発促進センター内 018-872-1801 山形支部高齢・障害者業務課 〒990-2161 山形市漆山1954 山形職業能力開発促進センター内 023-674-9567 福島支部高齢・障害者業務課 〒960-8054 福島市三河北町7-14 福島職業能力開発促進センター内 024-526-1510 茨城支部高齢・障害者業務課 〒310-0803 水戸市城南1-4-7 第5プリンスビル5階 029-300-1215 栃木支部高齢・障害者業務課 〒320-0072 宇都宮市若草1-4-23 栃木職業能力開発促進センター内 028-650-6226 群馬支部高齢・障害者業務課 〒379-2154 前橋市天川大島町130-1 ハローワーク前橋3階 027-287-1511 埼玉支部高齢・障害者業務課 〒336-0931 さいたま市緑区原山2-18-8 埼玉職業能力開発促進センター内 048-813-1112 千葉支部高齢・障害者業務課 〒261-0001 千葉市美浜区幸町1-1-3 ハローワーク千葉5階 043-204-2901 東京支部高齢・障害者業務課 〒130-0022 墨田区江東橋2-19-12 ハローワーク墨田5階 03-5638-2794 東京支部高齢・障害者窓口サービス課 〒130-0022 墨田区江東橋2-19-12 ハローワーク墨田5階 03-5638-2284 神奈川支部高齢・障害者業務課 〒241-0824 横浜市旭区南希望が丘78 関東職業能力開発促進センター内 045-360-6010 新潟支部高齢・障害者業務課 〒951-8061 新潟市中央区西堀通6-866 NEXT21ビル12階 025-226-6011 富山支部高齢・障害者業務課 〒933-0982 高岡市八ケ55 富山職業能力開発促進センター内 0766-26-1881 石川支部高齢・障害者業務課 〒920-0352 金沢市観音堂町へ1 石川職業能力開発促進センター内 076-267-6001 福井支部高齢・障害者業務課 〒915-0853 越前市行松町25-10 福井職業能力開発促進センター内 0778-23-1021 山梨支部高齢・障害者業務課 〒400-0854 甲府市中小河原町403-1 山梨職業能力開発促進センター内 055-242-3723 長野支部高齢・障害者業務課 〒381-0043 長野市吉田4-25-12 長野職業能力開発促進センター内 026-258-6001 岐阜支部高齢・障害者業務課 〒500-8842 岐阜市金町5-25 G-frontU7階 058-265-5823 静岡支部高齢・障害者業務課 〒422-8033 静岡市駿河区登呂3-1-35 静岡職業能力開発促進センター内 054-280-3622 愛知支部高齢・障害者業務課 〒460-0003 名古屋市中区錦1-10-1 MIテラス名古屋伏見4階 052-218-3385 三重支部高齢・障害者業務課 〒514-0002 津市島崎町327-1 ハローワーク津2階 059-213-9255 滋賀支部高齢・障害者業務課 〒520-0856 大津市光が丘町3-13 滋賀職業能力開発促進センター内 077-537-1214 京都支部高齢・障害者業務課 〒617-0843 長岡京市友岡1-2-1 京都職業能力開発促進センター内 075-951-7481 大阪支部高齢・障害者業務課 〒566-0022 摂津市三島1-2-1 関西職業能力開発促進センター内 06-7664-0782 大阪支部高齢・障害者窓口サービス課 〒566-0022 摂津市三島1-2-1 関西職業能力開発促進センター内 06-7664-0722 兵庫支部高齢・障害者業務課 〒661-0045 尼崎市武庫豊町3-1-50 兵庫職業能力開発促進センター内 06-6431-8201 奈良支部高齢・障害者業務課 〒634-0033 奈良県橿原市城殿町433 奈良職業能力開発促進センター内 0744-22-5232 和歌山支部高齢・障害者業務課 〒640-8483 和歌山市園部1276 和歌山職業能力開発促進センター内 073-462-6900 鳥取支部高齢・障害者業務課 〒689-1112 鳥取市若葉台南7-1-11 鳥取職業能力開発促進センター内 0857-52-8803 島根支部高齢・障害者業務課 〒690-0001 松江市東朝日町267 島根職業能力開発促進センター内 0852-60-1677 岡山支部高齢・障害者業務課 〒700-0951 岡山市北区田中580 岡山職業能力開発促進センター内 086-241-0166 広島支部高齢・障害者業務課 〒730-0825 広島市中区光南5-2-65 広島職業能力開発促進センター内 082-545-7150 山口支部高齢・障害者業務課 〒753-0861 山口市矢原1284-1 山口職業能力開発促進センター内 083-995-2050 徳島支部高齢・障害者業務課 〒770-0823 徳島市出来島本町1-5 ハローワーク徳島5階 088-611-2388 香川支部高齢・障害者業務課 〒761-8063 高松市花ノ宮町2-4-3 香川職業能力開発促進センター内 087-814-3791 愛媛支部高齢・障害者業務課 〒791-8044 松山市西垣生町2184 愛媛職業能力開発促進センター内 089-905-6780 高知支部高齢・障害者業務課 〒780-8010 高知市桟橋通4-15-68 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働くことを希望する高年齢者が、年齢にかかわりなく生涯現役でいきいきと働くことができるようにするため、各企業などが行った雇用管理や職場環境の改善に関する創意工夫の事例を募集します。なお、創意工夫の具体的な例示として、以下の改善項目を参考にしてください。 1.制度面の改善 2.高年齢者の戦力化 3.意識・風土面の改善 4.能力開発(研修、資格取得、OJTなど) 5.健康対策 主な応募資格 1.原則として、企業からの応募とします。 2.応募時点において、労働関係法令に関し重大な違反がないこととします。 3.希望者全員が65歳まで働ける制度を導入し、高年齢者が持つ知識や経験を十分に活かして、いきいきと働くことができる職場環境となる創意工夫がなされていることとします。 4.応募時点前の各応募企業における事業年度において、平均した1月あたりの時間外労働時間が60時間以上である労働者がいないこととします。 ※応募資格の詳細は、本誌50〜51頁をご覧ください。 各賞 【厚生労働大臣表彰】  最優秀賞 1編  優秀賞  2編  特別賞  3編 【独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構理事長表彰】  優秀賞  若干編  特別賞  若干編 ※上記は予定であり、各審査を経て入賞の有無・入賞編数等が決定されます。 詳しい募集内容、応募方法等につきましては、本誌50〜51頁をご覧ください。 応募締切日 2019年4月15日(月) お問合せ先 独立行政法人 高齢・障害・求職者雇用支援機構 各都道府県支部高齢・障害者業務課 ※連絡先は65頁をご覧ください。 2019 3 平成31年3月1日発行(毎月1回1日発行) 第41巻第3号通巻473号 〈発行〉独立行政法人 高齢・障害・求職者雇用支援機構 〈発売元〉労働調査会 定価(本体458円+税)