働く広場2015年5月号
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25働く広場 2015.5ブランクがあり、病状が悪化しないかと心配していたが、2カ月後くらいに「不眠」は出たものの、主治医やスタッフと相談しながら働き、1回も休むことはなかった。9月から12月までは、1日4時間、週5日の勤務でスタートし、1月から1日6時間、週5日の勤務に延長した。休日に休養を取り対応しているとのこと。田中さんは、「最初は、同じ病気の経験を持つ者がスタッフとして仲間に受け入れられるか不安だったが、利用者はすんなり受け入れてくださり、見方が変わってきた。みんなやさしい」、「副作用が体に出てしまう利用者と絵画展に同行した。自分が辛抱強く待っていたり、声がけができるようになった。視野も広がったし、40代後半になって意識が変わった」と話す一方で、「家族のことをいろいろ聞かれたのは困った」とも。ピアスタッフに限らず、こうしたときの対応方法について、ルール化することもポイントの一つではないかと感じた。また、雇用時間を段階的に増やしていったことは、「ブランクがあり心配だったが、何とか乗り越えてきた。仕事にちゃんと来られて、充実感に満たされている。このまま慣れていくのだと思う。この5カ月で自信につながった」と、配慮に感謝していた。業務内容については「対人支援なのでストレスもあり安定していないがバランスが大事。対人支援もするが事務もする。いまはバランスがよい」と、田中さんには、業務内容と配分のバランスがマッチしたようである。江藤健次さんには、仕事で利用者とどんな話をしているのかお聞きした。「自分と年齢が変わらないような男性やアルコールに関係している方に対して、近況とか普通のことを話している。『また来ますよ』と話したときに、相手のニコッとした笑顔がみられるとうれしいです」と手ごたえをつかまれた様子だった。今回、鹿児島県の4カ所の医療法人で働く8人と病院スタッフの方々の取材をさせていただいた。こうした取組みは、まだまだごく一部の医療法人にとどまるが、この取材を期に関心を持つ法人が増え、ピアスタッフが「安い労働力」としてではなく、ピアスタッフとしての専門性を発揮できる仕事だと理解してほしい。入院中、もしくは通院している患者さんや福祉事業所を利用する方々が、ピアスタッフからリカバリー志向※5を学ぶという考え方が広がってほしい。取材2日目の午後、鹿児島県が主催する「精神障害者地域移行・地域定着推進研修会」が開催され、「リカバリーとピアサポート人材育成」をテーマに、ピアスタッフを雇用したこの4法人の雇用管理者がシンポジストとして、半年間の取組みの報告を行った。筆者はコーディネーターとして参加したことから、その報告概要を一覧表にまとめた(表)。研修会の最後には、8人のピアスタッフが紹介された。会場から惜しみない拍手が贈られ、まるで半年間の研修を終えた新入職員歓迎式のようなあたたかい雰囲気のなかで取材を終了した。25成果を研修会で※4 ストレングス……その人が、元来持っている「強さ・力」。個人の属性(性質・性格)、才能・技能、関心・願望だけでなく、環境(人間関係、近隣の地域資源など)も含む※5 リカバリー志向……本人の希望や必要なことに基づく、当事者中心の生活支援や就労支援田中さんはデスクで事務処理書類整理をする江藤健次さん表 「精神障害者地域移行・地域定着推進研修会」(2015年2月3日)の報告概要から期待した効果●長期入院患者への退院意欲喚起と地域生活ロールモデル ●入院患者の在宅復帰への復職不安や再就職不安等解消のロールモデル●職員への効果の期待:当事者ニーズにあった援助技術の向上 ●在宅者が自分らしく生きていくための力を育むようなサポートピアスタッフの現在の業務内容●病院:作業療法等の補助業務、地域連携室にて相談業務、訪問看護同行で支援、法人職員に対するピアサポート専門員啓発研修●福祉サービス提供事業:内職作業や店舗運営を補助し、働く精神障害者の作業助言・支援を行ったり、個別での生活相談や働き方などの相談、助言や、ミーティングの進行役、サークル活動・イベントサポート、電話相談、訪問・同行支援(買い物、銀行)、話し相手、事務(書類整理、パソコン入力、ポスター作成)、書類提出など●地域住民等への啓発活動(大学や専門学校での講義、看護科実習生への説明、地域交流イベントへ参加)雇用管理者の工夫●朝礼、終礼で雇用管理者、直接指導員、ピアスタッフで1日のスケジュールの確認や、体調確認、体調管理・個人衛生に関することなどについて、ミーティングを実施 ●ピアスタッフと直属の上司がピアサポート専門員養成研修を受講できるように手配雇用管理者の役割朝礼参加、月1回面談、業務アドバイス、体調管理や勤務時間等アドバイス、ピアサポート専門員広報や学習会の開催、ピアサポート専門員養成研修を一緒に受講今後の業務指示予定内容職員に対してピアの視点からの発言、相談に関する記録(カルテ記載など)、カンファレンス参加取り組んでよかったこと●病院職員に対しピアサポーターの専門性や必要な情報を伝えることができた ●外来通院者の方に対し就労意欲の引き出しや向上に効果を感じた ●当事者だからこその体験からアドバイスをもらった ●ピアスタッフが関わったケースでは支援がスムーズに開始できる●支援対象者のニーズが何なのかを具体的にピアスタッフがわかりやすくした ●ピアスタッフの存在を考えるきっかけになった取り組んで難しく感じたこと●入院中の方には病状が不安定な方もいて、場合によっては、ピアサポート専門員が支援できないこともある●事業所側とピアサポート専門員の業務の枠組み・位置づけ、マッチング ●他の部署のスタッフの戸惑い●体調管理への配慮にお互いの認識の違いがある ●2人雇用の場合、相性の問題がある

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