「生涯職業能力開発体系」を活用した次代を担う人材の育成

はじめに

企業の成長のカギは社員のスキルアップです。そのためには、実際の現場に即した人材を育成する仕組みを構築することが重要です。

当機構では、実際の現場に必要な職業能力を明らかにして、その職業能力の開発及び向上のための教育訓練の進め方について、段階的かつ体系的に整理した「生涯職業能力開発体系」を活用するなど、実際の現場に即した人材を育成する仕組みを構築するための相談・援助を行っています。

今回の取材では、実際に「生涯職業能力開発体系」を活用して組合独自の「人材育成プラン」を作成し、構成企業(176社)の人材育成に積極的に取り組まれている高知中央電気工事業協同組合を訪ね、吉村理事長をはじめ、弘内専務理事、小川事務局長にお話しを伺いました。

「業界の更なる発展」と「職場の活性化」をめざして!

▲高知中央電気工事業協同組合幹部の皆さん (左から、小川事務局長、吉村理事長、弘内専務理事)

高知中央電気工事業協同組合は、平成18年に旧雇用・能力開発機構高知職業能力開発促進センター(ポリテクセンター高知)が人材育成高知地域協議会の専門部会として設置した「高知県電気工事業人材高度化研究会」に参画し、同研究会において作成した「人材育成プラン」を基に、現在に至るまで継続して、実際の現場に即した教育訓練コースの開発・整備やその実施など、組合員のスキルの向上に取り組んでいます。

同研究会の取組経緯について吉村理事長にお伺いしました。

(理事長)「当組合では、社員そのもの、会社そのもののマンネリ化を防ぐなど、職場を活性化するための経営戦略の一環として、これからの業界を担う人材の育成に取り組んでいます。

電気工事業の技能者として一人前になるには、5~10年の歳月が必要ですが、時間をかけてでも技能者を確保しなければなりません。先輩たちが築き上げてきた、この電気工事業界を衰退させることになってはいけません。

一例ですが、昨今は、新設工事件数が少なくなり、リフォーム工事件数が多くなっています。そうすると、現場でお客様とコミュニケーションする機会が多くなります。その際には、お客様のニーズを探り出し、困っていることを解決するための提案を持ちかけるなど、提案型の技術営業を展開していくことが望まれています。

つまり、電気工事業の技能者にも営業というスキルが求められるという時代に、今はなっているということです。しかし、日常では、主に図面を見て施工業務を行っています。その日常業務を通して、営業のスキルを学んでいくというのは非常に困難なことです。また、そのスキルを既に持っている人材をすぐに見つけて雇うということもできません。

このような課題を解決するため、社員を計画的に育成していく取組として『高知県電気工事業人材高度化研究会』の中で、様々な活動をしてきました。成果も上がってきたのは確かです。『企業は人なり』ですから、良い研究会であったと思っています。」

「企業の成長」のカギは「社員の成長」!

同席してくださった弘内専務理事から人材育成の必要性についてお伺いしました。

(専務理事)「やっぱり、本研究会のベースにあるのは『ヒト』です。そして、新たな技術に対応していくということです。

しかし、人材育成の仕組みを組合単独で構築していくのは難しく、ましてや、当組合の構成企業の殆どが社員5~6名の小零細企業ですから企業単独で構築していくのは尚更、困難です。

また、仕事を覚えるには、OJTが基本だと思いますが、資格取得や仕事の幅を広げるためのベースとなるスキルを、理論的かつ体系的に身に付けることが可能なOff-JTも重要です。しかし、その指導者が少ないといった課題があります。一般論ですが、現場の熟練した技能者は、腕があっても、スキルを『教える』という訓練を受けていませんから、部下を指導することに対して苦手意識があります。

さらには、若年者を雇用することにより、職場を活性化することができますが、最近は、『若年者のものづくり離れ』など、電気工事業で働く若年者が減っている状況にあります。このような状況下で、社員のモチベーションを維持・向上させていく仕組みがないと、業界自体が衰退していきます。

これらの課題を克服するため、ポリテクセンター高知や当組合の上部組織である全日電気工事業工業組合連合会、関連メーカなどのご支援をいただき、当組合として人材育成に取り組んでいるところです。

何といっても『ヒト』が重要です。中長期的に継続して社員を育成していく取組は、企業の成長に欠かせません。」

中長期的な視点による人材の育成を!

人材育成の具体的な取組内容について幹部の皆さんに伺いました。

(幹部の皆さん)「平成18年度に設置した『高知県電気工事業人材高度化研究会』では、人材育成ニーズに関するアンケート調査とその分析を行い、『生涯職業能力開発体系』のモデルデータを基に『課題解決のために必要な能力』と『その能力を習得するための研修コースの体系』を作成しました。作成した体系から重点項目のみを抜粋し、鳥瞰できるように取りまとめた資料が『人材育成プラン』です。

また、平成19年度には、その『人材育成プラン』の研修コースのうち、電気設備設計や原価管理・積算、光ネットワーク、地上波デジタル放送などに関する研修コースをポリテクセンター高知において実施し、結果40名の組合員が受講しました。

平成19年度から平成23年度にかけては、研修コースメニューの見直し等も含め、『人材育成プラン』の改善を行い、5年間で延べ137社、233名の組合員がポリテクセンター高知の研修コースを受講しています。

これらの研修コースはスタートラインだと思います。ここで習得したものをベースにして、現場で試行錯誤しながら、一人前になっていくのだと思います。このベースがないとスタートラインに立てません。

6年間の取組のなかで、途中、組合員の受講者数が減った年度がありますが、『受講者数が単に減った』というだけで、『この取組はもうやめましょう』ということではなくて、中長期的に継続して取り組んでいくことが重要だと思います。」

常に工夫し、改善していこうという姿勢へ!

最後に、本取組の効果について幹部の皆さんに伺いました。

(幹部の皆さん)「電気工事士等の資格取得の合格率が上がってきたのは数字を見れば分かりますが、実際に社員の働きぶりを見ていても、工夫をしながら取り組んでいるのが分かります。仕事に対する意識、姿勢も変わってきていますし、直接的にも間接的にも刺激を与え、結果が出ていると感じています。」と本取組の効果についてお言葉をいただきました。

お話をお伺いするなかで、高知県における同業界の人材を育成するため、先人たちの想いを礎として、託された世代として、その想いをどう受け継ぎ、さらに先を見据えて、何につないでいくのかという信念を持った気骨溢れる異骨相(いごっそう)な経営者気質が印象的でした。